平成20年度二次試験 筆記試験直前アドバイス

CONTENTS
●上位2割に入ろう
●採点基準は「目安」ではない
●題意に沿った答案を作ろう
●建設一般のポイント
●総監のポイント

■上位2割に入ろう

筆記試験は60%の出来でA評価がもらえます。でも、択一問題ではない論述答案でどうやって60点という採点ができるのでしょうか。そしてそれは絶対評価なのでしょうか。つまり、仮に全員が60点以上の答案を書いたら全員がA評価になり、逆に全員が60点以下の答案だったら全員がB評価で不合格になるのでしょうか。そこには「調整」は行われていないのでしょうか。
私は結局のところ相対評価だと思います。合格率は20%強ですから、「60%得点できるかどうか」ではなくて、「上位2割に入れるかどうか」が合否の分かれ道だと思います。
※これにはちゃんと根拠があります。セミナーなどでは申し上げていますが、公開のサイトでは書けません。

相対評価である以上、上位2割に入るような答案を書かねばなりません。それにはどうしたらいいでしょうか。それは、「人が書かないことを書くのではなく、人が書き怠ることを書く」のです。
たとえば建設一般で白書にあることを書く人に差をつけようとして、白書にないオリジナルなことを書こうとする人がいます。しかし多くのオリジナル案は、見方が偏っていたり論理的な根拠がなかったりします。オリジナル案を理解し実現性を評価してもらおうと思うと、既知の案よりずっと多くの記述を必要とするのです。
※また一般的傾向として、「白書追従はイヤだ」と強く思う人は独りよがりな性格であることが多く、そのため誰もが納得できるような説明を得意としていない傾向があります。そもそも白書に沿って書くことをいいとか悪いと考える時点で独りよがりになってしまっているのかもしれません。

ではどうすればいいのでしょうか。
答案には、「しっかりと書き込むことを怠っていることが多い部分」があります。特に19年度からの新制度試験では、知識でなく課題解決プロセスが評価対象になっているのですが、このことを十分理解していない人、学校の試験のように知識中心試験から切り替えができていない人が共通して書き怠ることがあります。それは、
 @問題点抽出(問題点の掘り下げと絞り込み)
 A具体的解決策(あるべき方向性でなく具体的な方法・施策)
 B論理的記述(論理の飛躍や過不足がなく、根拠付けて書くこと)

の3点です。
おそらく、この3点をしっかり書けば、題意に沿っていないとか考え方がおかしいとか、あるいは文章がひどく読みにくいとかいうことがない限り、上位2割に入れる(=A評価が取れる)と思われます。
それらは具体的にどういうことなのか、以下の説明をお読みください。

