筆記試験対策
必須科目(建設一般)
最終更新:2008.07.07 Top Page

=CONTENTS=
1.出題内容と対策
2.出題傾向
3.解答の組立~骨子法の提案~
4.いい答案を書くために
5.重要テーマについて

 必須問題(建設一般)のうち、記述式問題対策について記しています。
 ただし、受験対策は人それぞれです。調査設計コンサル、ゼネコン、独立経営、公共機関、それぞれの立場で、ポイントは変わってきます。また、若年層・熟年層でも変わってきます。
 うのみにするのではなく、参考にできるところは参考にするというスタンスでお読みください。

答案用紙はA4サイズ・600字詰めです。
模擬練習用答案用紙を用意しましたので、お使いください。なお、この答案用紙は吉兼さんよりご提供いただいたものです。
Word版     PDF版

1.出題内容と対策

(1) 評価基準

 部門一般(必須科目)は、「部門全般にわたる論理的考察力課題解決能力」を評価します。ちなみに18年度以前は「部門全般にわたる一般的専門知識」を評価していました。
 そして、それぞれの評価基準の概念と確認方法は下表のとおりです。
確認す
る能力
論理的考察力 課題解決能力
能力等
の概念
問題点の抽出から課題解決までのプロセスにおいて、検討に必要な要素の過不足、論理の矛盾や飛躍がなく、筋道を立て、明確な論拠を持って判断し、考察する能力 新たに直面した、または直面する可能性のある課題等に対し、多様な視点から検討し、論理的かつ合理的に適切な対応を行える能力
その確
認方法
「技術部門」に関係するテーマに対する対処のプロセスやその考え方等を問う
・テーマの技術的な内容について論拠を持った分析・検討がなされ、その内容が、論理の飛躍や要素の過不足がなく明確に記述されているか
「技術部門」に関係するテーマに対する問題点や課題の抽出・分析、それに基づく実現可能な対応策の指示等を問う
・問題点等の抽出・分析が適切に行われ、対処すべき要因が明確化されているか
・対応方針や対応策は適切かつ実現性があるか、多様な観点からその効果まで検討されているか
 このことは非常に大事なポイントですので、よく認識してください。
 従来、一部で指導されていたようにキーワードを並べるとか、答案を丸暗記して題意と少々ずれていてもいいから書きまくるといった作戦は、論理的考察力や問題点等の抽出・分析などについて評価が低くなりますので、通用しなくなります。


(2) 問題の構造

 問題文は、評価基準が変更される以前から基本的に変わっていません。これは建設部門だけでなく、他部門でも同じです。
 問題文は、下図のように3つの部分から成っています。

  

 Aは、現状について書いてあります。
 Bは、「すべきこと」、つまり与えられた課題(Theme)です。実際の試験問題では、「社会資本整備について」などという包括的な言葉でなく、もっと絞り込んだテーマ、たとえば「地域を活性化させる」とか「災害に強い国づくり」とか「効率的な社会資本整備」、「既存インフラを生かした社会資本整備」などになるでしょう。他部門なら、それぞれの部門の社会的役割がここに書かれるはずです。
 Cは課題クリアのための方策・解決策です。
 後述の骨子法で整理すると、下表のようになります。

現状・原因 問題点 解決策の方向性 具体策
B(課題)
および課題クリアに
あたってのボトルネック

 少しわかりにくいのは「問題点」ですが、これは「課題」(Theme)とは違って、課題クリアを阻むもの、ボトルネックになるもの(Problem)です。たとえば
 (課題)地域を活性化させる
 (問題点)労働力確保困難、交通弱者の住みにくいまち
などですね。
 「【課題】を実現したいんだけど、【問題点】がネックになるんだよね」
みたいな感覚です。
 この問題点がきちんと抽出できるかどうかが、前述の課題解決能力の重要な評価ポイントになります。また、その問題点抽出根拠は、現状のところ(A)に書いておきます。たとえば、
 (現状)少子高齢化の進行や労働力人口減少、中心市街地空洞化や都市のスプロール化
などであり、これらは上記問題点の原因でもあります。このあたりがきちんと書けていないと、前述の論理的考察力における「論理の飛躍や要素の過不足」、課題解決能力の「問題点の抽出・分析が的確」というあたりで評価が低くなります。

 さて、上記Aは、現時点における建設部門の社会的役割、すなわちインフラ整備(安全・安心確保や、インフラ整備に伴う環境負荷の最小化も含む)にとって問題視あるいは活用すべきような事象になります。
  ・地球温暖化の進行
  ・地球温暖化に伴う異常気象や高潮など安全・安心を脅かすもの
  ・環境の社会的重要性の高まり(地球環境問題、生物多様性、国民意識、景観法、観光立国など)
  ・労働力や地域維持力といった人的資源の縮小・減少
  ・居住環境の変化(都市のスプロール化、過疎化、地域間格差など)
  ・厳しい財政状況、インフラ投資の制限
  ・インフラ整備に対する国民理解の低下
  ・既存インフラの老朽化、更新の必要性
  ・災害の起こりやすい国土(地形・地質、土地利用)
  ・経済構造の変化(東アジアの影響など)
  ・情報化社会
  ・国民意識の変化(価値観の多様化、ボランティア浸透など)
  ・インフラ整備の推進力の変化(官民協働、民活導入、市民参加など)
 これらは互いに絡み合っていますので、たとえば地球温暖化に伴う異常気象が「災害の起こりやすい国土」をさらに顕著にするとか、厳しい財政状況と国民理解低下が既存インフラ更新を妨げるとかいった複合的な問題が生じてきます。

 これらを「踏まえつつ、建設部門ではその社会的役割であるインフラ整備を進めるわけですが、試験問題ですから、現状を踏まえると実現困難性が増すような課題が用意されています。たとえば
現状(A) 課題(B)
労働力や地域維持力といった人的資源の縮小・減少 地域活性化
厳しい財政状況、インフラ投資の制限
既存インフラの老朽化、更新の必要性
安全・安心、利便性の確保
地球温暖化に伴う異常気象や高潮など 安全・安心な社会
などですね。
 そしてその課題を実現するための意見・方策などを述べよという問題文になるわけです。


(3) 答案作成手順

 答案は、次のような手順で作ります。
  1. 上表に書かれていること(その主要部分は問題文に書かれていると思います)を整理し、現状などについて必要があれば追加して、現状・原因と課題を明確にします。

  2. 課題クリアにあたっての問題点を抽出します。たとえば下表のような感じです。
    現状(A) 課題(B)および問題点
    労働力や地域維持力といった人的資源の縮小・減少 地域活性化 B-1 地域社会作りの担い手不足
    居住環境の変化(都市のスプロール化、過疎化、地域間格差など) B-2 交通弱者が住みにくいまち

  3. 問題点の解決策を提示します。
    現状(A) 課題(B)および問題点 解決策(C)
    労働力や地域維持力といった人的資
    源の縮小・減少
    地域活性化 B-1
    地域社会作りの担い手不足
    C-1
    女性や団塊世代の社会参加
    居住環境の変化(都市のスプロール
    化、過疎化、地域間格差など)
    B-2
    交通弱者が住みにくいまち
    C-2
    コンパクトシティ
    ※上表はあくまで例としてのイメージですので、答案としての妥当性はひとまず置いておきます。

  4. 解決策は、さらにその具体策まで書き込みます。

 以上のようにして作った答案は、手順2で問題点抽出、手順3と4で解決策の的確性や実現性について評価され、現状~問題点~解決策がきちんと対応していることで論理的考察力が評価されます。
※なお、私が提唱する骨子法は、評価される横目に漏れなく応えた答案を作るため、「現状」「課題」「問題点」「解決策」などの漏れや、それらの相互関連の漏れ(論理の飛躍や要素過不足)がない答案構成を作るための手法です。


(4) 求められる資質

 以上のように、評価基準と問題構成、答案作成手順を踏まえると、
における、
 ・Aに関する知見
 ・Bについて問題点を抽出する能力
 ・Cについて考え表現する能力
が求められているといえます。 さらに言えば、Aに関する知見を持つということは、たとえば「少子高齢化の現状を知る」ということなのですが、それにとどまらず、その現状に関して問題視されていること(労働力確保とか地域コミュニティ維持困難とか)も知見として知っており、また解決策としてどのようなものが提唱されているのかも、鵜呑みではないけれど知識としてきちんと知っていることでもあると考えられないでしょうか。
 知見を持っている → 現状&問題点&提唱される方策 を知っている
ということですね。
 つまり、前述した
  ・地球温暖化の進行
  ・地球温暖化に伴う異常気象や高潮など安全・安心を脅かすもの
  ・環境の社会的重要性の高まり(地球環境問題、生物多様性、国民意識、景観法、観光立国など)   ・労働力や地域維持力といった人的資源の縮小・減少
  ・居住環境の変化(都市のスプロール化、過疎化、地域間格差など)
  ・厳しい財政状況、インフラ投資の制限
                  :
                  :
などについて、現状と問題点、提唱されている解決策を一通り知っていることが求められているということではないかと思います。
 さらに解決策については、自分の意見も持っていることが望まれます。「自分の意見」とは、独りよがりな意見ではなく、たとえば自分の「持ち場」、職務を踏まえた役割とか、地域の実情(特異性)を踏まえた取捨選択・アレンジあるいは独自案などについて述べることができるということです。(それが個性でもあります)
 そして前述したように、これらの諸問題は絡み合っている(複合的になっている)ことが多くなっていますから、多くの問題について知見を持ち(現状と問題点、提唱されている解決策の知識を持ち)、それらを組み合わせて論じられることも望まれます。
 まとめると、
  ●いろんな問題について、現状・問題点・解決策について知識がある。
  ●地域や職務などの特異性を踏まえ、個性ある意見が(も)述べられる。

