技術士第一次試験専門問題対策資料 =都市及び地方計画=
最終更新:2007.02.12
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これまでの一次試験専門科目で必ず出題されている都市計画法についてまとめた資料です。

CONTENTS
目的と実現体系
都市計画区域と用途区域
開発許可と建築確認
都市施設
市街地開発事業

目的と実現体系

  1. 目的
    良好な街づくり
    を目的とする。建築基準法と一体となって、土地利用計画を実現するという体系。

  2. 実現体系
    2段2層といわれ、都道府県と市町村がそれぞれ2つのことをする。
    都道府県が定めるもの 市町村が定めるもの
    都市計画区域とその中の線引き市街化区域・市街化調整区域)およびその整開保(整備・開発または保全)の方針 都市計画マスタープラン
    用途地域(三大都市圏等) 地区計画

    (都道府県)
     都道府県は、「線引き」と言われる区域わけと、「色塗り」といわれる用途指定を行う(都市計画は都道府県主体である)。
     都市計画区域指定時には、都道府県は次のことをしなければならない。
      (1) 関係市町村都市計画地方審議会意見を聞く
      (2) 国土交通大臣協議同意を得る。
    (市町村)
     市町村は、用途区域内のさらに細かい地区計画(規制力弱い)と、強制力のない指針である都市計画マスタープランを決める権限しかない。
     しかし、2000年の法改正で、準都市計画区域の指定・非線引き白地地域での地域計画ができるようになった。
     また、三大都市圏等を除く地方では、用途地域の決定も市町村ができる
    ※「三大都市圏等」とは以下の通り。
       (1) 首都圏整備法に規定する既成市街地又は近郊整備地帯
       (2) 近畿圏整備法に規定する既成都市区域又は近郊整備区域
       (3) 中部圏開発整備法に規定する都市整備区域
       (4) 政令都市

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都市計画区域と用途区域

  1. 都市計画区域
    日本の国土は、都市計画区域と都市計画区域外に分かれる。さらに都市計画区域は、市街化区域・市街化調整区域・非線引区域に分かれる。
    例外として、都市計画区域外市町村が定める準都市計画区域がある。近年のクルマ社会進展に伴う郊外型大型SCなどの開発に対処することを目的としている(都計法改正による)。
    区域名称 目的
    日本国土 都市計画区域 市街化区域 市街化を進める区域
    市街化調整区域 市街化を抑えて自然を守る区域
    非線引区域 上記いずれにも属さない区域
    都市計画区域外 都市計画法対象外
    都道府県は、都市計画区域についておおむね5年ごとに基礎調査を行い、結果を市町村長に通知する。
  2. 用途地域
    前記の区域のうち、市街化区域はさらに用途地域を定める。その内容は下表のとおり。
    市街化調整区域・非線引区域・準都市計画区域は定めても定めなくてもよい。用途区域の定められていない区域を「白地区域」ともいう。
     用途地域の分類・種類 イメージ


    低層住居 低層住居専用(第一種・第二種) 一戸建住宅地
    中高層住居 中高層層住居専用(第一種・第二種) 一戸建て・マンション住宅地
    住居地域 住居(第一種・第二種) 幹線道路沿いの住居・マンション等
    準住居
    商業系 近隣商業 近所の商店街で日用品を提供
    商業 繁華街
    工業系 準工業 町工場などで住居も混在
    工業 大きな工場
    工業専用 工業団地など
    以下のところでは、都道府県が用途地域を定める。
     ・首都圏整備法上の既成市街地・近郊整備地帯・都市開発区域
     ・近畿圏整備法上の既成都市区域・近郊整備区域・都市開発区域
     ・中部圏開発整備法上の都市整備区域・都市開発区域
     ・指定都市

  3. 補助的地域地区
    用途地域指定よりさらにきめ細かく用途を決めたいというときには、補助的な地域を定めることができる。
    特別用途地区と特定用途制限地域はまぎらわしので注意。特に特定用途制限地域は白地地域に決められることに注意。
    また、景観法の成立により、これまで「美観地区」であった地区が「景観地区」となった。景観法に基づく景観地区指定は、全国的に自治体が取り組んでいるので、トピック的出題があるかも。また、景観法は人工美、風致地区は自然美を守ることにも注意。
    名称 定められる地域 決定者 目的
    特別用途地区 用途地域内 市町村

    特別の用途の建築物等を制限
    例)商業専用地区、特別工業地区

    特定用途制限地域 白地地域 特定の用途の建築物等を制限
    高度地区 用途地域内 建築物の高さの最高or最低限度を定める
    高度利用地区 土地を高度利用するための地区
    景観地区* 都市計画区域内 景観行政団体は、景観法に基づき、条例で、開発許可基準に景観計画に定める基準を追加することができる。
    風致地区 都道府県 都市の風致(自然美)を維持。都道府県の条例で定める。
    *景観地区は、H16景観法以前は「美観地区」
  4. 地域計画
    各地区の特性に応じた、良好な街づくりをするための「地区単位の都市計画」である。
    地区計画は、以下の2つからなる。
     (1) 地区計画の方針・・・・地区の目標将来像
     (2) 地区整備計画・・・・詳細なルール(建築物の建て方など)。ただし地主全員の合意が必要
    問題点:規制力が弱い
         地区計画区域内で建物を建てる時は、着手の30日前までに市町村長に「届け出」るだけでよく、許可は不要。
         市町村長は、建物が不適切であっても、「勧告」できるだけで、命令はできない。