戻る

■採点基準は「目安」ではない

少しでもいい答案を書くために、寸暇を惜しんで練習問題や過去問題などで答案を作り、ブラッシュアップをしておられることと思います。
そういう時期だからこそ、ここでもう一度、採点基準が何か確かめましょう。
部門一般(必須科目)の評価基準は下表のとおりです。そして赤太字の部分が具体的な評価尺度です。
確認す
る能力
論理的考察力 課題解決能力
能力等
の概念
問題点の抽出から課題解決までのプロセスにおいて、検討に必要な要素の過不足、論理の矛盾や飛躍がなく、筋道を立て、明確な論拠を持って判断し、考察する能力 新たに直面した、または直面する可能性のある課題等に対し、多様な視点から検討し、論理的かつ合理的に適切な対応を行える能力
その確
認方法
「技術部門」に関係するテーマに対する対処のプロセスやその考え方等を問う
・テーマの技術的な内容について論拠を持った分析・検討がなされ、その内容が、論理の飛躍や要素の過不足がなく明確に記述されているか
「技術部門」に関係するテーマに対する問題点や課題の抽出・分析、それに基づく実現可能な対応策の指示等を問う
・問題点等の抽出・分析が適切に行われ、対処すべき要因が明確化されているか
・対応方針や対応策は適切かつ実現性があるか、多様な観点からその効果まで検討されているか
また、専門問題(選択科目)の評価基準は下表のとおりです。
確認す
る能力
応用能力
能力等
の概念
これまでに習得した知識や経験等に基づき、対処すべき課題に合わせて正しく問題を認識し、必要な分析を行い、判断し、対応策の企画立案等を適切に実施できる能力
その確
認方法
「選択科目」に関係する事項に関し、技術的裏付けに基づいた新たな知見の構築や、技術者が今後新たに遭遇する可能性ある状況等に対し、具体的な対応策の指示等を問う
・課題に対する判断や分析が、これまでに蓄積した知識や経験に裏打ちされており、状況に応じた実現可能な考え方となっているか等の観点から評価
これらの評価尺度は、「これを念頭に採点する」などという目安レベルのものではなく、採点基準として採点者に配布されていることが考えられます。
そこで、上記評価基準から抜き出した
  1. 技術的内容に根拠が書いてあるか
  2. 説明・論述内容に論理の飛躍がないか
  3. 要素の過不足がないか
    (問題点があるのに解決策がないとか、問題点がないのに解決策があるなど)
  4. 問題点が抽出されているか(対処すべきものが具体的に絞り込まれているか)
  5. 問題点と解決策がズレていないか
  6. 解決策は実現性が評価できる程度に具体的に書いてあるか
  7. 解決策は、狭い視点で論じられていないか
  8. 知識や経験の裏打ちが感じられるか(専門問題)
  9. 出題されたケースに対応しているか(専門問題)
という9つの評価尺度を採点基準と考えましょう。
そして下のようなチェックリストで採点されるものと考えておきましょう。
評価項目 評価 点数
技術的内容に根拠が書いてあるか 5 4 3 2 1  
説明・論述内容に論理の飛躍がないか 5 4 3 2 1  
要素の過不足がないか 5 4 3 2 1  
(問題点があるのに解決策がないとか、問題点がないのに解決策があるなど) 5 4 3 2 1  
問題点が抽出されているか(対処すべきものが具体的に絞り込まれているか) 5 4 3 2 1  
問題点と解決策がズレていないか 5 4 3 2 1  
解決策は実現性が評価できる程度に具体的に書いてあるか 5 4 3 2 1  
解決策は、狭い視点で論じられていないか 5 4 3 2 1  
知識や経験の裏打ちが感じられるか(専門問題) 5 4 3 2 1  
出題されたケースに対応しているか(専門問題) 5 4 3 2 1  
合計  
このように採点基準は評価の目安ではなく定型的なチェック項目だと考えておくことをお勧めします。
※このように書くと、
  「そんなことはない。評価基準を目安にして、全体的に評価採点していると思う」
 という人もいるでしょう。それは人それぞれの考えですからご自由になさってください。
 ただ、私はいつも相応の根拠をもってこのように書いているとだけ申し上げておきます。19年度試験で、
  「筆記試験は一見同じに見えるかもしれないが、採点基準が変わったから同じ書き方はダメ」
  「口頭試験はプレゼン。技術的体験論文はプレゼン資料を作るつもりで」
  「技術的体験論文が評価されるのは口頭試験段階」
  「口頭試験では体系的専門知識についてマニュアル的な質問が来る」
 などの事前アドバイスをしてきましたが、これらも全部相応の根拠を持って申し上げていたものです。


逆に言うと、以下のような答案は評価が低くなります。
  1. 根拠がない
    解決策として
     @○○
     A△△
     B□□
    などというようにたくさん書いてあるのですが、それぞれがなぜ解決策として妥当なのかが書いてないというものです。
    同様に、問題点としてたくさん列挙してあっても、ひとつひとつがなぜそれが問題点なのかが書いてないというものです。
    問題点にせよ解決策にせよ、たくさんリストアップできるのが優秀だと思ったら大間違いです。最優先すべき、そして最も重要な問題点をしっかりと絞り込むことができるかどうかが採点基準です(基準4)。ですから問題点はせいぜい3つ程度に絞り込まれるべきです。
    5つも6つもリストアップしていませんか?ひとつひとつに根拠が書いてありますか?
    また専門問題では、何か提案したときの理由として、「このマニュアルに書いてある」では根拠になりません。

