平成23年度試験について 最終更新:2012.09.24 Top Page

=CONTENTS=
1.試験の内容・合格基準
2.試験結果〜合格率など
3.一次試験の傾向

1.試験の内容・合格基準

一次試験は、2011年10月10日(月・祝日)に行われました。
一次試験の合格基準は以下のとおりです。
わかりやすいように、共通科目をのぞいて考えましょう。
合格条件は、以下の4条件をすべて満たしていることです。
 (1) 基礎科目 15問×1問1点=15点 40%正解=6問6点以上
 (2) 専門科目 25問×1問2点=50点 40%正解=10問20点以上
 (3) 適性科目 15問×1問1点=15点 50%正解=8問8点以上
 (4) 基礎と専門の合計(15点+50点=65点)で50%正解=33点以上

上記のすべてを満たしていることが合格基準です。逆にいうと、
 ●基礎正解6問(6点)未満
 ●専門正解10問(20点)未満
 ●基礎と専門の合計得点が33点未満
 ●適性正解8問(8点)未満

のどれかに該当するとアウトです。なお、共通科目は平均点以上であることが合格基準です。
合否判断は、前記合格基準を満たしているかどうかで決まります。
基礎と専門のところがわかりにくいかと思いますので、図表にしてみました。なお、図はNagaseさんに作成していただきました。ありがとうございます。
基礎科目正解数 専門科目正解数 判定 不合格根拠
5以下 (何問でも関係なし) × 基礎正解40%未満
6 13以下 × 基礎+専門で50%未満
6 14以上
7 12以下 × 基礎+専門で50%未満
7 13以上
8 12以下 × 基礎+専門で50%未満
8 13以上
9 11以下 × 基礎+専門で50%未満
9 12以上
10 11以下 × 基礎+専門で50%未満
10 12以上
11 10以下 × 基礎+専門で50%未満
11 11以上
12 10以下 × 基礎+専門で50%未満
12 11以上
13 10以上
(何問でも関係なし) 9以下 × 専門正解40%未満
なお、「基礎科目で0点の分野があると不合格」というウワサが流れたことがありますが、それはガセネタです。現実に確実に0点分野がある(完全に捨てて解答せず)人も合格してますし、技術士会に直製電話で問い合わせ、「技術士会としてはそのような基準は設けていない」との答えをいただいてもいます。これは某受験参考書にその旨の記載があったのがウワサの元のようですが、無責任極まりない話だと思います。
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2.合格率など

 平成15年度以降の合格率推移をみると、平成20年度以降は35〜40%前後でやや落ち着いていましたが、23年度は大きく合格率を落としました。

年度 受験者数 合格者数 合格率
H15 53,873 28,808 50.7
H16 43,968 22,978 52.3
H17 36,556 10,063 27.5
H18 32,183 9,707 30.2
H19 27,628 14,849 53.7
H20 23,651 8,383 35.4
H21 24,027 9,998 41.6
H22 21,656 8,017 37
H23 17,844 3,812 21.4

 一次試験の場合、択一問題のみで機械採点のため、合格率調整のようなことができません。そのため問題の難易度をちょっと変えただけで合格率が大きく変動しているのだと思われます。
 技術士会HPの統計資料をみると、平成24年度試験については、以下のような傾向がありました。

  1. 部門別合格率(対受験者、以下同じ)は、最も高い原子力・放射線部門(54.7%)と最も低い建設部門(12.8%)で4倍以上の差がついています。
  2. 受験地別では、最も高い神奈川県(28.2%)と最も低い沖縄県(8.2%)で2倍以上の差がついています。
  3. 年代別では、10代(10.9%)と70代以上(7.1%)を別にすれば、18〜25%程度で、受験者の多い20〜40代では年令とともに合格率が低下する傾向があります。なお、合格者の平均年齢は35.4歳です。
  4. 勤務先別に見ると、教育機関(39.0%)、独立行政法人(35.1%)、地方自治体(33.0%)、国立機関(31.8%)の合格率が高く、逆に建設コンサルタント業(10.1%)、自営(14.1%)の合格率が低くなっています。
  5. 最終学歴でみると、大学院(31.9%)→大学→新旧高専→短大(4.7%)やその他(6.0%)と合格率が低下していきます。また在学中の受験生の合格率は大学院と大学の中間程度です。
 なお、統計資料をみると、上記@〜Dの傾向のうち、@以外は同じ傾向にあります。受験地別合格率の最高・最低の受験地も同じですし、20代→40代と合格率が低下する傾向も同じです。学歴別・勤務先別も同じ傾向です。
 一次試験はJABEE認定プログラム履修者と同等の科学技術に関する基礎知識を有することを判定するために実施する試験です。よって問題は技術系大学で教えている内容が基本になります。教育機関の受験生の合格率が高いことや、最終学歴と合格率の間に相関があるのは、こういったことが反映されているのではないかとも思われます。
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3.一次試験の傾向

