技術士第二次試験 平成23年度 総合技術監理

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※択一正解は、技術士会の公表正解に関して、臨時掲示板での議論を参考に解説を加えたものです。
 異論や情報などありましたら、掲示板あるいはメールにてお願いします。


択一問題

2−1 次の40問題を解答せよ。(解答欄に1つだけマークすること。)
なお、法令及び制度については、特に記載のあるものを除き、平成23年4月1日時点のものとする。



U-1-1 総合生産計画に関する次の(ア)〜(オ)の記述のうち、不適切なものの数を@〜Dの中から選び答えよ。

(ア)総合生産計画は、生産計画の最終段階に位置するものであり、大日程計画と言い換えることもできる。
(イ)総合生産計画の基本的な目的は、需要予測量と生産能力を合理的に均衡させることである。
(ウ)総合生産計画を作成する場合、需要変動に対する対応が重要な課題となってくる。
(エ)生産能力調整には、在庫水準調整、労働力水準変更、生産率変更、パートタイマー活用、納期遅延がある。
(オ)需要平滑化には、需要増大、補完製品開発、外注対応がある。

@1 A2 B3 C4 D5

正解は3
(ア):×…生産計画は、@長期計画(大日程計画)→総合生産計画(中日程計画)→日程計画(小日程計画)となります。よって最終段階ではありませんし、大日程計画でもありません。
(イ):○
(ウ):○
(エ):×…納期遅延は需要平滑化です。
(オ):×…需要平滑化とは、販売促進により需要を増大させる、納期を延期する、季節商品などの補間製品を開発する等によって、需要を変化させ、生産コストを最小化することです。よって外注対応は需要変化に関係ありませんから需要平滑化には含まれません。
よって間違いは3つです。


U-1-2 キャッシュフロー計算書とは、企業の会計期間におけるキャッシュ・インフロー(収入)とキャッシュ・アウトフロー(支出)が、営業活動、投資活動及び財務活動に区分して記載される計算書である。次の(ア)〜(エ)の項目が記載される区分の組合せとして適切なものを@〜Dの中から選び答えよ。なお、営業活動によるキャッシュフローの区分は、主要な取引ごとにキャッシュフローを総額表示する直接法により記載されることとする。また、区分の欄に書いてある 「記載されない」とは、キャッシュフロー計算書のどの区分にも記載されないことを意味する。

(ア)社債の償還による支出
(イ)資本金
(ウ)人件費支出
(エ)有形固定資産の売却による収入

  (ア)   (イ)    (ウ)   (エ)
@ 財務活動  投資活動   記載されない 営業活動
A 財務活動  記載されない 営業活動   投資活動
B 営業活動  投資活動   財務活動   投資活動
C 投資活動  営業活動   記載されない 財務活動
D 投資活動  記載されない 営業活動   財務活動

正解は2
・営業キャッシュフロー
営業活動における現金収支になります。たとえば「売上100万円−人件費50万円−材料費30万円=20万円の黒字」というのが営業キャッシュフローになります。
・投資キャッシュフロー
投資による現金の流れです。設備投資や有価証券投資をしたらその分マイナス、資産を売却したらプラスの投資キャッシュフローになります。
・財務キャッシュフロー
借入や返済といった財務活動による現金の流れです。借金や社債・株式の発行などがプラス、借金の返済や社債の償還・自己株式の取得がマイナスになります。
(ア):上記により財務活動キャッシュフローです。
(イ):資本金の増減は財務活動キャッシュフロー計算書に記載されますが、資本金自体はキャッシュフローではありません。
(ウ):上記により営業活動キャッシュフローです。
(エ):上記により投資活動キャッシュフローです。


U-1-3 PMBOK (A Guide to the Project Management Body of Knowledge)は、米国プロジェクトマネジメント協会 (Project Management Institute)によって作成されたプロジェクトマネジメントの事実上の国際標準である。PMBOKによるプロジェクトマネジメントに関する説明として、最も不適切なものを選び答えよ。

@プロジェクトマネジメントは、プロジェクトの明確な目標を有限期間・有限資源で達成するために管理する活動である。
Aプロジェクト全体は、まずプロセスと呼ばれるいくつかの部分に分割される。これらのプロセスはさらにいくつかのフェーズに分割される。
Bプロジェクトマネジメントのプロセスは、統合マネジメント、スコープマネジメント、 タイムマネジメント、コストマネジメント、品質マネジメント、人的資源マネジメント、コミュニケーションマネジメント、リスクマネジメント及び調達マネジメントの9つの知識エリアに分類できる。
Cプロジェクトマネジメントの特徴は、プロジェクト全体をWBS (Work Breakdown Structure)という思想に基づき、小さな部分的な仕事に分割していくことである。
Dプロジェクトマネジメントでは、プロジェクトの中で共通の考えで処理できる部分をマニュアル化し、さらには専用のコンピュータソフトでその部分の作業を処理できるようにしている。

正解は2
フェーズとプロセスが逆です。


U-1-4 設備保全は、大きく分けて事後保全、予防保全、改良保全、保全予防の4つに分類される。次の(ア)〜(エ)の活動が該当する組合せとして適切なものを@〜Dの中から選び答えよ。

(ア)定期点検時に交換基準に基づき部品を取り換える。
(イ)同種の故障が再発しないように改善を加える。
(ウ)故障した機械を代替機と替える。
(エ)設備の調査研究・設計段階から保全活動の経験を反映させ、最初から信頼性の高い設備にする。

  (ア)  (イ)  (ウ)  (エ)
@ 保全予防 改良保全 事後保全 予防保全
A 保全予防 事後保全 改良保全 予防保全
B 事後保全 保全予防 予防保全 改良保全
C 予防保全 事後保全 改良保全 保全予防
D 予防保全 改良保全 事後保全 保全予防

正解は5
・事後保全
故障等が起きてから対策して復帰させることです。生起確率が低いものはこのようにしたほうがいい場合があります。
・予防保全
故障等が起きる前に対策を講じておくことで、定期的な部品交換などです。
・改良保全
保全性を重視して設備を改良することです。設計改善(長寿命化など)と設備改善(点検修理が短時間で終わるようにするなど)があります。
・保存予防
改良保全の発展形で、信頼性の高い、保全性のすぐれた設備の設計、製作、設置を行う方法です。
(ア):上記により予防保全です。
(イ):上記より改良保全になります。最初から(設計段階から)こうしてあると保全予防になります。
(ウ):上記より事後保全です。
(エ):上記より保全予防です。


U-1-5 生産活勤において、不適合品の不適合内容が多数あるとき、その内容の重点順位を分析するときや、不適合内容へのできるだけ少い数の対処で不適合品の割合をある設定にするときに用いる最も適切な図の名称を、次の中から選び答えよ。

@パレート図 A特性要因図 Bヒストグラム
C散布図 D管理図

正解は1
パレート図は、件数や頻度を縦軸にとり、多いものから棒グラフで並べ、折れグラフでその累積を示したものです。こうすることで、どんな不具合が高頻度で発生しているか、すなわちどの不具合から先に対処すべきかを把握することができます。


