技術士第一次試験 適性科目演習問題 最終更新:2004.10.09
2004.10.09 Q7の答えを修正

演習問題について
演習問題は、意識的に常識・モラルを問うような問題を避け、知識を問う問題を中心にしました。
また、各自のモラル感・常識感だけで答えようとしても答えにくいか、答えがばらつきそうな問題を意識的に多くしました。
適性科目は各自のモラル感・常識感で答えるのではなく、技術者倫理に関する知識で答える試験であるという基本的スタンスをご理解いただきたいためです。
また、仮想事例では建設部門を中心にしました。そのほうが理解しやすく応用しやすいと考えたためです。本番では様々な分野からの出題となります。

次の15問すべてについて解答せよ。

  1. 技術士等の義務に関する次の記述の中で、適切でない解釈・行動はどれか。

    (1) 技術士・技術士補には守秘義務があるが、それは技術士・技術士補でなくなった後においても適用される。

    (2) 名刺に技術士の名称を表示する際、「技術士(建設部門)」とだけ表示し、選択科目は表示しなかった。

    (3) 名刺に技術士の名称を表示する際、「技術士(建設部門・トンネル)」というように、選択科目まで表示した。

    (4) 名刺に技術士の名称を表示する際、「技術士(トンネル)」というように、選択科目のみ表示した。

    (5) 技術士補であるが、技術士を補助する業務ではなかったので、技術士補の名称は表示しなかった。



  2. 技術士・技術士補には様々な義務・責務があるが、これに違反した場合、文科大臣は規定違反と思料されるときは職権をもって調査することができ、その上で違反が明確になれば、登録の取り消しまたは2年以内の名称使用停止を命ずることができる。
    処罰が上記登録取消・名称使用禁止にとどまらない可能性のあるのは、次のうちどのケースか。

    (1) 技術士・技術士補の社会的信用を失墜させるような行為をした場合。

    (2) 技術士または技術士補が、正当な理由なく業務上知りえた秘密を漏らしたり盗用した場合。

    (3) 技術士・技術士補でない者、あるいは技術士・技術士補の名称使用を停止されている者が技術士・技術士補あるいはそれに似た名称を名乗った場合。

    (4) 技術士または技術士補が、業務を行うに当たって公共の安全や環境の保全その他の公益を著しく害した場合。

    (5) 業務に関して有する知識および技能の水準を向上させ、その他その資質の向上を図るよう努めなければならないにもかかわらず、これを著しく怠った場合。



  3. 次の(ア)〜(エ)記述の中に、適切なものはいくつあるか答えよ。

    (ア) 人の意識の中には、モラルと常識がある。モラルを規範化したものが法、常識を規範化したものが倫理である。
    (イ) 倫理も法も規範レベルのものであるが、倫理は自律的、法は他律的であるという特徴がある。
    (ウ) 技術士には3義務2責務と言われるものがあるが、これらは技術者個人の人格・美徳とは無関係である。
    (エ) 功利主義とは、公共の安全確保よりも自分自身の利益を優先させる姿勢のことである。


    (1) 0個    (2) 1個    (3) 2個    (4) 3個    (5) 4個


  4. 次の文章の(ア)〜(エ)に当てはまる適切な言葉の組み合わせはどれか。

    全米プロフェッショナル・エンジニア協会(NSPE)の倫理規定には6つの原則が基本綱領6か条として記されている。
    1つ目は「公衆の安全・健康・および福利を最優先する」という
    [ ア ]原則である。
    2つ目は「自分の有能な領域においてのみサービスを行う」という
    [ イ ]原則である。
    3つ目は「公衆に表明するには、客観的で勝つ真実に即した方法でのみ行う」という
    [ ウ ]原則である。
    4つ目は「雇用者または依頼者それぞれのために、誠実な
    [ エ ]又は受託者として行為する」という[ オ ]原則である。
    5つ目は「欺瞞的な行為を回避する」という
    [ カ ]原則である。
    6つ目は「自ら名誉を守り、責任を持ち、倫理的に、そして適法に身を処することにより、専門職の名誉、
    [ キ ]、および有用性を高めるように行動する」という[ ク ]原則である。


    (ア) (イ) (ウ) (エ)
    (1) 公衆利益 有能性 真実性 代理人
    (2) 公衆優先 有能性 客観性 代理人
    (3) 公衆利益 名称表示 客観性 従業員
    (4) 公衆優先 有能性 真実性 代理人
    (5) 公衆利益 名称表示 客観性 従業員


  5. 前問の文章において、(オ)〜(ク)に当てはまる適切な言葉の組み合わせはどれか。

    (オ) (カ) (キ) (ク)
    (1) 信頼関係 公正業務 名声 同業発展
    (2) 誠実性 公正業務 信用 信頼確保
    (3) 誠実性 自己規制 信用 同業発展
    (4) 信頼関係 公正業務 利益 信頼確保
    (5) 誠実性 自己規制 利益 失墜禁止


