技術士第一次試験 平成11年度 専門科目《建設部門》

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(2−1)択一問題
次の10問題を解答せよ(専門科目解答欄にマークすること。)

  1. 土質及び基礎に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

    (1) 均等係数は、加積通過率60%に相当する土粒子の直径を加積通過率10%に相当する土粒子の直径で除したものである。

    (2) 正規圧密粘土とは、圧密降伏応力よりも低い有効応力を受けた状態の粘土である。

    (3) せん断に伴って体積が変化する現象をダイレイタンシーという。

    (4) 一軸圧縮試験結果からは、せん断強度以外に変形係数も求めることができる。

    (5) 杭基礎の鉛直支持力は、杭の打設方法などの施工法により大きく異なる。

    解答案:2

    (1)・・・・○ そのとおり。これが小さいと粒が揃っている(粒度が悪い)ことの指標となる。
    (2)・・・・× それは過圧密粘土。
    (3)・・・・○ そのとおり。砂浜で波打ち際を歩く時、足の回りの砂が盛り上がり、水がスッと引く現象などがそれ。
    (4)・・・・○ そのとおり。破壊ひずみの1/2のひずみに相当する応力(確実な弾性体部分)でひずみ-応力曲線の傾きを変形係数E50とする。
    (5)・・・・○ そのとおり。打込杭・埋込杭・場所打杭などで全て異なる。
    ※均等係数・正規圧密・ダイレイタンシーといった語句の理解、一軸試験でわかること、各杭基礎の基本特性などの、土質基礎に関するごく基礎的な知識を問います。
     
  2. コンクリートに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

    (1) コンクリートのクリープ係数とは、コンクリートに生じる弾性ひずみに対するクリープひずみのことを指し、クリープ係数が大きいほどプレストレスの損失は大きくなる。
    (2) 高強度コンクリートの実用的な製造方法として、高性能AE減水剤を用いる方法がある。

    (3) 細骨材率とは、コンクリート中の粗骨材と細骨材の絶対容積比の百分率のことを指し、適切なワーカビリティーが得られる範囲内でコンクリート強度が大きくなるようこれを定めることが基本である。

    (4) アルカリ骨材反応の抑制対策には、安全と認められる骨材の使用、低アルカリ形セメントの使用、抑制効果のある混合セメントの使用、コンクリート中のアルカリ総量の抑制がある。

    (5) レイタンスとは、コンクリートのブリーディングに伴い、表面に浮かび出て沈殿したもののことを指し、新旧コンクリートの打継目の施工においては、レイタンスを除去してから新コンクリートを打ち継ぐことが必要である。


    解答案:3

    (1)・・・・○ そのとおり。・・・・なんだろうなあ。
    (2)・・・・○ そのとおり。
    (3)・・・・× 細骨材/粗骨材の分母が怪しい・・・・と思ったらその通り。細骨材/全骨材。
    (4)・・・・○ そのとおり。【参考:こちら
    (5)・・・・○ そのとおり。これを怠けるとコールドジョイントができる。
    ※「率」で分母が全体でなく当該対象以外のもの、というのは怪しいという常識でも当たりはつきますが、知ってないと苦しいでしょう。
     
  3. 日本の都市計画法に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

    (1) 準住居地域は道路の沿道としての地域の特性にふさわしい業務の利便の増進を図りつつ、これと調和した住居の環境を保護するため定める地域とする。

    (2) 施行予定者が定められた都市施設に関する都市計画は、これを変更して施行予定者を定めないものとすることができない。

    (3) 市街化調整区域においても地区計画を定めることができる。

    (4) 都道府県知事は、都市計画法第53条に基づいて建築許可が申請された場合、階数が2以下で、かつ、地階を有せず、さらに、主要構造物が木造、鉄骨造、コンクリートブロック造その他これに類する構造である場合のみ許可できる。

