筆記試験対策
必須科目(建設一般)
最終更新:2011.07.27 Top Page

=CONTENTS=
1.出題内容と対策
2.出題傾向
3.解答の組立~骨子法の提案~
4.いい答案を書くために
5.重要テーマについて

 必須問題(建設一般)のうち、記述式問題対策について記しています。
 ただし、受験対策は人それぞれです。調査設計コンサル、ゼネコン、独立経営、公共機関、それぞれの立場で、ポイントは変わってきます。また、若年層・熟年層でも変わってきます。
 うのみにするのではなく、参考にできるところは参考にするというスタンスでお読みください。

答案用紙はA4サイズ・600字詰めです。
模擬練習用答案用紙を用意しましたので、お使いください。なお、この答案用紙は吉兼さんよりご提供いただいたものです。
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1.出題内容と対策

※ここで解説する内容は、「筆記試験対策マニュアル」で、例やH20建設一般問題を引用して解説しています。

(1) 評価基準

 部門一般(必須科目)は、「部門全般にわたる論理的考察力課題解決能力」を評価します。ちなみに18年度以前は「部門全般にわたる一般的専門知識」を評価していました。
 そして、それぞれの評価基準の概念と確認方法は下表のとおりです。特に赤字で書いた①~③の部分が採点基準であると考えてかまいません。
確認す
る能力
論理的考察力 課題解決能力
能力等
の概念
問題点の抽出から課題解決までのプロセスにおいて、検討に必要な要素の過不足、論理の矛盾や飛躍がなく、筋道を立て、明確な論拠を持って判断し、考察する能力 新たに直面した、または直面する可能性のある課題等に対し、多様な視点から検討し、論理的かつ合理的に適切な対応を行える能力
その確
認方法
「技術部門」に関係するテーマに対する対処のプロセスやその考え方等を問う
①テーマの技術的な内容について論拠を持った分析・検討がなされ、その内容が、論理の飛躍や要素の過不足がなく明確に記述されているか
「技術部門」に関係するテーマに対する問題点や課題の抽出・分析、それに基づく実現可能な対応策の指示等を問う
②問題点等の抽出・分析が適切に行われ、対処すべき要因が明確化されているか
③対応方針や対応策は適切かつ実現性があるか、多様な観点からその効果まで検討されているか
 ここで重要なのは②の「問題点の抽出・分析」です。試験問題には「課題と解決策を述べよ」と書いてあっても、採点時には問題文抽出ができているかを評価しているのです。
 それでは問題点とは何でしょうか。それは、課題解決にあたりボトルネックとなるもの、課題が解決困難になっている原因です。「なぜその課題が解決できないか」と考え、必要な情報を集めることで、問題点は浮かび上がってきます。そしてこれを抽出することができれば、解決の方向性はおのずと見えてきます。
 問題点の抽出ができていないと、上表の採点基準②の「問題点の抽出」はもちろん、③の「対応策は適切か」、①の「論理の飛躍はないか」の3つすべてについて×となるのです。これではA評価などもらえません。
 このことは非常に大事なポイントですので、よく認識してください。


(2) A評価を取るコツ

 A評価を取るコツは、以下のとおりです。
  ①提案型ではなく、解決型、それも問題点抽出解消型の課題解決をする。
 そして、課題解決の結果だけ示したのでは問題点抽出解決型かどうかはわかりませんから、
  ②課題解決のプロセス(問題点を抽出・分析して解決策を必然的に導くという行程)を示す。
ということも必要です。
 B評価になっている答案の多くが、上記①②をせず、課題からいきなり解決策に行っています。その結果、解決策の適切性(最適性)が読み取れなかったり、話が飛躍したりしているのです。
 さらには、アイデア提案型の勝負だと勘違いしている人もいます。そういう人は問題点を掘り下げるなどという発想は最初からなく、課題を与えられたら、「うーん、何かいいアイデアはないかなあ」などと考えてしまい、白書に書いてある施策を「いいアイデア」として書いたりしているのです。
 このように、B評価答案のもっとも多い失敗である、課題にたいして直接解決策を提案するということをせず、問題点抽出解消型の答案を書くように留意すれば、A評価を取れる答案にぐっと近づきます。
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2.出題傾向