U-1-6 日程計画において、作業順序付け方式によって4つのジョブが3つの機械で作業を受けるとき、ガント・チャートなどによって総所要時間の最小値を計算し、その結果を@〜Dの中から選び答えよ。ただし、計算に当たっては以下の条件によるものとする。
・ジョブは、ジョブ1、ジョブ2、ジョブ3、ジョブ4の順に各機械に投入される。
・各ジョブは機械1、機械2、機械3の順で作業を受ける。
・各ジョブは同時に2つ以上の機械で作業を受けることができない。
・各機械は同時に2つ以上のジョブを作業することはできない。
・各機械は独立に作動する。
・各ジョブが各機械で受ける作業時間(段取り時間を含む)は下表に与えられる。

    ジョブ1 ジョブ2 ジョブ3 ジョブ4
機械1   5    3    6    4
機械2   4    4    5    5
機械3   3    4    5    4

@25 A26 B27 C28 D29

正解は4
これはガントチャートに描くのが一番ですね。


U-1-7 サプライチェーンマネジメントに関する次の記述のうち、最も不適切なものを選び答えよ。

@サプライチェーンマネジメントは、原材料の調達から生産、出衛流通、販売、さらには回収に至るまでの流れを一括管理しようとする試みである。
Aサプライチェーンマネジメントでは、コンピュータの能力を活用し、リアルタイムに近い形で入手した情報を基に需要予測を行い、在庫量を増すことでスピーディな対応を可能にする。
Bボトルネックとなる工程の能力をフルに発揮させるためには、ボトルネック工程の前の工程ではプル型生産方式で、ボトルネック工程 工程ではプッシュ型生産方式で生産を行う。
C少ない仕掛在庫でボトルネックとなる工程の能力を最大限発揮させるために、ボトルネックとなる工程とその直前の工程との間にバッファを設け、その他の工程では極力バッファを置かない。
Dサプライチェーンマネジメントは、業務プロセスの流れを一つのビジネスプロセスとして捉え、企業や組織の壁を越えてビジネスプロセスの全体最適をめざす、戦略的な経営管理手法である。

正解は2
需要予測をするのに在庫量を増すのはおかしいですね。


U-1-8 消費生活用製品安全法の目的は次のとおりである。

「消費生活用製品安全法は、消費生活用製品による一般消費者の生命又は身体に対する危害の防止を図るため、特定製品の製造及び販売を規制するとともに、特定保守製品の適切な保守を促進し、併せて製品事故に関する情報の収集及び経供等の措置を講じ、もって一般消費者の利益を保護することを目的とする。」

次の製品の中で、消費生活用製品安全法の対象にならないものを選び答えよ。

@家庭用ライター A屋内式ガス瞬間湯沸器  B家庭用シュレッダー
C乗車用ヘルメット D自動車のブレーキ装置

正解は5
消費生活用製品安全法(消安法)では、以下のようなものは対象になっていません。
・市場で一般消費者に販売されるもの以外の製品
たとえば建築物や構築物、一次製品など。選択肢@、A、B、Cとも製品です。
・一般消費者が市場で購入するようなものではない部品
ただし電池やカッターナイフの替刃等、それ自体が普通に市販されているものは除かれます(消安法対象となります)
・消安法以外の法令で個別に安全規制が設けられ、その規制対象となっている製品で、消安法の別表で規定されています。@船舶(船舶安全法)、A食品・食品添加物・洗浄剤(食品衛生法)、B消火器等(消防法)、C毒物・劇物(毒物及び劇物取締法)、D道路運送車両(道路運送車両法)、E高圧ガス容器(高圧ガス保安法)、F猟銃等(武器等製造法)、G医薬品・化粧品等(薬事法)といったものが概要します。選択肢Dはこれに該当します。ちょっと重箱の隅ぽいですが、感覚的にも違和感があると思います。


U-1-9 組織やプロジェクト管理における人の行動モデルに関する次の記述のうち、最も不適切なものを選び答えよ。

@マグレガーの考え方は、科学的管理法から行動科学的アプローチへと発展していく流れと捉えることができる。
A科学的管理法は、作業分析や動作分析をもとに効率的な生産方式を考える方法論である。
B理念的インセンティブとは、思想やや価値観の追求を達成意欲の源泉とするようなインセンティブを与える方法である。
C人間の行動には、経済的行動、情緒的行動、管理的行動の3通りのパターンがあると考えられている。
Dマズローによる人間の欲求の5段階のうち、物質的欲求を1段階目とすると、5段階目の欲求は周囲からの尊敬欲求である。

正解は5
欲求の5段階は、@生理的欲求、A安全の欲求、B親和の欲求(帰属の欲求、所属と愛の欲求)、C自我の欲求(承認の欲求)、D自己実現の欲求です。「尊敬欲求」はCですね。


U-1-10 労働基準法(平成22年4月1日に改正施行)に基づく時間外割増賃金に関する次の記述の空欄[ア]、[イ]に入る数字の組合せとして、正しいものを@〜Dの中から選び答えよ。

「法定割増賃金率が引き上げられたが、1ヶ月[ア]時間を超える時間外労働に係る法定割増賃金率が改正前の25%以上50%以下の率から[イ]%以上の率へ引き上げられた。ただし、中小事業主の事業については、当分の間、適用しないこととなっている。」

  ア イ
@ 60 50
A 50 50
B 50 40
C 40 50
D 40 40

正解は1
労使協定の残業上限を60時間とするものが多いと思います。


U-1-11 労働時間の弾力化に関する制度の説明とその名称の組合せのうち、適切なものを@〜Dの中から選び答えよ。

(ア)始業時間と終業時間を社員の選択にゆだね、一定の期間内に、実際に働いた時間と所定労働時間を清算する。
(イ)実際に働いた時間ではなく、事前に定められた時間数を労働したとみなす。
(ウ)一定の期間内で、平均の所定労働時間が法定労働時間を超えない範囲で、所定労働時間を延長できる。

    (ア)        (イ)        (ウ)
@ 変形労働時間制度   フレックスタイム制度 裁量労働制度
A フレックスタイム制度 裁量労働制度     変形労働時間制度
B 裁量労働制度     フレックスタイム制度 変形労働時間制度
C フレックスタイム制度 変形労働時間制度   裁量労働制度
D 変形労働時間制度   裁量労働制度     フレックスタイム制度

正解は2
これは覚えているかどうかの勝負ですが、「自由」→「フレックス」、「みなす」→「裁量」というようにイメージがつながれば感覚的にも答えられると思います。


U-1-12 退職一時金及び企業年金に関する次の記述のうち、最も不適切なものを選び答えよ。

@ 退職一時金の支給額は一般的に [退職一時金=算定基礎給×支給率×退職事由による係数] により算定され、算定基礎給は在職期間中に支払われた給与の平均が使われる。
A 退職一時金の増大に対応するため、職能等級別に一定の点数を定め、退職までの総点数を計算し、それに一定の単価をかけて退職一時金を算定するポイント方式を採用する企業が多くなっている。
B 退職一時金を企業年金に転換し、負担の平準化を図る企業がある。
C 確定給付企業年金には、労使合意による年金規約に基づき、外部機関に積み立てる規約型と、厚生年金の代行部分のない基金による基金型がある。
D 企業型の確定処出年金は、拠出された掛け金が個人ごとに区分され、掛け金と運用収益で絵付額が決定される。