  2. 論理の飛躍がある
    たとえば建設一般で地球温暖化を取り上げたとしましょう。
     (課題)  CO2排出の抑制
     (問題点)自動車の慢性的な渋滞
     (解決策)交通流円滑化
    という答案では、課題と問題点の間に論理の飛躍があります。ここで、
     @CO2の主要な排出源のひとつに自動車がある
     A自動車は渋滞速度では燃費が悪くCO2排出が多くなる
    ということの説明が抜けているため、読み手は
     「なぜいきなり自動車?」
     「自動車のCO2削減が本当に効果があるの?」
    というように思うのです。
    こういうのもあります。
     (課題) 異常気象に伴う洪水多発への対策
     (問題点)災害リスクの増大
     (解決策)ハード&ソフトによる対策
    洪水が起こりやすくなるというのに対して、ハード(防災)対策とソフト(減災)対策があるわけですが、まずは防災からはじめるのが普通でしょう。国民は災害から守ってほしいと望んでいるのであって、そういうことをせずにいきなり「逃げろ」と言ってほしいわけではありません。まずは防災、すなわちハード対策で対処することを考えるべきでしょう。しかし財政難とかいろんな理由でハードだけでは追いつかないと判断して、はじめて「ハード&ソフト」になるのです。つまり、
     @まずはハード対策で対処すべき
     Aしかし財政難等によりそれはムリ
    という説明が抜けているため、災害リスク増大からいきなりハード&ソフトに飛躍してしまうのです。
    これは後述する問題点の絞込み不足から来る論理の飛躍です。
    またこれは「根拠がない」ということにもつながります。
    きちんとステップバイステップで順を追って説明しましょう。

  3. 要素の過不足がある
    問題点があるのに解決策がないとか、その逆などです。
    これは、問題点と解決策に番号を振ることでほとんど解決できます。

  4. 問題点が抽出されていない
    課題と問題点が区別できていないケースが一番多いようです。
    課題とはTheme、クリアすべき課題です。
    問題点とはProblem、課題クリアにあたってのボトルネックです。
    たとえば地球温暖化に伴う異常気象による洪水への適応策を論じるときに、
     (問題点)災害リスクが増大している
    これでは課題レベルです。災害リスク増大への対応という課題ですね。これをクリアしよう(災害リスク増大に対処しよう)とするときに、「それが難しいんだよね」となる何かがあるはずです。
     (問題点)災害リスクが増大しているが、財政制約が厳しくハード対策のみで対処できない
    ここまで絞り込めば、ハード&ソフトという解決策の方向性、あるいはハードも「選択と集中で」という方向性は自ずと見えてきます。
    問題点が絞り込めていないと、
     ・問題点が多くなって、解決策も多くなる
     ・一つの問題点にいくつもの解決策が提案できる
    という状態になります。前述のようにたくさんリストアップしても評価はされません。数ではなく質、深さが評価されるのです。
    この問題点抽出が最も差がつく部分です。つまり問題点抽出が最重要だといえます。

  5. 問題点と解決策がズレている
    問題点がしっかり絞り込めていないと、解決策がズレ気味になります。

  6. 解決策が具体的でない
    解決策は、「具体的にどうするか」をしっかり書かねばなりません。
    たとえば
     「都市構造を集約型にして公共交通を整備する」
    ではダメです。これでは方向性どまりです。
    具体的にどういうことをして都市を集約するのか、公共交通整備の中身は何なのか、そういうことを書かねばなりません。
    この解決策が具体的でない人も多く目につきます。そしてそういう人は、「はじめに」を1/2ページにわたってダラダラと書いていることが多いようです。
    問題点抽出と解決策の具体的内容に答案用紙を使うことが大事です。それらが不十分になるようなら、「はじめに」とか「あとがき」などないほうがましです。

