復員兵、奮戦ス(その2)口頭試験〜地水道楽さん

<建設・土質及び基礎>

1.はじめに
 8月の筆記試験を終え、会社の同僚2人と意気揚々引き上げた。車中での会話は「予想が的中してよかったね。しかし、3人合格させてよとは虫が良すぎるよ。1人は落とされる。」 かわいそうにも予想が的中し、若い方は落ちていた。

2.論文テーマ
 口頭試験も4回目ともなれば、何を聞かれても回答できる。とはいえ、「体験論文」を作成しなければならない。テーマは話題性から言っても「老朽化したフィルダム盛土の安全性の確保」にしよう。これなら技術士にふさわしい業務と判定される。

〇論文(1):フィルダムの堤体上流盛土の耐震性能の確保
@内容:堤体盛土の耐震対策として底泥土をセメント改良し砕・転圧して盛り立てた。
A特質:大ダムに適用するために従来、粘着力(C)のみで評価していた強度定数に内部摩擦角(φ=10°)の概念を加えた。耐震対策のためのゾーニングを工夫した。
B成果:内部摩擦角を考慮した分だけスレンダーな断面形状とすることなった。また、ゾーニングを工夫したのでレベル2地震時における堤体沈下量をほぼ1m以下に抑えることができた。

〇論文(2):フィルダムの堤体下流盛土の水理的安定性の確保
@内容:フィルダム下流斜面から滲出した浸透水の排水対策。
A特質:堤体下流斜面で滲出水が認められた。堤体内に設置した水位観測データから滲出水が貯水と連動していないことを突き止めた。
B成果:老朽ダムの共通した課題である下流斜面からの滲出水の排除手法の1つを確立できた。

3.口頭試験
Q1:なぜ、フィルダムをテーマとしたのか。
A1:東日本大震災で福島県の藤沼ダムが決壊した。地震でダムが決壊したのは有史以来初めてである。このダムはもともと浸潤線が高く滲出していたのに加え、地震荷重を受けたので下流斜面が一気に滑ってしまった。
 ここで取り上げたのは藤沼ダムと同タイプのフィルダム。論文(1)では耐震対策、論文(2)では滲出水対策を取り上げた。時勢に適合したテーマと考えたからだ。
Q2:それなら論文(1)を詳細論文とすべきではないか。
A2:論文(1)は高級な業務であるがゆえに3,200字程度では十分に説明できない。一方、論文(2)は比較的簡単な業務であって、課題・問題点、情報の加工や推論のプロセスが説明しやすい。口頭試験でのプレゼンには向いている。
Q3:論文(2)のような業務を自分で担当した理由はなにか。
A3:無償で行った業務であるが、堤体盛土の下流斜面の浸透性破壊については十分に解明されておらず、これまでの経験と知識に基づいて、解決していかねばならない。経験の乏しい若い人では難しい。
Q4:時勢に適合したテーマといえば、論文(1)に興味がある。ここに10分時間を与える。論文(1)を技術士詳細論文として説明せよ。
A4:省略
Q5:技術士資格をたくさん持っている。さらに「土及び基礎」で受験した理由は何か。
A5:省略
Q6:これから、農業部門、建設部門、総合技術監理部門の3つの資格を持つこととなろう。3足の草鞋をどのように使うか。
A6:省略
Q7:貴県の公共事業依存体質をどのように思うか。技術士としてどのように係っていくのか。技術士倫理と絡めて答えよ。
A7:省略

4.終わりに
 先般、さる高名な先生の講演会を拝聴してきた。「技術士試験で満点を取るにはどのようにしたらよいか」こんな積りで講演された訳ではないだろうが、配布された資料のレベルの高さ、講師の話術に私自身も圧倒された。
 初心者から見たら講師の言葉は天の声、神の声にも等しかろう。私は密かに思った。「70点とればいいんだよ」これが判る人は技術士だ。
 邪道だけど「1.はじめに」で述べたように「予想問題を作成して的中させる」ことも1つの手法。だけど、案外大変。ノウハウは企業秘密。講習会というのは映画の予告編。本編のさらに奥ノ院に入らないと教えてくれないだろう。
                                     以上
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