2-1--------------------------------------------------------- 基本的に、化石燃料の大量消費の上に成り立つ従来の科学技術社会の限界(宇宙船地球号)と、循環型社会の必要性、さらに多様な文明進化のあり方を認めて模索していくことの重要性を述べています。困ったことに、選択肢はいずれも抽象的であり、どれもがそれなりにうなずけるものばかりです。 選択肢(1)がもっとも掲載文の内容をストレートに要約しており、(2)と(3)は「間違いではないが、ちょっとニュアンスの違うものが含まれている」程度で、「取り方の違い」と言えなくもない内容です。 ですから、「どれが最も適切か」と言われれば(1)でしょう。(2)と(3)は「間違いではないけれど、(1)ほど適切ではない」という意味で△程度と思われます。「どれが適切化」と聞いている設問なら(1)〜(3)が全部正解で、出題ミスといえますが、「最も」と入っているので、「ミス」と言えるほどのものにはなっていません。 結局、極めてあいまいで、不適切な出題といえるでしょう。 (1) ・・・・○  文章の内容をストレートに要約しているのは(1)でしょう。 (2) ・・・・△  間違いとはいえません。(1)のような認識の上にたって、我々技術者が今後どうすべきかを考えると、(2)はまさにそうである、ともいえます。「社会システムの構築」が引っかかりますが、広く解釈すれば、文明進化の多様性を認識し、自国にあった進化スタイルを模索しようというコンセンサスが得られている社会の構築、という考えも含まれるでしょう。 (3) ・・・・△  「有限な地球」という考えは、脆弱感という取り方ができなくもありません。また、循環系の中にいるということは、連鎖にもつながります。そして自国独自の進化スタイルがあってもいいじゃないかという思想は、自国文明の優先感といえなくもないでしょう。ただ、異質なものへの寛容という視点でみれば、どちらかというと反目する面もあります。 (4) ・・・・×  これは、「地球資源の収奪」と「発展途上国への価値観押し付け」については、掲載文の認識の上にたって欧米価値観を厳しく見ればそのとおりです。ただ、「マクロの循環重視」というのは間違いですね。化石燃料大量消費社会には、「循環」という思想はありません。 (5) ・・・・×  「地球資源の有効利用」、「循環型システムの活用」はそのとおりでしょうが、「先進国の価値観優先」は、明らかに掲載文の思想に反します。 A1 2-2--------------------------------------------------------- 掲載文には、単なる師弟関係を超えた人間同士の信頼関係、自ら第一線に立ち行動すること、そして工学が貢献すべきものとして、効率化により、人の内面性を磨く時間を作り出すことがあるといったことが述べられています。 これも「最も不適切なもの」を選ぶので、「△より×が不適切」みたいな話になり、あいまい問題で、あまり良質とは言えませんね。 問題2−1とともに、非常に内面的な、そして抽象的な側面を持つ問題です。 技術者に「倫理」が必要であることは論を待ちませんが、これは「規範」です。意識レベルにあるのがモラルと常識(=共通意識)で、これが源泉となって規範が発生します。規範レベルには倫理と法があります。すなわち、モラルから倫理が、常識から法が発生します。なお、モラルと倫理をあわせて広義のモラルともします。(テキスト4p.4、テキスト6p.2など) 規範 倫 理   法  ↑  ↑   ↑ 意識 モラル  常 識 ここいおいて、規範は「人それぞれ」であるべきではありません。「社会の決まりごと」なのです。ですから、倫理は主に体系的に構築されていますし、それに基づき正誤判断ができます。ですから、○×式問題にすることもできます。 しかし意識レベルにあるモラルと常識は、「人それぞれ」の部分が多々あります。つまり多様性があります。だから、どれが正しくてどれが間違いという、「一つの価値観での正誤判断」にはなじまず、○×式の択一試験には向かないと思います。特に問題2−2は「プロジェクトXを見て、賛同しろ。」と言われているようで、出題者の独善性さえ感じてしまいます。出題者は、モラルと倫理、意識と規範の違いをちゃんと認識していないのではないかという気もします。 問題2−1で価値観の多様性を言いながら、単一の価値観による正誤判断をするあたりは、ブラックジョーク的でさえあり、モラルと倫理の区別がついていないという点で、適性科目始まって以来の愚問・悪問といえるでしょう。