平成17年度技術士第二次試験問題(森林部門)
 ●森林一般(全科目)
 ●経験論文(全科目)
 ●専門問題(林業)
提供:といしさん

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必須科目
森林一般(択一問題) 正解付
森林一般(記述問題)
選択科目
経験論文(全科目)
専門問題(林業)

必須科目

林業一般(択一問題)

Ⅱ-1 次の20問題のうち15問題を選んで解答せよ。(解答欄に1つだけマークすること)

Ⅱ―1―1 治山事業で用いられている次の式について述べた文章のうち,正しくないものを選べ。

 Q=1/360・f・r・A

①この式は,合理式(ラショナル式)と呼ばれ,降雨量から最大洪水流量を推算する式である。
②この式は,貯留現象を考慮する必要のない比較的小さい流域の最大洪水流量を算定する場合に適合性が良いといわれている。
③fは,流出係数で良好な森林の場合,1.0以上の値である。
④rは,洪水到達時間内の雨量強度で,単位はmm/hである。
⑤Aは,集水面積で,単位はhaである。

正解は③ (浸透能が良好な森林の場合,0.3~0.5)


Ⅱ―1―2 森林認証制度に関する次の文章のうち,正しくないものを選べ。

①森林認証制度は持続可能な森林経営が行われている森林を第3者機関が評価・認証する国の制度である。
②認証された森林から生産された木材及び木材製品にラベリングすることを通じて,需要者はそれを選別して購入できることとなる。
③国際的には「森林管理協議会」(FSC)や「PEFC(Programme for The Endorsement of Forest Certification schemes)」等
複数の制度があり,欧州を中心として先進国で認証が進んでいる。
④我が国では平成12年に,三重県の林家がはじめてFSCの森林認証を取得した。
⑤平成15年6月に発足した「緑の循環認証会議」(SGEC)が我が国独自の森林認証制度を創設した。

正解は① (国ではなく民間の制度)


Ⅱ―1―3 シイタケ原木について述べた次の文章のうち,正しくないものを選べ。

①コナラは,乾シイタケ栽培,生シイタケ栽培のいずれにも向いている原木である。
②原木を乾燥する方法として,伐採したあと葉枯らし(葉干し)をするのが最もよいとされる。
③シイタケ菌糸が成長するのに適した原木の最適含水率は,20%前後である。
④伐採時期の遅れなどで原木の乾燥期間を十分とれなくても,植菌の適期を守ることが大切である。
⑤遅くともソメイヨシノの開花時期を植菌終了の目安とする。

正解は③ (最適含水率は35%前後)


Ⅱ―1―4 フィトンチッドと呼ばれる生物活性物質の作用内容と代表的樹種について述べた次の文章のうち,正しくないものを選べ。

①木材腐及菌に強い抗菌作用を持つものの例としてヒバがある。
②昆虫に対する誘引作用を持つものの例としてユーカリがある。
③根から阻害物質を分泌する植物成長阻害作用を持つものの例としてクルミがある。
④胃腸の働きをよくする薬理作用を持つものの例としてキハダがある。
⑤頭をスッキリさせる快適性増進作用を持つものの例としてビャクダンがある。

正解は② (ユーカリオイルにはダニの活動を抑制する効果がある)


Ⅱ―1―5 林道の施工について述べた次の文章のうち,正しくないものを選べ。

①一般的な切土の標準のり面勾配として,普通土で8分,岩石は3分を標準とする。
②盛土高が5mを超える箇所は,原則として盛土のり面に小段を設ける。
③軟岩や硬岩の場合,切り取った量は元の地山に比べてその容積を増加するが,これを盛土に使用すると締め固めるため,地山の容積より小さくなる。
④切取や盛土を設計どおりに行うために,現場に適当な間隔で丁張りを設ける。丁張りは,のり面の位置や勾配,路体路床の仕上り高などを示すもので,ぬき板を杭で固定して作る。
⑤盛土のり面勾配は,1割5分を標準とするが,盛土高10m程度以下に限り,1割2分とすることができる。

正解は③ (地山の容積より大きくなる)