正解は1
算定基礎給は一般に、在職期間中の平均ではなく退職時の給与が使われます。


U-1-13 一般的に正社員は技能職と事務・技術職などに区分される。事務・技術職の社員区分制度に関する次の(ア)〜(エ)の記述には、適切なものと不適切なものが含まれている。その組合せとして正しいものを@〜Dの中から選び答えよ。

(ア)主に補助的業務を受け持つ一般職と基幹的業務を受け持つ総合職に分けられる。
(イ)家庭の事情などで転勤の難しい総合職的な社員を対象にして、住居の移動を伴う転勤を行わない勤務地限定社員制度が普及してきている。
(ウ)専門職制度には専門職と専任職があるが、専門職は特定の業務(技能など)に限定して仕事を担当する人たちを対象にしたものである。
(エ)入社後早い段階で、管理職ルートと専門職ルートを選別することが、総合職のキャリア形成において重要である。

  (ア) (イ) (ウ) (エ)
@ 適切  適切  不適切 不適切
A 適切  不適切 不適切 不適切
B 適切  不適切 不適切 適切
C 不適切 適切  適切  適切
D 不適切 不適切 適切  不適切

正解は1
(ア)と(イ)はその通りです。
(ウ)は専任職の記述です。管理職には向かないが専門的にやっていきたいというような人材の活用として設けられていることもあり、人事異動がなかったりします。
(エ)は、キャリア初期にエリートとノンエリートを選別すると競争の敗者がモチベーション低下を起こす等のことから、日本の企業は選別を時間をかけて緩やかに行う形が定着しています。


U-1-14 次の記述で説明される用語として最も適切なものを@〜Dの中から選び答えよ。

「一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった一応じて多様な生き方が選択・実現できること。」

@フリーランス  Aクォリティ・オブ・ライフ
Bスローライフ  Cワークシェアリング
Dワーク・ライフ・バランス
正解は5
選択肢の用語は様々な分野の用語が混じっています。カタカナ言葉、アルファベット略称(PFIやERPなど)は意味を確認する(あるいは意味を知らないと正誤が判断できない)問題が出ることが多いので要注意です。
@フリーランス:直訳すると自由契約のことですが、一般的には個人事業主や自由業のことです。
Aクォリティ・オフ・ライフ:単なる生活水準だけでなく、幸福感、健康、人間関係、やりがい・生きがい、レクリエーション・レジャー、社会環境(自由人権の保障、教育環境、医療環境、居住快適性など)といった多くの指標により評価される、個人の総合的な生活の質、人生の充実のことです。
Bスローライフ:地域の自然・歴史・伝統・文化を大切にして「ゆっくり、ゆったり、豊かに」暮らすことに価値観を置く生活様式をいいます。
Cワークシェアリング:勤労者間で雇用を分け合うことです。時短による雇用維持と、様々な短時間労働を組み合わせることによる雇用創出があります。「ワーキングシェア」ともいいますね。
Dワーク・ライフ・バランス:仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章では、記述の文の先頭に「国民」が付き、末尾が「できること」→「できる社会」になった文言を「仕事と生活の調和が実現した社会の」として定義しています。


U-1-15 人事評価に関する次の記述のうち、最も不適切なものを選び答えよ。

@どのような人材がほしいのかということに関する会社の基本方針が、人事評価基準のベースになる。
A加点主義は、成果を挙げたことに対して点数を加えることによって評価するもので、従業員の間に失敗を恐れず革新的なことに挑戦する意欲が生じる。
B評価方法については、公平性を確保し、評価者の主観が入り込まない制度を構築する必要がある。
C評価の反映として、主として賞与には能力評価が反映され、昇給や昇進にはそれとともに長期的な視野を含めるために業績評価と姿勢評価も反映することが一般的である。
D評価基準を策定する場合、業績を評価する方法を用いれば、組織への貢献を評価することができるが、能力や姿勢以外の偶然の要因にも左右され易く、また短期の成果を求める傾向が生じる恐れがある。

正解は4
賞与には業績評価が反映され、昇給・昇進は長期的な視野を含めるため能力や姿勢に関する評価も反映されます。


U-1-16 ホーソン実験に基づくメイヨーとレスリスバーガーの説において作業能率に最も影響があるとされているものを選び答えよ。

@照明の明るさ A賃金 B人間関係 C休憩の時間 D気温

正解は3
ホーソン実験は、4つの実験から成ります。
(1) 照明実験:照明の明るさと作業能率の相関性をみるための実験でしたが、明るくすると能率が上がっただけでなく、暗くしても能率が上がるという計測がありました。
(2) 継電器組立実験:6名の従業員が機器を組み立てる作業を、賃金・休憩時間・軽食・温度湿度といった条件を変化させて行い、能率との関係を調査しました。結果、条件変更とは無関係に能率は上昇し続けました。
(3) 面接実験:2万人以上の面接の結果、労働意欲は個人経歴や人間関係に大きく左右され、また行動は感情を切り離すことはできず、本実験で様々に条件変化させた客観的な職場環境の影響は少ないということが見いだされました。
(4) バンク配線実験:電話交換機端子の配線作業を協業にて行わせたものですが、@労働者は自分の労働量を制限している、A品質検査では検査官と労働者の人間関係も影響する、B労働者の能力は成果の差異には表れないといったことがわかりました。
従来の物理的作業条件が生産性を決めるという古典的管理論では上記実験結果は説明できず、生産性向上には人間関係が重要な要因になっており、それは非公式組織が重要な鍵を握っていることがわかりました。
すなわち労働者は、日常の仕事の中で非公式組織(人間関係の中から自然に発生するインフォーマルグループ)を形成し、そこには集団規範があってメンバーの行動に大きく影響しているというものです。
これにより、コストの論理と能率の論理だけでは生産性は向上せず、感情の論理(士気のようなものですね)をコントロールできないといけないこと、非公式組織の重要性が認識されました。
なお、上記の4実験は一斉に行われたものではなく、仮説を組み立てながら順次行われています。最初の実験は照明実験で、ここで古典的仮説が立証できなかったため、仮説の立て直しが始まったわけです(ちなみに照明を暗くしても作業効率が落ちなかった原因は他の作業員に対する競争意識でした)。そして最後のバンク配線実験は、「生産性に影響するのは人間関係や監督者のリーダーシップである」という仮説のもとに行われ、公式組織の規制力よりも非公式組織の集団規範のほうが労働意欲・生産性向上に影響することが確認されています。
 以上をふまえて選択肢をみると、@は照明実験、A、C、Dは継電器組立実験で作業能率との関係を測定した物理的条件であることがわかります。


