技術士第一次試験専門問題対策資料 =港湾及び空港=
最終更新:2007.02.12
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水域施設・外郭施設・係留施設の資料は、伏龍さんご提供の資料をまとめたものです。伏龍さん、ありがとうございました。

CONTENTS
概論
港湾計画
水域施設
外郭施設
係留施設

概論

  1. 港湾の種類
    位置(地形)、機能(使用形態)、行政(法規)、建設形態の4つの分類があります。
    (1) 位置(地形)
     沿岸港(海港・潟港)、内陸港(河港・河口港・運河港)
    (2) 機能(使用形態)
     一般港(商港または貿易港、そのうち物流港湾、さらにそのうち産業港湾がある)と特殊港(軍港・フェリータミナル・ヨットハーバー・マリーナなど)。
    (3) 行政(法規)
     港湾法・・・・特定重要港湾・重要港湾・地方港湾・・・・地方港湾の中で暴風時船舶避難に供するものを避難港
     漁港法・・・・漁港1種・2種・3種・4種で、1種は地方・3種は全国的
    (4) 建設形態
     天然港・埋立港湾・掘込港湾・人工島港湾

  2. 港湾の施設
    固定施設と移動施設に大別されます。特に基本施設の水域施設・外郭施設・係留施設をしっかり覚えてください。



    基本施設 水域施設・・・・航路・泊地・船だまり
    外郭施設・・・・防波堤・砂防堤・防潮堤・導流堤・水門・閘門・護岸・堤防・突堤・胸壁
    係留施設・・・・岸壁係船浮標係船杭桟橋浮桟橋物揚場・船揚場
    臨港交通施設・・・・道路・駐車場・橋梁・鉄道・軌道・運河・ヘリポート
    航行補助施設 航路標識・港湾標識(灯台など)など
    機能施設 荷さばき施設、旅客施設、保管施設倉庫など)
    役務施設 船舶給水施設、給油施設、修理施設など
    港湾公害防止、港湾環境整備施設 汚濁水浄化施設など、港湾環境整備施設(海浜・緑地・広場・植栽・休憩所など)
    廃棄物処理施設 各種廃棄物処理施設
    厚生・管理施設 福利厚生施設、管理事務所など
    用地 上記の敷地



    機能施設 移動式施設(移動式荷役機械・移動式旅客乗降用施設)
    役務施設 港湾役務提供用移動施設(タグボートや給油船舶など)
    管理施設 港湾管理用移動施設(清掃船など)

  3. 潮位
    基本水準面CDL ほぼ最低低潮面、水深表示の海図のゼロ点 港湾工事用基準面設定の基準、東京湾では荒川工事基準面
    平均水面 ある期間の海面の平均高さに位置する面
    朔望平均満潮面HWL 朔望(新月および満月)の日から前2日、後4日以内
    に現れる各月の最高満潮面・最低干潮面の平均
    要は大潮の時の最高潮位と小潮の時の最低潮位
    港湾施設の計画・設計等に用いる
    朔望平均干潮面LWL

