技術士第一次試験 専門科目演習問題(建設環境)


 次の30問について、それぞれ正しい記述であれば○、誤った記述であれば×を解答欄に記入せよ。

  1. 環境影響評価法では、開発等行為について、その事業の種類と規模に応じて第一種事業と第二種事業を定めている。第一種事業は必ず環境影響評価を行わなければならない事業であり、第二種事業はスクリーニング手続きによって環境影響評価実施の要否を決定する事業である。

  2. 高速自動車国道の新設は、その規模にかかわりなく、すべてが環境影響評価法の適用事業となる。

  3. 第二種事業でスクリーニングの結果、環境影響評価法適用対象外と判定された事業は、環境影響評価を行う必要はない。

  4. 環境影響評価法対象事業においては、環境影響評価の計画策定に際して、まず計画書と呼ばれる書類を作成し、これに対する地方自治体・住民の意見を聞き、これに配慮して環境影響評価の方法を決定することとされており、これを一般的にスコーピング手続きという。

  5. 環境影響評価法では、環境影響評価に関して住民が意見を述べる機会は、方法書・準備書に対して計2回ある。

  6. 環境影響評価法では、大気汚染に関する予測評価は、有風時プルーム式・無風時パフ式を使用した拡散計算を行うことと規定されている。

  7. 大気汚染にかかわる環境基準は、窒素酸化物と硫黄酸化物の2つについて定められている。

  8. 富栄養化の指標の1つとして、生物化学的酸素要求量(海域や湖沼に適用)と化学的酸素要求量(河川に適用)がある。

  9. 環境影響評価の現況調査として季別に4回のBOD測定を実施した場合、予測評価における現況値としては実測値の平均値を用いるのが妥当である。

  10. 安定型産業廃棄物処理場の開発計画がある。排水系統として、敷地内の表流水や伏流水を鏡面排水施設や暗渠などで集め、敷地内の沈砂池を兼ねた調整池に流入させ、この後河川へ放流する計画となっている。この処理場の環境影響評価を行う場合、水質汚濁の予測評価を行う場所としては、@敷地内調整池への流入地点、A敷地内調整池、B敷地内調整池の排水口、C敷地内調整池から河川などに放流する地点 のうちでは、Bが適当である。

  11. 騒音レベルの環境基準や規制値には、時間率騒音レベルと等価騒音レベルが用いられている。特定工場や特定建設作業の騒音レベル規制値に用いられているのは時間率騒音レベルである。

  12. 騒音にかかわる環境基準は、都道府県知事が指定する地域に適用され、地域区分と、時間帯区分によって値が異なっている。

  13. 道路交通騒音の予測評価手法として、ASJ Model1998がある。これは1台の自動車の騒音レベルの時間変化(ユニットパターン)を求め、これを積分することにより、道路交通騒音の時間率騒音レベル中央値L50を求めるものである。

  14. 道路交通振動の予測評価手法として「土木研究所式」といわれる計算式があるが、これは、交通量・走行速度等を考慮して道路上に車を仮想的に配置し、それぞれの振動源からの振動伝播を、距離減衰を基本に地盤卓越振動数や道路構造による補正を加えて計算し、これを積分するものである。

  15. 都市計画用途区域では、騒音規制法および振動規制法により、騒音・振動それぞれの環境基準が定められている。

  16. 地球温暖化を引き起こす温室効果ガスは二酸化炭素だけではなく、メタンやフロンも該当する。

  17. 温暖化ガスの1つであるメタンは農業地域からの排出が多く、家畜の「げっぷ」も発生源の1つだといわれている。

  18. 温室効果ガスは、太陽照射で暖められた地表から放出される赤外線を透過させずに反射するため、熱が地表に戻って気温を上昇させ、地球温暖化に至ると考えられている。

  19. 地球温暖化の結果、北極海の氷が融けて海水となることを主な原因に、その他、氷河が融けて海に流入、海水自体の熱膨張といったことにより、海水面が上昇すると予測されている。

  20. 地球温暖化の進行をうけて、1997年に京都で「気候変動に関する国際連合枠組み条約第3回締結国会議」が開催され、具体的な温室効果ガスの排出削減を定めた「京都議定書」が採択された。この中で我が国は、2008〜2012年の間に、1990年の水準比6%の温室効果ガス排出削減を行うことを世界に約束した。

  21. オゾン層破壊を食い止めるため、1990年にロンドンで開催されたモントリオール議定書第2回締結国会議においてフロン全廃が決定され、1996年以来フロンの生産は打ち切られた。その後オゾンホールも縮小し、現時点ではオゾン層破壊は終息したと考えられている。