 最近6年間の出題内容をみてみましょう。
年度 出題された設問
H15 我が国全体として人口減少がみこまれるなかでの社会資本整備に進め方について、あなたの意見を述べよ。
いろいろな分野・場面での市民参加の声が高まりつつあるなか、社会資本整備を進めるに当たっての社会的合意形成のあり方について、あなたの意見を述べよ。
H16 巨大地震の発生が懸念されるなかで、地震防災対策の現状と課題について述べるとともに、今後のあり方についてあなたの意見を述べよ。
活力ある経済社会を構築するための社会資本整備のあり方について、あなたの意見を述べよ。
H17 災害に強い国づくりのための社会資本整備のあり方について、あなたの意見を述べよ。
平成17年2月に発効した京都議定書を踏まえ、建設分野が取るべき地球温暖化対策について、あなたの意見を述べよ。
H18 維持管理・更新投資が増大すると見込まれる中で、その現状と課題を述べ、今後の社会資本整備のあり方について、あなたの意見を述べよ。
社会資本整備における工事の品質確保に関する方策について、あなたの意見を述べよ。
H19 産業構造の変化等により、人口減少傾向にある地域における社会資本整備の課題を挙げ、厳しい財政の制約の下で、地域の活性化を図っていくための社会資本整備のあり方について、具体策を示しあなたの意見を述べよ。
我が国の技術の発展を支えてきた“団塊の世代”の多くの技術者が、定年退職により実務の第一線から退く事態を迎えている。そのような経験豊富な技術者の大量退職が、社会資本を整備するための技術に与える影響と課題について多面的に述べ、それを踏まえて、今後技術を維持継承するための方策についてあなたの意見を述べよ。
H20 社会資本の維持管理に関する現状と課題を述べ、これに対する対策としてのアセットマネジメントの必要性及びその実用化に向けた方策についてあなたの意見を述べよ。
我が国の公共事業は、近年、縮小傾向にあるが、このような状況が、建設分野における技術力の維持及び向上に与える影響とその課題を挙げ、今後とるべき方策についてあなたの意見を述べよ。
H21 地球温暖化を緩和するための低炭素社会について、以下の問いに解答せよ。
(1)低炭素社会の実現に向け貢献できると考えられる社旗資本整備の取り組みを3つ挙げ、それぞれについて概説せよ。
(2)前項で述べた取り組みの1つを取り上げ、その推進にあたっての課題と解決策についてあなたの意見を述べよ。
建設部門においては、解析・設計から管理に至るまでコンピューターの導入と併せ、技術の高度化・細分化が進展しており、計算結果の妥当性を総合的に判断することが困難となってきている。
このような状況を踏まえ、技術者として解析・設計や数値シミュレーション等の成果の合理性を総合的に判断できる技術力を維持するための課題と今後とるべき方策についてあなたの意見を述べよ。
H22 我が国の国土は厳しい地形・地質、気象等の条件下にあることに加えて、近年は社会的状況も大きく変化し、自然災害から国民の安全や生活を守ることがより一層求められている。
建設部門に携わる技術者として、社会的状況の変化に対応して防災あるいは減災対策を行う上での課題を3つ挙げ、その内容を説明せよ。
また、これらの課題に対して、国民の安全や生活を守る観点から今後どのような取組を進めていくべきか、あなたの意見を述べよ。
我が国の建設産業においては、国内の公共事業投資額の減少に伴い、さらなる成長が期待される海外の社会資本整備に対する積極的な取組が求められている。
一方、国際貢献・技術協力の観点から、開発途上国などにおける社会資本整備に対する積極的な取組も求められている。
このような状況の中、建設部門に携わる技術者の視点から、海外での社会資本整備に取り組む上での課題を3つ挙げ、その内容を説明せよ。
また、これらの課題に対して今後とるべき方策について、あなたの意見を述べよ。

 これらの出題内容を見るとその傾向は明瞭で、以下に示すように、その時期のインフラ整備重要課題、国土交通白書の第Ⅰ部から、毎年必ず出題されています。

  1. その時期のインフラ整備の重要課題が出題される
     過去問題を見ると、
      ・H15:NPO 法…2問目
      ・H16:小泉改革(PFI など)…2問目
      ・H17:前年の中越地震や水害…1問目、京都議定書発効…2問目
      ・H18:公共事業品質確保法…2問目
      ・H19:2007年問題…2問目
      ・H20:道路特定財源問題など…両問(あまり関連は明確ではない)
      ・H21:温暖化ガス15%削減等の日本版グリーンニューディールの取り組み
      ・H22:少子高齢化・異常気象顕在化…1問目
          政権交代後の建設分野縮小と国交省成長戦略における国際展開…2問目
    といったように、その時期の社会問題や自然災害、重要法令等、インフラ整備における重要課題がテーマとして選ばれています。

  2. 白書の第Ⅰ部から出題される
     白書は2部構成になっていますが、その年に特に重要視する取り組みを副題としており、第Ⅰ部ではこの内容について記述しています。そして第Ⅱ部は「国土交通行政の動向」として、様々な分野についての現状と方向性をまとめたものとなっています。
     そしてこの第Ⅰ部のテーマも建設一般問題として出されやすくなっています。次頁に示す最近の白書の副題と第Ⅰ部の内容と出題内容を比較すると、
      ・H15:「人口減少、少子高齢化時代の国土交通行政」…1問目が直結
      ・H16:「活き活きとした地域づくり」…「活力ある経済社会」として2問目
      ・H17:急遽挿入された「災害に強い国づくりをめざして」…1問目が直結
      ・H18:「安全・安心社会の確立」…出題されず(昨年度出題された)
      ・H19:「地域の活力向上」…1問目
      ・H20:「進行する地球温暖化」…出題されず(21年度に出題された)
      ・H21:「私たちの暮らし」…総花的なテーマで、出題されたともさえないとも言いがたい
      ・H22:「転換期を迎えている地域・社会と国土交通行政」…「国際展開・官民連携」が2問目
    というように、当該年度の試験で出題されるか、たとえ直近で出題されなくても前後年には出題される傾向が続いています。
    いっぽう、平成22年度白書では、
    ・国際展開・官民連携、観光、空港、海洋、住宅・都市の分野で大胆な政策提案を行っていく
    ・グローバル化が進む世界において、持続可能な成長を実現するため必要なインフラ基盤を整備・活用し、成長分野を延ばしていく
    ・多様な主体がアイデアを出し合い協力して取り組む
    といったことをすべきと書かれています。このうち1つ目と2つ目はH22.5に公表された「国交省成長戦略」の内容が反映されています。
    つまり、平成22年度は白書というよりも国交書成長戦略をベースに出題されえたともいえます。白書は政権交代の影響で出版が遅れ、問題作成時点では成長戦略がその代わりになっていたということでしょう。