  6. 次の(ア)〜(エ)記述の中に、適切なものはいくつあるか答えよ。

    (ア) 科学技術が人間生活に寄与するためには、少なくとも科学技術の危害を抑止する、公衆を災害から救う、および公衆の福利を推進するという三つの面がある。
    (イ) 技術者倫理において、一般に「公衆」とは国家を形作っている人々のことをいう。
    (ウ) 原子力技術を扱う者に対する公衆の信頼感によって公衆の安心は強化されるが、公衆に「安心」を押し付けるべきではない。
    (エ) 技術者は、あたかも子供に対する親のように、公衆の利益になることは何かを公衆に代わって判断するべきである。


    (1) 0個    (2) 1個    (3) 2個    (4) 3個    (5) 4個


  7. 次の(ア)〜(エ)記述の中に、適切でないものはいくつあるか答えよ。

    (ア) マニュアルは重要とはいえ、むしろマニュアルにない局面での判断能力が、マニュアルの真の順守につながる。
    (イ) 2000年6月末に発生した雪印乳業食中毒事故は、HACCPのような食品品質管理システムが導入されていれば防げた可能性が高い。
    (ウ) 技術者倫理の理解は、技術が社会に及ぼす影響や効果、技術者が社会に対して負っている責任に関する理解であるべきである。
    (エ) 公衆は、インフォームドコンセントを与えるために知る権利があり、技術者は、それに対応する説明責任があって、その責任を情報の開示によって果たす。


    (1) 0個    (2) 1個    (3) 2個    (4) 3個    (5) 4個


  8. 次の仮想事例を読んで問題に答えよ。

    【故郷の湿地帯】
     技術士Aは、大手ガス会社に勤務している。彼の故郷には非常に良好な自然環境が保たれた湿地帯があり、地元の自然環境保全NPOの調査では、固有種を含む貴重な生態系が確認されつつあった。彼はそのNPO会員として、帰省するたびに調査に同行し、また自然環境保全のため当該湿地帯を開発しないよう、地元自治体、特に議会に訴え続け、すでに何件かの開発プロジェクトを中止させてきた。
     ある日、彼は勤務会社がくだんの湿地帯に備蓄基地を建設する計画を持っていることを知る。彼はこのプロジェクトには関与していなかったが、その後会社の上司から呼び出され、故郷の議会議員に知った者はいないか訪ねられる。彼は知らないと嘘をついた。その一方で、彼は帰省した時にも彼の会社の開発プロジェクトのことはNPOで話さなかった。
     計画は2ヵ月後に発表されることとなった。発表されれば、彼はNPO内での立場が悪くなると予想した。彼が多くの議会議員と知り合いであることは間もなく彼の会社の知るところとなり、彼が今後不利益を被ることを匂わせるような発言が上司からあった。


    この事例について話し合った以下の意見について、次の中で最も不適切と思われるのはどれか。

    (1) 技術士Aは会社に対して嘘をついた。彼の行動は欺瞞である。

    (2) 技術士Aは開発プロジェクトのことをNPOに対して黙っていた。彼の行動は不正直であり、欺瞞である。

    (3) 技術士Aは、会社に真実を伝える責務がある一方で、湿地帯の自然環境保全という自ら課した責務がある。これは利益の相反である。

    (4) 技術士Aはプロジェクト担当者ではないが、会社の社員であることは確かなので、議会への影響力を行使しなかった点について、彼は会社から批判的評価を受けても仕方がない。

    (5) 技術士Aが会社側に与しなくとも、彼の行動がいくらか抑制される危険性があるので、ここに利益の相反があるとNPOが考えても無理はない。



  9. 前問の事例において、技術士Aが取りうる行動として以下の(ア)〜(ウ)について考えるとき、これを適当であると考えられる順に並べたものはどれか。

    (ア) 会社に対して、環境に対するインパクトの小さい別の用地への立地を提案する。
    (イ) 利益の相反を理由にNPOを脱退し、この件に関しては中立の立場を保つ。
    (ウ) NPOを脱退し、会社の側に立つ。