  22. 酸性雨の特徴の1つとして、原因物質が排出源から数千kmも離れた地域に運ばれる越境汚染がある。日本でも、中国の工業地帯から排出された硫黄酸化物を原因物質とした酸性雨が問題になっている。

  23. 有害廃棄物の輸出は、ワシントン条約によって規制されている。

  24. 生物多様性国家戦略では、人間の活動・開発が直接的にもたらす種の減少・絶滅・生息域の縮小・消失と、移入種による生態系撹乱とともに、農業衰退等に伴う里山環境変化も生物多様性の危機として認識されている。

  25. ミティゲーションでとられる措置には回避・低減・代償があるが、大型獣類の通り道を道路で分断する場合に、獣道トンネルを設置することは、代償に該当する。

  26. ミティゲーション技術の中には、防音壁やばい煙除去装置なども含まれる。

  27. 自然再生推進法は、行政が強力なリーダーシップを発揮して、NPOなど地域の多様な主体の協力のもとで、河川・湿原・干潟・里山などの自然環境を保全・再生・創出・維持管理することを求めている。

  28. ビオトープの定義にはいろいろなものがあり、まったく人為的干渉を受けていない自然環境から、盆栽までがビオトープとして定義されうる。

  29. 土壌汚染対策法では、土壌汚染が確認された場合、環境大臣は、土地所有者(汚染原因者が明らかな場合は汚染原因者)に対して汚染除去等の命令を出すことができる。

  30. ダイオキシンの毒性は非常に強く、かつ即効性であるため、化学兵器として使用されたこともある。

<正解>


  1. そのとおり。


  2. そのとおり。高速自動車国道・首都高速道路等の道路事業および新幹線鉄道、原子力発電所については、その規模にかかわりなく、すべてが環境影響評価法の対象となる。

  3. ×
    環境影響評価法の対象とはならないだけであって、各々の事業申請等に伴って、環境影響評価は必要であることが多い。

  4. ×
    計画書ではなく、方法書である。それ以外の記述は正しい。


  5. そのとおり。
  6. ×
    予測評価手法はもとより、予測評価を行う項目についても規定はなく、地域状況・事業内容・行政や住民の意見をもとに、事業ごとに定めることとされている(オーダーメイド方式)。

  7. ×
    窒素酸化物と硫黄酸化物のほか、一酸化炭素、浮遊粒子状物質、光化学オキシダントなどについても定められている。

  8. ×
    BODとCOD、あるいは適用水域が逆である。BODは河川、CODは海域・湖沼に適用される。

  9. ×
    75%値を用いるのが一般的である。たとえば実測値が0.5,0.6,0.7,0.8であれば、0.7を用いる。

  10. ×
    公有水面に排水する地点において、放流水の水質と、これが混合された後の公有水面の水質について予測評価を行うのが妥当である。


  11. そのとおり。等価騒音レベルは環境基準にのみ用いられ、規制値には使われていない。


  12. そのとおり。

  13. ×
    50ではなく、等価騒音レベルLAeqを求めるものである。

  14. ×
    交通量・車種構成・走行速度・車線数・距離・道路構造・地盤卓越振動数などから積分なしで算出する式である。

  15. ×
    振動の環境基準はない。


  16. そのとおり。その他に亜酸化窒素・対流圏オゾン・水蒸気などがある。


  17. そのとおり。

  18. ×
    温室効果ガスは、赤外線を反射するのではなく吸収する。こうして熱エネルギーが大気圏に蓄積されることが温暖化につながる。

  19. ×
    北極海の氷の溶融は、もともと氷山の大部分は水中にあるため、海水面の上昇への寄与はほとんどないといわれている


  20. そのとおり。

  21. ×
    地上で放出されたフロンがオゾン層に達するには10年以上かかるとされ、かなりの量のフロンがまだ大気中に存在しているため、オゾン層破壊はまだ終っていないと考えられている。


  22. そのとおり。

  23. ×
    ワシントン条約ではなくバーゼル条約である。


  24. そのとおり。

  25. ×
    低減に該当する。

  26. ×
    ミティゲーションは、開発の自然環境に対する影響を緩和する措置のことである。

  27. ×
    地域の多様な主体の発意に行政が参画するスタイルを求めている。


  28. そのとおり。

  29. ×
    環境大臣ではなくて都道府県知事である。

  30. ×
    ダイオキシンの毒性は強いが、即効性ではない。