こういった「愚問」が18年度以降はなくなることを期待したいと思います。 ・・・・などと私が言っても仕方ないのですが。^^; (1)・・・・△  それは確かに読み取れますが、明記されているものではなく、「正しい」とは断定できないでしょう。「そんなこと書いた本人しかわからんじゃないか!」と言われたら反論できませんからね。 (2)・・・・△  人間的な信頼・精神的結びつきがあったことは明記されていますが、それが創造力の厳選となったと言い切ることができるのでしょうか。つまり、「広井の創造力の源泉は、たとえばインフラ整備に対する強い使命感や、自己実現インセンティブなどではなく、師弟関係における人間的な信頼・精神的結びつきであった」と判断できるのでしょうか。元来技術者は、客観的証拠に基づいて判断していくべきものです。その点で、この選択肢に書いてあることは非常に主観的な判断ですね。「適切である」(○である)とはとても言えません。「明らかな間違いとは言えない」(×とは言えない)というだけです。 (3)・・・・△  広井がクリスチャンだなどとはどこにも書いてありません。ケチをつけるのでは決してなく、国家試験の択一問題として不適当です。「広井がクリスチャンである」ということを受験生の前提知識(それぐらい知ってなきゃ駄目だよ)とするなら別ですが。また、「人間に帰る」というのも非常に抽象的で、まるで哲学ですね。それでは仕事に忙殺される日々は「人間ではない」ということになります。ここでも価値観の押し付けが見られます。 (4)・・・・○  これはその通りです。掲載文の情報だけから判断できます。 (5)・・・・×  出題者が言いたいことは十分わかりますが、もし文末が「あまり意味はない」だったら、△です。「何の意味もない」とあるので、この掲載文に書いてあるようなことを伝える、という意味で間違いと判断できます。しかしこの選択肢も価値観の押し付けにすぎません。「最も不適切」なのはこの問題自体でしょう。 A5 2-3--------------------------------------------------------- 「最大多数の最大幸福をもたらすものが善である」という考え方を功利主義といいます。(テキスト1p.87、テキスト4p.109、テキスト5p.95など) A2 2-4--------------------------------------------------------- これは文脈から明確にわかるでしょう。 A5 2-5--------------------------------------------------------- ソフトローは倫理、ハードローは法と言うこともできます。 ア)・・・・恣意  倫理は規範、つまり「社会の決まりごと」であることを理解していれば、「人それぞれ」ではいけないことがわかります。 イ)・・・・利益享受  基本的に「いいこと」なのですが、どれも当てはまらないとはいえません。しかし(ア)で確定しているので、迷うことはないでしょう。 ウ)・・・・経済的不利益  自律的なものである以上、「制裁」などではないことはわかります。 A5 2-6--------------------------------------------------------- サイトで散々書いてきた事例がもろに掲載されましたね。説明はこちら(技術者倫理用語集)をお読みください。テキスト1p.182、テキスト5p.50などにも記載があります。 A3 2-7--------------------------------------------------------- トピックからの出題ですが、まだ捜査中で判決が出ていない事件に対して、処罰の妥当性や責任の所在に関する正誤判断をするとは、かなり思い切った(悪く言えば独善的な)出題です。率直に言って、取り上げるのは時期尚早と思いますが・・・・ ア)・・・・○  倫理の知識うんぬんではなく、感覚的にも当然です。 イ)・・・・×  コンプライアンスとは、こういう行為を許すものではありません。会社には違法行為を社員にさせない責任が、社員には違法行為をしない責任があります。 ウ)・・・・○  その通り。 A3 2-8--------------------------------------------------------- ア)・・・・×  倫理規程に「業務を適切に評価し、積極的に見解を表明する」とありますので、誤りです。この種の事件は、積極的に情報を公開するのが原則です。 イ)・・・・×  推論からのある程度の特定(推定)であり、確かな証拠はないという内容を公開すべきであり、「特定不可能」という結論付けは、「適切な評価」という倫理規程に反します。 