    (5) 都市計画地方審議会は、都市計画に関する事項について、関係行政機関に建議することができる。




    (1)・・・・○ そのとおり。【参考:こちら
    (2)・・・・○ そのとおり。都市計画法第11条の6
    (3)・・・・○ そのとおり。【参考:こちら
    (4)・・・・× 「のみ許可できる」ではなく「許可しなければならない」。【参考:こちら
    (5)・・・・○ そのとおり。都市計画法第77条

    ※都市計画に関しては、「Echoの宅建○×問題1000本ノック」こちら)がお勧めです。
     このサイトの都計法に関する記載をひととおり読めば、都市計画に関する設問はほぼOKだと思います。 
  4. 河川・砂防・海岸に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

    (1) 弱混合型の塩水遡上形態とは、「塩水くさび」と呼ばれるくさび状の塩水が淡水の下に進入して明瞭な二成層をなしている形態であり、潮位変化の小さい河川で出現することが多い。

    (2) アーチ式ダムは重力式コンクリートダムよりも、竪硬で強固な基礎岩盤を必要とする。

    (3) 土石流の発生が予想される渓流では谷の出口に砂防ダムを計画するとともに、下流に計画される流路工は現況流路の平面形状を維持し、大きく変更してはいけない。

    (4) 地盤伸縮計は、地盤の移動が顕著になった地すべり斜面に現れた亀裂をはさんで設置し、地表の圧縮量あるいは引張量を計測するものである。

    (5) 離岸堤は、汀線から離れた沖側の海面に、汀線とほほ平行に設置される構造物であり、消波効果を目的とするものや離岸堤背後への堆砂効果を目的とするものがある。

    解答案:3

    (1)・・・・○ 弱混合型の形態はそのとおり。日本海側に多い。潮位変化との関係が選択肢のとおりかは不明。
    (2)・・・・○ そのとおり。ダム事態が軽いので、周囲の岩盤にふんばらなくてはならない。
    (3)・・・・? 断面を大きめに変更したほうがいいのでは?
    (4)・・・・○ そのとおり。
    (5)・・・・○ そのとおり。
    ※選択肢(3)は問題ありです。「大きい」がサイズなのか変更の程度なのかわかりにくくなっています。 
  5. 港湾・空港施設の計画・設計・施工に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

    (1) 耐震強化岸壁は、通常は国際海上コンテナターミナルに限定して計画され、大規模地震による被災時に、地域の経済活動を支えるために必要な当該港湾の物流機能を確保することを目的としている。

    (2) 環境影響評価法においては、政令で定めるところにより、一定規模以上の公有水面の埋立ては第一種事業となる。

    (3) 防波堤の天端高は、一般に、朔望平均満潮面に当該防波堤の安定計算に用いる波高を基準とした所要の余裕を加えた高さとすることが多い。

    (4) 控え杭を有する矢板式係船岸の施工においては、一般に、タイロッドを取り付けずに裏込め、裏埋めを施工することはない。

    (5) 空港のエプロンの設計に当たっては、一般に、航空機の駐機方式、航空機間の間隔、航空機と固定障害物との間隔、転移表面等を考慮する必要がある。


    解答案:1

    **********皆様からの情報・ご指摘*****伏龍さんに情報をいただきました。ありがとうございます。
    @耐震強化岸壁は,「地震発生の可能性」「被災した場合の経済社会影響度」を考慮し,一般埠頭,国際海上コンテナターミナル,多目的外資埠頭,複合一貫輸送対応の内貿ターミナルを対象に計画される.(港湾工学より)
    B防波堤の天端高さは,朔望平均満潮面上,防波堤の安定検討に用いる有義波高の0.6倍以上の適切な高さをすることを標準とする.(港湾施設の技術基準より)
    **********

    ※「国際海上コンテナターミナルに限定」というところが間違いでした。択一セオリー的
    な問題です。落ち浮いてきちんと読めば勘付くことができます。 
  6. 電力土木設備に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