U-1-17 プログラム等のソフトウェアの使用・販売に関する次の誼述のうち、最も不適切なものを選び答えよ。

@OSなどのソフトウェアを1ライセンス分だけ購入して、部署内の複数のコンピュータにインストールし使用するなどの行為は、著作権法などで定められた範囲を越えたプログラムの不正使用に当たる。
Aコンピュータ又はネットワークを活用してビジネスを行う方法は、技術的新規性に乏しくても、それらの活用の仕方に新規性と進歩性があれば、ビジネス方法の特許の対象となる。
B日本国内において広く一般的に流通している自社で作成したソフトウエアモジュールを、他社のあるプログラムが第三者の特許権を侵害すると知りつつ当該プログラム作成のために販売した場合、その販売行為も特許権の侵害とみなされる。
C記録媒体を用いず、ネットワーク上で流通するソフトウェアに関しても特許権が認められる。
Dソフトウェア特許の対象とならない周知の知識であるか否かを調べるために、特許庁がCSDB(コンピュータソフトウェアデータベース)を運営している。

正解は3
国内に広く一般的に流通している物の製造販売は特許法の間接侵害に該当しません。


U-1-18 ナレッジ・マネジメントに関する次の(ア)〜(オ)の記述のうち、不適切なものの数を@〜Dの中から選び答えよ。

(ア)ナレッジ・マネジメントを有効に機能させるためには、組織の長の深い関与と、組織内にナレッジ・マネジメントの重要性を認識させることが重要である。
(イ)ナレッジは他社に理解されて初めて有効に活用されるものであり、知の移転を行うためには他人がわかる形式にする必要がある。
(ウ)形式知と暗黙値の相互変換が重要であるが、暗黙知を形式知に変換することが困難な場合は、暗黙知の所有者を明らかにしておくことが必要となる。
(エ)ナレッジ・マネジメントを有効に機能させるためには、人事考課管理との連動など積極的参加を促す仕組みを工夫することが重要である。

@0 A1 B2 C3 D4

正解は1
すべて適切な記述です。


U-1-19 知的財産権に関する次の(ア)〜(エ)の記述のうち、不適切なものの数を@〜Dの中から選び答えよ。

(ア)知的財産権には、特許権、実用新案権、著作権、意匠権等があるが、これら特許庁が所管している。
(イ)特許庁長官が指定する学術団体が開催する研究集会において発表した場合に限り、特許出願前に発表された発明の新規性は喪失を免れる。
(ウ)特許出願の早期審査を受けられる対象は、中小企業からの出願に限られる。
(エ)商標権のうち、登録された商標は商標法で、未登録であるが周知となっている商標はいわゆる不正競争防止法で保護される。

@0 A1 B2 C3 D4

正解は4
(ア)…×:著作権は文化庁の所管です。
(イ)…×:刊行物などでも新規性喪失は免れます。
(ウ)…×:出願公開により他人の実施のおそれがある場合に事情説明書を提出すれば可能で、企業規模には関係ありません。
(エ)…○
よって不適切なものは3つです。


U-1-20 情報システムに関する次の記述のうち、最も不適切なものを選び答えよ。

@ハードウェアやソフトウェアを国際的な標準に準拠して作成するオープンシステムが一般的になり、これに伴い、個別のソフトウェアの導入費用は増加傾向にある。
A情報システムの構築・運用においては、業務の拡大や変質に伴う情報システムの改良や変更、さらにはユーザ教育も考慮する必要がある。
B情報システム関連業務をアウトソーシングする場合、情報管理の観点からのリスク管理や情報セキュリティ対策が必要である。
C情報システム関連業務のアウトソーシングにおいて、委託するサービスと自社で行う業務の切り分けは、契約に当たって十分注意する必要がある。
D情報システムを構築する際は、導入費用のみならずランニングコストまで含めた総所有コストを考慮する必要がある。

正解は1
オープンシステムが一般的になればソフトウェア導入費用は低下します。


U-1-21 次の記述で説明される用語として最も適切なものを@〜Dの中から選び答えよ。

「ツイッター,ブログ,動画共有サイトなど、主にインターネットにより利用者が情報を発信することで形成されていくもので、利用者同士のつながりを促進するさまざまな仕掛けが用意され、互いの関係を視覚的にも把握できるのが特徴である。」

@クラウドネットワーク
Aユキビダスネットワーク
BP2Pネットワーク
Cソーシャルメディア
Dマルチメディア

正解は4
@クラウドネットワーク:データ保存やネット接続などの情報インフラ、データベースなどのプラットフォーム、様々な処理アプリケーションなどがネット上にあり、それに接続することでサービス利用ができる環境です。
Aユビキタスネットワーク:いつでもどこでも、あらゆるところで利用可能なネットワークで、単にネットにつながるというだけでなく、たとえばスマホから会社のPCにアクセスできたり、コンビニのマルチメディア端末が利用できたり、自宅の風呂を沸かしたりといったことができる状態をさします。
BP2Pネットワーク:P2P(Peer to Peer、ピア・トゥー・ピア)とは、対等な関係にある端末間を相互に直接接続してデータを送受信する通信方式で、これを用いたネットワークサービスは、サービス提供者(サーバ)と利用者(クライアント)といった明確な区別を行わず、各端末がサービスを提供しあうもので、ユビキタス環境での情報負荷低減に適しています。
Cソーシャルメディア:個人や組織が発信した様々な情報が、そのコミュニティサービスに属する個人や組織に伝えられていくことで、多くの人・組織の双方向的なコミュニケーションに変化するもので、新聞やテレビなど発信者が限定される産業メディア・マスメディアとは異なります。
Dマルチメディア:文字・映像・動画・音声など複数の情報をひとまとめに扱うメディア(複合媒体)をいいです。
問題文の記述はCのことを言っています。ソーシャルメディアとしては、かつてはブログが一世を風靡しましたが、ツイッターやフェイスブックといったSNS(ソーシャルネットワークサービス)が現在は主流になっているようです。動画ではYouTubeやニコニコ動画、Ustreamなどがありますね。


U-1-22 不正アクセス禁止法(不正アクセス行為の禁止等に関する法律)に関する次の記述のうち、最も不適切なものを選び答えよ。

@アクセス管理者や当該利用者の承諾を得ず、他人のIDとパスワードを無断使用してネットワークからコンピュータに進入することは、不正アクセス行為であり、行ってはならない。
Aネットワークを介在していわゆるセキュリティ・ホールを攻撃することは、アクセス管理者の承諾を得てセキュリティ・チェックする場合などを除き、不正アクセス行為であり、行ってはならない。
B自分のIDとパスワードを他人に教えることは、不正アクセス行為を助長する行為であり、行ってはならない。
Cアクセス管理者は、不正アクセス行為からの防御措置を講ずべき責務がある。
Dコンピュータのキーボード(コンソール)を直接操作して当該コンピュータを無断使用する行為は、それだけでは不正アクセス禁止法の対象とならない。

