技術士第一次試験 専門科目演習問題(河川、砂防及び海岸) 最終更新:2004.09.13

 次の35問について、それぞれ正しい記述であれば○、誤った記述であれば×を解答欄に記入せよ。

  1. 河川横断面の流れの平均流速を求める公式は、シェジー公式型と指数公式型に大別される。シェジー公式型の代表的なものはクッター公式であるが、今日ではあまり用いられていない。指数公式型の代表的なものはマニング公式V=1/n・R2/3・I1/2であり、現在ではほとんどこの式を用いるようになっている。

  2. 水文確率計算手法には様々なものがあるが、一般的な解法として、岩井法、順序統計学的方法(石原・高瀬法)、積率法(トーマス・プロット、ヘーズン・プロットなど)がある。

  3. 水底面にはたらくせん断力(掃流力)がある限界以上になると土砂の運動が始まるが、この限界のせん断力を限界掃流力とよび、掃流力がこれを超えて大きくなるほど大規模に砂礫が移動することとなる。

  4. 河川法は、河川について、洪水、高潮等による災害の発生が防止され、河川が適正に利用され、流水の正常な機能が維持されるようにこれを総合的に管理することにより、国土の保全と開発に寄与し、もつて公共の安全を保持し、かつ、公共の福祉を増進することを目的とするものである。すなわち、治水・利水を目的とした法である。

  5. 河川には一級河川・二級河川・準用河川があるが、河川法において「河川」として法の対象としているのは、一級河川と二級河川である。準用河川は、一級・二級河川以外の河川で市町村長が指定したものとして、二級河川に関する規定を準用することとされている。

  6. 河川区域は、左右岸の堤防にはさまれた区域、すなわち低水路、高水式および堤防高水護岸からなる。

  7. 河川管理者は、都市部など密集地域で河川拡幅などが困難であると判断される場合は、当該河川管理施設に係る河川区域を、地下に限って、一定の範囲を定めた立体的な区域として指定することができる。

  8. 河川区域に隣接した範囲について、河川管理者は必要に応じて「河川保全区域」の指定を行うことができる。この範囲は、原則として河川区域境界から50m以内であり、土地の掘削・工作物新築等について、河川管理者の許可が必要である。

  9. 計画高水流量を求める方法はいくつかあるが、中小河川では、流域面積に降雨量と流出係数を乗じてピーク流量を算出するタンクモデル法が一般的に用いられる。

  10. 河川堤防の高さは計画高水位に余裕高を加えたものである。余裕高は、計画高水流量によって標準の値が決められている。この標準の値は、最大で2.0m以上(流量10,000m3毎秒以上の場合)、最小で0.6m以上(流量200m3毎秒以下の場合)である。

  11. 計画高水位の決定に際しては、既往の最高水位に割り増し分を加えたものとすることを原則とする。

  12. 合流点付近の支川の計画高水位は、本川が計画高水位を示す時点での支川の合流量に基づく支川の高水位と、支川が計画高水流量を示す時点での本川水位に対して求めた支川水位のうち、いずれか高いほうをとって支川の計画高水位とする。

  13. 河川流量の時間変化を示したものをハイエトグラフ、降雨の時間変化を示したものをハイドログラフという。

  14. 低水護岸の設置目的は、高水敷河岸や堤内地の保護である。

  15. 内水の排水を容易にするため、また計画高水位が上昇しないようにするため、護岸などの維持に困難が生じない限り、計画河床高はできるだけ低くすることが望ましい。

  16. 霞堤は連続堤の一部を開放した不連続な堤防で、洪水を逆流させピーク流量を低減する効果がある。しかし洪水の継続時間が短い急流河川ではあまり作られない。

  17. 水制工は流水方向規制・流砂制御・水勢緩和を目的として、流向に対して平行に設置される。

  18. 水制には透過水制と不透過水制がある。後者は水制の中を流水が透過しないもので、非越流型と越流型に分けられる。越流型は流水が水制の上部を越えて流れるもので、杭打ち水制、砕水制、牛水制などがこれに属する。