●一次試験の位置づけ

 すでにJABEE認定大学卒業生(つまり一次試験免除者)が毎年1万人以上誕生していると推定され、文科省が描いていた
  認定プログラムによる高等教育4年間の実務経験二次試験受験
  若い技術士が多く誕生CPD・国際資格

という流れは、一次試験段階では完成しつつあるといえるでしょう。またこの流れは、
   高等教育(JABEE)
修習教育(IPD)
継続教育(CPD)
大学生 修習技術者 技術士
というようにも表現できます。大学生だろうが社会人技術者であろうが常に教育する、そしてそれは文科省が一手に管理する(このあたりが文科省のという役所の特徴でもあります)ということです。
このように考えると、一次試験を受けて修習技術者になるという道は「本流」ではなく(それゆえ私は大検に例えています)、「技術士補」という資格もまた「本流」ではないことがわかります。
ところが一次試験が簡単に合格できるとなると、JABEE認定を受ける「うまみ」(大学にとっては学生を集めるアピール度)が減ることになりますから、文科省にとっては面白くないことのはずです。
その一方で、「技術士数を増やす」という文科省の方向性も確かにあるでしょう。
これらのことから、19年度の合格率・合格者数激増は、もしかすると合格者を増やしたいという文科省の以降の現れかもしれないと思っていたのですが、20年度以降の合格率を見ると、ちょっとしたハードルの上げ下げが合格率の乱高下になってしまっている、すなわちそれだけボーダーラインにひしめいている状態なのではないかなと私は思います。
そして、おそらく今後も問題の難度の上下に伴って合格率も上下しつつ進んでいくものと思われます。

●科目別の傾向
 次に、科目別に見てみます。
  • 共通科目
    共通科目受験合格者推移を見ると、JABEE認定による一次試験免除による共通科目受験者数の減少と合格率の上下が相殺的に現れて、今年度は増加に転じたものと思われます。

  • 基礎科目
    基礎科目は、17年度から応用問題が増えたため、表面的な暗記勉強では対処できない問題が増えたと思われます。
    前述のとおり技術士会技術士試験等検討特別委員会の「技術士試験に関する改善提案」で基礎科目での「丸暗記」からの脱却が提案されたものが反映された結果であり、17年度から応用的問題が増えたのは偶然ではないのです。
    このことから、「今後も同様に暗記勉強だけではクリアできない問題が主体になる」と予測していたのですが、今年度は応用的問題でありながら、基礎レベルの出題であった(つまり出題傾向は変えず、難度を落とした)と判断されます。
    今後も同様の難度の問題が出るかというと、これはわかりません。今後も難度・合格率が上下することも考えられます。

  • 専門科目(建設部門)
    建設部門については、16年度以前は選択科目ごとに均等に問題数が配分されていましたが、17年度から土質、構造、河川水文等に顕著なウェイトが置かれるようになりました。
    このため、土質基礎・構造・河川砂防などに縁遠い分野の実務技術者にとっては難しくなっていると思われます。
    これも、 技術士会技術士試験等検討特別委員会の「技術士試験に関する改善提案」で専門科目でのより基礎的なレベルでの出題が提案されていたのに沿ったものであると解釈されますので、今後もこの傾向は続くと思われます。

  • 適性科目
    適性科目は15年度以降、技術者倫理に関する知識問題が増えています。今後も、「技術者倫理を知識として知っているか」という問題が出されていくものと思われ、JABEE認定校で使われている技術者倫理のテキストが出題出典となっていくと予想されます。
    17年度に見られた哲学関連知識にも出題範囲が広げられそうな兆候は、18年度以降は影を潜めました。これは出題者の思想の違いによるものではないかと思われます。
    いずれにせよ適性科目は、合格ラインに達することは易しい点では変わりありません。
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