正解は3
不正アクセス禁止法では、アクセス管理者や利用権者(ID・パスワード所有者)が承諾していればID・パスワードを教えることは例外行為とされます。


U-1-23 次の情報通信機器の機能について、市区町村程度の範囲で3時間ほど停電したとき、一部例外的な機種があるにしても、概ね、停電中もある程度の時間は利用できる可能性が高いと考えられるもの(下の選択肢では利用可能という)と、停電中は利用できない可能性が高いと考えられるもの(下の選択肢では利用不能 という)との組み分けとして、最も適切なものを@〜Dの中から選び答えよ。ただし、機器に標準装備されるバッテリーを除き、無停電電源装置、予備バッテリー、自家発電装置などは設置されていないものとする。また、輻輳による発信機製などの影響は考慮しない。

(ア) 公衆電話による通話発信機能
(イ) アナログ固定電話による通話機能(アナログ回線直結、局給電対応)
(ウ) コードレスホンによる無線通話機能
(エ) IP電話による通話機能
(オ) 携帯電話による通話及びメール機能
(カ) デスクトップパソコンによるメール機能
(キ) ファクシミリ機によるファクシミリ送受信機能

@ 利用可能(ア、イ ウ、エ、オ) 利用不能(カ、キ)
A 利用可能(ア、イ、オ)      利用不能(ウ、エ、カ、キ)
B 利用可能(ア、イ、オ、カ)    利用不能(ウ、エ、キ)
C 利用可能(ア、エ、カ、キ)    利用不能(イ、ウ、オ)
D 利用可能(ア、エ、キ)      利用不能(イ、ウ、オ、カ)

正解は2
(ア)…OK:カード発信ができなくなりますが、硬貨発信と緊急通話はできます。(デジタル公衆電話もバッテリー動作しているので、バッテリー切れまでは使えます)
(イ)…OK:アナログ電話は電話回線で電力の供給もしているので、停電でも使えます。ディスプレイや多機能部分は消えたりしますが、発信通話はできます。
(ウ)…NG:コードレスホンのうち、電話機本体と受話器がコードでつながっている親機のみ停電時でも通話可能ですが、完全コードレスの親機(本体と受話器がコードでつながっていない)や子機は、無線通話となり、無線通話はAC電源を必要としますので、停電時には使えなくなります。
(エ)…NG:IP電話は停電すると専用ルーターに電力が供給されなくなりますから、緊急通報を含み通話できなくなります。
(オ)…OK:もともとバッテリーで動いています。中継局がダウンすればダメですが、中継局は停電時もバックアップ電源で稼働していますので通話できます。
(カ)…NG:デストトップPCはAC電源がなければ動きません。
(キ)…NG:ファクシミリの電力はAC電源供給です。


U-1-24 情報資産のリスク分析・評価は、業務で利用する情報資産を様々な脅威から保護することを目的に行われる。その際、しばしば用いられる重要なプロセスの一つに情報資産の洗い出しから始めるリスクの分析・評価(いわゆる詳細リスク分析アプローチ)がある。このアプローチの一例として、次の(ア)、(イ) につづき、(ウ)〜(キ)の各項目を行うとした場合、その順番として@〜Dの中から1つ選ぶならばどれが最も適切か答えよ。
なお、情報資産とは、業務情報(プログラムも含む)及び業務情報を格納する機器類(パソコン、電子媒体、紙等)のことをいう。

(ア)情報資産を洗い出す対象範囲を特定する。
(イ)対象範囲にある情報資産を洗い出し、保護すべき重要な情報資産を特定してリストアップする。
(ウ)現在実施している対策に改善の必要性があるかどうかを判断する。
(エ)リスト内の各情報資産について、現在実施している管理策を考慮してリスクのレベルを算定し、リスクが受容可能か否かを判断する。
(オ)リスト内の各情報資産に対して脆弱性を特定する。
(カ)リスト内の各情報資産に対して脅威を特定する。
(キ)リスト内の各情報資産に対して、機密性、完全性及び可用せいの喪失が及ぼす影響を特定する。

@ ウ、エ、カ、オ、キ
A エ、オ、カ、キ、ウ
B ウ、カ、オ、キ、エ
C オ、カ、キ、ウ、エ
D カ、オ、キ、エ、ウ

正解は5
まずはリスクを特定しますが、外的要因(カ)→内的要因(オ)の順で特定していきます。そして影響の大きさを特定し(キ)、現在のリスク対策を考慮してリスクの受容可能性を検討します(エ)。そして最後に対応策の改善検討を行います(ウ)。
最後がウなのはわかると思いますので、最初はエとカのどちらかという話になります。
ここでエ(リスク受容可否判断)はリスクの大きさがわからないとできませんから、エではないのは明らかです。


U-1-25 安全管理手法としてのリスク管理に関する次の(ア)〜(オ)の記述のうち、適切なものの数を@〜Dの中から選び答えよ。

(ア)リスク管理では、組織に滞在する多様なリスクに対する管理の基本的な考え方を示し、組織全てで周知・共有することが重要である。
(イ)ハザードを特定し、シナリオ分析によるリスクの見積もりを行うことをリスク特定という。
(ウ)一般にリスク=発生確率×被害規模で表され、発生確率や被害規模が異なっても、リスク値が同じであれば、同等のリスクと認定すべきである。
(エ)リスクの対応には、リスクの保有、リスク低減、リスク回避、リスク移転が考えられ、リスク回避の例として、リスクを保有する代わりに保険を掛ける場合がある。
(オ)リスク管理を実施するには、様々なバイアスにより影響を受けるリスク認知の検討が必要である。

@0  A1  B2  C3  D4

正解は3
(ア)…○
(イ)…×:これはリスク解析です。
(ウ)…×:リスク値が同じであれば、規模の大きいほうをリスク大とします。
(エ)…×:記述はリスク移転です。
(オ)…○
よって適切なものは2つです。これは簡単なサービス問題ですね。


U-1-26 リスクの社会的受容を判断するためのリスクコミュニケーションを進める上で次の(ア)〜(オ)の記述のうち、適切なもの数を@〜Dの中から選び答えよ。

(ア)直接対話はえてして感情的になりやすいので、リスクコミュニケーションの媒体は印刷物や電子メディアの利用に限定する。
(イ)専門家やNGOなどの中立的な第三者を仲介して、送り手の信頼性を高める。
(ウ)地域の有力者を説得して、地域住民との対話の席で推進の立場を表明して貰い、反対派の住民が反対意見を述べにくい状況を作る。
(エ)対象のリスクの被害規模の社会的甚大さを説明せず、「起こる可能性は極めて小さいのでリスクを受容しても安全である。」という広報活勤を行う。
(オ)対象にはネガティブな側面があることも公正に伝え、正負両面を考慮してリスクの社会的受容を判断してもらう。

@0 A1 B2 C3 D4

正解は3
(ア)…×:直接対話しないと一方通行になってコミュニケーションが成立しなくなります。またバイアス発生のリスクも高まります。
(イ)…○:これは重要なことです。
(ウ)…×:サイレントマジョリティの発生は合意形成の妨げとなります。
(エ)…×:インフォームドコンセントが成立しないというのは論外です。
(オ)…○:これも重要なことです。
よって適切なものは2つです。常識感覚で答えられるサービス問題です。