  19. 固定堰は高さが低いので、基礎は岩着させずに砂礫層上に置くのが通常で、このような堰をフローティングダムという。フローティングダムでは、浸透水によるパイピングやクイックサンドといった現象に注意しなければならない。

  20. 可動堰には十分な水密性が要求されるため、多径間で設計する場合はできるだけ径間を小さくすることが肝要である。

  21. コンクリートダムには、アーチ式コンクリートダムと重力式コンクリートダムがある。アーチ式は構造物のアーチ作用により、また重力式は堤体断面のせん断耐力により、水圧等の力に耐えるように設計されている。

  22. フィルダムは岩石・砂利・砂・土質材料を材料として作るダムであり、基礎強さの制約は少なく砂礫基礎などでもよいが、遮水性・せん断強さ・パイピング抵抗性が要求される。

  23. ダム容量には、サーチャージ水位までの洪水調節容量、洪水期制限水位までの利水容量などがあるが、洪水調節容量のことを有効貯水容量ともいう。

  24. アーチ式コンクリートダムは、強固な岩盤が基盤として必要であり、特にアーチ下流側は十分な厚みの岩盤を必要とする。また、アーチ推力に対してすべる弱層がないことも重要な条件である。また、重力式コンクリートダムは、ダム高に応じた強度を有する岩盤基礎を必要とし、水平に近い断層や弱層に注意が必要である。

  25. 土石流は、水を含んだ土砂・岩石が大量に流出する現象であるが、粒子の質量と流下速度が比例するので、泥流型土石流に対して砂礫型土石流のほうが移動速度が速い。

  26. 土石流や地すべりには、「誘因」と「素因」がある。誘因は、土砂の堆積した急勾配の谷地形・地盤中の脆弱層などの地形・地質的特徴のように、土石流や地すべりが発生しやすい(誘発)要因をいう。また素因は、降雨に伴う地下水位の上昇や地すべり土塊下部での土砂切り取りなど、土石流や地すべりが発生する直接的要因をいう。

  27. 砂防ダムには不透過型ダムと透過型ダムがある。
    不透過型ダムは、ダム上流部に常に土砂を貯め、河床勾配を緩めることで土石流の流速を減らし、土砂を捕らえるものである。
    透過型ダムは、災害に至らないような中小の出水時は土砂を下流に流し、災害となる土石流が起きた時などに土砂を捕捉して効果を発揮するものであり、スリット型ダムが一般的である。

  28. 斜面において、地すべりクラックの可能性のあるクラックを発見した場合、地盤伸縮計による観測を行うことで、地すべりブロック中のどこに位置するクラックであるかを推定する資料となる。クラックが引張り変動を示せば地すべり頭部、圧縮変動を示せば地すべり末端部(舌部)に位置するクラックである可能性が高くなる。

  29. 地すべりの滑動状況として、比較的若い地すべりはクリープ性の変動を示すのに対し、すべり面のせん断強度が低下した古い地すべりでは、突然大規模な変動を生じたかと思うと、長期にわたって停止するなど、複雑な変動形態を示すことが多い。

  30. 地すべりと斜面崩壊(がけ崩れ)は似ているが、一般に地すべりのほうが移動速度が緩慢であるとともに、斜面勾配が緩く、また規模が小さいことが多い。

  31. 地すべりの安定解析計算を行うにあたっては、すべり面より上部のすべり土塊について、できるだけ多くの土質試料を採取してせん断試験を行い、総合的にせん断強度を決定することが望ましい。

  32. 地すべり対策は、まず杭やアンカーなどの構造物によって地すべりを止めることを考え、これでは効果が不十分である場合に、地下水を排除するなどの抑制工法を検討するという手順が一般的である。

  33. 海岸侵食は、護岸整備の進行、埋立地の増加などに伴い、近年は沈静化する傾向にある。

  34. 離岸堤は、消波・漂砂阻止・静穏域確保などの目的で作られるが、陸側に堆砂するので、海岸侵食対策には好適であるが、港湾区域内の船舶が航行する付近に設置することは不適当である。