    (1) ア、イ、ウ    (2) ア、ウ、イ    (3) イ、ア、ウ    (4) イ、ウ、ア    (5) ウ、イ、ア


  10. 次の仮想事例を読んで問題に答えよ。

    【地すべりと占い師】
     ある途上国において水資源開発の業務に携わっていた技術士Bはある日、村の学校の裏山で地すべりの兆候を発見した。それ以後、彼は時々ここを見回るようにしていたが、地すべりは進行し、変状は明らかに加速していると思われたが予算不足を理由に当該国政府は対応を渋った。そこで彼は村長に、地すべりに注意すること、必要に応じて避難勧告を出すことを薦めた。
     ところがこの地方は自然災害に関しては占いで判断するという風習が根強く残っており、今回も占いによって対応を決めることになった。その結果、地すべりの危険はないと占い師が言い、地すべりは放置されることとなった。
     ある日、まとまった雨が降った。技術士Bが駆けつけると、斜面から濁水が吹きだし、末端では小崩壊が始まっていた。一刻の猶予もないと判断した彼は、スタッフとともに、半ば強制的に学校の職員生徒を安全な場所に避難させた。
     結果として地すべりは発生したものの小規模にとどまり、学校は裏庭が埋まっただけで施設は無事であった。当該国政府は今度こそ地すべりの危険性を認識し、技術士Bの進言に従って学校の移転を決めたが、村民は「占いの結果に従わなければ、もっと大きな災禍が村に降りかかる」と言って反対し、技術士Bを激しく非難した。
     この結果、肝心のプロジェクトが滞り、傷心の彼は配置転換を申し出て帰国した。本社に出向いた彼に、ある上司が「君のやったことはパターナリズムと言って、望ましくないとされている行動だ。学校は被災しなかったんだし、放置しておいたほうがよかったね」と言った。


    この事例について話し合った以下の意見について、次の中で最も適切と思われるのはどれか。

    (1) 技術者の基本姿勢はインフォームドコンセントを尊重することだ。彼の行動はその点において倫理的に間違っている。

    (2) 放置すれば多くの子供に危害が及ぶと客観的に確信していたのだから、彼の取った行動は倫理的に正しい。

    (3) 占いは非科学的なものであるから、そのようなものを尊重する必要は全くない。

    (4) 彼の取った行動はパターナリズムには該当しないので、上司の認識は間違っており、アドバイスは見当違いである。

    (5) 彼は定量的に地すべりの危険性を明らかにすることをしなかった。それができないのならこのような行動はとるべきでない。



  11. 次の行動の中で、技術士としてふさわしい行動はどれか。ふさわしい行動を○、ふさわしくない行動を×として、最も適当と思われる組合せを選べ。

    (ア) 【沈黙】
     機械部門の技術士Xが所属する会社は、R社が設計した工作機械の製作を公共団体から請け負った。技術士Xは設計書類をチェックした結果、重大な技術的欠陥があり、そのまま設計書通りに製作した場合、非常にまれな条件下で使用すると、周囲の人間に多大な害を与える可能性があると判断した。
     技術士Xはこのことを直ちに上司に報告し、上司はR社に問い合わせた。R社からの返答は次のようなものであった。
    「こちらで再調査した結果、当該工作機械に重大な欠陥はないとの結論であった。指摘部分は確かに不適切性を含んでおり、ごくまれに不具合をきたすかもしれないが、人命に害をなすほどの重大な事故に至るとは到底思われない。ましてそちらの計算でもトラブル発生確率は十分に低いと予想される。設計書通りに製作してもらいたい」
     この返答を受けて、上司は製作部門に製作を指示した。この決定を聞いた技術士Xは自分の行動を検証し、設計内容に問題があることおよび問題点の中身(そのまま製作した場合に予測される結果)を上司に報告したことにより、自分のできることはし尽くしたと考え、以後は沈黙を守った。


    (イ) 【名義貸し】
     建設部門の技術士Yは、勤務していた会社が民事再生法適用となり、解雇された。彼には妻子がおり、彼の収入が途絶えれば、一家は深刻な経済難に陥り、子供は高等教育を受ける機会を失うことが予想された。しかし彼の技術分野は比較的市場規模の小さいもので、そう簡単に就職先が見つかるとも思えなかった。
     ほどなく彼は、友人からある設計会社(Z社)を紹介された。その会社には技術士がおらず、建設コンサルタント登録のために技術士を探していた。Z社は、「建設コンサルタント登録の技術管理者になってもらうことが目的である。相応の年収を保証するし出社も月に1〜2回程度でよい」と条件を出した。実質的には非常勤になるが、会社のほうでタイムカードをパンチし、常勤として処理するので心配は無用とのことであった。さらに、「もし常勤できるならば、専門違いの部署だが部長ポストを用意する。技術業務にはタッチせず管理に専念してくれればよい。管理職手当ても含め会社役員として十分な給与を支払う」とも提案した。
     彼はどちらの条件を選ぶか思案した。非常勤であれば時間はあるが収入が少ない。常勤は十分な収入が保証されていたものの、単身赴任を余儀なくされる条件であった。彼は家を離れたくなかったし、他にも収入を確保できるかもしれないと考え、「それでは非常勤でお願いします。」と答えた。