U-1-27 危機管理においては、そのときの状況に応じた柔軟な対応が必要である。その一方で、そのよりどころとなる危機管理マニュアルを事前に策定しておくことは混乱を防ぐための重要な対策となる。危機管理マニュアルの作成に関する次の(ア)〜(オ)の記述のうち、不適切なもの数を@〜Dの中から選び答えよ。

(ア)緊急事態が発生した際に柔軟な対応力可能なように、詳細なマニュアルは作成しない。
(イ)緊急事態が収束した後の復旧や、できるだけ早く平常状態に戻すための対策もマニュアルに含める。
(ウ)マニュアルは必要に応じて更新される仕組みとする。
(エ)マニュアルの実効性を持たせるため、実施のための判断基準を記載する。
(オ)不測の事態として考えられる事態のうち、テロは組織では対応できないため危機管理マニュアルに含める必要はない。

@1 A2 B3 C4 D5

正解は2
(ア)…×:緊急事態に行き当たりばったりの対応をすることになってしまいます。
(イ)〜(エ)…○
(オ)…×:組織で対応しきれなくとも、何一つできないということはありません。
よって不適切なものは2つです。これも常識感覚でわかるサービス問題ですね。


U-1-28 安全を議論し、それを有効なものにするため、「絶対安全」と「リスクを基準とする安全評価」という異なった意識について議論すべきであるとの指摘がある。これに関する次の(ア)〜(オ)の記述のうち、不適切なものの数を@〜Dの中から選び答えよ。

(ア)どんなに確率は低くても、事故は起こりうるものとして、リスク対応を検討する。
(イ)リスクがどの程度あるかという事を常に考える「リスク評価」の思想は、我が国においてもその定着が望まれる。
(ウ)絶対に安全であるか否かと言った議論をしている限り、安全とは言い切れないものが「絶対安全」の掛け声でまかり通る危険さえありうるので注意が必要である。
(エ)安全性を議論すること自体がその事項の危険性を意味すると危惧して、安全の議論や説明をさけて「絶対安全」といってしまうことがあるので注意が必要である。
(オ)リスクを明らかにし、隠さず共有し、論理的な議論を重ねることで社会的なコンセンサスを形成していくことが大切である。

@0 A1 B2 C3 D4

正解は1
すべて適切です。よって不適切なものは0。


U-1-29 次の(ア)〜(エ)の精神的な疾患とその症状を説明するA〜Dの組合せとして最も適切なものを@〜Dの中から選び答えよ。

(ア)PTSD (イ)うつ病 (ウ)統含失調症 (エ)強迫性障害

A 強い「不安」や「こだわり」によって日常に支障が出る病気
B 脳のさまざまな働きをまとめることが難しくなるために、幻覚や妄想などの症状が起こる病気
C 「ゆううつな気分」や「気持ちが重い」といった抑うつ状態がほぼ一日中あってそれが長い期間続く病気
D とても怖い思いをした記憶がこころの傷となり、そのことが何度も思い出されて、恐怖を感じ続ける病気

  (ア) (イ) (ウ) (エ)
@  A   B   D   C
A  A   C   B   D
B  D   C   A   B
C  D   C   B   A
D  B   A   D   C

正解は4
(ア)…D:心的外傷後ストレス障害のことです。心的外傷はよく「トラウマ」とも呼ばれます。テレビドラマなどでもよく出てくるのでわかるでしょう。
(イ)…C:これは文言からわかりますよね。精神症状だけでなく、頭痛、不眠、消化器系疾患等の身体的症状も伴います。
(ウ)…B:脳の「統合的な調整が失われる」と理解すればすぐにわかります。昔は(といっても2002年までですが)精神分裂病と呼ばれていました。
(エ)…A:言葉からすぐわかると思います。たとえば「潔癖症」とも呼ばれる不潔脅迫場合、手を何度も洗う・手袋をはめて物に触るなどの行動をとったりします。


U-1-30 下図に示すシステム全体の信頼度を計算し,最も近い値を@〜Dの中から選び答えよ。
 サブシステムA,Bの信頼度はそれぞれ0.900,サブシステムC,Dの信頼度はそれぞれ0.800とし,直列配列の場合はそれぞれが正常でなければ動作せず,並列配置の場合はいずれかが正常であれば動作するものとする。ただし,サブシステムA,B,C,Dは互いに独立とする。


@ 0.518 A 0.720 B 0.922 C 0.932 D 0.960

正解は3
直列の場合は信頼度を掛け合わせ、並列の場合は(1−信頼度)を掛け合わせたものを最後に1から引きます。
サブシステムAとC、BとDはそれぞれ直列ですから、信頼度はそれぞれ0.900×0.800=0.720となります。
そしてこれらが並列なのですから、1−(1−0.720)×(1−0.720)=1−0.28×0.28≒0.922
となります。「1−0.28×0.28」以外は暗算でもできますね。
一次試験基礎科目でよく出題されていました。まさに「一次試験レベル」問題です。


U-1-31 次の特徴を持つシステム安全工学手法として,最も適切なものを@〜Dの中から選び答えよ。

・どのような事故に進展する可能性があるかを論理的に求められる。
・事故が発生するまでのシナリオを明らかにすることができる。
・二者択一の論理構成なので部分的な故障を考慮できない。

@ フォールトツリー手法 A イベントツリー手法
B HAZOP手法 C FMEA D チェックリスト方式

正解は2
「どのような事象に進展するか」はETAの最大の特徴です。サービス問題。


U-1-32 従業員数350人,従業員1人当たりの年間平均就業時間1,800時間のA工場では,平成22年の事故の発生件数は1件であった。その事故で従業員2名がそれぞれ10日及び5日休業(ともに一時労働不能)する労働災害となった。A工場の平成22年における労働災害の発生頻度を表す度数率と労働災害の重さの程度を表す強度率を求め,その最も近い値の組合せを@〜Dの中から選び答えよ。ただし,一時労働不能の労働損失日数は,上記の休業日数に300/365を乗じた日数とする。
度数率   強度率
@1.59   19.57
A1.59    0.02
B1.93    0.03
C3.17   19.57
D3.17    0.02

正解は5
度数率は「労働災害の発生頻度を表す」とありますが、下式で計算します。
度数率=労災死傷者数/のべ実労働時間数×1,000,000
    =2人÷(350人×1,800時間)×1,000,000=2人÷630,000×1,000,000≒3.17
また強度率は「労働災害の重さの程度を表す」とあり、下式で計算します。
強度率=のべ労働損失日数/のべ実労働時間数×1,000
   =(10日+5日)×300/365÷(350人×1,800時間)×1,000≒0.01957
最後の係数が度数率は1,000,000、強度率では1,000なので、これを間違えると4を選んでしまいます。