といった資質が求められるということだと思います。
 これを答案として表現するには、論理構成が重要になるわけですが、これについては骨子法の活用などで対処できると考えます。


(5) 問題予想の落とし穴

 建設一般(他部門も同様ですが)は、「今年の問題予想」がいつも花盛りになります。
 最初に述べたように、キーワード列挙や題意とずれても暗記答案を書きまくることで点数が取れた(なぜなら一般知識が評価基準だった)時代の二次試験ならともかく、今は「問題を予想して答案を作成しておく」(さらに場合によっては暗記する)という試験対策は有効でないと考えます。
 たとえば
  「白書に地球温暖化が取り上げられたから地球温暖化が出題される」
とか、
  「温暖化は露骨すぎるから出ない。○○のほうが出る」
みたいな議論は、何に注目すべきかという情報を得るためには有効ですが、だからといって
  「○○の答案は作ったけれど温暖化はまだ」
では、たとえば以下のような問題が出たらどうするのでしょう。
(例1)
地球環境問題や生態系保全、良好な景観などに配慮しながら、限られた財源の中で社会資本整備を進めていくことについて、建設部門技術士の立場で、現状における課題とあるべき方策についてあなたの意見を具体的方策を含めて述べよ。


(例2)
顕在化する地球温暖化に適応した社会資本整備の必要性が言われる中、建設分野における課題をあげ、限られた財源の中で国民の理解を得ながら進めるべき社会資本整備の方向性と具体策について、あなたの意見を述べよ。


(例3)
既存の社会資本が更新期を迎える中、厳しい財政状況の中で、真に必要な社会資本整備を、国民の理解を得つつ進めるため、建設分野においてとるべき方策についてあなたの意見を述べよ。



 問題予想をするのはかまいませんが、それぞれに対応した答案を作っていると、個別には対応できても応用が利かなくなりがちです。
 それよりも、
のAの部分、諸問題の知見を蓄えることを優先し、それを答案に表現するトレーニングは、たとえばそのツールとして骨子法を使ったりして、別途行ってはどうかと思うのです。
 問題予想に悩む時間があったら、諸問題について勉強し、知見を蓄積したほうが時間のムダがありません。なぜなら諸問題は相互に関連するところが必ずといっていいほどあるのですから。
 そして、たとえば「既存インフラの問題が出るなら、地球温暖化に関する知識はいらない」ということはありませんし、そのような考え方で知見を蓄積すると、多くの場合狭い、あるいは一面的なものの見方が答案に現れます。つまり課題解決能力の評価ポイントである「多様な観点」において評価が低くなりますし、何よりも読んでいて幅の感じられない、薄っぺらな答案になってしまいますから、相対的に評価が低くなり、合格ラインに達しにくくなるといえます。
※骨子法が何度も出てきますが、私が提唱しているというだけで、それを使うかどうかは個人個人の相性もありますから、各自のご判断でお願いします。
戻る

2.出題傾向

 建設一般問題は、明瞭な出題傾向が2つあります。
  1. 白書第1部から出題される
    当該年度の国土交通白書第1部(特に重要課題として取り上げられ、副題にもなっているテーマ)と密接に関連して出題されています。
     最近5年間の白書第1部の内容と出題された設問を比較してみましょう。設問のうち太字が白書第1部と関連している設問です。
    年度 白書第1部 出題された設問
    H15 少子高齢化の進行・人口構造の変化などが社会に与える影響を整理し、これに対応した国土交通行政のあり方として、重点的なインフラ整備、高齢者や女性の社会参加などについて方向性を提示した。 我が国全体として人口減少がみこまれるなかでの社会資本整備に進め方について、あなたの意見を述べよ。
    いろいろな分野・場面での市民参加の声が高まりつつあるなか、社会資本整備を進めるに当たっての社会的合意形成のあり方について、あなたの意見を述べよ。
    H16 地域の個性を活かした取り組みを数々紹介したあと、取り組みを支える5つの要素(主体的な参加、個性の発揮、集中、連携・協働、継続・展開)を示し、その中での国土交通施策として行政と民間の役割分担、地域との連携等について方向性を提示した。 巨大地震の発生が懸念されるなかで、地震防災対策の現状と課題について述べるとともに、今後のあり方についてあなたの意見を述べよ。
    活力ある経済社会を構築するための社会資本整備のあり方について、あなたの意見を述べよ。
    H17 東アジアの成長と日本との関係の深化を踏まえ、地方におけるブロック圏の形成と、それに伴うインフラ整備(交通基盤整備、地方や都市の形成)について方向性を提示した。
    ※H16の中越地震や相次いだ豪雨災害を受け、第1部の前段に急遽「災害に強い国づくりをめざして」という特集が組まれた。
    災害に強い国づくりのための社会資本整備のあり方について、あなたの意見を述べよ。
    平成17年2月に発効した京都議定書を踏まえ、建設分野が取るべき地球温暖化対策について、あなたの意見を述べよ。
    H18 H16中越地震、H16末スマトラ島沖地震、H17福岡西方沖地震などの地震災害、H16新潟・福井豪雨や台風23号、H17ハリケーン・カトリーナ、H17JR福知山線脱線・羽越線脱線、H17構造計算書偽装といった相次ぐ自然災害・人的災害等を受け、社会構造変化という視点で課題を整理し、安全・安心確保の優先、施策のスピード化と点検、危機管理体制、情報提供について方向性を提示した。 維持管理・更新投資が増大すると見込まれる中で、その現状と課題を述べ、今後の社会資本整備のあり方について、あなたの意見を述べよ。
    社会資本整備における工事の品質確保に関する方策について、あなたの意見を述べよ。
    H19 少子高齢化・人口減少、地域間格差拡大、東アジアとの国際競争直面など、地域が直面する問題をあげ、コンパクトなまちづくりや女性・高齢者の社会参加、東アジアに対抗できるような地域の特色を活かした付加価値確保、東アジアとの交流拡大のための港湾・空港・道路整備について方向性を提示した。 産業構造の変化等により、人口減少傾向にある地域における社会資本整備の課題を挙げ、厳しい財政の制約の下で、地域の活性化を図っていくための社会資本整備のあり方について、具体策を示しあなたの意見を述べよ。
    我が国の技術の発展を支えてきた“団塊の世代”の多くの技術者が、定年退職により実務の第一線から退く事態を迎えている。そのような経験豊富な技術者の大量退職が、社会資本を整備するための技術に与える影響と課題について多面的に述べ、それを踏まえて、今後技術を維持継承するための方策についてあなたの意見を述べよ。
    H20 地球温暖化のくらしへの影響や、くらしの中での対策の課題等をわかりやすく示すことを目指した。その際、長期にわたって地球温暖化対策を続けるという観点から、くらしの質をできる限り犠牲にすることなく、地球環境にもやさしいくらし方をするという観点も重視している。 地球温暖化絡みの問題?
    ・全般的な問題
    ・緩和策への建設分野の貢献など
    ・異常気象の結果生じる問題点と対策
    このように、安全・安心を副題として取り上げたものの「災害に強い国づくり」をすでに前年出題しまっていた平成18年度を除き、白書の第1部からは必ず出題されているといえます。