    (ウ) 【クマタカ】
     環境部門の技術士Zは、ある道路・橋梁建設および宅地開発を中心としたプロジェクトに携わっていた。その道路および橋梁は海峡によって隔てられていた2つの市を結ぶもので、地元ではその完成を心待ちにするとともに、それを大前提に合併の準備が進められていた。技術士Zの担当業務は、当該事業に伴う自然環境への影響を予測評価し、必要な保全対策を検討するものであった。
     調査を進めた彼は、当該プロジェクトが周辺の生態系に与えるインパクトが予想以上に大きいこと、特に道路がクマタカのテリトリーに入り営巣に影響を与えそうなことを認識し、上司とも相談したうえでこれを事業主に口頭で伝えた。
     事業主は「すでに工事予算も確保し、地元はこれに基づいて合併を含むスケジュールを立てている。君の報告では営巣木は残るので、影響があるとは言い切れない。数羽のタカのために被る損害は計り知れない。君はこのことをよく考えて大人の判断をしてくれると確信しているよ。それが会社のためでもあると思うがね」と言った。
     その翌日、技術士Zは匿名でマスコミにクマタカ生息の事実とプロジェクトとの関係を伝えた。このことは大きなニュースになり、プロジェクトは大幅な見直しを余儀なくされた。


    (ア) (イ) (ウ)
    (1) × × ×
    (2) × ×
    (3) × ×
    (4) ×
    (5) ×


  12. 次の行動の中で、技術士としてふさわしい行動はどれか。ふさわしい行動を○、ふさわしくない行動を×として、最も適当と思われる組合せを選べ。

    (ア) 【親友】
     技術士Rは、新しい電化製品の開発に取り組んでいた。非常に野心的な製品で、完成すれば市場を席捲することは間違いないと思われた。
     ある日、彼は叔父からの電話を受けた。開発中の製品の重要な部品について、叔父の経営する会社に優先的に発注するよう配慮してほしいとの内容であった。叔父の会社の製品は確かに格安ではあったが、性能に不安があった。
     後日、今度は彼の大学時代の友人Cから電話があった。同じ部品について、Cの勤める会社でCが開発した製品を使ってほしいとの申し込みであった。Cは技術士Rとは親友であり、苦学の末に今の職についたこと、この製品の開発にかけていることを知っていた。技術士Rは心情的にはCの会社の製品を使いたいと思った。Cの会社の製品を検討して、彼は驚いた。性能が高く、値段がやや高めであることを考慮しても、検討中のメーカーの中では突出して優秀な製品であることが判明したからである。
     当該部品に使う製品の選定会議でも、満場一致で友人の会社の製品が選ばれた。会議の最後に、技術士Rは「この製品は私の親友が開発したものです」と申し添えた。途端に上司たちの雰囲気が変わり、技術士Rの性能評価に疑いの目が持たれた。会議後、直属の上司はRに「なぜあんなことを言うんだ。君の立場を悪くするだけじゃないか」と言った。技術士Rが親友のことを話したのは正しかったのだろうか。


    (イ) 【自動ソフト】
     建設部門の技術士Sは、長年都市計画設計に携わってきた。今回彼が担当したのは、なだらかな丘陵地を開発した、見晴らしがよく明るい快適な宅地開発であった。完成した宅地には住民が住み始めたが、彼は宅地が完成した後も何度も現地に足を運び、公園整備などを通してまちづくりに関わってきた。
     ある日、依頼主である宅地開発業者が技術士Sに声をかけた。「今度、区画の端のほうにマンションを建てようと思うんですよ。ただ谷に近く、地盤が悪いんじゃないかと不安なんです。Sさんは建設部門の技術士ですよね。ひとつ調べていただけませんか。」
     Sは地盤調査の経験は全くなかったが、友人から「今は地盤調査の結果さえインプットすれば、ほとんど何も考えなくても自動的にレポートを作ってくれるソフトウェアがあるよ」と聞いたことがあるのを思い出し、「いいですよ」と答えた。


    (ウ) 【既往レポート】
     応用理学部門の技術士Tは、ある民間会社から相談を受けた。その会社は砕石を採取・販売しているのだが、特殊な挙動を示す劣悪岩石に手を焼いていた。依頼主はかなり魅力的な金額を提示し、「これを何とか分別あるいは改良して使い物になるようにする方法はないか、研究していただきたい。もし有効な方法が見つかれば、成功報酬として倍額お支払いする」と言った。
     実はその岩石を改良する有効な方法については、すでに目処がたっていた。技術士Tが10年ほど前に行った産学官協同プロジェクトで、全く同じ事例について研究し、有効な方法を発見していたのである。そのプロジェクトは公費で実施され、その成果は報告書として公表されていた。依頼主は明らかに研究事例の存在を知らないようであった。
     この成果を使えば、あとはこれを実用技術化するだけであり、それは極めて容易であることを技術士Tは知っていた。彼は、「わかりました。お引き受けいたします」と言ったが、そのような研究レポートが公表されていることは、あえて伝えなかった。