  35. 津波対策を講じる時の計画潮位は、東京湾平均海面(TP)である。

<正解>


  1. そのとおり。シェジーの公式V=C(RI)1/2は、h=fL/d・V2/2gを基本式として作られたものですが、これに対してh=fL/dm・Vn/2g(ただしm≠1,n≠2)を基本式として作られた流速公式を、シェジー公式に対して指数公式といいます。(出典:「水理学詳説」〜丹羽健蔵、理工図書、p.83)

  2. ×
    順序統計学的方法と積率法が逆である(石原・高瀬法は積率法)。


  3. そのとおり。

  4. ×
    河川法は、治水(災害防止)・利水(河川の適正な利用・流水機能維持)に加え、「河川環境の整備と保全」も目的としている。H9改正で加わった。


  5. その通り。河川法は一級・二級河川を対象としており、準用河川については河川法第100条(雑則)に「二級を準用」としているのみである。

  6. ×
    河川区域は一般に、低水路・高水敷および堤防敷からなる。すなわち、堤防の堤内地側法尻までである。

  7. ×
    地下だけではなく、空間も指定可能である。


  8. そのとおり。

  9. ×
    「タンクモデル法」を「合理式」に置き換えれば正しい記述となる。


  10. そのとおり。

  11. ×
    計画高水位を高く設定することは、築堤高を高めることになり河川安全度を減少させることに加え、万一破堤すると堤体が高いほど被害も大きくなる。このようなことを考慮し、計画高水位の決定に際しては、既往の最高水位以上にならないことを原則とする。


  12. そのとおり。

  13. ×
    ハイドログラフとハイエトグラフが逆である。


  14. そのとおり。


  15. そのとおり。

  16. ×
    むしろ急流河川で多く作られる。

  17. ×
    目的は正しいが、設置は流向に対して70〜90°である。

  18. ×
    例示工法は透過水制で、流速を減少して土砂を沈殿させ、州をつけて河岸や堤防を保護するものである。


  19. そのとおり。

  20. ×
    径間を小さくすると堰柱が多くなって流水流下を妨げるとともに洪水時に流木が引っかかったりするので、可能な限り径間は大きくして堰柱の木阿須を少なくすることが望ましい。

  21. ×
    重力式コンクリートダムは、ダム堤体の自重で水圧等の力に耐えるように作られている。


  22. そのとおり。

  23. ×
    有効貯水容量とは、総貯水容量から堆砂容量を差し引いたものである(死水容量が設定されている場合は、それも差し引く)。


  24. そのとおり。

  25. ×
    泥流型土石流のほうが砂礫型土石流より移動速度が速い。

  26. ×
    素因よ誘因が逆である。素因は、土石流や地すべりが発生しやすい地形・地質的特長など、もともと有している要因であり、誘引は降雨に伴う地下水位上昇など土石流・地すべり発生の直接的な引き金となる要因である。


  27. そのとおり。


  28. 例外もあるが、一般論としてはそのとおり。

  29. ×
    逆である。地すべり形成当初はすべり面が形成されつつある段階であり、ひずみを貯めて一気に滑動するという断続的な変動を示すが、徐々にすべり面が残留強度を残すだけになってくると、常に緩慢に変動するクリープ性の滑動を示すようになってくる。

  30. ×
    地すべりは斜面崩壊に比較して、動きが緩慢・斜面勾配が緩い・規模が大きいなどの一般的特徴がある。

  31. ×
    地すべりは、すべり面のせん断強度に支配されているため、すべり面より上部のすべり土塊のせん断強度は基本的に無関係である。このことは、例えば間に潤滑油や石鹸水を塗った2枚の板を重ねて斜めに置いたときに、上にした板が滑り落ちるかどうかは、潤滑油や石鹸水・板の平滑さなどで決まり、板自体の硬さは関係ないことを考えれば理解できよう。

  32. ×
    抑止工法と抑制工法の検討順が逆である。例外もあるが、一般的には抑制工をまず検討し、これで不十分な場合に抑止工を検討することが多い。

  33. ×
    近年は海岸侵食が激化しており、年間160haに達している。


  34. そのとおり。

  35. ×
    原則として朔望平均満潮位とする。