Ⅱ―1―6 森林における野生鳥獣被害の実態について述べた次の文章のうち,正しいものを選べ。

①クマによる樹皮はぎとシカによる樹皮はぎの跡は似ているが,シカが剥皮するのは主に地上1.5m以下であることから皮はぎの高さを見るだけで加害種を判定できる。
②ニホンザルによる林業被害に樹木被害は見あたらず,シイタケ,タケノコ等特用林産物被害がもっぱらである。
③平成14年度の林野庁の資料によれば,鳥獣による森林被害は7,100haにのぼり,シカによる被害量は全体の30%を占める。
④ニホンカモシカによる林業被害は,枝葉の摂食害が中心で,ニホンジカのような造林木への剥皮食害はほとんどない。
⑤ノウサギによる林業被害を軽減させる手段として,潔癖に下刈りするという方法が採られている。

正解は④


Ⅱ―1―7 建築工法や接合方法等について述べた次の文章のうち,正しくないものを選べ。

①ストレストスキンパネルとは,木材あるいは木質材料の芯材の片面または両面に,合板などを張ることによって,パネルの剛性や強度を高める構造体のことである。
②ツーバイフォー工法とは,断面寸法が2インチ×4インチを主とする枠材に,構造用合板等を打ち付けて床や壁などの構造体を組み上げる建築工法のことで,軸組壁工法と呼ばれる。
③ドリフトピン,ラグスクリュー,メタルプレートコネクターは,いずれも木質構造物の構造部材を相互に緊結し,構造耐力を高める目的で用いられる接合金物のことである。
④ダイヤフラムとは,地震や風圧力に対する抵抗要素である床,屋根,壁を,面材料などを使って「構面」としたものである。
⑤プレカット部材とは,住宅部材の寸法決め,継手,仕口の加工等を工場において機械を用いて行った部材のことである。

正解は② (軸組壁工法でなく,枠組壁工法)


Ⅱ―1―8 林道設計の用語の定義について述べた次の文章のうち,正しくないものを選べ。

①設計車両とは,林道の設計の基礎とする自動車をいう。
②設計速度とは,設計車両の速度をいう。
③車道の緩和区間は,良好な走行を確保するため,大きな半径の曲線部の前後に設ける。
④林道規定における設計車両は,1級及び2級が普通自動車,3級が小型自動車である。
⑤合成勾配とは,縦断勾配と片勾配または横断勾配を合成した勾配をいう。

正解は③ (大きい半径でなく,小さな半径)


Ⅱ―1―9 日本の森林帯を亜熱帯,暖温帯,中間温帯(暖温帯と冷温帯にまたがる森林帯),冷温帯,亜寒帯・亜高山帯に区分した場合,次の森林帯と森林群落の組合わせのうち,正しくないものを選べ。

①亜熱帯  ― ビロウ林,メヒルギ林,モクマオウ林,イジュ林
②暖温帯  ― イチイ林,コジイ林,アラカシ林,クスノキ林
③中間温帯 ― モミ林,ケヤキ林,アベマキ林,イヌシデ林
④冷温帯  ― ヒノキアスナロ林,ブナ林,トチノキ林,シナノキ林
⑤亜寒帯・亜高山帯 ― トウヒ林,トドマツ林,シラビソ林,ダケカンバ林

正解は② (イチイ林は亜寒帯,冷温帯に自生との記載有り)


Ⅱ―1―10 複層林施業について述べた次の文章のうち,正しくないものを選べ。

①複層林は異齢林と同一に扱われることが多いが,同齢林では階層が分化しても複層林とはしない。
②複層林施業は高い頻度で作業を行うために,路網の整備は不可欠な条件である。
③上層が溶性の樹種,下層が耐陰性の高い樹種の組み合わせからなるのが複層林の一般的な姿であるが, 耐陰性の高い樹種では同種の組み合わせの複層林もある。
④複層林の上木のみを伐採し,下木を残して更新する方法は,林地が裸地化することなく回転するので,複層林施業は非皆伐施業とも呼ばれる。
⑤常時複層林施業は単層になる期間のないもので,択伐林施業はその究極的なものである。

正解は① (同齢複層林もある)


Ⅱ―1―11 植物の種子散布方法とそれに頼る樹種について述べた次の文章のうち,正しくないものを選べ。

①風散布に頼る樹種としてイロハカエデが挙げられる。
②水散布に頼る樹種としてオニグルミが挙げられる。
③動物散布に頼る樹種としてシナノキが挙げられる。
④自動散布に頼る樹種としてマンサクが挙げられる。
⑤重力散布に頼る樹種としてブナが挙げられる。