    (ア) (イ) (ウ)
    (1) × ×
    (2) × ×
    (3) ×
    (4) ×
    (5)


  13. 1992年、リオデジャネイロで開催された「環境と開発に関する国連会議」で採択された「環境と開発に関するリオ宣言」に関する次の記述について、(ア)〜(エ)に当てはまる適切な言葉の組み合わせはどれか。

    リオ宣言は27原則からなるが、その第1原則は次のようにいう。
    第1原則 人類は
    [ ア ]への関心の中心にある。人類は、自然と[ イ ]しつつ[ ウ ][ エ ]な生活を送る資格を有する。


    (ア) (イ) (ウ) (エ)
    (1) 宇宙船地球号 調和 健康 快適
    (2) 宇宙船地球号 融和 快適 健康
    (3) 持続可能な開発 調和 健康 生産的
    (4) 持続可能な開発 融和 健康 快適
    (5) 地球環境問題 融和 快適 健康


  14. 前問で取り上げたリオ宣言には、以下のような「四つのシステム条件」と呼ばれる原則がある。それぞれの原則と関係の深い言葉の組み合わせとして最も適切なものはどれか。

     1.自然の中で地殻から掘り出した物質の濃度を増やし続けてはならない。
     2.自然の中で人間社会の創り出した物質の濃度を増やし続けてはならない。
     3.循環を支える自然の物理的基礎を破壊し続けてはならない。
     4.人々のニーズが世界中で満たされなくてはならない。


    【用語】
    (ア)宇宙船地球号   (イ)バーゼル条約   (ウ)森林伐採   (エ)ワシントン条約   (オ)化石燃料
    (カ)フロン   (キ)絶滅危惧種   (ク)生態系   (ケ)都市災害    (コ)南北問題


    (システム原則1) (システム原則2) (システム原則3) (システム原則4)
    (1)
    (2)
    (3)
    (4)
    (5)


  15. 次の実例を読んで問題に答えよ。

     20年ほど前、ある総合重機械メーカーで、技術者が10年をかけてCADソフトを開発した。会社はこのソフトを大手建設会社などにも1セット1億円前後で販売するようになったが、ソフトとともに建設作業のノウハウが外部に漏れることを懸念し、ほどなく外販停止となった。このとき、CADソフト開発メンバーは「外販による”他流試合”で技術が向上する」と外販停止に反対したが、受け入れられなかった。
     その直後から開発技術者たちはCADソフトのシステム設計書のコピーを持ち出し始めた。これをもとにプログラムを作り、販売しようとしたようである。持ち出した技術者たちは業務上横領罪に問われた。彼らは裁判で有罪判決を受けたが、裁判官は情状を酌量し、執行猶予とした。


    裁判官が情状を酌量した理由として、動機に酌量の余地があるということ以外に、次のうち最も適切なものを選べ。

    (1) ソフトウェアが企業もしくは個人の所有物・財産であるという社会的通念がまだ十分に成熟しておらず、それゆえにソフトウェアの財産的価値に対する社会的評価はまだ低いと推察される。

    (2) システム開発は被告技術者たちの頭脳に負うところが大きい。設計書は会社のものであるが「頭脳」は被告技術者たちのものであり、産業スパイなどと比べて行為に対する社会的評価はおのずと異なる。

    (3) 競争による性能向上は、公共の利益にあたり、その点において外販停止は公共の利益に寄与するものではない。被告技術者たちの行為は利益の相反であり、この点において酌量の余地がある。

    (4) 被告技術者たちは外販停止によって独占的利益を得ようとする会社に対し、倫理上憤りを感じていた。すなわちこれは「警笛鳴らし」の一面があると解釈され、それゆえに被告技術者たちは一定の保護を受ける権利を有する。

    (5) 被告技術者たちは当該ソフトウェアの開発者であり、著作権を有するものと考えられる。このことから設計書の所有権については、被告技術者たちも一定の権利を有するといえる。



<正解>

解説中で引用する文献は以下のとおりです。
(文献1)「技術者の倫理」(日本技術士会)
(文献2)「第2版 科学技術者の倫理〜その考え方と事例」(Harrisほか、日本技術士会訳編、丸善)
(文献3)「第2版 技術者の倫理入門」(杉本泰治・高城重厚著、丸善)

(文献4)「科学技術倫理の事例と考察」(米国NSPE倫理審査委員会、日本技術士会訳編、丸善)

