技術士第一次試験 専門科目演習問題(鋼構造及びコンクリート) 最終更新:2004.09.07

 次の35問について、それぞれ正しい記述であれば○、誤った記述であれば×を解答欄に記入せよ。

  1. 鋼材のねばり強さ・もろさを表す指標として、曲げに弱く、もろい性質をじん性、逆にねばり強い性質をぜい性という。

  2. 破壊が、十分な変形を伴って生じる場合を「じん性が大きい」という。

  3. 応力を繰り返し材料に作用させると、さほど変形していなくても破壊してしまう現象がある。これを「疲労破壊」といい、作用応力が、降伏応力<作用応力<極限(破壊)応力である場合にのみ生じる。

  4. 材料を引張り破壊させる時に、材料が伸びるように変形した後で破壊するのではなく、ある断面で分離したように破壊する現象があるが、これを「脆性破壊」という。小さな切り欠き傷があることのほかに、低温で引っ張ることも脆性破壊を生じる原因となる。

  5. 材料にある限界を超えた圧縮力を加えたとき、材料が急に横へ曲がる現象を「座屈」というが、これを防ぐ方法として、材料を細長くすることがある。

  6. 一般構造用圧延鋼材(SS材)にはキルド鋼やセミキルド鋼、溶接構造用圧延鋼材(SM材)にはリムド鋼が使われる。

  7. 高張力鋼には高炭素鋼と低合金鋼があり、このうち低合金鋼は開発初期のころに用いられたが、材質が硬く延性が小さいため、あまり使用されなくなった。

  8. 鋼材の引張強度より低い荷重でも、その応力を多くの回数繰り返して作用させると破壊がおきる。

  9. 溶接部を詳細に見ると、中央に溶接金属部、その外側に融合部がある。そのさらに外側には溶接熱で軟らかくなり、じん性が高くなった変質部がある。

  10. グルーブ溶接のほうがすみ肉溶接よりも応力伝達に無理がなく、確実な溶接ができるので、なるべくグルーブ溶接を用いるべきである。

  11. 梁に曲げモーメントを作用させて徐々に大きくしていくと、断面の下縁または上縁の縁応力が最大になり、塑性変形がはじまる点の応力に達する。この時の応力を降伏応力、曲げモーメントを降伏モーメントという。

  12. AE(アコースティックエミッション)法とは、材料の亀裂の発生や進展などの破壊に伴って発生する弾性波(振動、音波)を利用した検査方法で、応力集中に敏感に反応するので、欠陥検出や強度推定などの材料評価に、また、破壊の進展過程をモニタリングできるので稼働中の構造物の保守検査に、新しい非破壊検査法として実用化されている。

  13. 磁粉探傷法とは、材料内部に傷があると、その部分の磁気抵抗が低下し磁力線に乱れが生ずる性質を利用して材料の損傷を調べる方法をいう。

  14. 応力を繰り返し加えても、材料あるいは構造物に疲労が起きない応力度の限度を疲労限度または疲労限界応力度と言うが、これは材料のせん断破壊強度に比例する。

  15. 荷重負荷からある時間が経過して後に破壊する現象を「遅れ破壊」といい、静的疲れ破壊ともいう。この破壊は、塑性変形がほとんど見られないのに、突然破壊するという特徴がある。

  16. 高力ボルト接合において、摩擦結合の滑りによる変形を防ぐために、高力ボルトの円筒部に突起をつけてボルト孔との余裕をなくし、打ち込み式にしたものが支圧接合である。

  17. コンクリートの打設後に、材料の比重の違いにより、練り混ぜ水の一部が浮かび上がり、表面に不純物の層を作る。この層をブリーディングといい、強度低下や剥離の原因になるため、コンクリートを打ち継ぐ場合は撤去する。

  18. 固まる前のコンクリート(フレッシュコンクリート)の、水の多少による軟らかさを示す指数をスランプという。スランプは、スランプコーンの中にコンクリートを入れ、定められた手順で突きならした後にコーンを引き上げ、そのときの頂部からの下がりをpで表わした値をいう。試験方法は、「コンクリートのスランプ試験方法」として、JIS A 1101に規定されている。