  7. 解決策の視野が狭い
    たとえば環境保全だけを優先して利便性の低下を省みないとか、そういった一面的な視点です。

  8. 知識や経験が読み取れない
    専門問題で、情報整理→問題点抽出→解決策提案のプロセスは、専門知識や経験がないとできません。
    そしてそれらの判断根拠が書いてないと、思いつきなのか論理的根拠があっての判断なのかわからないのです。そうなると、知識や経験に基づいているのかどうか判断できないので、評価もされなくなります。B評価は取れてもA評価は取れません。

  9. 出題ケースに対応していない
    仮想問題などで、そのケースの特異性に着目せず、マニュアル通りにやてしまっている場合などがこれにあたります。
    マニュアルを覚えているかどうかを試す試験ではないのですから、仮想問題はマニュアル通りでは対処できない事例をぶつけて対応を見ていると思ったほうがいいでしょう。

以上のようなことをもう一度しっかり確認してください。
筆記試験はこれらの評価基準で採点されます。採点者はチェックリストで採点していると思っておいたほうがいいでしょう。
そしてその評価基準に的確に応えていないと、中途半端な点数しかもらえません。
必須・選択2科目ともA評価でないと不合格なのです。そして2科目ともA評価を取るためには、上位2割に入らないといけません。他人と同レベルの答案を書いていたのでは勝てないのです。
昨年度の試験結果を見ると、不合格だった人の答案は、
 ・問題点抽出が絞込み不足
 ・解決策の具体性がいまひとつ
というものが多くなっています。実際、この2つが一朝一夕には見につきません。
言い換えると、問題点がしっかり絞り込め、解決策が具体的に書ければA評価という言い方もできます。
採点基準、求められているものに的確に応えた答案を書きましょう。
この試験は、知識を求めているのではなく課題解決のスキルを求めているのです。
そして、考察した結果を評価するのではなく課題解決プロセスを評価するのです。
戻る

■題意に沿った答案を作ろう

まずは問題文をしっかりと読み、何と何について、どのように書かなければならないかを整理しましょう。
たとえば19年度の建設一般問題
産業構造の変化等により、人口減少傾向にある地域における社会資本整備の課題を挙げ、厳しい財政の制約の下で、地域の活性化を図っていくための社会資本整備のあり方について、具体策を示しあなたの意見を述べよ。
であれば、
  • 産業構造変化等により人口減少している地域を取り上げる
  • インフラ整備上の課題をあげる
  • 厳しい財政制約をふまえる
  • 地域活性化を目標とする
  • 具体策を示す
といったことが書いてないといけません。
ですから、人口増大傾向にある都市部を取り上げたり、インフラ整備以外の課題をあげたりしてはいけませんし、財政制約に触れなかったり、地域活性化というより全国的経済活性化を取り上げたり都市防災などを取り上げたりしては題意から外れます。
また、あるべき方向性を示すにとどまり具体策まで書かないというのも題意に沿っていません。
問題文の一言一言をしっかり踏まえて「何を書かないといけないか」を整理することが大事です。これを怠って、何となく方向性は同じだけれど題意から外れ気味という答案を書いてしまうと、A評価はぐっとむずかしくなります。
出題内容を整理する時間を最初にとることをお勧めします。
そして、課題解決プロセスと論理性を問われるのですから、丸暗記答案で押し切るのはタブーです。キーワードが書いてあれば点数がもらえるということもありません。
出された問題を整理して、それに沿って的確に答えていくことが肝要です。

戻る

■建設一般のポイント

建設一般は、「問題予想をする」のではなく、「今、インフラ整備上重要な問題は」と考えてテーマをいくつかに絞り、「答案を作る」のではなく、「課題・問題点・解決策を考えておく」ようにします。
重要と思われるテーマについて注意点を述べておきます。