  1. (4)が正解
    (1)・・・・○ その通り。法第45条に明記されています。
    (2)・・・・○ 登録を受けた技術部門を明示してあれば、選択科目の表示はあってもなくてもかまいません。
    (3)・・・・○      同上
    (4)・・・・× 登録を受けた技術部門を明示せねばなりません。
    (5)・・・・○ その通り。法第47条に明記されています。

  2. (2)が正解
    (1)・・・・○ 技術士法第44条信用失墜行為です。
    (2)・・・・× 技術士法第45条守秘義務ですが、この規定に違反して告訴された場合、1年以下の懲役または50万円以下の罰金という罰則もあります。
    (3)・・・・○ 名称使用禁止は法第57条、罰則は法第62条で定められています。
    (4)・・・・○ 技術士法第45条公益確保の責務です。
    (5)・・・・○ 技術士法第47条資質向上の責務です。

  3. (2)が正解
    (ア)・・・・× モラルを規範化したものが倫理、常識を規範化したものが法です。
    (イ)・・・・○ そのとおり。文献1p.1〜2に明記されています。
    (ウ)・・・・× 文献1p.2に「専門的技術に依存する社会は、人格と美徳を有する人を多く必要とする」という主旨の記載があります。
    (エ)・・・・× 功利主義とは、最大多数の最大幸福を求めるものです。
    よって正解は1個です。

  4. (4)が正解
    文献1p.6に明記されています。
    (ア)・・・・公衆優先
    (イ)・・・・有能性
    (ウ)・・・・真実性
    (エ)・・・・代理人

  5. (1)が正解
    問題3と同様です。
    (オ)・・・・信頼関係
    (カ)・・・・公正業務
    (キ)・・・・名声
    (ク)・・・・同業発展

  6. (3)が正解
    (ア)・・・・○ そのとおり。文献1p.8に明記されています。
    (イ)・・・・× 公衆とはインフォームドコンセントを与えることができない人々、すなわち「よく知らされた上での同意を与えることができない人々」のことです。文献3p.54、文献2p.55、文献1p.2など、技術者倫理を扱ったテキストのほとんどに記されています。技術者倫理の常識レベルの用語として覚えておきましょう。
    (ウ)・・・・○ 日本原子力学会倫理規定にほぼそのままの文章があります。
    (エ)・・・・× これは典型的なパターナリズムの考え方です。
    よって正解は2個です。

  7. (2)が正解
    (ア)・・・・○ そのとおり。文献1事例編p.7の事例19に明記されています。
    (イ)・・・・× 雪印はすでにHACCP承認を受けており、承認施設の半数に不備がありました。(ア)と同じ事例に記されています。
    (ウ)・・・・○ そのとおり。2002年度版JABEE基準にそのとおり書いてあります。
    (エ)・・・・○ そのとおり。文献1p.10に明記されています。
    よって適切でないものは1個です。

  8. (4)が正解
    実はほとんど同じ主旨の事例が文献2に事例33「パークビル」として記載されています。
    (4)以外はそのとおりであり、(4)については、「彼はプロジェクトに関与しておらず、計画を推奨したり擁護する特別な責任があるかどうかは不明確である。この点で、彼の会社は議会に影響力を行使しなかったからといって彼を非難すべきではない。」という旨の記載があります。
    このような「文献に書いてある」などということを出すまでもなく、常識的に(4)が不適当であることはわかると思います。

  9. (1)が正解
    これも「なんでやねん」と思われるかもしれませんが、文献2の事例分析ではそのように判断されています。理由は次のようなことです。
    (ア)は、うまくいく可能性は高くないが、自然環境保全と彼の仕事という利益の相反が解決される可能性がある。
    (イ)は、利益の相反があるという主張はある程度の正当性があり、会社には通じるかもしれないが、彼の故郷での評判は落ちるであろう。
    (ウ)は、彼の故郷における評判と彼自身の自尊心をひどく傷つけるであろうと予想される。環境の悪化という可能性も考えられる。
    -------------------------------------
    これだけでは納得できないかもしれませんので、もう少し深く考察してみます。
    この事例は利益の相反、すなわちトレードオフです。会社の利益・環境保全だけでなく、自らの仕事を守り、家族がいるならばその生活を守るという責務、所属するNPOの利益を守るという責務もあります。
    (ア)は、創造的第3の解決法です。すなわち、「もしうまくいけば最も適切」な手法である「代替案・折衷案の提案」、ひらたく言えば「両方が丸く収まる方法は何かないだろうか」と考えるということです。利益相反を解決する最も好ましい方法とされています。
    (イ)は三方一両損ではありませんが、両方に利益を与えないという消極的な公平性の確保です。どちらの利益も優先していないという点ではまだましではありますが、逃避でもあります。このため、信頼を損ねることが往々にしてあります。
    (ウ)は一方の利益のみを優先するという点で、最も好ましくない解決法です。さらに自分の信念に逆らっているので、自尊心が傷つき、周囲の信頼も場合によっては最も損ねるでしょう。
    このようなことから、相反する利益をできるだけ取り入れた(ア)が最適、一方の利益だけを優先し自分の信念にも逆らった(ウ)が最悪であるという結論に至るのです。これは技術者倫理という規範に従って客観的に判断した結果であり、たとえば私個人の倫理観・モラルに従った結果ではありません。