  2. その時期のインフラ整備の重要課題が出題される
    過去問題を見ると、
    年度 インフラ整備上の重要課題 出題された設問
    H15 NPO法 我が国全体として人口減少がみこまれるなかでの社会資本整備に進め方について、あなたの意見を述べよ。
    いろいろな分野・場面での市民参加の声が高まりつつあるなか、社会資本整備を進めるに当たっての社会的合意形成のあり方について、あなたの意見を述べよ。
    H16 小泉改革(PFIなど) 巨大地震の発生が懸念されるなかで、地震防災対策の現状と課題について述べるとともに、今後のあり方についてあなたの意見を述べよ。
    活力ある経済社会を構築するための社会資本整備のあり方について、あなたの意見を述べよ。
    H17 H16の中越地震や相次ぐ水害 災害に強い国づくりのための社会資本整備のあり方について、あなたの意見を述べよ。
    京都議定書発効 平成17年2月に発効した京都議定書を踏まえ、建設分野が取るべき地球温暖化対策について、あなたの意見を述べよ。
    H18 公共事業品質確保法 維持管理・更新投資が増大すると見込まれる中で、その現状と課題を述べ、今後の社会資本整備のあり方について、あなたの意見を述べよ。
    社会資本整備における工事の品質確保に関する方策について、あなたの意見を述べよ。
    H19 2007年問題 産業構造の変化等により、人口減少傾向にある地域における社会資本整備の課題を挙げ、厳しい財政の制約の下で、地域の活性化を図っていくための社会資本整備のあり方について、具体策を示しあなたの意見を述べよ。
    我が国の技術の発展を支えてきた“団塊の世代”の多くの技術者が、定年退職により実務の第一線から退く事態を迎えている。そのような経験豊富な技術者の大量退職が、社会資本を整備するための技術に与える影響と課題について多面的に述べ、それを踏まえて、今後技術を維持継承するための方策についてあなたの意見を述べよ。
    H20 ・道路特定財源問題
    ・ねじれ国会
    ・既存インフラ更新期
    真に必要なインフラ関連問題?
     ・優先順位をつけた戦略的インフラ整備など
    維持更新問題?
    ・アセットマネジメントなど
    ・u-Japan政策 ユビキタス社会?
    ・ユニバーサルデザイン、ITSなど
    ・総合評価方式導入など 性能規定関連問題?
    といったように、その時期の社会問題や自然災害、重要法令等、インフラ整備における重要課題がテーマとして選ばれています。(H16の小泉改革が「活力ある経済社会」につながると考えれば毎年出題されていることになる)
 以上のようなことは考えてみれば当たり前で、白書はなんと言っても「白書」なのですからその時代の重要課題について「特集を組む」わけですし、試験問題にしてもその時期のインフラ整備上の重要課題についてしっかりした知見を持っているかどうかで評価するのが一番妥当だといえます。

 このようなことから、前述した
のAについて多く列挙した中でも、
  ・地球温暖化の進行
  ・地球温暖化に伴う異常気象や高潮など安全・安心を脅かすもの
  ・環境の社会的重要性の高まり(地球環境問題、生物多様性、国民意識、景観法、観光立国など)
  ・厳しい財政状況、インフラ投資の制限
  ・インフラ整備に対する国民理解の低下
  ・既存インフラの老朽化、更新の必要性
  ・国民意識の変化(価値観の多様化、ボランティア浸透など)
  ・インフラ整備の推進力の変化(官民協働、民活導入、市民参加など)
といった課題が特に注目されます。
 前述の例1~例3の想定問題やSUKIYAKI塾筆記試験対策講座の練習問題は、こういった検討結果にたっています。
戻る

3.解答の組立~骨子法の提案~

 こちらで述べたように20年度試験は、
  ●あらかじめ作った答案を丸暗記して書いたのでは対処できない
  ●長くなった試験時間は試験会場で論理構成と文章構成を練り上げる時間に使える
という特徴があります。
 これに対応するために、以下に示す骨子法を提案します。なお、例示は20年度SUKIYAKI塾の練習問題9-2-1です。※骨子の記入内容は模範解答ではありませんのでご注意ください。

(問題)
地球温暖化が進行する中、建設分野における問題点をあげ、あるべき方策についてあなたの意見を具体的に述べよ。
(H20 SUKIYAKI塾練習問題9-2-1)
  1. 表を作る
    問題用紙の余白に、次のような表(罫線は書かなくてもいい)を書きます。できれば白紙ページをいっぱい使って広く書きます。
    ここでは表にしていますが、実際には列境界線と項目欄下の罫線だけの、いわゆる十字罫線にしておいたほうが楽です。特に下欄はいっぱい入力しますから、表の高さは制限しないほうがいいと思います。
    現状・原因 課題 問題点 解決策の方向性 具体策





















  2. 現状のピックアップ
    指定されたテーマに合わせ、現状を短く箇条書きでリストアップします。
    もし設問が、問題点をあらかじめ示すものであった場合は、その原因を箇条書きします。
    なお、現状に関する情報が与えられ、「資料を読んで問題Ⅱ答えよ」というような形式で出題される可能性もあります(他部門ではそういった問題が目立ちました)。示された資料のテーマから逸脱したり、過度に知見を付加したりすると、題意に沿っていないと判断されるので、特に注意が必要です。また与えられた資料から、いかに効率的に情報を取り出し整理できるかという能力も問われることになります。

    現状・原因 課題 問題点 解決策の方向性 具体策
    我が国は京都議定書で温室効果ガス排出量削減を約束→2012年までに1990年比6%減
    CO2排出量は逆に増加→削減義務達成は困難
    建設分野→施工段階でのCO2排出は全体の1%と少ない
    建設分野が関わるライフサイクルCO2は全体の約1/2




    世界の平均気温上昇(100年間4度)、海水準上昇(100年間59cm)が予測
    →これに伴い局所的豪雨や渇水、高潮災害の頻発が予測





  3. 課題の整理
    課題とは、クリアされるべきテーマです。これはほとんどの場合、問題文でおおまかに示されていたり、提示資料の中に示されていたりします(そのものズバリが書かれているわけではありません。読み取ることが期待されます)。
    現状・原因 課題 問題点 解決策の方向性 具体策
    我が国は京都議定書で温室効果ガス排出量削減を約束→2012年までに1990年比6%減
    CO2排出量は逆に増加→削減義務達成は困難
    建設分野→施工段階でのCO2排出は全体の1%と少ない
    建設分野が関わるライフサイクルCO2は全体の約1/2
    ①温暖化緩和策としてCO2排出を抑制する取組が求められている


    世界の平均気温上昇(100年間4度)、海水準上昇(100年間59cm)が予測
    →これに伴い局所的豪雨や渇水、高潮災害の頻発が予測
    ②温暖化適応策として異常気象や海水準上昇に伴う災害等への対処が求められている



  4. 問題点の抽出整理
    課題をクリアするにあたって、それを困難にするようなボトルネックを絞り込みます。
    このとき、現状が問題点の根拠となるよう、現状から飛躍した問題点にならないよう注意します。
    大事なことは、現状記載事項の中から問題点を抽出するということです。白書暗記で臨むと、現状に相当する白書記載事項をリストアップ、問題点に相当する白書記載事項をリストアップという感じになってしまって、現状と問題点のつながりが希薄あるいはなくなってしまいます。

    現状・原因 課題 問題点 解決策の方向性 具体策
    我が国は京都議定書で温室効果ガス排出量削減を約束→2012年までに1990年比6%減
    CO2排出量は逆に増加→削減義務達成は困難
    建設分野→施工段階でのCO2排出は全体の1%と少ない
    建設分野が関わるライフサイクルCO2は全体の約1/2
    ①温暖化緩和策としてCO2排出を抑制する取組が求められている ①自動車からの排出が多い→建設分野の問題としては、自動車依存のインフラ構造

    a)都市スプロール化(生活)


    b)円滑な交通を妨げるボトルネックや道路渋滞

    世界の平均気温上昇(100年間4度)、海水準上昇(100年間59cm)が予測
    →これに伴い局所的豪雨や渇水、高潮災害の頻発が予測
    ②温暖化適応策として異常気象や海水準上昇に伴う災害等への対処が求められている ②建設分野の問題としては、災害対策

    a)新規防災インフラへの投資が厳しい


    ここで大事なことは、課題と問題点は違うということです。
    たとえば上の事例では課題①はCO2排出抑制です。しかしそれが難しい原因があります。課題クリア(CO2排出抑制)を難しくしている何かがあるのです。さらに上記例では問題文で「建設分野の問題」という指定があるので、建設分野の関わりに持っていかないとおかしくなります。
    この「絞込み」をしないと、問題点は①CO2削減、②豪雨・高潮対処みたいな感じになってしまいます。
    それがなぜいけないかというと、絞り込まれていない分だけ解決策が多くなり、百花繚乱になってしまうのです。
    なぜ百花繚乱がいけないかというと、一つ一つの解決策を具体的に記述するスペースがなくなり、総論的・概略的なことしか書けなくなるからです。
    なぜそれがいけないかというと、具体性が乏しいと、重要な評価尺度である「実現性」において低く評価されてしまうからです。
    また、問題点の絞込みが浅いと、これも重要な評価尺度である「問題点抽出」において低く評価されます。
    問題点は、3つ~5つくらいになるようにしたほうがいいでしょう。それより多いと百花繚乱的になります。
    この問題点抽出ができるかどうかがA評価が取れるかどうかの分かれ目になることが多いようです。言い換えると、課題から問題点に絞り込めていない答案はB評価になってしまうことが多いということです。