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開発許可と建築確認

  1. 目的
    上記のような都市計画に加え、個々の開発や建築を規制することにより、「良好な街づくり」の実現をはかる。

  2. 開発許可
    一定規模(下表)以上の開発行為について、知事の許可を必要とする。
    大分類 小分類 許可を要する面積
    都市計画区域 市街化区域

    1,000u以上は許可必要

    市街化調整区域 面積に関係なく許可必要
    非線引き区域 3,000u以上は許可必要
    準都市計画区域 3,000u以上は許可必要
    どちらでもない区域 10,000u以上は許可必要

    市街化調整区域が最も厳しいことに注意。また、は法改正により変更があったものなので、特に注意。
    また、変更等があった時の手続きは下表。
    大分類 小分類 内容
    計画の変更 通常の変更

    知事の「許可」が必要

    軽微な変更 知事に「届出」が必要
    開発の廃止
    土地の譲渡 知事の「承認」が必要
    子供に相続(一般承継) 手続き不要

  3. 建築確認
    特定用途・一定規模以上の建築物を建築する時などに、その計画が法令に適合しているか、建築主事の確認を受けなければならない。
    都市計画区域外にも規制が及ぶが、都市計画区域の方が厳しい。
    さらにその中でも防火・準防火地域の方が厳しく規制される。
    区域 規制対象建築物等
    @すべての地域

    100u超特殊建築物大規模建築物
     ・新築
     ・10u超の増改築・移転
     ・大規模な修繕・模様替え
     ・100u超の用途変更(特殊建築物以外→特殊建築物)

    A都市計画区域
    準都市計画区域
    @に加えて、すべての建築物の新築・10u超の増改築・移転
    B防火・準防火地域

    @に加えて、すべての建築物の新築・増改築・移転(10u以下も)

    ※特殊建築物とは、コンビニ、バー、共同住宅など多くの人が集まる建築物

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都市施設

  1. 都市施設とは
    都市計画区域内では、都市施設を定めなくてはならない。
     ※都市計画法第11条  都市計画区域については、都市計画に、次に掲げる施設で必要なものを定めるものとする。
       この場合において、特に必要があるときは、当該都市計画区域外においても、これらの施設を定めることができる。

    都市施設は、次のものである。
      1.道路、都市高速鉄道、駐車場、自動車ターミナルその他の交通施設
      2.公園、緑地、広場、墓園その他の公共空地
      3.水道、電気供給施設、ガス供給施設、下水道、汚物処理場、ごみ焼却場その他の供給施設又は処理施設
      4.河川、運河その他の水路
      5.学校、図書館、研究施設その他の教育文化施設
      6.病院、保育所その他の医療施設又は社会福祉施設
      7.市場、と畜場又は火葬場(→建築基準法51条参照)
      8.一団地の住宅地設(一団地における50戸以上の集団住宅及びこれらに附帯する通路その他の施設をいう。)
      9.一団地の官公庁施設(一団地の国家機関又は地方公共団体の建築物及びこれらに附帯する通路その他の施設をいう。)
     10.流通業務団地
     11.その他政令で定める施設(施行令5条)〜電気通信事業の用に供する施設又は防風、防火、防水、防雪、防砂若しくは防潮の施設

    ここで注意すべきなのは、河川なども都市施設になることである。

  2. 最低限定めなければならない都市施設
    都市計画区域内であれば、たとえ非線引き区域でも、道路・公園・下水道は最低限都市施設として定めなければならない。
    また、法第11条にあるように、都市計画区域外においても、必要があれば都市施設を定めることができる。

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市街地開発事業

  1. 市街地開発事業のできる区域
    都道府県(一部は市町村)は、市街化区域または非線引き区域において、一体的に開発または整備する必要がある土地の区域について、市街地開発事業を都市計画で定めることができる(都市計画法13条1項12号)。
    なお、市街化調整区域だけは市街地開発事業ができない

  2. 市街地開発事業の種類
    市街地開発事業の種類は以下の6つである。
     (1) 土地区画整理事業
     (2) 新住宅市街地開発事業
     (3) 工業団地造成事業
     (4) 市街地再開発事業
     (5) 新都市基盤整備事業
     (6) 住宅街区整備事業


  3. 市町村で実施できる事業
    市街地開発事業のうち、市町村が実施できるものは以下の3つである。
     (1) 政令で定める小規模な土地区画整理事業、
     (2) 市街地再開発事業
     (3) 住宅街区整備事業

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