  • 地球温暖化
    問題予想をするわけではありませんが、白書に取り上げられている以上、やはり大本命は地球温暖化であるといえます。
    ところが白書に取り上げられているということは、あるべき方策が白書に書いてあるということでもあります。このため、解決策が考察の末に出てくるのではなく白書からの引用になってしまいがちです。そしてこのことは、ステップバイステップで論理立てて書くことを怠り、論理の飛躍を呼びやすくなります。前述のように、
      CO2排出抑制→交通流円滑化
      災害リスク増大→ハード&ソフトで対応
    というように、中間が飛んでしまいがちになります。「答えが白書に書いてある」と思うものだから、なぜそれが解決策なのかを十分説明しなくなってしまうのです。
    このことは逆に、他の受験生が考え落としやすいところをしっかり書ければ差をつけられるということでもあります。
    地球温暖化の課題・問題点・解決策がイメージを、どこが抜け落ちやすいか(逆に言えば、どこで差をつけるか)ということに特に留意して整理してみたのがこちらです。
    また、ヒートアイランドを扱うときは注意が必要です。ヒートアイランドは地域環境問題で、温暖化は地球環境問題ですから別物です。一方、温暖化に伴う気温上昇はヒートアイランドを悪化させ、冷房→エネルギー消費増大→CO2排出増加となってめぐりめぐって温暖化に寄与するという悪循環も確かにあります。このあたりをよく理解したうえで取り上げる必要があります。

  • 維持管理・更新
    筆記試験問題作成時期は、道路特定財源問題が大きくクローズアップされ、ガソリン代が大きく上下した時期でした。
    そして高度成長期以降に作られてきた大量のインフラは、その維持管理に大きなカネと手間がかかるようになってきました。
    特に60年代に大量に作られたインフラは、まもなく更新期を迎えます。
    その一方で少子高齢化・人口減少は、公共予算全体の目減りと、高齢者対策等に予算を多く使わざるを得ない状況をもたらしています。さらにインフラ整備がいきわたってきた(新規整備のニーズが減ってきた)こと、官民ともに談合を繰り返してきた建設事業に対する国民の厳しい目などが原因となって、建設予算は大幅に削減されつつあります。
    このことは、インフラの維持管理や更新にかけられるカネがないことを意味します。下図のように、やがて新設投資はゼロになり、既存インフラの維持管理と古くなったものの更新で精一杯になることが予想されます。
    出展:「社会資本整備のあり方について(北側臨時議員提出資料)」〜国土交通省、H17.5.24
    まずはこういった現状整理をどこまでできるかが勝負でしょう。
    こういった状況への対処としては効率的な維持管理更新が求められるわけですが、そのための手法としてアセットマネジメントが注目されています。それがどのようなものであるのかは、たとえばこちらで解説されていますが、こういう概念が理解できるかどうかも勝負の分かれ目でしょう。
    これは、「言われた仕事をこなしている」だけの技術者にはできないし、また理解しにくい発想です。言い換えると、借り物の言葉でなく自分の言葉でしっかり書くことができれば、かなり差をつけることができると思われます。
    ※上のグラフはいろいろなところで見る有名なものですが、温暖化に伴う異常気象による災害リスク増大を考えると・・・・
     そんなところに「評価してもらえる独自性」があるかも。

    なお、維持管理・更新あるいは「真に必要なインフラ」問題は、切り口がいろいろ考えられます。
    維持管理・更新の手法を問うもの、「選択と集中」の「選択」方法について見解を問うもの、真に必要なインフラについて問うものなどです。
    問題文をよく読んで、何について書いたらいいかをしっかり確認することが大事です。