  5. 解決策の方向性
    それぞれの問題点に対応して、解決策の方向性を箇条書きします。
    現状・原因 課題 問題点 解決策の方向性 具体策
    我が国は京都議定書で温室効果ガス排出量削減を約束→2012年までに1990年比6%減
    CO2排出量は逆に増加→削減義務達成は困難
    建設分野→施工段階でのCO2排出は全体の1%と少ない
    建設分野が関わるライフサイクルCO2は全体の約1/2
    ①温暖化緩和策としてCO2排出を抑制する取組が求められている ①自動車からの排出が多い→建設分野の問題としては、自動車依存のインフラ構造

    a)都市スプロール化(生活)
    a)集約型都市構造への転換
    b)円滑な交通を妨げるボトルネックや道路渋滞 b)交通流の円滑化
    世界の平均気温上昇(100年間4度)、海水準上昇(100年間59cm)が予測
    →これに伴い局所的豪雨や渇水、高潮災害の頻発が予測
    ②温暖化適応策として異常気象や海水準上昇に伴う災害等への対処が求められている ②建設分野の問題としては、災害対策

    a)新規防災インフラへの投資が厳しい
    a)選択と集中によるハード対策
    b)ハードとソフト対策を織り交ぜた防災・減災対策
    問題点がしっかり絞り込まれていれば、それに1:1に対応して解決策が考えられます。
    問題点の絞込みが不足していると、以下のようなことが起こります。
    1. 1つの問題点に対して解決策がいっぱい出てくる
      解決策は1つとは限りませんから、複数の解決策があってもいいのですが、問題点がぼんやりしていると解決策が「あんなことも、こんなことも」になってしまいます。
    2. 論理の飛躍が起こる
      たとえば上の例で、
       課題:CO2削減
       問題点:自動車からの排ガスが多い
       解決策:交通流の円滑化
      としたらどうでしょう。問題点と解決策の間に論理の飛躍が出ています。自動車の排ガスが多いのなら、普通はどうするでしょう。自動車利用を控えたり燃費を改善したりするでしょう。ここで、「自動車利用を控える」のは建設分野の問題点になりません(だから建設分野の解決策にもなりません)し、自動車依存はそう簡単に変えられません。ということで燃費改善に期待がかかるのですが、これを邪魔しているのがボトルネックや渋滞です。
      と、ここまで考察してはじめて「交通流の円滑化」という解決策に話がスムーズに流れていくわけです。
      同様に、上記課題②でも、
       災害リスクが増大している→しかし新規インフラ投資は困難→ハードとソフトを織り交ぜた対策
      というように絞り込まれていて、はじめて「ハード&ソフト」という解決策が説得力を持ちます。それを怠ると、
       災害リスクが増大している→ハードとソフトを織り交ぜた対策
      となってしまいます。「災害リスクが増大しているのなら、ダムを作ったり堤防を強化すればいいでしょう。なのになぜハード&ソフト?」ということですね。新規インフラ投資が困難なことくらい誰でも知ってはいますが、それを大前提にして記述を省略してしまっては、論理の飛躍になってしまいます。これは試験なのですから、たとえ常識であっても、それを論理的に説明することが求められているのです。
    このように、問題点がしっかり抽出されていれば、解決策は自然と導かれます。問題点抽出が最重要ポイントであると申し上げているのはこういったことです。
    また、骨子法を使っている限り、問題点としてあげているのに解決策がないとか、逆に問題点としてあげていないのに解決策が示されているといったことは起こりにくくなります。もし骨子法を使っているのにそういうことが起こるならば、表の横方向のリンクを考えていないからです。つまり、「課題を書け」といわれて課題をずらずらとリストアップし、「問題点を書け」といわれて問題点をリストアップし、解決策を書けといわれて解決策を・・・・というように、バラバラで考えているからです。
    そうではなくて、
     課題→(解決のボトルネックは)→問題点→(それに対して)→解決策
    という横方向の流れで考える必要があります。

  6. 具体策の提示
    方向性を実現するための具体的な方策を提示します。
    現状・原因 課題 問題点 解決策の方向性 具体策
    我が国は京都議定書で温室効果ガス排出量削減を約束→2012年までに1990年比6%減
    CO2排出量は逆に増加→削減義務達成は困難
    建設分野→施工段階でのCO2排出は全体の1%と少ない
    建設分野が関わるライフサイクルCO2は全体の約1/2
    ①温暖化緩和策としてCO2排出を抑制する取組が求められている ①自動車からの排出が多い→建設分野の問題としては、自動車依存のインフラ構造

    a)都市スプロール化(生活)
    a)集約型都市構造への転換 居住エリアに近接して商業・行政サービス施設を集約 自転車・徒歩移動を促すとともに、公共交通施設を整備 集約することによる効果的な都市緑化
    通勤・買物等の車による移動に関して、スマートIC等高速道路の弾力的運用を含むTDMとITSにより交通流を円滑化
    b)円滑な交通を妨げるボトルネックや道路渋滞 b)交通流の円滑化
    高規格道路・バイパス整備の推進による物流の円滑化と市街地迂回による生活交通の円滑化
    ボトルネック踏切解消、路上工事縮減等による生活・物流の交通流円滑化
    世界の平均気温上昇(100年間4度)、海水準上昇(100年間59cm)が予測
    →これに伴い局所的豪雨や渇水、高潮災害の頻発が予測
    ②温暖化適応策として異常気象や海水準上昇に伴う災害等への対処が求められている ②建設分野の問題としては、災害対策

    a)新規防災インフラへの投資が厳しい
    a)選択と集中によるハード対策 事業評価の積極的導入による厳選したハード整備
    ・透明性の高い費用便益分析法の導入と地域説明
    b)ハードとソフト対策を織り交ぜた防災・減災対策 地域住民参加も含めた災害情報の共有と避難システム構築による減災
    ITを活用した災害情報のリアルタイム取得と広報体制
    土地利用規制等の手法による危険地域への住宅立地の抑制
    ポイントは、実現性が評価できるように、できるだけ具体的な提案をすることです。

  7. 骨子を答案に
    以上のようにしてできた骨子を抜き出し、これを見出しに使って、コメントや「おわりに」なども含めて答案構成を考えると、こちらのようになります。
    ほとんどが骨子で作成した内容で、残りスペースはあまりありませんから長文などとても書けません。箇条書きに近い、文章というよりコメントというべき簡潔な文しか書けなくなります。
    つまり、骨子法で作った答案は、その論理展開と構成に主力があり、見てくれの部分、つまり文章にはほとんどウェイトを置いていないものになります。そして骨子表を作った時点で、答案はほとんど出来ているということになります。
 以上のように、骨子から作りこんでいく骨子法を使うことで、答案は
  • 現状~課題・問題点~解決策の流れが、論理的なつながりを持ったものとなりやすいため、論理的考察力の評価基準である「論拠を持った分析・検討」、「論理の飛躍や過不足がない」に照らして、評価を受けやすい。特に論理の飛躍や過不足が起こりにくい。
  • 問題点が現状に即したものとなるため、課題解決能力の評価基準である「問題点の抽出・分析」、「対処すべき要因の明確化」に照らして、評価を受けやすい。
  • リストアップを行うことで、問題点や解決策の「見逃し」が発生しにくくなるとともに方向性段階ですでにきめ細かくなるため、課題解決能力の評価基準である「実現性」、「多様な観点」に照らして、評価を受けやすい。
  • 深い入れ子構造の答案ができるため、答案の主体部分が見出しになり、結果として長い文章を書く必要がなくなる。言い換えれば、見出しと箇条書きだらけの答案になる。
    このため、ダラダラ文や主語と述語のねじれなどがなくなり、読みやすい簡潔な答案が作成できる。言い換えれば文章力がほとんど関係ない、論理構成で勝負する答案になるので、特に文章を書くのが不得意な人にはかなり楽になる。
といったものになることが期待できます。さらに、次のような効果もあります。
  • 時間が有効に活用できる
    骨子法で答案を作成する場合、長くなった解答時間を有効に活用できます。つまり、最初の1/3から1/2程度の時間を骨子表作成と紙面割り振り計画(コメント挿入計画)に使って答案の構成をしっかりと作りこみ、残りの時間でこれを答案に書き表すのです。
    こうすることで時間を有効に使ったしっかりした論理構成の答案ができ、他の受験生に差をつけることができると期待されます。

  • 答案記録が残る
    この骨子表は問題文とともに持ち帰れるので、そのまま答案記録になるという特徴もあります。自分が何を答えたか、記憶に頼るしかないのと記録が残っているのとは、口頭試験を前にすると特に精神衛生上、大きな違いになるでしょう。

  • 予想外の出題形式に対応しやすい
    「答案」は、論理構成部分(考察部分)と文章構成部分(表現部分)が重なってできているのですが、骨子はこのうち論理構成が大部分です。したがってこれをしっかり作っておけば、予想外の解答様式で出題された場合でも、影響はあまり受けません。論旨はそのままで表現方法を変えるだけなので、質を保った柔軟な対応が可能になります。
    さらに、前述した「一歩踏み込んだ出題」のように従来と異なる内容について問う問題が出された場合、受験生は臨機の対応を迫られることとなります。この場合でも、情報(現状)を整理し、そこから問題点を抽出し、その解決の方向性を決めて具体的に提案するという骨子法の作業手順で考察すれば、かなり追従できると期待されます。
まとめると以下のようになります。
  1. 答案用紙のできれば1面すべて白紙のページに、「現状」「課題」「問題点」「解決方向性」「具体策」の5項目からなる表(十字罫線表)を書く。