 以上のことから、白書(あるいはその代用となるような国交省のインフラ整備方針を示した文献)を読み込み、社会資本整備の現状を把握しておけば、インフラ整備テーマで「まったく予想外の問題」に遭遇することはまずもってないといえましょう。
 なお、平成19年度以降の問題を見ると、18年度までに比べて問題文の文章量が増えていることが見て取れます。それは、「課題を挙げ」「具体策を示し」「多面的に述べ」「3つ上げ、それぞれについて概説」といった、「こんなことを書け」という指定が多くなりました。特に21年度問題は、「取り組みを3つあげて、そのうち1つについて課題解決に関する意見を述べよ」といったように、答案構成の自由度が狭まる問題文になっています。この「3つあげて」に苦しんだ人も多かったのではないでしょうか。
これも評価基準が、18年度以前の「部門一般に関する基礎知識」から「論理的考察力・課題解決能力」に変化したことの現れであり、「想定問題答案丸暗記」では対処できない問題を出そうという意図、つまり記憶力ではなく考察力を見たいという意図も感じられます。
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3.解答の組立~骨子法の提案~

 こちらで述べたように20年度試験は、
  ●あらかじめ作った答案を丸暗記して書いたのでは対処できない
  ●長くなった試験時間は試験会場で論理構成と文章構成を練り上げる時間に使える
という特徴があります。
 これに対応するために、以下に示す骨子法を提案します。なお、例示は20年度SUKIYAKI塾の練習問題9-2-1です。※骨子の記入内容は模範解答ではありませんのでご注意ください。

(問題)
地球温暖化が進行する中、建設分野における問題点をあげ、あるべき方策についてあなたの意見を具体的に述べよ。
(H20 SUKIYAKI塾練習問題9-2-1)
  1. 表を作る
    問題用紙の余白に、次のような表(罫線は書かなくてもいい)を書きます。できれば白紙ページをいっぱい使って広く書きます。
    ここでは表にしていますが、実際には列境界線と項目欄下の罫線だけの、いわゆる十字罫線にしておいたほうが楽です。特に下欄はいっぱい入力しますから、表の高さは制限しないほうがいいと思います。
    現状・原因 課題 問題点 解決策の方向性 具体策





















  2. 現状のピックアップ
    指定されたテーマに合わせ、現状を短く箇条書きでリストアップします。
    もし設問が、問題点をあらかじめ示すものであった場合は、その原因を箇条書きします。
    なお、現状に関する情報が与えられ、「資料を読んで問題Ⅱ答えよ」というような形式で出題される可能性もあります(他部門ではそういった問題が目立ちました)。示された資料のテーマから逸脱したり、過度に知見を付加したりすると、題意に沿っていないと判断されるので、特に注意が必要です。また与えられた資料から、いかに効率的に情報を取り出し整理できるかという能力も問われることになります。

    現状・原因 課題 問題点 解決策の方向性 具体策
    我が国は京都議定書で温室効果ガス排出量削減を約束→2012年までに1990年比6%減
    CO2排出量は逆に増加→削減義務達成は困難
    建設分野→施工段階でのCO2排出は全体の1%と少ない
    建設分野が関わるライフサイクルCO2は全体の約1/2




    世界の平均気温上昇(100年間4度)、海水準上昇(100年間59cm)が予測
    →これに伴い局所的豪雨や渇水、高潮災害の頻発が予測





  3. 課題の整理
    課題とは、クリアされるべきテーマです。これはほとんどの場合、問題文でおおまかに示されていたり、提示資料の中に示されていたりします(そのものズバリが書かれているわけではありません。読み取ることが期待されます)。
    現状・原因 課題 問題点 解決策の方向性 具体策
    我が国は京都議定書で温室効果ガス排出量削減を約束→2012年までに1990年比6%減
    CO2排出量は逆に増加→削減義務達成は困難
    建設分野→施工段階でのCO2排出は全体の1%と少ない
    建設分野が関わるライフサイクルCO2は全体の約1/2
    ①温暖化緩和策としてCO2排出を抑制する取組が求められている


    世界の平均気温上昇(100年間4度)、海水準上昇(100年間59cm)が予測
    →これに伴い局所的豪雨や渇水、高潮災害の頻発が予測
    ②温暖化適応策として異常気象や海水準上昇に伴う災害等への対処が求められている



  4. 問題点の抽出整理
    課題をクリアするにあたって、それを困難にするようなボトルネックを絞り込みます。
    このとき、現状が問題点の根拠となるよう、現状から飛躍した問題点にならないよう注意します。
    大事なことは、現状記載事項の中から問題点を抽出するということです。白書暗記で臨むと、現状に相当する白書記載事項をリストアップ、問題点に相当する白書記載事項をリストアップという感じになってしまって、現状と問題点のつながりが希薄あるいはなくなってしまいます。

    現状・原因 課題 問題点 解決策の方向性 具体策
    我が国は京都議定書で温室効果ガス排出量削減を約束→2012年までに1990年比6%減
    CO2排出量は逆に増加→削減義務達成は困難
    建設分野→施工段階でのCO2排出は全体の1%と少ない
    建設分野が関わるライフサイクルCO2は全体の約1/2
    ①温暖化緩和策としてCO2排出を抑制する取組が求められている ①自動車からの排出が多い→建設分野の問題としては、自動車依存のインフラ構造

    a)都市スプロール化(生活)


    b)円滑な交通を妨げるボトルネックや道路渋滞

    世界の平均気温上昇(100年間4度)、海水準上昇(100年間59cm)が予測
    →これに伴い局所的豪雨や渇水、高潮災害の頻発が予測
    ②温暖化適応策として異常気象や海水準上昇に伴う災害等への対処が求められている ②建設分野の問題としては、災害対策