  • ユビキタス
    コンピュータやネットワークが生活の隅々まで急速に入り込んでいる現代社会において、我が国はICT推進を進めるe-Japan戦略の後を受けて、ユビキタス社会実現を目指したu-Japan政策を推進しています。
    e-Japan戦略とはICTインフラ整備を進めるもので、2001年から始まりました。21世紀に入ってすぐのことから比べると、ICT料金はずっと安くなったし、ブロードバンドは本当に普及しましたよね。これらは市場競争の結果だけではなく、国がそういう方向に強く誘導していたためです。
    そして2006年、「ICTインフラ基盤はひととおりできた。次はこれを社会にもっと活用する」という考え方から策定されたのがu-Japan(ユビキタスネット・ジャパン)政策で、2010年には世界最先端のICT国歌になることを目指しています。
    その理念は、こちらでは以下のように記されています。
    ユビキタスとは、ICTが生活の隅々に融けこむことによって、これまで通信機器とは思われていなかったものも含め、あらゆる人や物が結びつくという基盤性に着目した理念です。
    そして、高齢者や障害者も含め、誰でも簡単にICTを利用でき世代や地域を越えたコミュニケーションが盛んになる、人に優しい心と心の触れ合いが期待されています。
    また、商品やサービスの提供などにおいてこれまでの供給者サイド中心の視点から、利用者のニーズや利便性が優先され利用者の視点が融けこむようになります。
    そして、ICTの活発な利活用により、これまでの画一的な社会から独創的なビジネスやサービス、さらには新しい社会システムや価値観が次々と生み出される、個性ある活力が湧き上がる社会を目指しています。
    そしてu-Japanの方向性は、
    • ネットワークが生活の至る所にまで浸透
      これはこれまでもやってきた情報インフラ整備の「続き」です。
    • ICT利活用の高度化
      電子政府やユニバーサルデザイン、CALS/ECなど
    • 利用環境整備
      プライバシーやセキュリティの確保
    という3つがあります。
    建設分野としてこれにどう関わるかというのはむずかしい面があるのですが、2番目のICT利活用ということで、電子入札と電子納品以外はまだこれといって稼動・活用実績のないCALSの本来の活用についてはそれなりに問題点をあげて方策を述べることができるのではないかと思います。
    キーワードはやはりGISではないかと思います。

  • 性能設計
    従来の設計手法は、材料・構造・設計計算方法などが細かく規定(仕様規定)された仕様により設計する、仕様設計が主流でしたが、新技術や新工法が採用されにくく、新技術開発意欲の阻害、国際通商上の障壁、コストダウンの阻害などが指摘されていました。
    これに対して性能設計は、構造物に要求される性能を照査する規定(性能規定)により設計するもので、新技術や新工法でも、構造物が要求する性能を満足すればOKとするものです。これにより、新技術開発の促進、コストダウンなどが期待できます。
    土木建設にも急激に取り入れられつつあり、限界状態設計法によるものが増えています。
    「これから」の技術ではすでにない現在進行形のものであること、純技術的側面が大きいことから、建設一般での出題の可能性は高くありませんが、専門問題での出題もあるので、勉強しておいて損はないでしょう。
    特に実務で見よう見まね的に取り入れ始めている人は、この機会にしっかり勉強してみてはどうでしょう。

  • 国土形成計画
    H17国土形成計画法に基づき策定が進められてきた国土形成計画(全国計画:国土形成計画は全国計画と広域地方計画から成ります)が7月に閣議決定されています。このタイミングは、試験問題作成時期に内容はできあがっていたことを示しますので、全国計画について出題される可能性があります。
    ポイントは「4つの戦略」です。
    1. 東アジアとの円滑な交流・連携
      ・東アジアの市場をにらんだ企業の新しい発展戦略
      ・観光立国の実現
      ・陸海空にわたる交通・情報通信ネットワークの形成
    2. 持続可能な地域の形成
      ・集約型都市構造への転換
      ・医療等の機能維持など広域的対応
      ・新しい科学技術による地域産業の活性化
      ・美しく暮らしやすい農山漁村の形成
      ・二地域居住、外部人材の活用
      ・条件の厳しい地域への対応
    3. 災害に強いしなやかな国土の形成
      ・ハード・ソフト一体となった総合的な災害対策の推進
      ・災害に強い国土利用への誘導
      ・交通・通信網等の迂回ルート等の余裕性
      ・避難誘導体制の充実など地域防災力の強化
    4. 美しい国土の管理と継承
      ・健全な物質循環と生態系の維持・形成
      ・海域の適正な利用・保全
      ・個性豊かな地域文化の継承と創造
      ・国土の国民的経営の取組
    これらのうち、1と2についてはH19問題(地域活性化)の中で取り上げられた内容であり、3については温暖化適応策と重なる部分があります。
    この全国計画については、こちらにコンパクトに整理されています。また全文はこちらです。
また、頭に入れておいていただきたいのは資料提示問題が出る可能性です。これは、1〜3ページ程度の資料を読んで問いに答えるという問題で、19年度は複数の部門で出題されました。
こういった資料提示問題は、現状と課題までは資料の中に入れておくことで、知識レベルを平準化し、課題解決能力のみを抽出して評価することができるため、今後増えてくる可能性が考えられます。
資料提示問題が出た場合、現状と課題は資料に基づいて答案を作成するようにします。資料に出ていないことばかり書くとか、たとえば資料は地球温暖化緩和策のことを述べているのに適応策に関する答案を書くとかいうことをしてはいけません。