  2. 現状をリストアップするとともに課題を整理し、それから問題点を抽出整理する。

  3. 問題点に応じた解決策の方向性を整理し、それぞれについて具体策をリストアップする。

  4. これらの項目をそのまま
     1.現状
     2.課題・問題点
     3.解決策

    もしくは
     1.現状
     2.課題・問題点
     3.解決策の方向性
     4.具体策

    という大項目の下に、中項目・小項目の見出しとして使う。


  5. 見出しの下に、1~2行の短いコメントを入れる。
以上です。なにせ考えをまとめるために骨子表にしたものをそのまま章構成の見出しに使うのですから、読み手にも理解しやすいものになるはずです。ダラダラ文もありませんから、なおさらです。
戻る

4.いい答案を書くために

 出題内容が不明確な今年の試験で、少しでもいい答案を書くためにできること、気をつけることなど、散文的に思いつくまま書き記してみます。参考になれば幸いです。ただし、鵜呑みにしないでくださいね。

  1. 実は相対評価?
    技術士試験は絶対評価ではありますが、これは問題の難易・受験生のレベルによって、受験生全体に対するA評価取得者の割合が大きく変化する可能性があることを意味しています。機械が採点する択一試験のみの勝負である一次試験の合格率の乱高下はそのことをよく示しているといっていいでしょう。
    しかし、記述答案を人間が採点するとき、A評価・B評価・C評価の割合がそれほど大きく変化するでしょうか。何をもって60点とするかが明確であればともかく、採点者の主観的あるいは恣意的評価が入り込む余地がある場合、A・B・C評価のバランスを考えてしまうのではないでしょうか。40点レベルの答案の中に混じった55点レベルの答案と、70点レベルの答案の中に混じった55点レベルの答案が、同じ評価を受けるでしょうか。
    つまり、相対評価的な要素も入っていると考え、「他人より優れた答案を作る」ことをはっきりと目指したほうがいいのではないかという気がします。
    ではどうしたら他人より優れた答案を作れるかというと、
     ●評価基準に照準があっている
     ●読みやすい

    この2点だと思います。
    評価基準は前述のとおりで、部門一般では論理的考察力(論拠を持っていること、論理の飛躍や要素過不足がないこと)と課題解決能力(問題点の抽出分析、対処要因の明確化、実現性、多様な観点など)です。これらを明確に意識して、それぞれの基準で評価を得るにはどのように答案を書けばいいかを的確に押さえることです。
    「読みやすい」というのは、読みやすい文章という意味ではありません。論旨が明瞭に伝わるということです。その論旨とは、上記のような評価基準に的確に応えたものです。
    逆に言えば、根拠のないことが書いてあるとか、論理に飛躍や誤りがある(たとえば「少子高齢化が進むと中心市街地が空洞化する」など)、問題点が明瞭に絞り込まれていなかったり、解決策が問題点に対処していない、具体策に具体性がない(よって実現性の判断ができない)、視点が偏っている(たとえば、地域活性化のテーマで東アジアの経済的影響を無視している)などがあると、評価が低くなるだろうということです。あるいは、それらのことが読み取れないと評価してもらえないということです。
    さらに一歩抜け出すためには、
     ●個性ある解決策提示がある
    ということが重要でしょう。

  2. 「個性ある答案」に挑戦しよう
    相対的評価の要素がかなりある試験だとすれば、他の受験生と同じような答案を書いていたのではだめで、一歩抜け出さなければなれりません。特に同じ問題を選ぶ受験生の数が多い建設一般ではそのことが需要です。
    しかし、目立とうと思うあまり突飛な答案を書いたり、白書に逆らったりしていたのでは合格は望めません。(合格のため白書に迎合しろと言っているのではありません。念のため)
    では、他の受験生とは一味違いながらも、奇をてらわず、白書に着かず離れずの答案を書くにはどうしたらいいでしょうか。
    いくつかのアプローチがあると思いますが、私は職務上の特性を出すことをお勧めします。
    たとえば地球温暖化の問題が出たとして、その緩和策にはいろいろなものがあるのですが、そのどれかに関わる職務についている場合は、それをメインに書くと具体性・リアリティがあります。
    • 都市計画で受験する人や地方自治体公務員の人が、集約型都市構造について述べる。
    • 国道や高速道路を計画・施工・管理する立場の人(国交省やNEXCOの職員など)が、TDMによる交通円滑化について述べる。
    などです。たとえばNEXCO社員が
    「スマートICを増設して、高規格道路に交通を誘導することで幹線道路の渋滞を緩和し、ひいてはCO2排出抑制に寄与する」
    みたいなことを、自分の職務と関連付けて述べれば、言葉の厚みが違ってきます。
    さらに、あまり個別事例に特化しないようにしつつ、自分が技術者として関わっている地域やプロジェクトについても言及すれば、リアリティがぐっと出てきます。つまり、課題解決能力の重要な評価ポイントである実現性ですね。
    つまり、与えられた課題、たとえば「建設部門における温暖化緩和」といったようなテーマに、自分が自分の職能を最大限生かして寄与できる道はなにかという視点で考えていることをアピールすることが、個性ある答案につながるのではないかと思います。

  3. 「おわりに」で差をつける
    「おわりに」は、多くの受験生が似たような文章を書くと思います。実際、SUKIYAKI塾でも非常に似通ったことが書かれています。言葉は悪いですが字面だけという感じがしてきます。
    採点者は何10人もの答案を採点しますが、経験論文と違って、部門一般は同じ問題を多くの人が解くため、「いかに目立つか」みたいな面、できれば、何かオリジナリティ・個性を出せればと思います。
    たとえば、ご自分のお仕事と地域活性化の関係、地域の中でのご自分の専門職としての位置づけなどを書いてみるのもひとつの手です。
      「私は自治体職員として、地域とこれこれこのように関わっている」
      「私は地場コンサルタント社員として、地域と・・・・」
      「私の会社は全国展開をしており、その中で様々な地域づくりに・・・・」
    など、「自分」、「自分の立場」「地域とのかかわり」の順で記述すると、個性的な文章が書けるでしょう。

  4. 白書につかず離れず
    国土交通白書には、様々なインフラ整備に係る問題の現状と問題点、さらに解決策までが示されています。ですからこれまでは白書の紹介・ダイジェスト記述みたいなものが建設一般の答案でもありました。
    白書からの丸ごと引用、借り物の言葉では、「他の受験生より優れた答案」が書けるはずもないのは明らかです。
    だからといってオリジナリティを出そうとして、白書を無視したような答案や反対するような答案を書くことは感心しません。
    白書に沿いながらもオリジナリティある答案を書くにはどうすればいいでしょうか。
    私は、「自分の言葉で書く」ことにつきると思います。そのためには深く理解すること、これしかないと思います。
    手練手管に走るのではなく、正面から、しかし効率的に白書の内容を理解し、それを自分の言葉で表しましょう。
    ではどうしたら深く理解できるのでしょうか。これはやはり文章を読むだけとか抽象的な観念を読むだけではなく、具体的な事例を絡めて考えるとか、内容について技術者同士で議論するとか、自分が教える立場になってみるとか、いろいろな方法があると思います。

  5. ミクロとマクロ
    技術士には、目の前をことを丁寧かつ詳細に見る目(観察眼)と、グローバルな視点(俯瞰的視野)が同時に求められます。
    土木建設業界の、似たような価値観の、似たような生活をしている人ばかりの中で日々仕事をしていると、違う価値観、違う生活というものが理解できなくなっていきます。さらには目には見えても認識していないようなことになってきます。
    そのような狭い視野しかもっていなくて、国民に説明したり協働したりしながらのインフラ整備の一翼が担えるはずがありません。また、閉じた世界の中での幸福だけを考えて談合に走ったりもするでしょう。
    メイド・イン・チャイナの商品がずらりと並ぶ100円ショップは、東アジアが目の前にいることを体感させてくれます。郊外にオープンした大型店は都市の拡散を示していますし、顕著な黄砂と光化学スモッグは地球環境問題を目の前に示してくれます。
    まちの小さなボランティア活動をみていると、国民の意識の変化や住民エゴ、合意形成からPIに進む時の様々な問題とその解決の糸口をつかむことができます。
    実はそういった視点を持つところから始まるのではないでしょうか。これが身についていれば、白書の理解もぜんぜん難しくはありません。