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港湾計画

  1. ハーバー計画
    水域施設・外郭施設の計画
    計画の種類 主な留意事項
    ★ここの数値等は覚えておいたほうがいいかもしれません
    港口と防波堤の配置 ●強風の恒風方向に対して30〜60°の航路法線をとる
    ●港口付近で強い潮流・反射波・横波を受けないよう左右の防波堤先端は食い違いにする
    ●港口は主航路の他に2つ以上設けたほうが良い
    泊地と船だまり ●静穏度は年間稼働率95〜97.5%確保(泊地内波高で評価)
    ●水深は船の満載喫水の10%増しを標準
     このときの水面はCDLまたはLWLを基準にして設けた工事用基準面
    ●岸壁等の前面を泊地にする場合の面積(バース)・・・・
     泊地長=船長L+横付け係留の際に必要な延長
     泊地幅=船の離着岸が安全で円滑に行える値
    ●突堤間の泊地幅(スリップ)・・・・
     1本の突堤が3バース以下:L
     1本の突堤が4バース以上:1.5Lの幅員以上
    ●船まわし場:Lの1.5倍を半径とする円以上の円
     ただし錨利用・引船回頭の場合はLを半径とする円
    ●船だまりは小型船係留に安全なよう、荒天時の避難船を考慮して十分な面積と水深確保
    航路と航路標識 ●航路が屈曲する場合の交角は30°以内
     30°超の場合は曲率半径を4L以上・航路幅L以上とる
     交角30°以上・航路幅Lのときは隅切りをする
    ●回頭の旋回径は5〜7L、最大縦距=最終旋回径=4〜6L
    ●幅員は比較的距離が長い航路・頻繁に行き合う場合:2L
               〃          頻繁ではない場合:1.5L
            長距離ではない航路・頻繁に行き合う場合:1.5L
               〃          頻繁ではない場合:L
    ●水深は満載喫水+余裕水深
     一般的余裕水深:喫水の20%、波高の1/2(大型船。小型中型は2/3)
    ●灯台:重要港湾では各航路の外防波堤・内防波堤の両舷側に設置(港に向かい右を赤、左を白に塗る)
     避難港では主港口の片舷側に設置

  2. 埠頭(ターミナル)計画
    埠頭:係留施設・荷捌き施設・補完施設・臨港交通施設・旅客施設などが一体的に整備された地区
    計画の種類 主な留意事項
    埠頭の形状 ●突堤式埠頭は用地が取れないことが多い
    ●平行式埠頭は埠頭に沿う走り波が問題で消波構造がよい
    ●ドック式埠頭は掘り込んだ入り口を閉じたもので河川・海面の水位差の影響を低減
    ●島式埠頭は大水深バースに適しておりデタッチトピアともいう
     これを沖合いに設けたシーバースは超大型船舶用
    ●双子式埠頭は突堤式埠頭外側に本船・内側に小型船を係留→中継に便利
    埠頭規模 ●混雑率等により経済的規模を決定する方法と、経験的決定法がある
    コンテナ埠頭 ●荷姿規格化・輸送の流れを機械化・自動化→輸送形態の主軸
    ●フェリー輸送、RO-RO輸送(ヘッドレスでシャーシのみ)、LO-LO輸送(シャーシもなくクレーン積卸し
    ●在来埠頭よりバースあたり荷役量が格段に大→バース減少、コンテナヤードを広くとる
    ●コンテナフレートステーション:小口荷物の混載・開梱等の作業所(仕分け場)
    フェリー埠頭 ●駐車場面積が重要→自動車到着台数・待ち時間から求める
    マリーナ ●人の文化交流・レクリエーション機能を果たす施設の総合体

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水域施設

船舶を安全に航行・停泊・荷役など利用する水域であり、航路・泊地・船だまりをいいます。


  1. 有義波
     (1/3最大波)
    不規則波の統計資料として波群の中から波高の高いほうから数えて1/3に当たる並みの波高を平均したもの
    設計波 @相当長期(10ヵ年以上が望ましい)の波の実測資料あるいは、A気象資料による推算値(30ヶ年以上)などに適切な統計処理を施して設計沖波を決定する。さらに、@波の屈折にともなう波高・波向の変化A波の回折による波の変形B浅水変形による変形C砕波による変形を考慮して設計対象地点における波が求められる。
    屈折 波の進行方向および波峰線の形が海底の地形に影響されて変化する現象で、進行速度の差によって生じる。(先に浅い所に到達した波峰の部分は遅くなり、深い所を進行している部分は早くなる)
    回折 波が島や防波堤にさえぎられてもそれらを迂回してその背後に回りこんで行く現象。
    浅水変形 浅海域を波が進行する場合、屈折のみでなく、浅水変形による波高変化も考慮する必要がある
    砕波 波が海岸に近づくと波の峰は前傾して空気を含み、砕けて白波をたてながら進行し、砕波帯を形成する。