正解は③


Ⅱ―1―12 「地球温暖化防止森林吸収源10カ年対策」の具体的対策にふくまれないものを選べ。

①健全な森林の整備
②Co2吸収量の大きい森づくり
③保安林の適正な管理・保全等の推進
④木材,木質バイオマスの利用の促進
⑤吸収量の報告・検証体制の強化

正解は② (10カ年対策は他に「国民参加の森づくりの推進」)


Ⅱ―1―13 木質バイオマスのエネルギー利用について述べた次の文章のうち,正しくないものを選べ。

①木材の主成分は,およそ炭素50%,酸素44%,水素6%であり,このうち炭素及び水素の燃焼によって熱が発生する。
②木材の発熱量は全乾材では約20MJ/kgであるが,含水率60%の場合も発熱量はその約1/2くらいあり,ボイラ燃料として十分使用することが可能である。
③木質ペレットはオガ粉や樹皮を圧縮・成型した木質固形燃料であり,成型に接着剤を使用する必要はないが,含水率を10~20%程度に下げておく必要がある。
④超臨界水とは,高温・高圧で液体と気体の中間的な性質を有する反応性に富んだ水であり,250~300℃,8~10MPaで処理すると,木材を直接ガス化することが可能である。
⑤コジェネレーションとは,電力と熱の両方を供給するシステムのことであり,蒸気タービンによる発電とその廃熱を利用するシステムなどがこれにあたる。

正解は④


Ⅱ―1―14 光合成について述べた次の文章のうち,正しくないものを選べ。

①光合成に有効な光成分は波長400~700nmで,主に緑色光を利用する。
②見かけ上,Co2の吸収がゼロとなる光強度を光補償点という。
③陽生植物の光補償点は陰生植物より高いことが多い。
④葉の窒素含有量と飽和光下の最大光合成速度は同一種内では正の相関がある。
⑤C4植物はC3植物より光合成機能が高いが種数は少ない。

正解は①


Ⅱ―1―15 重力式治山ダムの安定条件について述べた次の文章のうち,必須条件としていないものはどれか選べ。

①転倒に対して安定
 鉛直及び水平荷重の合力作用線は堤底内にあること。
②滑動に対して安定
 滑動に対する抵抗力の総和は,水平力の総和以上であること。
③堤体のせん断力破壊に対して安定
 堤体の荷重におけるせん断力の総和が堤体の許容せん断力以下であること。
④堤体の破壊に対して安定
 堤体各部における応力度は,堤体各部を構成する材料の許容応力度を超えないこと。ただし,堤底においては,原則として上流端に引張応力を生じさせないこと。
⑤基礎地盤の支持力に対して安定
 堤底における最大反力は,基礎地盤の許容支持力を超えないこと。

正解は③


Ⅱ―1―16 木材の収縮について述べた次の文章のうち,正しくないものを選べ。

①木材は異方的な収縮を示し,放射方向,接線方向,繊維方向における収縮率の比率は,およそ10:5:1~0.5である。
②正常な収縮は,結合水の増減によっておこり,繊維飽和点以上ではおこらないとされている。
③木材の収縮率(放射方向,接線方向)は,比重と密接な関係があり,比重の大きなものほど収縮率は大きい。
④木材の収縮は応力の作用によって影響を受け,引張応力が作用している場合は,応力作用方向の収縮率は減少する。
⑤木材の異常収縮の一つに落ち込みがあるが,落ち込みは自由水が減少する過程で細胞が極端に変形したり,つぶれたりすることによって発生する。

正解は① (放射方向と接線方向の数値が逆)


Ⅱ―1―17 土に関する事項について述べた次の文章のうち,正しくないものを選べ。

①擁壁に作用する土圧は,壁面が裏込め側へ移動する場合の極限の土圧を受働土圧という。
②擁壁に作用する土圧は,壁面と土が静止状態にある場合の土圧を主動土圧という。
③CBRは,所定の貫入量における荷重強さの,その貫入量における標準荷重強さに対する百分率と定義される。
④土の含水比は,土の間隙に存在する水分の重さと,土粒子の重さとの比をいう。
⑤土の飽和度とは,土の間隙中の水の体積と間隙の体積の比を百分率で表したものをいう。