  6. 予想外の出題形式
    予想外の出題形式も考えられます。
    「記述士」と揶揄される暗記中心の試験からの脱却を、技術士会は強く意識していると思われます。これは最近の総監試験問題に色濃く出ていますし、そのような意思を持っているということは私も耳にします。
    つまり、あらかじめ問題を予想して、これに対処した答案を用意し、試験場で書きまくるといったことでは対処できないような問題を、意図的に出すということは十分に考えられます。
    ただ、「予想外」には2種類あります。
    1つは、問う内容は従来と同じだが、解答形式が異なる場合です。
    以下の2つの問題はSUKIYAKI塾筆記試験対策講座の練習問題です。それぞれの問題の着眼点を書いておきましたのでご覧になってください。
    問題文 問題文に関する着眼点
    (9-2-1)
    地球温暖化が進行する中、建設分野における問題点をあげ、あるべき方策についてあなたの意見を具体的に述べよ。
    テーマの絞込みや細かい内容指示をせず、総論的に見識を問う問題です。白書コピーのような答案が大量に出やすくなっています。課題を「温暖化影響」のレベルに取るか、「温暖化対策の実現困難性」のレベルに取るか、また方策については「緩和と適応」の中での位置づけをしっかり書けるかどうか、そして具体策をどこまで書き込めるか(単に白書のコピーで終わるか、さらに掘り下げるか、あるいは個性を出すか)といったことで差がつくと思われます。
    (9-2-2)
    地球温暖化が進行する中、建設分野における課題を2つあげ、それぞれの課題について、あるべき方策の方向性と具体的な施策を述べよ。
    上問に答案内容指示を加えたもので、課題を2つと指定しています。また、方策については方向性と具体策を書くよう指示しています。テーマは絞り込んでいないので、そこで力量が問われますし、方向性・具体策と整理できるかどうかも差が出やすいところです。「2つの課題」は、温暖化影響レベルであれば海水準上昇と異常気象あたりが妥当でしょう。なお、ここでは課題について書くべき数を指定していますが、方策数を指定した問題も考えられます。
    前述した骨子法であれば、論理構成力を主体として文章力に頼らない答案作成が自然とできますので、あと必要なのは指定された表現方法で答案にできるかどうかという点だけになります。
    もう1つは、問う内容そのものが従来と異なる場合です。
    とはいってもあくまで部門一般ですし、確認すべき能力は知識ではなく論理的考察力と課題解決能力であるわけですから、それほど根本的に出題内容が変わるとは思えず、前述の「一歩踏み込んだ出題」で述べた程度のものだと思われます。
    これも前述したように、骨子法であれば課題解決に関する論理展開のスキルは変わらないわけですから、対処は可能です。
    ただ、できれば「考えをまとめておく」ことができれば、より質の高い答案が望めます。それは別項で述べます。

  7. 「考えをまとめておく」という試験対策
    建設一般については、インフラ整備に関する出題がなされるという大枠は変わらないとすれば、問題を予想するのではなく、出題されそうなテーマを網羅して、それぞれに関する考え方をまとめておくという方法があります。つまり、出題されそうなテーマに関して、答案に書かなければならない事項(現状・問題点・解決策の方向性と具体策)を整理しておくのです。
    出題されそうなテーマは限られており、それぞれのテーマにおける課題もおおむね絞ることができます。これについて整理したのが次章です。
    では「考え方の整理」はどうしたらできるかというと、いろいろな方法があると思いますが、私がもっとも有効だと思ったのがSUKIYAKI塾で実施してきた骨子添削指導です。現状・問題点・方向性・具体策について整理し、その論理的考察力・課題解決能力に関わる重要ポイント(根拠、論理展開、問題抽出、実現性)についてチェックし指導するのがこの講座であり、こうすることで各テーマに関する「考え方」をまとめることができると考えたわけです。
    さらに、繰り返しトレーニングにより応用力を身につけるという効果もあります。つまり、高校の数学授業における「演習」のように、数多くの問題を解くことにより、応用力を身につけるのです。
    小学校で避難訓練をするとき、教室にいるときに避難訓練を一度しただけだと、子どもたちは音楽室にいるときに非常事態になってもどうしていいかわからないそうです。ところが、教室にいるとき、理科室にいるとき、体育館にいるときというように繰り返し訓練をすると、音楽室にいるときにはどう動いたらいいか判断でき、また落ち着いて行動できるようになるそうです。
    今回、骨子法を提案したのはそういう狙いもあります。骨子は文章答案に比べれば短時間でできますから、練習問題で何問も解いてみるときに効果的です。
    何問も練習問題を骨子までまとめる訓練をした人と、1問か2問の予想問題に対する文章答案を練り上げて暗記した人との競争になります。後者の人が勝てるのは、従来どおりの出題内容で、しかも準備答案にズバリ合った問題が出たときだけでしょう。
    そして択一問題がなくなった今、筆記試験の合否は採点者のさじ加減ひとつにかかっています。何十人分もの記述答案を一気に評価することを求められた採点者は、当然傑出した答案(他人より優れた答案)を選ぶでしょう。そしてその評価基準は前述のとおり文章の読みやすさなどではなく、論理展開や課題解決手順などです。これを答案に表わす力を磨くことが一番の試験対策だと考えます。

  8. 資料提示による出題の可能性
    19年度、多くの部門でかなりのボリュームの資料が提示され、それを読んで答えるという出題形式がとられました。たとえば上下水道(こちら)では水質の水位と水質基準を提示した上で上下水道の実績と効果、今後のあり方を述べるものでした。衛生工学部門(こちら)では地球温暖化に関する新聞報道をベースに出題されました。情報工学部門(こちら)では誤発注や個人情報保護に関して、ボリュームある資料を提示して出題されました。
    これらは、提示した情報に基づいた解答が求められます。すなわち、知識を覚えてくることより、提示されたものの中から情報を読み取り、それを整理して問題点を抽出する能力が試されるということで、これは新制度での評価基準に合致した出題方法だといえます。
    建設部門でもこのような出題形式がとられる可能性があります。
    この場合、答案は原則として提供されている情報を使って組み立てることになります。場合によっては「教科書」(白書など)とは一線を画した主張などが書かれているかもしれませんし、何かのテーマに絞り込んだ話題になっているかもしれませ。そういったことも提供された資料から読み取ることが求められます。
    受験生の皆さんも新聞記事や行政資料なども利用して、こういった出題形式にも備えておくことが必要ではないかと思います。なお、SUKIYAKI塾筆記試験対策講座ではこういった出題形式も考慮して練習問題を出していますが、著作権その他の理由でこういった問題を公開することはできません。ご理解ください。

  9. 論文で答案作成を行っている人へ
    これまでに述べてきたような新しい試験システムの中で、従来の論文形式での答案作成・添削練り上げによる試験対策を行うと、
    • 論文答案は、論理構成と文章構成、さらに文章自体といった要素が同時に含まれるので、どれらに絞った評価がしにくくなる。このため、読みやすい(文章構成や文章がよい)ということによるプラス評価を論理構成の評価と混同したりしてしまいがちになる。しかし、予想外の出題があった場合には文章構成や文章自体の練り上げは役に立たなくなる。
    • 文章を書きながら考えていくため、深い入れ子構造などは作りにくくなるし、無理をして作ると現状~問題~解決策の対応が悪くなる。つまり、評価基準である論理的考察力や課題解決能力のうち問題抽出に関して評価が落ちる危険性がある。
      ※その場で考えるのではなく、あらかじめじっくり時間をかけて考え作成したものであっても、入れ子構造が浅い傾向は同じです。
    • 箇条書きの少ない、ダラダラ長い答案ができやすい。文章力のない人は、意味不明の文書になったり読みにくくなったりする。
    • 接続詞その他、文章としての体裁を整える文言が多くなるため、ボリュームの割りに中身の少ない答案になりがちになる。
    という危険性があります。
    まして答案を暗記するなど論外で、用意した答案と問題がズバリ合わなければ評価は望めません。(テーマさえ合えばOKというものではありません。問題と微妙にズレた答案は、論理的考察力や問題抽出など、昨年まではなかった評価基準に照らして厳しい評価がされる可能性が高いと思われます)
    では、どうすればいいのでしょうか。
    SUKIYAKI塾では現在骨子添削を行っており、またどうしても論文で見てほしいという人には従来のままの論文添削を行っていますが、論文答案を骨子と比較すると、論旨の明瞭さにおいてかなり明瞭に差がついていることが多いという傾向が見られます。
    よって、以下のようなことを注意していただくことがいいのではないかと思います。
    • 論理構成を強く意識して答案を作る
      現状、問題点、方向性、具体策という流れを強く意識して答案を作ります。
    • 入れ子構造を作る
      大項目、中項目、小項目というように入れ子構造で答案を作るようにすると読みやすくなりますし、論理構成もしっかりしてきます。
    • ダラダラ文を書かない
      文章は簡潔明瞭に。できるだけ箇条書きを使います。
    • 結論を先に書く
      これは技術的文章を書くときの常識ですね。
    • とにかくたくさんの答案を書く
      完成答案を作るのは大変でしょうが、予想外の出題に対処するにはこれしかありません。
戻る