    a)新規防災インフラへの投資が厳しい


    ここで大事なことは、課題と問題点は違うということです。
    たとえば上の事例では課題①はCO2排出抑制です。しかしそれが難しい原因があります。課題クリア(CO2排出抑制)を難しくしている何かがあるのです。さらに上記例では問題文で「建設分野の問題」という指定があるので、建設分野の関わりに持っていかないとおかしくなります。
    この「絞込み」をしないと、問題点は①CO2削減、②豪雨・高潮対処みたいな感じになってしまいます。
    それがなぜいけないかというと、絞り込まれていない分だけ解決策が多くなり、百花繚乱になってしまうのです。
    なぜ百花繚乱がいけないかというと、一つ一つの解決策を具体的に記述するスペースがなくなり、総論的・概略的なことしか書けなくなるからです。
    なぜそれがいけないかというと、具体性が乏しいと、重要な評価尺度である「実現性」において低く評価されてしまうからです。
    また、問題点の絞込みが浅いと、これも重要な評価尺度である「問題点抽出」において低く評価されます。
    問題点は、3つ~5つくらいになるようにしたほうがいいでしょう。それより多いと百花繚乱的になります。
    この問題点抽出ができるかどうかがA評価が取れるかどうかの分かれ目になることが多いようです。言い換えると、課題から問題点に絞り込めていない答案はB評価になってしまうことが多いということです。

  5. 解決策の方向性
    それぞれの問題点に対応して、解決策の方向性を箇条書きします。
    現状・原因 課題 問題点 解決策の方向性 具体策
    我が国は京都議定書で温室効果ガス排出量削減を約束→2012年までに1990年比6%減
    CO2排出量は逆に増加→削減義務達成は困難
    建設分野→施工段階でのCO2排出は全体の1%と少ない
    建設分野が関わるライフサイクルCO2は全体の約1/2
    ①温暖化緩和策としてCO2排出を抑制する取組が求められている ①自動車からの排出が多い→建設分野の問題としては、自動車依存のインフラ構造

    a)都市スプロール化(生活)
    a)集約型都市構造への転換
    b)円滑な交通を妨げるボトルネックや道路渋滞 b)交通流の円滑化
    世界の平均気温上昇(100年間4度)、海水準上昇(100年間59cm)が予測
    →これに伴い局所的豪雨や渇水、高潮災害の頻発が予測
    ②温暖化適応策として異常気象や海水準上昇に伴う災害等への対処が求められている ②建設分野の問題としては、災害対策

    a)新規防災インフラへの投資が厳しい
    a)選択と集中によるハード対策
    b)ハードとソフト対策を織り交ぜた防災・減災対策
    問題点がしっかり絞り込まれていれば、それに1:1に対応して解決策が考えられます。
    問題点の絞込みが不足していると、以下のようなことが起こります。
    1. 1つの問題点に対して解決策がいっぱい出てくる
      解決策は1つとは限りませんから、複数の解決策があってもいいのですが、問題点がぼんやりしていると解決策が「あんなことも、こんなことも」になってしまいます。
    2. 論理の飛躍が起こる
      たとえば上の例で、
       課題:CO2削減
       問題点:自動車からの排ガスが多い
       解決策:交通流の円滑化
      としたらどうでしょう。問題点と解決策の間に論理の飛躍が出ています。自動車の排ガスが多いのなら、普通はどうするでしょう。自動車利用を控えたり燃費を改善したりするでしょう。ここで、「自動車利用を控える」のは建設分野の問題点になりません(だから建設分野の解決策にもなりません)し、自動車依存はそう簡単に変えられません。ということで燃費改善に期待がかかるのですが、これを邪魔しているのがボトルネックや渋滞です。
      と、ここまで考察してはじめて「交通流の円滑化」という解決策に話がスムーズに流れていくわけです。
      同様に、上記課題②でも、
       災害リスクが増大している→しかし新規インフラ投資は困難→ハードとソフトを織り交ぜた対策
      というように絞り込まれていて、はじめて「ハード&ソフト」という解決策が説得力を持ちます。それを怠ると、
       災害リスクが増大している→ハードとソフトを織り交ぜた対策
      となってしまいます。「災害リスクが増大しているのなら、ダムを作ったり堤防を強化すればいいでしょう。なのになぜハード&ソフト?」ということですね。新規インフラ投資が困難なことくらい誰でも知ってはいますが、それを大前提にして記述を省略してしまっては、論理の飛躍になってしまいます。これは試験なのですから、たとえ常識であっても、それを論理的に説明することが求められているのです。
    このように、問題点がしっかり抽出されていれば、解決策は自然と導かれます。問題点抽出が最重要ポイントであると申し上げているのはこういったことです。
    また、骨子法を使っている限り、問題点としてあげているのに解決策がないとか、逆に問題点としてあげていないのに解決策が示されているといったことは起こりにくくなります。もし骨子法を使っているのにそういうことが起こるならば、表の横方向のリンクを考えていないからです。つまり、「課題を書け」といわれて課題をずらずらとリストアップし、「問題点を書け」といわれて問題点をリストアップし、解決策を書けといわれて解決策を・・・・というように、バラバラで考えているからです。
    そうではなくて、
     課題→(解決のボトルネックは)→問題点→(それに対して)→解決策
    という横方向の流れで考える必要があります。