    (1) 水力発電所の経済性評価に費用(C)と便益(V)を比較するC/V手法が用いられるが、個別地点の開発規模は(V−C)を最大とするものに決め、開発順位は投資効率のよい、すなわちC/Vの小さい地点を優先することが基本である。

    (2) 水力発電所の理論出力P(kW)は、流量をQ(m3/sec)、有効落差をHe(m)とすると、下式のとおりとなる。
        P=9.8・Q・He

    (3) 埋設水圧鉄管の設計においては、鉄管に作用する全内圧を鉄管のみで負担させる方法と周辺の岩盤に一部内圧を負担させる方法がある。

    (4) 火力・原子力発電所の放水口の形式は、周囲水との希釈混合が比較的少ない水中放水方式と周囲水との混合を目的とする表層放水方式に大別される。

    (5) 石炭火力発電所で回収されるフライアッシュは、セメント混和材、セメント原料などに利用される。


    解答案:4

    (1)・・・・○ そのとおり。
    (2)・・・・○ そのとおり。
    (3)・・・・○ そのとおり。
    (4)・・・・× 水中放水は、温排水が放水口から浮上する過程で周囲水を巻き込みながら急激に水温低下するため温排水拡散範囲は小さくなる。
           【参考例:こちら】 よって、むしろ周囲水との混合が多くなる。
    (5)・・・・○ そのとおり。
    ※知らないと解けません。なかなかむずかしい問題です。 
  7. 道路に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

    (1) 基本交通容量は、交通容量を低下させる種々の要因を考慮して可能交通容量を補正して求める。

    (2) 自動車起終点調査(OD調査)とは、自動車交通の実態を、交通量、起終点、貨物、乗車人員の量など交通の内容について多面的にとらえることを目的とした交通調査である。

    (3) アスファルト舗装の基層の役割は、路盤の不陸を整正し、表層に加わる荷重を路盤に均一に伝達することである。

    (4) 道路構造令に定める設計速度の最高値は120km/hである。

    (5) 排水性舗装は、雨天時の事故防止対策として有効であるだけでなく、道路交通騒音を低減する効果がある。

    解答案:1

    (1)・・・・× 基本交通容量と可能交通容量が逆。
    (2)・・・・○ そのとおり。【参考例:こちら
    (3)・・・・○ そのとおり。
    (4)・・・・○ そのとおり。
    (5)・・・・○ そのとおり。【参考例:こちら
    ※交通容量(基本・可能・設計)の定義を知っているかどうかですね。 
  8. 鉄道に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

    (1) トンネルの建築限界外には、電灯、電線等の設置に必要な余裕を設ける。

    (2) 鉄道の橋りょうには、物件の落下を防止するための防護設備を設ける。

    (3) 他の条件が同じであれば、木まくらぎ区間とPCまくらぎ区間では木まくらぎ区間の方が張り出し事故が起きやすい。

    (4) 保守経費の削減のため、無道床橋りょうに分岐器を設けた。

    (5) 地形上やむを得ないと判断し、本線の曲線半径を200mとした。

    解答案:4

    (1)・・・・○ そのとおり。
    (2)・・・・○ そのとおり。
    (3)・・・・○ PCまくら木は道床抵抗が大きい。【参考:こちら
    (4)・・・・× 無道床橋りょうには分岐器を設けてはいけない。目的が経費節減というのがすでに怪しい。
    (5)・・・・○ 本線で地形上やむをえない場合、最小曲線半径を100mまたは160mにできる。
    ※知らないと歯が立ちませんね。
  9. トンネルの覆工コンクリートの施工に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