5.重要課題について

  1. 地球温暖化
    前述の白書第1部と出題率の関係(ズバリでなくても関連まで含めると最近5年間で4年出題されている。つまり出題率80%)を見ると、準備しておくのが当然です。以下、ポイントと思われる事項を整理しておきます。
    • 仮説が多い
      地球温暖化の原因や機構、それが異常気象を引き起こしているのか(あるいは異常気象そのものが起こっているといえるのか)などが、まだ仮説あるいは「可能性がある」といった段階であり、確定していません。たとえば地球が温暖化しているかどうかについても、長い目で見た場合にどうなのか議論がありますし、その現況がCO2濃度であるとか、その影響で海面が上昇して低地が水没するとかいう説になると、かなり怪しい側面もあります。
      実際、19年度の応用理学部門(こちら)ではこのことに関する知見を問う問題も出ました。
      諸説あることを念頭に、どれかの説しか知らないとか自分が賛成できる説に凝り固まったりすることのないようにしてください。
      「どの説が正しいか」を議論するのは「真実を追究する」ことが命題である科学者ならいいですが、「科学を社会に役立てる」ことが役割の技術者は、諸説あることを踏まえた上で、「ではどうすればいいか」を論じなければなりません。
      時々「こうだ」断定する人もいますが、それは一方の説を強く信ずるあまり視野が狭くなっている人です。どれだけ自分が信じていようと、仮説は仮説です。
      なお、ここで大切なのは予防原則、あるいは予防的措置という考え方です。
      これは、必ずしも科学的に因果関係が証明できていなくても、深刻で不可逆的な被害が発生するおそれがある場合には、それを予防するために規制等を行うということで、特に化学物質、環境に関して用いられています。
      ※リオ宣言において予防的措置は、「環境を保護するため予防的措置は、各国おいて、その能力に応じて広く適用されなければならない。深刻な、あるいは不可逆的な被害のおそれのある場合には、完全な科学的確実性の欠如が、環境悪化を防止するための費用対効果の大きな対策を延期する理由として使われてはならない。」と定義されています。
      地球温暖化、異常気象とも、まだ因果関係や顕在化の証明はなされていませんが、「起こらない」とか「関係ない」と断定もできません。
      にもかかわらず国際社会が連携して対策に取り組もうとしているのは、どこかにデマを流して私益を得ようとする悪党がいるなどという子どもじみたことではなく、予防原則による行動であると解釈すべきでしょう。
    • 対策の大分類は緩和と適応
      温暖化対策は、緩和適応に大分類されます。
      • 緩和
        CO2排出を抑制して温暖化の進行を緩和しようというものです。CO2排出源の生産に係る分野(たとえば自動車業界)では排出の少ない製品の開発、これを利用する分野(たとえば運輸業界)では排出源となるものの使い方を工夫してCO2排出を最小限化するなどの努力が図られています。
        建設分野においては、
         (a) 運輸分野としてCO2自動車等からの排出
         (b) 民生分野として都市からのCO2排出(冷暖房その他)
        への関わりがあります。(直接的には運輸や住宅冷暖房に関わっているわけではありませんが、関連分野になります)
        aについては、物流や通勤等の公共交通機関へのシフト、あるいは交通流の円滑化(例:高規格道路の利用を促進するため、スマートIC増設など)があるでしょう。
        bについては、エネルギー効率が高い都市構造とすることが考えられます。
        いずれも白書に方向性は示されていますので、これをベースにするといいいでしょう。白書は十分な情報は書いてありませんが、項目としてはかなり押さえられていると思います。さらに情報を集めて知見を深めてください。
      • 適応
        地球温暖化によって生じる副次的現象に対応することで、「地球温暖化が顕在化した中で国土を維持する(持続的発展を維持する)ことを「適応」といいます。
        たとえば、
         (a) 海水温上昇で海の生態系に影響が出たときの水産資源維持や漁場確保
         (b) 陸上の生態系に影響が出たときの食料確保
         (c) 渇水が汎世界的生じたときの水確保
         (d) 異常気象で局所的豪雨や台風大型化・頻発などが生じたときの治山治水
         (e) 海水準上昇に伴う高潮被害や井戸塩水化の防止
        など、温暖化による影響を抑えたり、失われた資源を代替確保したりといった対応になります。
        建設分野では、上記dが特に注目されますが、これはこれまでも出題された災害に強い国土作りみたいな話になります。
        白書では財政事情が厳しくインフラ整備に対する国民理解が得にくいという状況を踏まえ、ハード対策には限界があるのでソフト対策も必要という視点で、
         ・危険地帯に住居が立地するのを抑制するような施策
         ・ITを活用した情報提供
        などを提示していますが、このあたりはまだまだ他に施策があるので、他の受験生に対して差をつける余地が大いにあります。たとえば、
         ・特定都市河川法のようなシステムで水害を「押さえ込むのではなく「いなす」
         ・住民参加型あるいはNPOなどとの連携で減災を期する
        などで、このあたりは地域カラーあるいは所属組織カラーを出せる余地があります。
    • 広い分野で問題・解決策がある
      地球温暖化は、建設部門だけでなく、たとえば上記(a)~(e)のように、ほとんどの部門で何らかの問題点や解決策を考えることができます。
      このため、部門に限定されず広い範囲に知見を広げることが可能で、これにより視野の広さで他の受験生に差をつけやすくなっています。逆にいえば、白書しか読んでいなかったりすると、他の受験生に差をつけられてしまいやすくなっています。
    • いろいろな出題形式が考えられる
      直接的影響と副次的影響があり、対策も多岐にわたるため、いろいろな出題バリエーションが考えられます。たとえば、
      地球温暖化が進行しているといわれる中で、現状に関する認識を整理し、その対策において建設分野が寄与できる内容についてあなたの意見を述べよ。
      といった問題だと、地球温暖化の原因や機構に関する意見を述べることもできるので、入り口のところからいろいろな答案を書く余地がありますが、
      地球温暖化に伴う異常気象が顕在化していると言われている。この可能性が顕在化した場合、建設分野において予想される問題点を列挙し、とるべき方策についてあなたの意見を述べよ。
      といった問題だと、温暖化から異常気象までは正しいかどうかではなく前提として答えろといっているのですから、温暖化原因の議論などしていてはいけません。
      問題が求めていることに素直に答えることが重要です。実務でも同じで、顧客が求めていることなどおかまいなしに持論を展開したり自分の価値観で突っ走っていては、技術者として国民の期待に応えることなどできません。
      このように、様々な問題バリエーションが考えられ、答案もそれにあわせて臨機に組み立てる必要がありますので、答案作成・丸暗記では歯が立たなくなる可能性が大です。
      対策としては、様々な出題バリエーションに対応した答案を作るトレーニングが望ましいと思われます。つまり、以下のような作業が必要になります。
      1. 問題文の中に含まれる情報(前提条件としていることも含む)を整理する。
      2. 与えられた課題、つまりテーマをよく理解・認識する。
      3. 問題点を抽出する
      というようにして答案を紡いでいく必要があります。上記1は骨子法では「現状・原因」の整理になります。
    • 白書に着かず離れず
      白書で第1部に取り上げられているテーマですから、それだけ国土交通省は重要視しています。ですから、前述した「白書に着かず離れず」は特に重要です。白書そのままの答案では差別化ができません(A評価はおぼつきません)し、白書に書いてあることを否定する答案では、試験官を納得させられなかったらアウトです。(口頭試験なら論破することもあり得ますが、筆記答案で納得させるのはかなりのレベルでないと難しいと思います)
    • 個性を出そう
      白書第1部のテーマだけに、もし出題されたらこちらを選択する受験生が圧倒的に多くなることが考えられます。そうすると、いかに個性を出すかも重要な要素になってきます。
      前述の「個性ある答案」にぜひ挑戦してみてください。
    ここに注意!
    ●運輸部門、民生部門の緩和について
    運輸部門では車からのCO2排出が問題視されますし、民生部門では住宅・都市や自家用車からのCO2排出が問題視されます。
    しかしこれらをそのまま問題点としてあげていいかどうかは注意が必要です。たとえば問題文に「建設分野の問題点」と指定してあった場合、題意に沿っていないと評価される可能性もあります。
    同様に これらの解決策には、2つのアプローチがあります。
     (1) 自動車の燃費改善や住宅の高気密化によるエネルギー効率向上など
     (2) 交通円滑化や集約型都市など
    (1)は比較的ダイレクトにCO2排出源からの排出量を減らそうものですが建設分野からやや離れた分野でのアプローチであり、(2)はやや間接的ながら建設分野でのアプローチです。したがって、設問で建設分野に限定といった条件が付いている場合は、(1)は書かないか簡単にふれる程度にして、(2)を重点的に書くようにしたほうがいいということになります。
    なお、CO2排出に冠する建設分野の関わりは、次のように理解するのが適当であると思われます。(出典:たとえばこちら
    建設部門の施工段階におけるCO2排出量は、全体の1%強と比率は小さい。しかし、建設から運用・修繕・更新までを考慮した建設部門が関わるライフサイクルCO2は、国内CO2全排出量の約半分を占める。

    また問題点は、建設分野に関する問題点として整理することが必要です。
    自動車からのCO2排出量が大きいのは確かに問題なのですが、
     「自動車のCO2排出が大きい」
    で終わってしまうと運輸分野の問題に終始してしまいます。じゃあなぜCO2排出が大きくなるのか、つまり自動車が多く使われるのか考えてみると、物流では鉄道輸送などのインフラ整備が不十分だからだとか、通勤や買い物に自動車を利用せざるを得なくて、それは都市がスプロール化して遠くに移動しないといけないのに公共交通インフラ整備が不十分だからだとか、
     「何の(どんな)インフラ整備が不十分だから自動車を使わざるをえないのか」
    という視点で掘り下げることによって、他分野の問題点を建設分野の問題点として整理できます。問題点も解決策も「インフラ整備」という視点を持ち続けることが「建設分野」というテーマからズレることなく掘り下げる(問題点を抽出する)コツです。