    -------------------------------------
    ところで、これは会社とNPOという価値観の必ずしも一致しない(それどころか基本スタンスがどちらかというと反対方向である)2つの組織に同時に属するという行動が生んだトレードオフでもあります。このようなそもそもの行動は非難されるべきでしょうか。
    これは非常にデリケートな問題です。社会参加・地域参加は今後社会人として認められる条件の1つになってくるでしょう。「仕事」以外は全てプライベート(自分自身のため)では、社会人として認められなくなることも考えられます。
    その一方で、企業も利益追求だけしておればよいという時代は過ぎ去りつつあります。事例のガス会社が湿地帯に備蓄基地を建設した場合、環境会計上はかなりの損失決算となるかもしれません。トリプルボトムラインなど、企業の社会と環境保全への貢献度を客観的に評価する尺度が広まりつつある中、技術士Aの会社とNPOが価値観・方向性において必ずしも相反することなく、その接点において技術士Aが活躍する場が生まれる社会になっていくことを願わずにはいられません。


  10. (2)が正解
    技術者はインフォームドコンセントを重視し、パターナリズムに陥らないよう注意しなければなりませんが、この事例は例外といえます。
    例外といえる理由は2つあります。
    1つ目は、これは「弱いパターナリズム」と考えられることです。ハリスらは、パターナリズムには「強いパターナリズム」と「弱いパターナリズム」があり、後者は次の条件オいずれかが該当すれば正当化されるとしています。
     a.相手が過度に感情的になっているとき
     b.相手が自分の行為の結果について無知であるとき
     c.相手が自分の決定に関係のある要因を十分に理解するにはあまりにも若いとき
     d.相手が情報を与えられて自由に決断しようとしているかを決定するのに時間が必要であると判断されるとき

    今回の場合はbに該当すると判断されます。
    また2つ目は、生命にかかわる緊急事態であること、すなわちこれは緊急避難であると解釈されることです。来襲する津波から逃れるために無断でビルに入ることは、緊急避難とみなされ住居不法侵入などの罪にはなりません。渋滞する高速道路でオシッコが我慢できなくなった子供に路肩で排尿させるといったケースもこれにあたります。
    こういった考察結果の上に立って選択肢をみてみます。
    (1)・・・・× インフォームドコンセントを尊重することは確かですが、彼の行動はそれを軽視したとはいえません。
    (2)・・・・○ 特に「客観的に確信」していたということが大切です。
    (3)・・・・× 「科学的なもの以外は尊重する必要はない」というのはあまりに傲慢です。
    (4)・・・・× やや選択に迷ったかもしれません。彼の行動は正当なものでありましたが、パターナリズムには間違いありません。
    (5)・・・・× 定量的ではなかったにせよ客観的な証拠は多くありますし、定量的でなけれな判断・行動できないというのは誤りです。

  11. (1)が正解
    (ア)・・・・×
     問題があることの指摘と予想される問題点の中身を報告したことまでは倫理的に問題はない行動です。しかし、それ以後は倫理上の義務はないかというと、彼は技術士ですから公益確保の責務があります。技術者倫理の公益優先原則に反しているわけです。彼の沈黙は、この責務を放棄したことになるといえるでしょう。
    (イ)・・・・×
     非常勤条件はいわゆる「名義貸し」で、常勤操作などは違法行為ですから、議論の余地はありません。常勤の場合も専門外の部署なので、結果的に有能性原則に反する可能性が残りますが、管理職であり技術サービスにはあまり携わらないと予想されること、逼迫した経済状態にある中での緊急避難の一種とも考えられることから、彼の行動は正当化される余地があります。非常勤以外の条件が提示されなければ緊急避難といえなくもないですが、実際には常勤条件(適法で倫理的にも正当化の余地がある)も選択の余地があるのですから、緊急避難とはとてもいえません。
    (ウ)・・・・×
     内部告発が正当化されるかどうかが問題になります。デジョージの正当化条件にあてはめて考えてみると、「内部的に可能な手段を試みつくしたか?」という点でひっかかります。事業主の反応は非倫理的であり、恫喝的なものでもあったかもしれませんが、1回のトライであきらめてしまったのはよくありません。また、告発先が不適当です。告発するならば当局(上級官庁)にすべきであり、マスコミの無責任な煽り報道などで不必要な二次的問題を発生させてしまうかもしれません。そういう意味でディジョージの「リスクを考慮したか?」という条件にもひっかかると思われます。

