技術士第一次試験 専門科目演習問題(トンネル)


 次の20問について、それぞれ正しい記述であれば○、誤った記述であれば×を解答欄に記入せよ。

  1. 覆工コンクリートは、地山変位の収束を待ってから、全断面打設することを原則とする。

  2. 我が国における山岳トンネル工法は、ロックボルトとコンクリート吹付けにより地山の強度を活用して安定を図りながら掘削するNATM工法が標準工法であったが、1970年代より鋼アーチ部材と矢板による支保工で地山を支持する鋼アーチ支保工が、より経済的で高品質が得られることから急速に広まり、1980年代には山岳トンネル工法の標準工法となった

  3. 我が国は急峻な山岳部の面積が多く、それらは花崗岩などの硬質岩から成ることが多い。このような我が国の地形・地質上の特徴から、全断面工法、ベンチカット工法、導坑先進工法といったトンネル掘削工法のうち、最も採用されることが多いのは全断面工法となっている。

  4. ロックボルトの作用効果と1つとして、ロックボルト引張り力相当力がトンネル壁面に内圧として作用し(内圧効果)、これによりトンネル周辺地山の耐荷能力が増し、アーチを形成する(アーチ効果)というものがある。

  5. TBM(トンネルボーリングマシン)は、岩盤地山を巨大なカッターヘッドで掘り進みトンネルを作っていく機械である。高速掘進のほか、掘削に伴う岩盤のゆるみが少ない、支保工の低減が可能、作業人員が少なくてすむ等の利点があり、ユーロトンネルで日本のTBMが使用された。日本では導水路、上下水道トンネルへの適用が主であり、道路トンネルでは先進導坑掘削への利用が多い。

  6. 吹き付けコンクリートは、掘削後の地山変形収束とともに強度発現することが望ましいため、早期強度はあまり高くないほうが良い。

  7. 覆工型枠は、コンクリートが打設後に収縮することを見越して、計画天端より幾分下がった位置に組む必要がある。

  8. トンネルの土被りが大きい箇所では、多大な土圧に対抗するため、覆工コンクリートを鉄筋で補強する。

  9. NATM工法によるトンネル掘削では、地山状況を計測管理しながら施工を進めるが、その結果において十分な検討を加えた上であれば、ロックボルト本数変更などを行うこともできる。

  10. 山岳トンネルにおける坑口部は、トンネル径をDとしたとき、1D〜2Dの土被り範囲をいう。

  11. 推進工法は発進立坑からヒューム管をジャッキで押し込んで地中管路を築造する工法で、一般的な制限事項として、小口径であること、押し込みが可能な地質である必要があること、途中で曲げることはできないことがあげられる。

  12. 沈埋工法は、トンネル100m前後のブロックに分割して、それぞれをドライドックなどで製作して現場へ曳航し、水底掘割部に沈設して水中接合する工法であるり、その用途は下水道から鉄道・道路まで広い。

  13. 圧気工法は、地下水の多い砂礫層では効果が高いが、地下水賦存量の少ない粘性土層では圧気効果があまり期待できない。

  14. 開削工法のうち、周辺を山留めした後に溝状に掘削し、構造物外周を作成の後にこれを土留めに内部掘削を行う工法をアイランド工法という。

  15. シールド工法は、シールドと呼ばれる掘進機を地中に推進させて、その中で安全に掘削・覆工を行う工法で、土砂地盤に適用される。

  16. 土留め工法により開削工法で施工を行う場合、土留め本体の変形変位検討だけでなく、背面地盤の変位についても十分注意を払う必要がある。

  17. シールド工法では、シールドとシールドを地中で接合することもある。

  18. トンネルの設計施工にあたっては、立地条件、支障物件、地盤および環境保全に関する調査が不可欠であるが、支障物件調査に際しては、地上・地下構造物、埋設物、建造物跡・架設工事跡、埋蔵文化財といったものに加え、将来計画等も調査対象としておくべきである。

  19. 大深度地下法(「大深度地下の公共的使用に関する特別措置法」)は、三大都市圏の公共性の高い事業について、大深度地下を使用する場合には原則として事前補償なしで使用権を設定できると規定しており、平成16年より施行の予定である。

  20. 大深度地下法における「大深度地下」とは、地下40m以深、あるいは支持層上面から10m以深のどちらか浅いほうの深度の地下をいう。

<正解>


  1. そのとおり。

  2. ×
    NATMと鋼アーチが逆である(それぞれの工法の解説は正しい)。鋼アーチからNATMに標準工法が移っている。

  3. ×
    比較的新しい地質時代の岩石が多く、また地震国・火山国でもある我が国は、全断面工法の可能な堅硬な地山はなかなかない。


  4. そのとおり。


  5. そのとおり。

  6. ×
    支保部材としての機能発揮のため、早期強度が高いことが必要である。

  7. ×
    コンクリート重量により沈下するので、上げ越しする必要がある。

  8. ×
    逆である。土被りが小さい場合にグラウンドアーチが形成されないのでインバートが必要となる。


  9. そのとおり。


  10. そのとおり。土被りがこれ以下になるとグラウンドアーチが形成しにくくなる。

  11. ×
    推進工法は途中で曲げられる。


  12. そのとおり。

  13. ×
    逆である。砂礫層は透気性が高いので、圧気圧を高くすると漏気がおおくなり効果が薄れる。

  14. ×
    記述はトレンチカット工法である。


  15. そのとおり。


  16. そのとおり。


  17. そのとおり。


  18. そのとおり。

  19. ×
    平成13年4月にすでに施行済である。

  20. ×
    地下40m以深、あるいは支持層上面から10m以深のどちらか深いほうの深度の地下をいう。