    ●問題点、解決策の数について
    たとえば「建設分野における問題点という視点で」課題と問題点をざっとあげてみると、温暖化緩和に関するものだけで
    課題 建設分野における問題点
    自動車からのCO2排出量が多い(運輸分野) 公共交通流通インフラ整備が不十分で流通の自動車依存度が高い
    交通渋滞等により円滑に走行できないと燃費改善を妨げる
    通勤・買物等日常生活での移動手段が、都市のスプロール化・公共交通機関の整備不十分等により自家用車依存度が高い
    都市からのCO2排出量が多い(民生分野) 冷暖房等による消費電力が多く、エネルギー消費抑制が進まない
    というようになろうかと思います。
    ※問題点は「課題クリアを妨げるもの」という視点で考察し、さらに問題点が抽出できたら、その原因まで掘り下げます。たとえば「流通の自動車依存度が高い」という問題点が抽出できたら、そこで「それはなぜだろう」という原因も探り、「公共交通機関による流通網が整備不十分」まで掘り下げておきます。そうすれば、解決の方向性は自ずと見えてきます。
    解決策は、問題点がその原因まで掘り下げてあれば自ずと見えてきて、モーダルシフト・交通円滑化に寄与するようなインフラ整備(物流幹線に関わる公共交通インフラ整備、交通ボトルネック解消やスマートIC等を活用したTDMなど)、都市集約・省エネ住宅・都市緑化などによる自家用車依存度減少やエネルギー効率化などが考えられてきます。
    このように、緩和に関するものだけで問題点は4つ出てきます。そして解決策はそれと同じかもっとたくさん出てきます。具体策ではもっと増えるでしょう。
    さらに適応策についても囲うとすれば、問題点・解決策ともさらに増えます。
    白書に沿って整理してもこれだけありますから、個性を出そうとして独自案など書いたらさらに増えます。
    このようになると、書くべき問題点・解決策とも多すぎて、1つ1つのスペースが限られ、内容が薄くなってしまいます。そうすると具体策が書き込めずに実現性という尺度で低く評価される懸念が出てきます。また白書に沿っていると、「白書の要約版にすぎない」内容になってしまいます。
    このような場合、問題点・解決策に濃淡をつけること、すなわち簡単に触れる程度のものとしっかり具体策まで書き込むものに分けることが考えられます。そしてその濃淡分けを、ご自分の携わっている職務とか身近な地域で特に重視すべきものといった視点で行えば、ぐっと個性ある力強い答案が書けるのではないでしょうか。

    ここにあげた事項は、SUKIYAKI塾筆記試験対策講座の添削指導の中で、地球温暖化をテーマにした場合に多くみられた指摘事項を参考にしています。

  2. 真に必要なインフラ、維持管理・更新
     問題作成時期は、出題担当者が出してきた問題の吟味や校正などの時間を考えると、4月ごろが中心になっていると推定されます。この時期にインフラ整備上の最大の問題は何だったかというと、道路特定財源関連問題です。
     また、既存インフラは更新時期に入ってきています。このため増大する維持管理投資に加えて更新投資が必要になってくるわけですが、少子高齢化時代・人口減少時代を迎え、たとえ新設投資を大幅に削ったとしても、思うような投資は難しい状況です。
    出典:第12回経済財政諮問会議北側臨時議員提出資料「社会資本整備のあり方について」
     似たような問題は、 「真に必要な道路」として19年度に道路科目で出題されていますが、道路に限定せず、たとえば、
    (問題)
    新規社会資本投資が厳しく制限される中、国民生活の安全・安心と利便性確保、国際社会との競争・連携のため、真に必要な社会資本整備を、国民の理解を得つつ進めることが必要である。このことについて、現状の課題を整理し、建設分野においてとるべき方策についてあなたの意見を述べよ。
    (H20 SUKIYAKI塾練習問題9-2-6)
    とか、
    (問題)
    新規社会資本投資が厳しく制限される中、真に必要な社会資本整備を、国民の理解を得つつ進めるため、建設分野においてとるべき方策についてあなたの意見を述べよ。
    (H20 SUKIYAKI塾練習問題9-2-8)
    あるいは
    (問題)
    既存の社会資本が更新期を迎える中、厳しい財政状況の中で、真に必要な社会資本整備を、国民の理解を得つつ進めるため、建設分野においてとるべき方策についてあなたの意見を述べよ。
    (H20 SUKIYAKI塾練習問題9-2-11)
    といったような出題が考えられます。
    (SUKIYAKI塾練習問題解説)
     9-2-6は道路特定財源に代表されるインフラ整備財源確保の困難、国民の建設分野に対するマイナス感情、地球温暖化の影響も含んだインフラ整備の必要性、更新期に来ている既存インフラの維持改良、昨年白書で出た東アジアとの競争連携のための物流インフラ整備や少子高齢化対策などを包括的に含んだ設問です。つまり切り口がいっぱいあります。逆に地球温暖化とか道路特定財源とか絞り込んでないので「何がテーマなんだ?」となってしまう人もいるかもしれません。つまりピントがズレたりボケたりしやすい問題になっています。また絞り込まないと百花繚乱すぎて浅くなりますし、一人よがり答案にもなりやすくなっています。いろいろな答案が来るでしょうから見るほうも大変ですが、各自の実力や俯瞰的・総合的視野の有無なども見られる問題です。個人的には、アセットマネジメントの視点からの展開がほしいところです。

     9-2-8は、9-2-6から国際社会との競争・連携や安全・安心などを抜いてテーマを絞り込んだ例です。問題文からは道路特定財源のことが強く感じられるようになっています。また、「国民の理解を得る」というキーワードの重みが増していますが、これにどう対処するかも人によって異なると思われます。効率的な事業実施が国民理解につながるということで事業評価・政策評価・社会資本整備重点計画法などに言及する人もいるでしょうし、アカウンタビリティ、PI、合意形成といったことに言及する人もいるでしょう。

     9-2-11は、9-2-8の前に既存インフラの更新という課題をあげたものです。9-2-8は新規インフラ整備に主眼を置きがちになりますが、こちらは維持更新を主体に、新規インフラも織り交ぜた、まさにアセットマネジメトの視点での答案が期待されます。言い換えると、この問題に対して維持更新だけの視点で答案を書いたのでは、アセットマネジメントで攻めてくる受験生には負けるということにもなります。
     ポイントを列挙してみます。
    • 出題意図の汲み取りが重要・・・・何を書かせたいのか?
      「真に必要」という視点と「維持管理更新」という視点
    • 選択と集中、優先順位をつけた戦略的インフラ整備
    • 事業評価制度、PI、災害に対するリスクアセスメントなど
    • 道路特定財源問題→財源確保困難→維持管理優先
    • 既存インフラと新規インフラの組み合わせ・・・・アセットマネジメント
    • 道州制をにらんだ優先順位
      • 道路は物流と地域間交流(人流)でニーズが違うことに注意
      • 物流は、H19国土交通白書の「東アジアとの経済競争に直面する地方」という考え方で、必要なものは①高付加価値製品、②生産拠点、③物流拠点、④物流幹線。物流集約による温暖化緩和寄与を加えてもよい。
      • 人流は、限られた予算の中での効率的なインフラ整備。ローカルルールも積極
         的に採用。

  3. ユビキタス社会
     平成大不況の中、ITバブルにわくアメリカの情報ハイウェイ構想に遅れをとった我が国は、情報インフラ整備の重大性を認識し、e-Japan戦略によって様々なハード&ソフト施策をとってきました。その甲斐あって、ブロードバンド環境でのインターネットやモバイルなど、ITに関しては世界トップクラスになりました。これを受けて、生活のあらゆるシーンをITが支えるユビキタス社会の構築を視野に入れ、次のIT戦略であるu-Japan政策が始まっています。
     このユビキタス社会については、少子高齢化・人口減少社会において、ユニバーサルデザインと深く関わる形で理解する必要があります。
    (問題)
    コンピュータやネットワークが生活の隅々まで急速に入り込んでいる現代社会において、我が国はIT推進を進めるe-Japan戦略の後を受けて、ユビキタス社会実現を目指したu-Japan政策を推進している。資料はその概要であるが、これを踏まえ、建設分野においてユビキタス社会を迎えるにあたっての問題点を抽出し、その解決策についてあなたの意見を具体的に述べよ。
    資料はこちら
    (H20 SUKIYAKI塾練習問題9-2-14)
    なお、上の練習問題は、資料提示型問題が出る場合を想定したものです。個人的に、市量提示型問題が出る可能性はかなりあるのではないかと思っています。

  4. その他のテーマ
    • 環境(循環型社会)