  6. 具体策の提示
    方向性を実現するための具体的な方策を提示します。
    現状・原因 課題 問題点 解決策の方向性 具体策
    我が国は京都議定書で温室効果ガス排出量削減を約束→2012年までに1990年比6%減
    CO2排出量は逆に増加→削減義務達成は困難
    建設分野→施工段階でのCO2排出は全体の1%と少ない
    建設分野が関わるライフサイクルCO2は全体の約1/2
    ①温暖化緩和策としてCO2排出を抑制する取組が求められている ①自動車からの排出が多い→建設分野の問題としては、自動車依存のインフラ構造

    a)都市スプロール化(生活)
    a)集約型都市構造への転換 居住エリアに近接して商業・行政サービス施設を集約 自転車・徒歩移動を促すとともに、公共交通施設を整備 集約することによる効果的な都市緑化
    通勤・買物等の車による移動に関して、スマートIC等高速道路の弾力的運用を含むTDMとITSにより交通流を円滑化
    b)円滑な交通を妨げるボトルネックや道路渋滞 b)交通流の円滑化
    高規格道路・バイパス整備の推進による物流の円滑化と市街地迂回による生活交通の円滑化
    ボトルネック踏切解消、路上工事縮減等による生活・物流の交通流円滑化
    世界の平均気温上昇(100年間4度)、海水準上昇(100年間59cm)が予測
    →これに伴い局所的豪雨や渇水、高潮災害の頻発が予測
    ②温暖化適応策として異常気象や海水準上昇に伴う災害等への対処が求められている ②建設分野の問題としては、災害対策

    a)新規防災インフラへの投資が厳しい
    a)選択と集中によるハード対策 事業評価の積極的導入による厳選したハード整備
    ・透明性の高い費用便益分析法の導入と地域説明
    b)ハードとソフト対策を織り交ぜた防災・減災対策 地域住民参加も含めた災害情報の共有と避難システム構築による減災
    ITを活用した災害情報のリアルタイム取得と広報体制
    土地利用規制等の手法による危険地域への住宅立地の抑制
    ポイントは、実現性が評価できるように、できるだけ具体的な提案をすることです。

  7. 骨子を答案に
    以上のようにしてできた骨子を抜き出し、これを見出しに使って、コメントや「おわりに」なども含めて答案構成を考えると、こちらのようになります。
    ほとんどが骨子で作成した内容で、残りスペースはあまりありませんから長文などとても書けません。箇条書きに近い、文章というよりコメントというべき簡潔な文しか書けなくなります。
    つまり、骨子法で作った答案は、その論理展開と構成に主力があり、見てくれの部分、つまり文章にはほとんどウェイトを置いていないものになります。そして骨子表を作った時点で、答案はほとんど出来ているということになります。
 以上のように、骨子から作りこんでいく骨子法を使うことで、答案は
  • 現状~課題・問題点~解決策の流れが、論理的なつながりを持ったものとなりやすいため、論理的考察力の評価基準である「論拠を持った分析・検討」、「論理の飛躍や過不足がない」に照らして、評価を受けやすい。特に論理の飛躍や過不足が起こりにくい。
  • 問題点が現状に即したものとなるため、課題解決能力の評価基準である「問題点の抽出・分析」、「対処すべき要因の明確化」に照らして、評価を受けやすい。
  • リストアップを行うことで、問題点や解決策の「見逃し」が発生しにくくなるとともに方向性段階ですでにきめ細かくなるため、課題解決能力の評価基準である「実現性」、「多様な観点」に照らして、評価を受けやすい。
  • 深い入れ子構造の答案ができるため、答案の主体部分が見出しになり、結果として長い文章を書く必要がなくなる。言い換えれば、見出しと箇条書きだらけの答案になる。
    このため、ダラダラ文や主語と述語のねじれなどがなくなり、読みやすい簡潔な答案が作成できる。言い換えれば文章力がほとんど関係ない、論理構成で勝負する答案になるので、特に文章を書くのが不得意な人にはかなり楽になる。
といったものになることが期待できます。さらに、次のような効果もあります。
  • 時間が有効に活用できる
    骨子法で答案を作成する場合、長くなった解答時間を有効に活用できます。つまり、最初の1/3から1/2程度の時間を骨子表作成と紙面割り振り計画(コメント挿入計画)に使って答案の構成をしっかりと作りこみ、残りの時間でこれを答案に書き表すのです。
    こうすることで時間を有効に使ったしっかりした論理構成の答案ができ、他の受験生に差をつけることができると期待されます。

  • 答案記録が残る
    この骨子表は問題文とともに持ち帰れるので、そのまま答案記録になるという特徴もあります。自分が何を答えたか、記憶に頼るしかないのと記録が残っているのとは、口頭試験を前にすると特に精神衛生上、大きな違いになるでしょう。

  • 予想外の出題形式に対応しやすい
    「答案」は、論理構成部分(考察部分)と文章構成部分(表現部分)が重なってできているのですが、骨子はこのうち論理構成が大部分です。したがってこれをしっかり作っておけば、予想外の解答様式で出題された場合でも、影響はあまり受けません。論旨はそのままで表現方法を変えるだけなので、質を保った柔軟な対応が可能になります。
    さらに、前述した「一歩踏み込んだ出題」のように従来と異なる内容について問う問題が出された場合、受験生は臨機の対応を迫られることとなります。この場合でも、情報(現状)を整理し、そこから問題点を抽出し、その解決の方向性を決めて具体的に提案するという骨子法の作業手順で考察すれば、かなり追従できると期待されます。
まとめると以下のようになります。
  1. 答案用紙のできれば1面すべて白紙のページに、「現状」「課題」「問題点」「解決方向性」「具体策」の5項目からなる表(十字罫線表)を書く。