  2. 港内静穏度
    港口進入波 港外波浪が港口から直接進入する波浪
    港内伝達波 港外波浪が外郭施設を越えて、または透過して港内へ伝達する波浪
    反射波 港内波浪が係船岸、防波堤の背面で反射する波浪
    長周期波 港内、沖合いにて周期1〜数分の長周期水位変動として表れる波浪
    港内副振動 港内の微小な擾乱が、港湾の固有周期により増幅される

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外郭施設

 港湾に必要な水域を確保し、波浪・津波・高潮・漂砂を遮へいし、港湾施設や港湾背後地の保全を図ることで、港湾機能を円滑に発揮させる施設です。

  1. 直立堤
     前面が鉛直な壁体を海底に据えたもので、主として波のエネルギーを沖側に反射させて港内の静穏性を保ちます。
     ケーソン式・ブロック式・セルラーブロック式などがあります。
     直立壁に作用する最大波力や揚圧力は合田式で算定します。
      ○単純構造で使用材料も比較的少ない。
      ○堤体を透過する波や漂砂が少ない。
      ○堤体側面が鉛直で、かつ基面が深いので越波に対して強い。
      ○有効な港口幅の確保が容易で、港内側を船舶の係留施設として利用できる。
      ●反射波が大きく付近の海面を乱す。
      ●基礎に作用する底面反力が大きく、波や流れによる洗掘の恐れがある
      ●維持修理が少ない反面、破壊されると大きな災害を受ける。
      ●施工時、他の構造に比較して海上の静穏さが必要。

  2. 混成堤
     捨石基礎(マウンド)の上に直立壁体を据えたもので、傾斜堤と直立堤の機能を複合したものです。
     波高に比べて捨石天端が浅い時は傾斜堤の機能に近く、深い時には直立堤の機能に近くなります。
      ○捨石部で基礎地盤反力を軽減でき、比較的地盤のよくない所にも適する。
      ○水深の大きな所に採用でき、組み合わせ次第で経済的な断面を選定できる。
      ○大型ケーソンを用いることで、波の荒い外海でも比較的急速施工が可能。
      ●捨石マウンドが高くなると、衝撃砕波圧が直立部に作用する恐れがある。
      ●比較的に構造が複雑なため、施工も複雑で、大規模な設備を必要とすることが多い。
      ●局部的な波力の集中、反射波によるもどり流れなどにより、港外側捨石マウンドが災害を受けることがある。

  3. 傾斜堤
     石やコンクリートブロックを台形状に捨てこんだもので、主として斜面で波のエネルギーを散逸させます。
     捨石式・捨ブロック式に分類されます。マウンド被覆材の重量はハドソン公式により決定します。
      ○地盤形状に応じた施工ができ、比較的軟弱な地盤にも適用できる。
      ○堤体で波のエネルギーを消耗させるので、反射波を減じ、付近の海面を乱さない。
      ○ブロック堤の場合、海水の透過性がよいので、水質維持に比較的有利。
      ○維持補修が比較的容易
      ●水深が深くなると多量の堤体材料および労力を要する。
      ●堤体を越える波により、堤内側の肩や斜面部が破壊されやすい。
      ●ブロック堤の場合、透過する波によって、港内が乱されやすく、漂砂のあるところでは、港内埋没が起こりやすい。
      ●堤体斜面のすその広がりが大きいので、航路・泊地が狭くなる。

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係留施設

 船舶が安全に係留され、貨物や旅客が効率よく取扱われるための施設、岸壁、桟橋などがあります。

係船岸 岸壁・桟橋・ドルフィン・浮桟橋など
係船柱・杭 船舶を係船岸に係留するための柱や杭
係船浮標 風・潮流・波などにより船舶が係船位置から流れるのを防ぎ、安全に泊地内に係留させるもの

なお、通常より耐震性を強化した岸壁を「耐震バース」といいます。

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