3.試験結果〜合格率など
平成16年1月30日に一次試験合否発表がありました。
申込者数67,581人、受験者数56,873人、合格者28,808人で合格率は対申込者42.6%、対受験者50.7%でした。昨年度は同じく10.5%、15.0%でしたから、対受験者で3.4倍にもなりました。受験者数も14年度は24,000人だったのが15年度は57,000人と2.4倍ほどになっていますが、合格者は3,600人が28,000人と8倍近くに膨らんでいます。
少し細かく見てみましょう。受験番号から、適性のみ受験者とそれ以外の受験者、さらに共通科目までの受験者が区別できます。
なお、受験番号は、最初の2桁が部門、次のアルファベットが受験地、次の数値が受験種別(2は共通科目まで受験、3は適性のみ受験、0はそれ以外の一般受験)、その後の4桁の数値が各部門・受験地・受験種別ごとの通し番号です。さらに共通科目まで受験した場合は、その後に選択科目を表すアルファベットがつきます。
さらにこれをもとに、適性のみ受験者を除いた合格率を次の手順で推定してみました。
(1) 適性のみ受験者の番号が飛んでいる場合、これを受験して不合格だったと仮定。
つまり適性のみ受験者は、申込者の全てが受験したと仮定。
(2) これから適性のみ受験者の合格率・受験者数を推定し、全体から減じて適性のみ受験以外の受験者数を推定
その結果をまとめたのが下表ですが、14年度はわずか6名だった共通科目まで受験しての合格者が、今年は317人(建設部門で133人)に達しています。学生の受験者が非常に増えたことを示していると思われ、実際学生の受験者はかなり増えたようです。
適性のみの受験者は全体で7,600人程度、建設部門では5,500人程度です。14年度は一般受験者より多いところが多かったのが、完全に逆転しています。
建設部門についてもう少し細かく見てみましょう。
適性のみ受験者の合格者は、14年度1,240人だったのが4.4倍にも膨れ上がっています。数年間の移行期間があったにもかかわらず、一次必須になってからおっとり刀で受験した既技術士が非常に多いことがわかります。
適性のみ受験以外の合格者は、14年度がわずか667人だったのが15年度は13,881人と20倍以上になっています。受験者数は14,300人ほどだったのが31,800人ほどと2.2倍になりました。一次が必須になったため二次試験受験組から仕方なくこちらに移行した受験生に加えて、若手を中心に一次試験受験の気運が高まっていることを示しています。
対受験者合格率は、適性のみ受験を除くと、全体・建設部門ともに43.7%です。14年度は建設部門で推定4.7%でしたから、何と9倍以上の合格率アップになっています。
部門 |
申込者数 |
受験者数 |
合格者数 |
対受験者推定合格率 |
合計 |
共通
受験 |
適性
のみ
受験 |
一般 |
全体 |
適性のみ受験 |
適性のみ受験以外 |
飛び
番号数 |
推定受
験者数 |
推定
合格率 |
推定受
験者数 |
推定
合格率 |
機械 |
2,008 |
1,621 |
1,025 |
27 |
109 |
889 |
63.2 |
11 |
120 |
90.8 |
1,501 |
61.0 |
船舶 |
24 |
19 |
10 |
0 |
1 |
9 |
52.6 |
0 |
1 |
100.0 |
18 |
50.0 |
航空宇宙 |
78 |
59 |
39 |
1 |
8 |
30 |
66.1 |
1 |
9 |
88.9 |
50 |
62.0 |
電気電子 |
3,539 |
2,877 |
752 |
7 |
197 |
548 |
26.1 |
20 |
217 |
90.8 |
2,660 |
20.9 |
化学 |
463 |
373 |
175 |
5 |
30 |
140 |
46.9 |
2 |
32 |
93.8 |
341 |
42.5 |
繊維 |
67 |
59 |
37 |
0 |
4 |
33 |
62.7 |
0 |
4 |
100.0 |
55 |
60.0 |
金属 |
252 |
215 |
101 |
1 |
21 |
79 |
47.0 |
4 |
25 |
84.0 |
190 |
42.1 |
資源工学 |
43 |
35 |
30 |
0 |
5 |
25 |
85.7 |
1 |
6 |
83.3 |
29 |
86.2 |
建設 |
44,821 |
37,833 |
19,370 |
133 |
5,489 |
13,748 |
51.2 |
566 |
6,055 |
90.7 |
31,778 |
43.7 |
水道 |
4,921 |
4,189 |
2,172 |
20 |
571 |
1,581 |
51.9 |
64 |
635 |
89.9 |
3,554 |
45.0 |
衛生工学 |
1,555 |
1,272 |
905 |
6 |
133 |
766 |
71.1 |
8 |
141 |