ウ)・・・・×  批判への誠実な対応をしようとしていません。倫理規程に反します。 A5 2-9--------------------------------------------------------- 技術士倫理要綱をおさらいしておきましょう。 技術士倫理要綱(昭和36年3月14日理事会制定、平成11年3月 9日理事会改訂)  技術士は、公衆の安全、健康および福利の最優先を念頭に置き、その使命、社会的地位、および職責を自覚し、日頃から専門技術の研鑽に励み、つねに中立・公正を心掛け、選ばれた専門技術者としての自負を持ち、本要綱の実践に努め行動する。 (品位の保持)    1.技術士は、つねに品位の保持に努め、強い責任感をもって、職務完遂を期する。 (専門技術の権威)  2.技術士は、つねに専門技術の向上に努め、技術的良心に基づいて行動する。また、自己の専門外の業務あるいは確信のない業務にはたずさわらない。 (中立公正の堅持)  3.技術士は、その業務を行うについて、中立公正を堅持する。 (業務の報酬)    4.技術士は、その業務に対する報酬以外に、利害関係のある第三者から、不当な手数料、贈与、その他これらに類するものを受け取らない。 (明確な契約)    5.技術士は、業務を受けるにあたり、事前に相手方に自己の立場、業務の範囲などを明確に表明して契約を締結し、当該業務遂行上両者間で紛争が生じないように努める。 (秘密の保持)    6.技術士は、つねにその業務にかかる正当な利益を擁護する立場を堅持し、業務上知り得た秘密を他に漏らしたり、または盗用しない。 (公正、自由な競争)  7.技術士は、公正かつ自由な競争の維持に努める。 (相互の信頼)  8.技術士は、相互に信頼し合い、相手の立場を尊重し、いやしくも他の技術士の名誉を傷つけ、あるいは業務を妨げるようなことはしない。 (広告の制限)    9.技術士は、自己の専門範囲以外にわたる事項を表示したり、誇大な広告はしない。 (他の専門家等との協力) 10.技術士は、その業務に役立つときは、進んで他の専門家、あるいは特殊技術者と協力することに努める。 ア)・・・・×  要はゴーストライターですね。名誉をお金で売ってはいけません。倫理要綱6に反します。また公正業務原則あるいは同業発展原則(テキスト6p.6)に反します。 イ)・・・・×  公衆優先原則(テキスト6p.6)に反します。このような、公益確保の責務と守秘義務がトレードオフになった場合、契約の重要性や、「義務>責務だろう」といったことから、守秘義務>公益確保と判断される人もおられますが、原則は公益確保>守秘義務です。なお、このことは、守秘義務を犯しても公益確保を選択するという行動を、軽々しくとってもいいということには断じてなりません。  しかしこの選択肢、おそらく作成したのは7月〜8月でしょうが、そのわずか4〜5ヶ月先に起こることを見通したかのような問題ですね。^^; ウ)・・・・×  ソフトのノウハウは頭の中にあるので、それを守秘義務等で制限するのは難しい側面がありますが、ソフト設計資料を持ち出すのは論外です。守秘義務に反します。「守秘義務を犯しても公益を確保する」というのとは全く違います。この行動の目的が利己であるからです。 A3 2-10-------------------------------------------------------- 二律相反(利益の相反)の問題です。これについてはこちら(技術者倫理用語集)を参考にしてください。二律相反の最も適切な解決法と言われるものには、「創造的第3の解決法」があります。これは、どちらの利益のみを優先することもできないとき、両利益の要求事項のいくつかを取り込んだ中間的な第3の選択肢を取るというものです。 ア)・・・・×  これでは両立に対する努力を放棄したことになります。 イ)・・・・○  即時に解決できなくても、相反解消に向けて継続的に努力することが大切です。 ウ)・・・・○  「創造的第3の解決法」に近い、もっとも理想的な解決法の方向と思われます。臨時掲示板では、「住民負担が残るのは×」「勝手に決めちゃ駄目」などの意見があるようですが、「住民負担はゼロにして会社が全部かぶる」のは、健全な社会のあり方ではありません。また、「問題の再検討を行う」のであって、もう決めてしまっているわけでもありません。検討結果によって、たとえば平常時は船で運搬、天候不良などで運搬船が確保できないときはトラック運搬など、客観的な折衷案が出てくるものと期待できます。