  19. スランプコーンを引き上げた後の試料の直径の広がりも、フレッシュコンクリートの軟らかさの程度を示す指標である。これを「スランプフロー」といい、JIS A 1101「コンクリートのスランプ試験方法」に規定されている。
  20. ワーカビリティーとは、フレッシュコンクリートが、材料分離を生じることなく打込めることの程度である。

  21. フィニッシャビリティーを表す尺度として、一定面積当りの舗装コンクリートを仕上げるのに必要なフィニッシャーの振動数を採用する方法がある。

  22. コンクリート中の水とセメントの体積比を水セメント比といい、この値が大きいほど圧縮強度は低下する。

  23. プラスチシティーとは、容易に型に詰めることができ、型を取り去るとただちに形を変え、くずれたり材料が分離したりするフレッシュコンクリートの性質をいう。

  24. コンクリート中に発生する空気泡には、混和剤を用いないコンクリートに、その練り混ぜ中に自然に取り込まれる空気泡(エントレインドエアー)と、AE剤又は空気連行作用がある混和剤を用いてコンクリート中に連行させた独立した微細な空気泡(エントラップトエアー)がある。

  25. コンシステンシーとは、フレッシュコンクリート、フレッシュモルタルおよびフレッシュペーストのせん断に対する抵抗性を表す指標である。

  26. 「細骨材」とは、骨材のうち、5mm網ふるいを通過する成分のことをいう。

  27. コンクリートなどに特別の性質を与えるために練り混ぜの前、または練り混ぜ中に加えられるセメント、水、骨材以外の材料を混和材料という、混和材料には、次のものがある。
    混和剤:混和材料の中で使用量が少なく、それ自体の容積がコンクリートの練上り容積に算入されないもの。AE剤、AE減水剤などがある。
    混和材:混和材料の中で使用量が比較的多く、それ自体の容積がコンクリートなどの練り上がり容積に算入されるもの。高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、シリカフュームなどがある。

  28. AE剤とは、コンクリートのワーカビリティーおよび耐凍害性を向上させるため、コンクリートなどの中に発生する空気泡を消す作用のある混和剤である。

  29. 「かぶり」(または「かぶり厚さ」ともいう)とは、鋼材、シースなどの表面とそれらを覆うコンクリートの外側表面までの最短距離のことである。

  30. クリープとは、応力を作用させた状態において、ひずみが時間とともに増大していく現象である。ひずみには、弾性ひずみ・乾燥収縮ひずみなどがある。このひずみ量を弾性ひずみ量で除した値をクリープ係数といい、コンクリート構造物の変形量計算に用いる。

  31. アルカリ骨材反応とは、アルカリとの反応性を持つ骨材(シリカ鉱物)が、セメント中のアルカリイオン成分と反応し、コンクリートの膨張ひび割れ、ポップアウト(コンクリート中の骨材が膨張しコンクリートが劣化する現象)を生じさせる現象をいう。反応がコンクリート打設後きわめて短期間で発生するのが特徴である。

  32. アルカリ骨材反応は、その反応成分の違いからアルカリシリカ反応(アルカリシリケート反応も含む)・アルカリ炭酸塩反応の2種に分けられるが、我が国ではアルカリ炭酸塩反応による被害が主である。

  33. アルカリ骨材反応対策として、アルカリ骨材反応に関して無害と判定された骨材を用いることの他に、セメントを適切に選択する方法がある。一般に、高炉セメント・フライアッシュセメントよりポルトランドセメントはアルカリ骨材反応を生じやすい。

  34. 細骨材の粒度が単位セメント量あるいは単位水量に及ぼす影響は、コンクリートにおいては顕著であるが、モルタルにおいてはその影響が緩和される。

  35. 砕石・砕砂を骨材として使用する場合、アルカリシリカ反応により、A(アルカリシリカ反応性試験結果が無害と判定されたもの)とB(同試験結果が無害と判定されないか、この試験を行っていないもの)に区分することとなっている。

<正解>

  1. ×
    じん性とぜい性が逆である。「じん性」は強靭の「靭」、「ぜい性」は脆弱の「脆」である。


  2. そのとおり。逆にあまり変形せずにポキッと折れてしまうようなものを「ぜい性が大きい」という。なお、ぜい性の程度を「ぜい性度」ともいう。コンクリートなどはぜい性度が大きく、軟鋼は小さい。