  2. 現状をリストアップするとともに課題を整理し、それから問題点を抽出整理する。

  3. 問題点に応じた解決策の方向性を整理し、それぞれについて具体策をリストアップする。

  4. これらの項目をそのまま
     1.現状
     2.課題・問題点
     3.解決策

    もしくは
     1.現状
     2.課題・問題点
     3.解決策の方向性
     4.具体策

    という大項目の下に、中項目・小項目の見出しとして使う。


  5. 見出しの下に、1~2行の短いコメントを入れる。
以上です。なにせ考えをまとめるために骨子表にしたものをそのまま章構成の見出しに使うのですから、読み手にも理解しやすいものになるはずです。ダラダラ文もありませんから、なおさらです。
ただし、以下の点に注意して活用してください。
  1. スカスカ答案にならないように
    骨子法は、もともと「書くべき項目」のリストアップ方式なので、どうしても項目が多めになります。さらにその中で書き込む内容もメモしたりするので、項目が多すぎたり箇条書きを使いすぎたりといったことになりやすい傾向があります。
    項目ごとの緒言、小項目の内容解説など、文章はそれなりに入れましょう。目安としては2~3行くらいを最低ラインに。また特に理由がないのに箇条書きを必要以上に使うと読みにくくなります。
    また、どうしても項目が多くなりすぎるために文章を書くスペースがなくなるということもあります。そういうときは、項目を絞り込みましょう。関連項目をまとめたり、あまり重要でない項目についてはさらっとふれるだけにしたり、あるいは省略したりして、あまり盛りだくさんにならないように。

  2. 課題→現状→問題点の順で書くことが多い
    骨子表に「現状」「課題」「問題点」「解決策」の順で書いたからといって、その順に埋めていかねばならないということはありません。
    たとえば、以下のような崩壊を起こした道路法面の復旧対策について考えてみると、
     ①道路法面が崩壊して通行できなくなった道路の早期復旧(課題)
     ②現地踏査→地山は岩盤で安定、法肩上方に崖錐が分布、クラックも確認。(現状)
     ③今後崩壊の危険があるのは法肩上方の不安定な崖錐。(問題点)
     ④法肩上方の崖錐崩壊防止。崖錐を除去。(解決策)
    というように、実際の業務では課題→現状→問題点の順で書くことが多いのです。ですから、骨子もまずは課題から書いていくと整理しやすい場合が多いと思われます。

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4.いい答案を書くために

  1. トップ20%に入ろう
     この試験は、実は相対評価だと思っておいたほうがいいでしょう。余裕をもってA評価を取るためには、トップ20%に入りましょう。
     そのためには、他人が書かないような素晴らしいことを書くのではなく、B評価になるような失敗をしないことがポイントです。それは、前述したように、アイデア提案型ではなく問題点抽出解消型で課題解決をすることです。

  2. 骨子法を活用しよう
     「現状」「課題」「問題点」「解決策」からなる骨子表を作って整理すれば、問題点抽出の抜け、課題と解決策の対応漏れなどはかなり対応できると思います。
     H19以降の試験では、試験時間がたっぷりありますから、少なくとも30分は構成を考えるのに使うことが出来ます。拙速に答案を書き出すのではなく、採点基準(論理的考察力、課題解決能力<問題点抽出解消型>)を常に念頭におきながら構成をじっくり練り上げて答案に持っていくことがA評価への近道です。

  3. 課題は問題文に書いてあることが多い
     問題文の中から「○○だが△△する」という「困難だがやってくれ」的にまとめられる部分を取り出すと簡単に課題を整理できることが多くあります。たとえばH20の問題2-2は、
    我が国の公共事業は、近年、縮小傾向にあるが、このような状況が、建設分野における技術力の維持及び向上に与える影響とその課題を挙げ、今後とるべき方策についてあなたの意見を述べよ。
    「公共事業が縮小傾向にあるが、技術力を維持向上する」
    【課題】公共事業が縮小傾向にある中での技術力の維持向上
    というようにして課題を整理できます。

  4. 大事なことは省略しない
     「知っているが省略して簡単に書いた」のか、「知らないので簡単にしか書けなかった」のか、試験官にはわかりません。そのため、後者と判断します。十分注意してください。
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5.重要課題について

※ここで解説する内容は、「筆記試験対策マニュアル」で、答案骨子例も示して詳細に解説しています。

インフラ整備の重要6項目
インフラ整備にかかわる大きな問題・方向性は次の6項目に集約することができます。
  1. グローバル経済
    東アジアとの連携・水平分業→付加価値、物流活性化(港湾・道路)
  2. 環境
    地球温暖化(緩和と適応)/生態系/資源浪費→再生エネルギー
  3. 安全・安心
    災害リスクの増加/ハード&ソフト/選択と集中
  4. 地域の活性化・快適化
    コンパクトシティ/公共交通/ユニバーサルデザイン/地域コミュニティ・住民参加
  5. 多様な主体
    PFI/コンセッション方式/PI/ファシリテーション
  6. 観光立国
    景観/歴史風致/地域付加価値/保全から活用へ(観光資源)