    (1) 坑口部の覆工コンクリートには、鉄筋による補強を行い、インパートを設置した。

    (2) アーチ部のコンクリートは、コンクリートポンプを用いて天端よりトンネル軸方向に流すように打設してはならない。

    (3) コンクリートは、型枠に偏圧をかけないように、左右対称に打ち上げ、コールドジョイント等を生じさせないように、連続して打ち込まなければならない。

    (4) 締固めに当たっては、側壁部は棒状バイブレーター、アーチ部は型枠バイブレーターを使用して、十分に締め固めなくてはならない。

    (5) 一般に、覆工コンクリートは、変位を早期に収束させるためにできるだけ早く打設しなければならない。

    解答案:5

    **********皆様からの情報・ご指摘*****ずけさんに情報をいただきました。ありがとうございます。
    解答は(5)です。「変位を早期に収束させるために」の部分が誤りで、覆工コンクリートは変位が収束したのを確認してから打設するのが原則です。
    **********

    ※ずけさん、ありがとうございました。 
  10. 土木構造物の施工に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

    (1) きめ細かな施工計画を策定するためには.設計条件を決定するための事前調査の他、埋設物など工事に直接関係する調査や地盤変状など施工による影響の調査を行うことが望ましい。

    (2) 高架橋支保工の施工に当たっては、施工中に発生する変位を予測し、必要な上げ越し処置を行うとともに、コンクリート打設中は変位量の測定及び点検を行い、安全性を確認する必要がある。

    (3) 市街地における仮土留工のヒービングに対する対策は、地下水位を下げ湧水の減少を図ることであるが、地盤変状を引き起こすおそれもあるので、この対策も講ずる必要がある。

    (4) 地盤改良工法においては、工程と品質及び出来形の仕様に重点をおいた施工計画をたて、沈下や安定を管理するために必要な観測と改良効果の確認を実施することが大切である。

    (5) リバースサーキュレーション工法は、静水圧のみによって孔壁保護をしているため、循環水の比重及び流速の管理や掘削速度の管理など施工管理を徹底しないと、孔壁崩壊を起こす危険性がある。

    解答案:3

    (1)・・・・○ そのとおり。
    (2)・・・・○ そのとおり。
    (3)・・・・× ヒービングは粘性土地盤のせん断強度不足により起こるもので、地下水位はあまり関係ない。
    (4)・・・・○ そのとおり。
    (5)・・・・○ そのとおりだと思う。要は調査ボーリングと似たような感覚。
    ※ヒービング・盤ぶくれ・ボイリングは根切り工事における地盤変状3セットとして覚えておきましょう。 

(2−2)記述問題
 次の11問題のうち3問題を選んで簡明に解答せよ。(3枚綴りの答案用紙を使用し、問題ごとに用紙を替え、解答問題番号を明記し、それぞれ1枚以内にまとめよ。)
 

  1. 壁体に作用する土圧の種類を3つ挙げ、その大小関係を示し、それぞれの土圧を壁体の変位に着目して述べよ。
     
  2. 鋼構造物の防錆方法である塗装について、塗膜が防錆効果を発揮する理由を2つ述べよ。また、塗装以外の主な防錆方法を2つ挙げ、その特徴を述べよ。
     
  3. 都市計画法第7条第2項で定める市街化区械の定義を述べよ。また、都道府県知事が市街化調整区域内での開発を許可できるのはどのような場合か。要件を4項目列挙せよ。
     
  4. 河川に求められる様々な自然的・社会的要求を満たすために必要な河川の正常流量を定める際に考慮すべき項目を列挙し、それぞれの項目について内容を簡潔に述べよ。
     
  5. 港内静穏度に影響を与える波浪に関する要因を4つ以上挙げ説明せよ。
     
  6. 水力発電所の形式を落差を得る方法により3つに分類し、その各々の特徴について述べよ。
     
  7. 有料道路のインターチェンジの位置を選定する際に考慮すべき事項について、整理して述べよ。
     
  8. 鉄道駅におけるバリアフリー化を考慮した施設整備について述べよ。
     
  9. 市術地の開削トンネルにおける仮設構造物の設計に当たって、考慮すべき荷重の種類とその内容について述べよ。
     
  10. 公共工事における積算基準の公表の意義について述べよ。
     
  11. 「建設事業における自然環境への配慮」の考え方について、建設事業のコスト縮減との関係を踏まえて述べよ。