  3. ×
    疲労破壊には高サイクル疲労破壊と低サイクル疲労破壊があり、鋼構造物破壊で問題になるのは前者であるが、これは降伏応力より小さい応力でも生じる。
    なお、疲労破壊は、材質の部分変化、残留応力、応力集中、加工時の欠陥などが疲労により生長し破壊に至るものである。


  4. そのとおり。「脆性破壊」とは、変形をほとんど伴わずに一気に破壊する「もろい破壊」である。通常は降伏応力に達すると材料が餅のように伸びてから破壊するが、低温でもろくなったり、傷などに応力が集中すると、降伏してすぐに破壊するため、ある特定の断面で分離したように見える破壊形態となる。なお、降伏応力に達してからどれだけ変形するかが「じん性」でもある。

  5. ×
    座屈は、材料が細長かったり、薄かったりすると起こりやすい。イメージ的にわかるはず。

  6. ×
    逆である。キルド鋼やセミキルド鋼は溶接構造用、リムド鋼は一般構造用に使われる。

  7. ×
    記載のような特徴を持つのは高炭素鋼のほうである。


  8. そのとおり。疲労のことである。

  9. ×
    変質部は溶接熱で焼き入れされたようになり、硬くもろくなっている。


  10. そのとおり。


  11. そのとおり。


  12. そのとおり。

  13. ×
    材料内部に傷があると、磁気抵抗が低下するのではなく増大する。あとは記述の通り。ちょっと意地悪問題かな?

  14. ×
    同じ材質であれば記述のとおりですが、そうでなければ、強度よりじん性(ねばり強さ)のほうが疲労限度に関係します。非常にねばり強い鋼材と、硬いがもろいコンクリートのどちらが疲労破壊に強い(疲労限度が高い)か考えればわかるでしょう。


  15. そのとおり。


  16. そのとおり。

  17. ×
    ブリーディングではなくレイタンスである。ブリーディングは、練り混ぜ水の一部が表面に浮いてくる現象をいう。


  18. そのとおり。


  19. そのとおり。

  20. ×
    打込みだけでなく、運搬・打込み・締固め・仕上げなどの作業が容易にできる程度である。


  21. そのとおり。

  22. ×
    体積比ではなく質量比である。水セメント比が大きいと圧縮強度が下がるのは記述のとおり。

  23. ×
    逆の記載になっている。プラスチシティーとは、容易に型に詰めることができ、型を取り去るとゆっくり形を変えるが、くずれたり材料が分離したりすることのないようなフレッシュコンクリートの性質をいう。

  24. ×
    エントラップトエアーとエントレインドエアーが逆。

  25. ×
    コンシステンシーとは、フレッシュコンクリート、フレッシュモルタルおよびフレッシュペーストの変形または流動に対する抵抗性である。

  26. ×
    「細骨材」とは、骨材のうちの特定の成分をいうのではなく、10mm網ふるいを全部通り、5mm網ふるいを質量で85%以上通るような細い成分の多い骨材のことをいう。なお、5mmふるいに質量で85%以上とどまる骨材を「粗骨材」という。


  27. そのとおり。

  28. ×
    空気泡を消すのではなく、コンクリートなどの中に、多数の微細な独立した空気泡を一様に分布させ、コンクリートのワーカビリティーおよび耐凍害性を向上させるために用いる混和剤をAE剤という。


  29. そのとおり。

  30. ×
    クリープにおける「ひずみ」とは、弾性ひずみ・乾燥収縮ひずみを除いたものである。

  31. ×
    アルカリ骨材反応の解説は記述の通りだが、反応は長期にわたって生じる。

  32. ×
    アルカリ骨材反応は、その反応成分の違いからアルカリシリカ反応・アルカリ炭酸塩反応・アルカリシリケート反応の3種に分けられるが、アルカリシリカ反応とアルカリシリケート反応はほぼ同じであるため、コンクリート標準示方書では、アルカリシリカ反応(ASR)とアルカリ炭酸塩反応の2種類に分類されている。このうち、我が国で被害が主に報告されているのはASRである。


  33. そのとおり。ポルトランドセメントを使用する場合は、低アルカリ形(Na2O当量0.6%以下)とする必要がある。
    また、高炉セメント・フライアッシュセメントを用いる場合も、高炉B種、フライアッシュC種を用いる。

  34. ×
    モルタルとコンクリートが逆。モルタルで顕著、コンクリートで影響が緩和される。


  35. そのとおり。