  1. グローバル経済
     この問題のポイントは、東アジアとの関係の整理と広域物流になり、東アジアの経済発展と我が国経済の関係について適切に整理・理解していることが望まれます。
     東アジアが経済発展をしてきて、日本と競合する製品を作れるようになってきた今、人件費が高い我が国で、東アジア製品と価格で勝負できるような製品を作ることはきわめてむずかしくなっています。つまり、市場競争だけではもはや限界にきている(競争の限界)ということができます。
     そこで同じ東アジア圏で互いの距離が近く交通インフラもそれなりに整っているため、「最終生産品を運ぶ」といった大まかな「お付き合い」ではなく、互いに細かく資源や製品、中間製品などをやり取りすることができるようになっています。これにより、資源国・生産国・消費国といった単純な分業ではなく、ある国が生産国にもなり消費国にもなり、また生産においてもたとえばある国がパーツを作りある国で仕上げるといった水平分業も可能になってきました。
    そこで、我が国の付加価値、たとえばエレクトロニクス分野での優位性を生かし、家電製品のマイコン制御部分を日本で作り、これを東アジアに中間製品として運び、ここで製品として完成させて「安くて高性能の家電」として世界で販売するといった方法が考えられます。これが水平分業です。
     これはすでにかなり進んでいます。たとえば2010年度の部品・素材製品分野における日本から韓国への輸出は2,293億円に及んでいます。そして「韓国の家電製品や自動車が売れれば売れるほど、部品・素材の供給源となる日本企業の利益も上がる」という図式ができていました。
     以上のような中、我が国の経済活力を維持向上させる、地域経済を活性化させるために水平分業をいかに推進するかといったことが課題になってきます。
     グローバル経済の場合、外国と結ぶ海上基幹輸送路がまずあって、これが出入りするハブ港湾が国際戦略コンテナ港湾(京浜、阪神)ですが、ここで終わってしまっては、じゃあどうやって生産物を京浜や阪神に持っていくんだということになるわけです。
     ここで出てくるのが内航フィーダー輸送で、京浜・阪神といったハブと地方港湾を結びます。京浜は仙台石巻と契約を結んでいますし、阪神や水島や徳山といった瀬戸内地域の港湾との間に就航がはじまります。
     さらに地方港湾と生産拠点(工場等)を結ばないとネットワークとして成立しません。ここは陸上輸送になってくるのですが、最初から(生産拠点から)コンテナのままで運べれば非常にいいわけです。そうすると国際コンテナトレーラーが走れる幅員・線形を持った道路が必要になってきます。
     このように、物流を「流れ」「ネットワーク」できちんと理解し、それぞれにどのような物流インフラが必要なのかを理解していることを伝えられると、「断片的に覚えている」のではなく「総合的に理解している」ことを伝えられ、評価が上がります。

  2. 環境
     地球環境・生態系・循環型社会は、従来の社会経済の中ではあまり省みられなかった新しい価値観であり、「21世紀環境立国戦略」の3つの柱でもあります。
     これらは新しい価値観であるがゆえ、従来からの社会経済・社会資本整備とはトレードオフの関係になることもしばしばありますが、どちらか一方を優先するのではなく、環境立国戦略の言葉を借りれば「車の両輪」のようにバランスよく両立することが求められています。(それがアジェンダ21「持続可能な発展」にいうサスティナビリティです)
     今年度は環境といえば原発事故以来エネルギー問題、特に自然エネルギーがクローズアップされています。
     これらも含めて、H23.3に公表された「低炭素都市づくりガイドライン」をぜひ読んでおいてください。ここでは都市構造・交通とエネルギーそして「みどり」の3分野にわけて整理されています。そのなかで特に重要なキーワードは以下のものです。これらを備えたエコタウンの構築が今後は環境の大きなテーマになってくるでしょう。
    • コンパクトシティ
      脱モータリゼーションとともに、エネルギーの効率的な利用等のためにも必要です。また防災面でも、施設集約による津波からの避難タワー確保、避難施設まで近距離であるため災害弱者が迅速に避難可能、集約によりオープンスペースを作って避難所を確保など、様々な利点が考えられます。
    • エネルギー面的利用
      コンパクトシティにすることで、地域冷暖房のようなエネルギー面的利用も可能になり、エネルギー効率が増します。
    • 自然エネルギー
      未利用エネルギー(下水熱などの熱利用すなわちコジェネレーション、河川みすや地下水の温度差利用すなわちヒートポンプなど)や再生可能エネルギー(太陽光、風力、地熱、バイオマス等)が注目されています。太陽光以外はそこそこコストも低くなっています。
    • オンサイト発電
      自然エネルギーを中心に、中小規模オンサイト発電を推進することで送電ロスが解消され、効率的になります。
    • スマートグリッド
      自然エネルギーの欠点である不安定を克服し、ICTを活用して安定供給を行うために不可欠のシステムです。
    • 木質バイオマス
      再生可能エネルギーですが、「みどり」分野にも記載されています。特に注目されるのは森林保全の一環としての間伐材利用発電です。
      たとえば伊藤忠商事アメリカで10万kW/hの木質バイオマス発電に出資するとのことですが、これは一般家庭なら24万世帯の電力をまかなえる規模です。さらに短期的ではありますが、東日本大震災で大量に出た廃材の活用も言われています。