94.3 |
1,131 |
68.3 |
農業 |
2,103 |
1,822 |
1,298 |
19 |
348 |
931 |
71.2 |
43 |
391 |
89.0 |
1,431 |
66.4 |
林業 |
546 |
444 |
173 |
1 |
71 |
101 |
39.0 |
8 |
79 |
89.9 |
365 |
27.9 |
水産 |
290 |
248 |
104 |
1 |
36 |
67 |
41.9 |
1 |
37 |
97.3 |
211 |
32.2 |
経営工学 |
336 |
289 |
110 |
4 |
28 |
78 |
38.1 |
3 |
31 |
90.3 |
258 |
31.8 |
情報工学 |
1,410 |
1,154 |
555 |
23 |
94 |
438 |
48.1 |
10 |
104 |
90.4 |
1,050 |
43.9 |
応用理学 |
1,955 |
1,726 |
616 |
1 |
397 |
218 |
35.7 |
25 |
422 |
94.1 |
1,304 |
16.8 |
生物工学 |
401 |
313 |
213 |
36 |
3 |
174 |
68.1 |
0 |
3 |
100.0 |
310 |
67.7 |
環境 |
2,769 |
2,325 |
1,123 |
32 |
86 |
1,005 |
48.3 |
7 |
93 |
92.5 |
2,232 |
46.5 |
(合計) |
67,581 |
56,873 |
28,808 |
317 |
7,631 |
20,860 |
50.7 |
774 |
8,405 |
90.8 |
48,468 |
43.7 |
これほど合格率がアップしたのはなぜでしょうか。次のようなことが考えられます。
(1) 試験問題が簡単になった。
(2) ボーダーラインが下がった。
(3) 受験者のレベルが上がった。
(1)については、記述問題がなくなったことにより、択一得意・記述苦手の人には有利に働きましたが、択一問題の難度が下がったとは思えません。適性科目は明らかに難度が上がりましたし、基礎科目は分野・問題による難度のバラツキが出てきました。こう考えると、「試験問題が簡単になった」とはそう安易には言えないと思います。
(2)については、基礎・専門科目のそれぞれでのボーダーが50%から40%に引き下げられ、点数の偏りを是認するようになりました。これが合格率押し上げに働いていることは確実です。事前の技術士会の見込みでも、10%以上の合格率跳ね上がりを期待していたようです。
(3)についても、確かにあると思われます。理由は次のようなものが考えられます。
●二次試験受験レベルであった技術者が一次試験に大挙して流れ込んできた。
●大卒でなく国家資格も持っていない受験者で、共通科目のハードルで受験断念した人がかなりいたと思われ、これが結果的にレベルを押し上げた(失礼な言い方に聞えるでしょうが、現実だと思います)。
この高い合格率を前にして、「失望した」というような意見がいろいろな掲示板などで多く見られました。そうでしょうか。私は失望することはないと思います。
もし、低い合格率の中に「希少価値」を期待していたのなら、それは勘違いあるいは身勝手です。資格は自慢するためにあるのではありません。契約において、あるいは社会に対して、専門的な力を持っていることを証明するためにあるのです。ならば多いほうがよりたくさん社会の役に立てるのですから、けっこうなことではありませんか。技術士は公益の確保を責務としていることを忘れてはいけません。自分の雇用条件を有利にするためには、より世の中のためになることでも手控えてほしいというのであれば、それはただのエゴではないでしょうか。
合格ラインが下がって合格者の技術レベルが落ちたことを嘆いているのであれば、一理あるかもしれません。合格ラインが下がったことによって、昨年度までなら不合格であった人がかなり合格になっているのは現実だからです。しかし一次試験は二次試験受験資格の一つにすぎないのです。技術士補登録したとしても、指導技術士の補佐以外の社会的特典はありません。一次試験合格が技術者としてのやる気を引き出し、二次試験という目標に向かって精進することで技術力がつくことが期待できるのならば、できるだけ多くの人にその機会を与えればいいではありませんか。
受験者数を見ても、その内訳を見ても、従来は「技術士なんて雲の上の話」「俺にはまだまだ先の話」であった技術士資格取得への道が、若い技術者・学生諸君が積極的に挑戦するものへと変化していることがわかります。私は結構な話だと思います。
合格したのはあなた自身の努力の結果です。人と比較しても仕方ありません。堂々と胸を張って一次試験合格を喜び、それを二次試験や日常の業務への取組みのエネルギーに変えていきましょう。
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