U-1-33 環境影響評価法に基づく環境影響評価の手続き等に関する次の記述のうち,最も適切なものを選び答えよ。

@事業者は,作成した環境影響評価方法書を,関係する都道府県知事だけでなく関係市町村長にも送付しなければならない。
Aスコーピングとは,開発事業を環境アセスメントの対象とするかどうかを決める手続きのことである。
B事業者は,環境影響評価書を作成し,公告・縦覧した上で,住民への説明会を開催し,意見を求めなければならない。
C原子力発電所は,特別の法律によって手続きが規定されていることから,環境影響評価法の対象外である。
D国が行う国道改築事業及びダム事業は,すべて第一種事業である。

正解は1
@…○
A…×:記述はスクリーニングです。似た言葉なのでよく出題されます。
B…×:準備書→記述の広告閲覧説明会等→評価書の手順です。
C…×:対象外ではありません。
D…×:一般国道10km未満やダム湛水面積100ha未満は第一種事業になりません。


U-1-34 新エネルギー法(新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法)では,石油代替エネルギーを製造,発生,又は利用することや,電気を変換して得られる動力を利用することのうち,経済性の面における制約から普及が十分でなく,その促進を図ることが石油代替エネルギーの導入を図るため特に必要のものを「新エネルギー利用等」として政令で定めている。次のうち,この「新エネルギー利用等」に該当しないものを選び答えよ。

@太陽電池を利用して電気を発生させること
A太陽熱を給湯,暖房,冷房に利用すること
B風力を発電に利用すること
Cバイオマス又はバイオマスを原材料とする燃料を発電に利用すること
D海洋の表層と深層の温度差を発電に利用すること

正解は5
いずれも再生可能エネルギーになりますが、新エネルギー法ではDが含まれません。
新エネルギー法で定められているのは下記のものです。
・バイオマス燃料の製造、熱源利用、発電利用
・太陽熱利用、太陽光発電
・地熱発電
・風力発電
・小規模水力発電
・ヒートポンプ
・雪・氷を熱源とする冷蔵・冷房等


U-1-35 日本における循環型社会形成のための施策等に関する次の記述のうち,最も適切なものを選び答えよ。

@循環型社会形成推進基本法では,(i)発生抑制,(ii)再生利用,(iii)再使用,(iv)熱回収,(v)適正処分,といった5段階の優先順位に基づき廃棄物処理やリサイクルを行うよう明記している。
A個別物品の特性に応じた規制であるリサイクル関連法令としては,いわゆる容器包装リサイクル法,家電リサイクル法,食品リサイクル法,建設資材リサイクル法,自動車リサイクル法の5つの法律がある。
Bオフィスや飲食店から発生するすべての事業系ごみは,廃棄物処理法における産業廃棄物に分類される。
C平成20年度における全国の産業廃棄物の総排出量は約4億トンであり,そのうち最終処分量は約8,000万トン(約20%)である。
D産業廃棄物管理制度(いわゆるマニフェスト制度)は,特別管理産業廃棄物に限って適用されている。

正解は2
@…×:再利用(リユース)と再生利用(リサイクル)の順が逆です。
A…○:その通りです。
B…×:事業系ごみには産業廃棄物に含まれない一般廃棄物もあります。
C…×:総排出量は約4億トンですから記述のとおりですが、最終処分量は約2,400万トン(5.7%)です。
D…×:すべての産業廃棄物に適用されます。


U-1-36 地球温暖化等に関する次の記述のうち,最も不適切なものを選び答えよ。

@世界の中でエネルギー起源二酸化炭素排出量(2007年)の最も多い2カ国は,中華人民共和国とアメリカ合衆国である。
Aメタンは,京都議定書において対象とする地球温暖化の原因となる温室効果ガスの一つである。
Bクリーン開発メカニズム(CDM)とは,先進国が開発途上国内で排出削減等のプロジェクトを実施し,その結果の削減量・吸収量を排出枠として先進国が取得できる制度である。
C2010年に日本は,条件付で温室効果ガスを2020年までに1990年比で25%削減するとの目標を気候変動枠組条約事務局に提出した。
D2011年4月1日時点で,アメリカ合衆国とロシア連邦は京都議定書を批准していない。

正解は5
ロシアは批准しています。


U-1-37 日本における環境経営についての次の(ア)〜(オ)の記述のうち,適切なものの数を@〜Dの中から選び答えよ。

(ア)環境経営とは,環境に関する企業の取り組みを新たな競争力の源泉としてとらえ,効率的に企業活動を行うことである。
(イ)環境管理システムは,一般的に環境方針,計画,実施及び運用,点検及び是正処置で構成されており,環境管理を体系的に運用するための仕組みである。
(ウ)環境配慮を進めていく際には自らが発生させている環境への負荷や環境パフォーマンスを的確に把握し,評価することが重要である。
(エ)エコアクション21(環境活動評価プログラム)は,大企業の環境経営推進のために環境省が策定したものである。
(オ)環境経営の側面を組織の外部から評価するビジネスモデルの一つとして,エコファンドがある。

@1 A2 B3 C4 D5

正解は4
(エ)のエコアクション21は、ISO14000ではしんどい中小企業向けです。その他は適切な記述ですので、適切なものは4つです。


U-1-38 LCA(ライフサイクル・アセスメント)に関する次の(ア)〜(オ)の記述のうち,不適切なものの数を@〜Dの中から選び答えよ。

(ア)LCAは,企業の環境に関する活動の評価方法の一つであり,物量値で評価する。
(イ)ライフサイクル・インベントリ分析において,リサイクル工程が関係している場合では,そのリサイクルループにはオープンループとクローズドループの2種類がある。
(ウ)LCAにおいては対象とする環境負荷として,熱排出量が用いられることが最も多い。
(エ)LCAの手法には産業連関法,積み上げ法の2種類が広く利用されている。
(オ)影響評価とは製品が環境に影響を及ぼす度合の評価を実施するもので,分類化,特性化,重み付けという3つの要素が区別されている。

@1 A2 B3 C4 D5

正解は1
(ウ)は熱排出量ではなく温室効果ガスの排出量です。
それ以外はいずれも適切な技術です。よって不適切なものは1つです。
なお、(ア)も誤りではないかと考えた人が多かったようですが、は青本にも記述があるように、環境影響評価の方法には記述・物量値・貨幣による3つの評価方法があり、その中でエコバランスとLCAは物量値による評価手法であることが明記されています。


U-1-39 環境中に残留することにより被害や悪影響が懸念される残留性有機汚染物質(POPs:Persistent Organic Pollutants)の廃絶,削減,適正処理等を定めたPOPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)が対象とする物質についての説明で,最も不適切なものを選び答えよ。

@人の健康や生態系に対し有害な毒性があること
A土壌等に留まり長期間にわたり放射線を出す性質を持つこと
B生物蓄積性,すなわち生物の体内にたまりやすい性質を持つこと
C国境を越えて拡散するといった長距離移動性を持つこと
D難分解性といわれる,環境中で分解しにくい性質を持つこと