また、ここでの判断は、会社の経営者としてではなく、技術者としての判断の良否を問われているということもよく頭に入れておく必要があります。(経営者としては適切な判断でも、技術者としてはそうではない場合もあります) エ)・・・・×  これでは両立になりません。いくら住民のためになるといっても、会社の利益や社会的責務を考慮しなくてもいいことにはなりません。 A4 2-11-------------------------------------------------------- ア)・・・・○  法第1条に定められているとおりです。 イ)・・・・×  最後の部分が違います。環境の保全や公正な競争の確保、消費者の利益の擁護なども対象となります。(法第2乗)。 ウ)・・・・×  法第4条(労働者派遣契約の解除の無効)によって、派遣労働者にも適用されています。 エ)・・・・○  法第9条に、記載のとおりのことが定められています。 A2 2-12-------------------------------------------------------- (1) ・・・・×  個人情報とプライバシー情報は違います。 (2) ・・・・×  照合等により、容易に個人が特定できれば、個人情報です。 (3) ・・・・×  事業の用に供する個人データによって識別される人数が5,000人以下の事業者は「小規模事業者」とされ、法の適用除外となります。 (4) ・・・・○  その通り。個人情報取扱事業者の「5つの義務」のうちの1つで、法第17条(適正な取得)に定められています。  細かい話ですが、「個人情報取扱業者」ではなく、「個人情報取扱事業者」です。ただ、他が明らかな誤りなので、出題ミスとまでは言えませんが・・・・ (5) ・・・・×  法第20条(安全管理措置)に定められています。 A4 2-13-------------------------------------------------------- ア)・・・・○  その通りですが、ちょっとマニアックですね。文脈から正しいだろうことはわかりますが・・・・ イ)・・・・○  その通りですが、「規定」ではなく「規程」です。この誤字を理由にイを×と判断し、(3)を選んだ受験生もいるので、本来は出題ミスとして処理すべきだとおもいます。 ウ)・・・・○  その通り。内部告発制度(公益通報者保護)に関しては原子力は先進です。 エ)・・・・○  その通り。 A5 2-14-------------------------------------------------------- ア)・・・・×  椅子に手を添えて座るという行為は、十分に通常の使用範囲ですから、責任はあります。欠陥があること、そしてそれでケガをしたこと、この2つがあれば、PL法適用条件は満たされます。 イ)・・・・○  その通りです。安全性が十分確保されないなら、それに関する十分な警告が必要です。 ウ)・・・・×  欠陥のある製品を製造した者の責任は免れません。 エ)・・・・○  その通り。警告がないことも「欠陥」であり、「警告書きがないのは欠陥品」と言えますから、正しい記述です。 A2 2-15-------------------------------------------------------- 1) ・・・・○  その通り。説明の必要はないでしょう。 (2) ・・・・○  その通り。業務内容の専門性・重要性が高くなるほど、こういった問題は重要視されねばなりません。 (3) ・・・・○  その通りですが、知っていなければならない知識かどうかは別問題です。問題文だけからは、この選択肢の正誤は判断できませんので、ちょっと適切さに書ける選択肢ですね。  臨時掲示板の中には、「安易な受け入れは国内の医療や介護の水準低下を招く」という主張が不適切であるという意見もありますが、その内容の適否ではなく、そういう主張があったという事実の正誤ですから、そのような意見はズレています。なお、この主張の中には、言語や文化の違いによるコミュニケーション不足から来るケアの不十分さも含まれているので、100%間違いと言い切ることもまた危険です。もちろん、このような主張の背景に既得権益維持という思惑が働いていないと言い切ることはできませんが・・・・ (4) ・・・・×  日本の看護師の労働条件低下とは言い切れません。日本の看護師が不足し、過酷な労働条件にあることはよく知られています。また、こういったことが憲法違反につながることはありません。 (5) ・・・・○  その通り。「ないと駄目」というものではありませんが、不必要なものでもありません。 A4