  12. (1)が正解
    (ア)・・・・○
     技術士Rの中では、利益の相反が生じかけていました。結果的に友人Cの製品が最も優秀であったため、利益の相反は発生しませんでしたが、第三者から見れば疑われる可能性があります。利益の相反が起こる可能性がある場合、それに関する情報の開示が必要ですが、「利益の相反が発生していると疑われること」もこれに該当すると考えるべきです。
    (イ)・・・・×
     「技術者はその有能な領域においてのみサービスを行う」という有能性原則に反します。
    私事になりますが、もう5年以上前、地盤解析のプログラムをいろいろと作成し(ただしMS-DOSソフト!)、パソコン通信(インターネットじゃない!)でニフティ・サーブを介してオンラインソフトとして配布していた時期があります。地盤の破壊(支持力)や変形、沈下、液状化などを解析するのですが、ボーリングデータだけから一般値・換算値を当てはめて、ほぼ自動で地盤モデルを作るものでした。同様に、ボーリング柱状図データを読み込んで、レポート原稿を自動的に作成するソフトというのも作成しました。いずれも非常に便利で社員も使っていましたが、モデル構築を「自分で考えない」という現象が起こり始めました。便利なソフトウェアは、それをあくまでツールとして使いこなすだけの実力を使う側が持っていないと、それに頼って技術力を低下させかねない「諸刃の剣」であることを思い知らされました。

    (ウ)・・・・×
     技術士Tが有効な方法をすでに知っているということ自体は、彼の技術力の一部であり、それに対して相応の対価を受け取る権利が彼にはあります。その一方で、以前の研究成果は税金を使って行われ、報告書も公表されていることから、不特定多数(国民みんな)に対するサービスであったと解釈されます。したがって今回の依頼主もその恩恵を受ける権利がありますから、今回の業務に関しては「知らなかったばかりに二重払いした」部分が出てきます。このようなケースに関しては、報告書の存在を知らせ、そのうえで技術士Tが成すべき仕事の内容を吟味し、それに対する報酬を受け取るようにすべきです。また、このようなケースは、1つのサービス(仕事)について、複数の依頼主から重複して報酬を得ることになります。これは依頼主の利益を損ねることになります。この場合、社内技術士にとっては自分の会社の利益(ボロもうけ!)と利益の相反が起こりそうに思いますが、この「利益」が不当・不適切なものについては全く優先されるべきではないので、利益の相反は起こらないか、起こっても直ちに解決できます。なお、この問題は文献4のp.7、「以前の仕事の開示」と同じケースです。アメリカでは十分な情報の開示なしに同一サービスに対する複数依頼主からの報酬を得ないことという倫理規定があります。

  13. (3)が正解
    文献3p.191などに明記されています。
    (ア)・・・・持続可能な開発
    (イ)・・・・調和
    (ウ)・・・・健康
    (エ)・・・・生産的

  14. (5)が正解
    システム原則1は、地球温暖化や酸性雨問題を念頭に、化石燃料による大気汚染などを言っています。
    システム原則2は、オゾン層破壊や発がん性物質、環境ホルモンなどを念頭に、主に有機塩素系化合物のことを言っています。
    システム原則3は、河川海洋保全、森林保全により、水の循環系を確保することを主に言っています。生態系もかかわります。
    シシテム原則4は、南北問題のことを言っています。途上国における開発の権利も含んでいます。

  15. (2)が正解
    (1)・・・・× 「ソフトだからハードより安い」というような判断が下された例はないはずです。
    (2)・・・・○ 実際にはこのように判断されました。自分たちの頭脳だけで新システム開発はできるだろう。設計書はそれを効率化するための「つなぎ」にすぎないので、もっぱら盗み出したものに頼る産業スパイとは異なるという判断です。
    (3)・・・・× 一理ありますが、問題文にもあるように動機の話ではありません。また、個人利益を優先しており利益相反の解決策としては最悪です。
    (4)・・・・× 警笛鳴らしは公表することであって、こっそり盗み出すことではありません。また動機も個人利益です。よって警笛鳴らしと解釈することはできません。
    (5)・・・・× 青色LEDなどの「社員の知的財産権」につながりますが、現在のところ発明などに限られて適用されています。また、プログラム本体ならまだしも、それ自体ではソフトウェアとして動作しない設計書が著作物といえるか非常に疑問です。