正解は2
放射性物質は残留性有機汚染物質ではありません。


U-1-40 環境マネジメントシステムに関する国際規格であるISO14000シリーズにおいて全て規格化されている組合せを選び答えよ。

@ライフサイクル・アセスメント  環境パフォーマンス評価  環境ラベル
Aライフサイクル・アセスメント  環境コミュニケーション  環境広告
B環境パフォーマンス評価     環境ラベル        環境会計
C環境コミュニケーション     環境ラベル        環境広告
D環境コミュニケーション     環境会計         環境広告

正解は1
LCAはISO14040、環境パフォーマンス評価はISO14030、環境ラベルはISO14020の各シリーズで規格化されています。


記述問題

2−2 次の問題について解答せよ。


2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震により,東北地方を中心に東日本は甚大な被害を受けた。エネルギー事業者,食品事業者などは流通網の寸断により被災地のみならず非被災地域においても物資の供給支障をきたしている。また,建設事業においては建設資材がストップした例も見られ,製造業やサービス業などにおいては,東北地方に留まらず,日本各地や海外にまで各種の影響が及んでいる。
このように,現代社会において各種の事業を提案・遂行する場合は,事前に予期し対処することが容易でない事態に直面することも起こり得る。今回の震災は未曾有の大災害という言葉で語られるが,そのような対象の発生であっても,当該事業の社会的意義が高いものであればあるほど,その継続・遂行は重要となる。複雑な相互依存性が高い社会では,完全な備えということは実現出来なくとも,事前に想定領域を広げ,事態に直面した際に影響を緩和するような工夫は不可欠な時代である。
上記の状況を踏まえて,以下のプロジェクトに関する事業モデルのケースI又はケースUのいずれか1つを選び,当該プロジェクトを提案する立場で,総合技術監理の視点から(1)〜(3)の問いに答えよ。ここでいう総合技術監理を拙成する管理分野とは,「経済性管理」,「安全管理」,「人的資源管理」,「情報管理」,「社会環境管理」の5つを言う。(問いごとに答案用紙を替えて,それぞれ指示された枚数以内にまとめること。)

[プロジェクトに関する事業モデル]

ケース プロジェクトタイプ 事業モデル概略 あなたの所属
T ある製品の生産・販売の実施に関する提案 製品の加工・組立工場を立ち上げ継続的に製品を製造し顧客に納入を行う。なお,製造に必要な原材料や部品などはそれぞれ外部から調達するものとする。 左記の加工・組立事業を行う企業Aに所属するものとする。
U 大規模構造物の建設に関する提案 完成後自ら維持,利用していくことを前提に大規模構造物を建設する。なお,建設は複数年に及ぶものとし,必要な資機材や人員などはそれぞれ外部から調達するものとする。 左記の事業の事業主体Bに所属するものとする。


(1)本論文において,あなたが取り上げるケースを明記し,それらの製品製造又は建設プロジェクトの概要を定義せよ。定義に当たっては,選択したケースにおいて以後の(2),(3)の問いの解答に必要な事業モデルの内容を記せ。特に,両ケースともそのプロジェクトを遂行する上で,必要とされる外部資源(人・モノ・資金・情報など)や外部環境を明確にせよ。以上を答案用紙1枚以内にまとめよ。

(2)あなたが(1)で記述したプロジェクトについて,事業モデルの存続を脅かすようなシナリオを3つ想定し記戦せよ。ここで言うシナリオとは,「外部要因の顕在化」⇒「事業を成立させるために必要な外部資源や外部環境の変動や被害の発生」⇒「事業モデルへの影響」の一連の流れを呼ぶものとする。記戦する3つのシナリオは種類の違うものを挙げよ。種類の違いとは,外部要因(例えば,自然災害,大火災,海外の地域紛争,規制変化,金融危機)及び選択した事業モデルが受ける影響のタイプの両方が異なることを言う。この際,当該要因が発生してもあなたの所属する組織への直接的な被害は軽微又は無かったものとする。
なお,ケースIでは操業開始後に被る可能性としてのシナリオを対象とし,ケースUでは建設中に被る可能性としてのシナリオを対象とする。ケースIの製品もケースUの構造物も,社会的必要性は失われないものとする。以上を答案用紙2枚以内にまとめよ。

(3)当該プロジェクトを提案する上で,(2)で挙げたシナリオについて2つを選び,それらに対して事業継続のために事前に準備しておくべき対策案とそれを行う理由(又は狙いとする効果)及び対策実施上の留意点(対策効果を発揮するためのポイントや対策の実現性に関する注意点等)を,総合技術監理の管理分野の視点を用いて記述せよ。以上を答案用紙2枚以内にまとめよ。

記述問題の解説
【テーマについて】
 問題文の冒頭に
「現代社会において各種の事業を提案・遂行する場合は、事前に予期し対処することが容易でない事態に直面することも起こり得る。今回の震災は未曾有の大災害という言葉で語られるが、そのような対象の発生であっても、当該事業の社会的意義が高いものであればあるほど、その継続・遂行は重要となる。複雑な相互依存性が高い社会では、完全な備えということは実現出来なくとも、事前に想定領域を広げ、事態に直面した際に影響を緩和するような工夫は不可欠な時代である。」
とあります。このように、「極めてまれな万一の事態に、十分でなくてもいいから、何らかの備えをしておく」ことがテーマの問題といえます。

【設問1について】
 仮想事例を考えます。ここで、
「以後の(2),(3)の問いの解答に必要な事業モデルの内容を記せ」

とあり、さらに
「特に」
と強調したうえで
「必要とされる外部資源(人・モノ・資金・情報など)や外部環境を明確にせよ」
とあります。したがって、後段の設問2で取り上げるシナリオに登場するリソースや外部環境(たとえば社会経済情勢とか土木工事における地元同意・運搬路確保等)については、ここでしっかり記載しておく必要があります。

【設問2について】
 外部要因としてカッコ書きで
「例えば、自然災害、大火災、海外の地域紛争、規制変化、金融危機」
とあります。
 このことから、外部要因によるプロジェクトへの影響というのは、たとえば「どこかで大地震が起こって資材が入ってこなくなった」とか「どこかの国でテロがあって資材が入ってこなくなった」といったような、外部で何か大変なことが発生して、その結果プロジェクトが想像していなかったような影響を受けるというものです。
 ですから、内部で何か大変なことが発生した(大きなミスとか事故、環境トラブル等)というのは適切ではありません。たとえば「死亡者が出るような大きな事故を起こして事業継続が難しくなった」とか「大きな環境トラブルを起こして事業継続が難しくなった」などは、要因が外部ではなく内部で発生していることから適切ではありません。
 またシナリオには条件が付されています。3つのシナリオで、外部要因がダブってはいけません。また影響もダブってはいけません。そして何より自らが直接的影響を受けてはいけません。ですから、大地震や台風などで被災したとか、何か大きな事故で施設が破壊されたなどもいけません。

【設問3について】
 ここで提示する対策案は、
「事業継続のために事前に準備しておくべき対策案」
と決められています。つまり、「万が一の災害や事故の影響を最小化するために、あらかじめ備えておくこと」です。「起こった場合にどう対処するか」ではありません。ですから遅れた工程を取り戻すための複線化がどうのといったことは不適切です。