戻る

■総監のポイント

総監受験者の大部分は既技術士です。つまり、論理的な課題解決能力はすでに備えている人だと思われます。そういう人が総監試験で不合格になる原因は、
 (1) 知識不足
 (2) 総監としての発想ができていない

のいずれか(あるいは両方)であることが大部分です。
前者はとにかく勉強不足ですので勉強してもらう以外にありません。
後者は、程度の違いこそあれ、専門技術者ではなく総監技術者として発想できるかどうかが勝負です。
総監の発想を手っ取り早く身につけるには、組織トップになったつもりで考えるのが一番です。民間なら社長、自治体なら知事とか市長なんかですね。なぜかというと、総監技術とは組織マネジメント技術であり、それは組織運営・経営のための技術だからです。
その人たち、つまり組織トップに課せられた最重要のテーマは何でしょう。社長として最優先で考えるべきことは何でしょう。
それは組織を継続させることです。儲けも拡大もその後です。組織構成員とその家族のためはもちろんですが、社会ののためにも組織が継続的に事業を行うことが必要であり、それが社会的責務なのです。
そしてそのために、
  1. 品質・コスト・納期(QCD)のバランスを取って生産できるようにする。
  2. 組織構成員をコストでなくキャピタルにする。つまり動機付け・教育によるスキルアップ・適正な配置や評価によって、人材を組織にとってできるだけプラスになるようにする。
  3. 経営者として意思決定が的確にできるような情報収集整理伝達の仕組みを作る。
  4. 安全を確保して仕事ができるようにする。
  5. 外部環境に対して負荷を与えないようにする。
のが総監技術です。(上記1〜5が5つの管理です)
なお、1〜4は組織経営ですから組織内部を見ており、5だけが外部を見ています。

この5つの管理中で、特に理解できている人が少ないのが人的資源管理と情報管理です。
  • 人的資源管理とは何か
    人的資源管理は人の割り振りとか教育だと思っている人が多いのですが、要はいかにして「組織に対して役立ってくれる人間」を作るかという管理なのです。
    そのためにやる気を出させようとしたり、スキルアップさせたり、その人の能力が発揮できるポジションに配置したりするのです。
    この「コストをキャピタルに」という発想がなかなかできないのです。

  • 情報管理とは何か
    情報管理はセキュリティとかデータの混在防止などに走りがちですが、もっとも中核となるのは、組織の進む方向性を決めるための情報を集めて整理するシステムを作ること、意思決定システムの構築こそが情報管理です。
    たとえ社長でなく、中間管理職でも現場主任でも、何かを判断するときには判断材料としての情報がいりますよね。その情報は不正確だったり偏っていたり整理できていなかったりしてはダメですから、正確な偏りのない情報を理解しやすく整理された状態で手に入れたいと思うでしょう。そしてそのためにいろいろな工夫をすると思います。定型化された連絡票様式などはまさにそういう工夫の結果として生み出されるものですね。
    そういう仕組みを作り維持し改善することが情報管理なのです。

これらを理解している人が少ないということは、それを武器にすれば差をつけられるということです。そしてそれは組織トップになったつもりで考えればけっこうすんなり理解できたりします。

19年度のBCPのような問題が出たとき、自分の今の立場から発想が広がらなかった人は途方にくれたでしょう。しかし「組織トップならどう考えるか」と思えば道筋は見えてくるはずです。
総監筆記答案でA評価を取るポイントは
  • 「組織をいかにして継続させるか」を中心命題にして
  • 総監用語を使って
  • 5W1H(特にWho・When・How:誰が・いつ・どのように)を明確にして
答案を書くことです。

戻る