  3. 安全・安心
     東日本大震災をうけて、防災・減災はインフラ整備の最重要テーマになっています。
     問題作成時期からみて、大震災を正面から取り上げた問題が出されるかどうかは微妙なところですが、答案としては大震災を踏まえていろいろ見直されたりしつつある点を無視してはいけないでしょう。以下のことについて情報を集め、しっかりと考察しておいてください。
    • 防災インフラの限界
      津波に越えられた防潮堤が象徴するように、従来の防災インフラのスペックを決定づけていた「想定値」の見直しが必要とされています。
      これについては、中央防災会議の中間報告をぜひお読みください。
      100年に数回程度の高頻度の災害については、防災インフラでしっかり防災するが、それを越える1000年に1回程度の災害までは手が回らないので、その防災インフラのスペックを超えた分については減災で対応するというものです。
    • 防災インフラのスペック
      中央防災会議中間報告では、津波については一律の基準ではなく、湾ごとに100年に数回程度の高頻度の津波の高さを予測して、それにあわせて防災スペックを決めるという方向のようです。つまりリスクアセスメントをやるわけですね。
      リスク値=被害規模×発生確率であり、被害規模や確率を定量化する過程がリスク分析(エベントツリーやフォールトツリーを使う場合もあります)、その結果でリスク値を出し、それは許容できるのかという判断を下す過程がリスク評価で、リスク分析とリスク評価をあわせてリスクアセスメントと称します。
      この「それは許容できるのかという判断を下す」というのがポイントで、リスクアセスを使って防災インフラ整備をする場合、「この防災インフラでは、何年に1回程度の、この規模の災害まで防げます」という結果、裏返すと「何年に1回程度、この程度以上の災害が来たら防ぎきれません」という結果が出ます。
      それが、「その程度であれば受け入れて、その時は避難するなどして被災しないようにしよう」という判断に至れば、それは防災インフラとしてはそのスペックでOKとしようということでもあります。そしてその先は減災で受け持つということで受容するわけです。
      ところが、「そんなに規模が大きい(あるいは頻度が高い)のでは、とても減災で対応しきれないから、もっとしっかり防いでほしい」となれば、それは防災インフラのスペックが不足しているということで、防災レベルをもっとあげることになります。
      このように、リスクを定量的に評価して、それを受け入れられるかどうかで防災インフラのスペックが決まってくるというように動いていくことが予想されます。
    • 減災
      防災インフラのスペックを越える災害が遅ってきた場合には、迅速で整然とした避難が必要になります。この基礎になるのがハザードマップですが、これをきちんと市民に周知すること、そしていざというときはその通りにきちんと避難すること(事故判断で避難せずに被災したという人も東日本大震災ではかなりおられたようです)、日頃から訓練しておくことが大事です。
      また、災害弱者を共助により地域で守るという取り組みが必要になります。

  4. 地域活性化・快適化
     都市(地方都市)についてはH19白書、H19問題Ⅱ-1と同様で、都市のスプロール化、中心市街地空洞化、公共交通衰退、東アジアとの経済競争の中での地域経済疲弊、少子高齢化、人口減少、不況のため財源逼迫といったことが元凶となって地域の活力や利便性が損なわれているといったことが現状としてあげられるかと思います。また集落については、過疎化(さらには限界集落)、地域コミュニティの限界といった現状があげられるでしょう。
     この問題については、やはりコンパクトシティがひとつの解決策でしょう。
     そして、「まちづくり」は、災害に強いまちづくり、低炭素まちづくり、エコタウン、観光まちづくりなど、様々な視点で捉えられるようになっています。

  5. 多様な主体
     国土交通所成長戦略では、PFIやコンセッション方式による民間活力導入がうたわれています。実際に大規模プロジェクトでコンセッション方式を採用しようという動きもありますし、震災復興の中ではPFI方式が積極的に採用されることが予想されます。
     また、「新たな公共」として行政サービスの手が回らないニッチな部分を中心にNPO等に公共サービスの一部を委託する動きが進んでいます。これ自体は技術者の出る幕はあまりないようにみえますが、ファシリテーターとしての活躍や、技術士ビジョン21でも触れられているNPO技術士という活躍の場もありそうです。
     いずれにしても、多様な主体単独での出題よりも、財政難への対処の1つとして取り上げるような形での出題が考えられます。
  6. 観光立国
     言葉だけが先行していた「観光立国」ですが、地域経済活性化のため、観光に目をつけたというわけです。観光は巨大市場であり、東アジアの経済発展に伴い、東アジアからの観光客が増大しており、これから期待される分野です。
     そこで日本の津々浦々で豊富にある観光資源でかつ建設分野に関連するものとして、景観と歴史文化、つまり「歴史風致」に関して地域資源の観光資源化が志向されています。これは地域活性化(特に中心市街地活性化)策も兼ねています。観光を足がかりにした地域活性化策と捉えてもいいでしょう。
     こういった方針に基づき景観緑三法や歴史まちづくり法が施行されています。また環境にも絡みますが、エコツーリズム推進法などもできました。これまで、NPO法や品質確保法の成立や施行にあわせた出題があったことを踏まえると、この分野は要注意ではないかと思います。
 なお、ここで取り上げた重要5項目の「どれか1つ」について限定して出題されるとは限りません。
 たとえば東アジア経済発展を踏まえた地域活性化を考えるなら、グローバル経済①と観光⑤を組み合わせることが考えられますし、安全・安心で暮らしやすいまちといったことをテーマにするなら、④を中心に③を絡め、そこに低炭素社会などの文言があれば②、活発とか活性化とかいう文言があれば①や⑤が入ってくるでしょう。このように、5つの重要項目はインフラ整備に関する現状と課題・あるべき方向(施策)の見識ベースとして身に着け、これを組み合わせたり掘り下げたりして使いこなす訓練をつむことが望ましいと思います。
 また、たとえば「スプロール化→コンパクトシティ」「インフラ老朽化→アセットマネジメント」「温暖化緩和策→交通流円滑化」のように、定番的な課題と解決策の組み合わせというものがあります。これは白書等を勉強すれば、まあ誰でも書けるようになります。
 こういった組み合わせを書けばそれでOKというような単純な問題の出し方ではなく、ひとひねりした出題がけっこうあるのです。それは、たとえば昨年度の必須科目の「社会条件変化」のように、「これについて配慮しながら答えを書いてね」みたいな付帯条件として示されます。
 そしてそれが題意であり、これをきちんと答案に反映することで題意に応えた答案となり、定番的組み合わせを書いただけの答案に比べて一歩抜け出た答案になるのです。
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