正解は②


Ⅱ―1―18 外来生物(移入種)による生態系等への影響が問題となっている。次の植物のうち,我が国における外来生物にあてはまらないものを選べ。

①モリシマアカシア
②セイタカアワダチソウ
③ハリエンジュ
④ノボタン
⑤ボタンウキクサ

正解は④ (亜熱帯地域に自生)


Ⅱ―1―19 スギ材の性質及び加工・利用について述べた次の文章のうち,正しくないものを選べ。

①国産材の製材用素材生産量のうち,スギは約60パーセントを占める。
②スギ心材の生材含水率は品種や個体による差が大きく,中には150%以上のものもある。
③スギの心持ち柱材の人工乾燥日数は,70~80℃の一般の蒸気式乾燥で約14日間必要である。
④国産材製材工場からの人工乾燥材出荷量のうち,樹種別ではスギが最も多く生産されており,ヒノキがこれに次いで多い。
⑤スギ材のラミナはヤング率が低いため,JAS規格に定める1級の構造用集成材には使用することが出来ない。

正解は⑤


Ⅱ―1―20 立地条件,林齢,樹種が同じ林分の場合,密度と林木の成長について述べた次の文章のうち,正しくないものを選べ。

①被圧木,枯死木を除いた上層木の樹高成長は,密度が異なってもほぼ同じである。
②胸高直径は密度が高くなるほど小さく,密度が低くなるほど大きくなる。
③密度が高い林分の幹の形は「うらごけ」に,低いと「完満」になる。
④樹高に対する枝下高の割合を示す枝下率は密度の高い林分は高く,密度の低い林分では低くなる。
⑤間伐材積と主伐材積を加えた総収穫材積は,強い間伐を繰り返した林分と弱い間伐を繰り返した林分とでは差があるとはいえない。

正解は③ (「うらごけ」と「完満」が逆)

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森林一般(記述問題)

Ⅱ-2 次の9項目のうち3項目を選んで解答せよ。(青色の答案用紙を使用し,項目ごとに用紙を替えて解答項目番号と項目名を明記し,それぞれ1枚以内にまとめよ。)

(1) 林道の路線選定とコスト縮減

(2) 小径木及び間伐材の利用技術

(3) 地球温暖化が森林に及ぼす影響

(4) 本数調整伐

(5) 建築物の劣化診断方法

(6) CDM植林

(7) 山地災害危険地区と治山対策

(8) 木炭の新用途

(9) 先駆樹種の一般的特徴

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選択科目

経験論文(全科目)

(1) あなたが受験申込書に記入した「専門とする事項」に関して,あなたが実際に行った技術的責任者としての仕事のうち,最近の主なもの5件について,年次順にその内容を簡潔に述べよ。(答案用紙2枚以内にまとめよ。)

(2) (1)に記述した仕事のうち,あなたが特に技術的に能力を発揮したもの2件について,それぞれ技術上の重要なポイントと,解決したあるいは解決すべき問題を詳しく述べるとともに,今後の展望を技術面に絞って論述せよ。(1件ごとに答案用紙2枚以内にまとめよ。)

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専門問題(林業)

Ⅰ-2 次の3問題のうち2問題を選んで解答せよ。(緑色の答案用紙を使用し,問題ごと に用紙を替えて解答問題番号を明記し,それぞれを3枚以内にまとめよ。)


Ⅰ―2-1 森林の多面的機能を発揮させつつ,持続的な森林経営を行っていくためには,自然条件,地域の要請等を考慮した森林のゾーニングが必要である。森林のゾーニングの考え方及び森林の機能区分に応じた森林整備のあり方について述べよ。

Ⅰ―2-2 針葉樹一斉林から針広混交林への誘導に関心が高まりつつある。そこで,生態学的な観点を含めて,混交林化へ向けた広葉樹導入における森林管理上の留意点について述べよ。

Ⅰ―2―3 竹林の拡大が問題となっている。そこで,拡大の背景,及び竹林化による多面的機能上の問題点を概説し,あわせて管理,利用の面から竹林所有者及び関連行政機関が取るべき方策について述べよ。

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