技術士第一次試験 平成19年度 基礎科目

問題・正解・解説

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※技術士会公表の正解について、臨時掲示板での情報から解説を作成しました。
 異論や情報などありましたら、メールにてお願いします。


基礎科目正答一覧
第1群:設計・計画 第2群:情報・論理 第3群:解析 第4群:材料・化学・バイオ 第5群:技術連関
1-1-1 4 1-2-1 5 1-3-1 4 1-4-1 2 1-5-1 1
1-1-2 2 1-2-2 3 1-3-2 3 1-4-2 5 1-5-2 2
1-1-3 5 1-2-3 4 1-3-3 3 1-4-3 2 1-5-3 4
1-1-4 2 1-2-4 1 1-3-4 4 1-4-4 3 1-5-4 4
1-1-5 3 1-2-5 3 1-3-5 1 1-4-5 1 1-5-5 5

1群 設計・計画に問するもの (全5問題から3問題を選択解答)

1-1-1 下図のような系において、各構成要素の信頼度が、R1=0.9、R2=0.8、R3=0.5、R4=0.7のとき、この系の信頼度を求め、次の中から最も近いものを選べ。


(1) 0.25  (2) 0.60  (3) 0.73  (4) 0.85  (5) 0.91

正解は4

入れ子構造の系の信頼度は、小さい系から大きい系へと順に計算していきます。つまり、R4〜(R3〜(R1〜R2))となるわけです。
まずR1とR2は並列になっています。ですから信頼度はそれぞれのエラーを掛け合わせたものを1から減じた値になります。
R1の信頼度は0.9、よってエラーは1-0.9=0.1。R2は信頼度0.8によりエラーは0.2。これを掛け合わせると0.02で、1から減じて0.98。このことは、
  1-(1-0.9)×(1-0.8)
という形で式に表わせます。
さて、これとR3は今度は直列になっています。直列は信頼度を掛け合わせたものであり、R3の信頼度は0.5ですから、0.98×0.5=0.49となります。
最後にこれとR4は並列になります。よってエラーの掛け合わせてありR3の側は信頼度が0.49なのでエラーは1-0.49=0.51。R4の信頼度は0.7なのでエラーは0.3。よって、0.51×0.3=0.153。これを1から減じるので0.847となります。以上の計算は全部暗算でできます。
よって一番近いのは(4)の0.85となります。

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1-1-2 ある製品の製造工程において検査をX回実施すると、不具合の発生する確率が1/(X+1)2になると推定されるものとする。検査に要する費用が(30X)万円であり、不具合の発生による損害が1,875万円と推定されるとすると、検査回数Xを何回に設定すれば総費用が最小となるかを次の中から選べ。

(1) 3回   (2) 4回   (3) 5回   (4) 6回   (5) 7回

正解は2

トライアル(当てはめ)計算を繰り返しても解けますが、以下の手順で教科書どおりの方法で解いてみます。

  1. トータルコスト算定式に整理
    トータルコストCは、コスト+見込み損害額なので、C=30X+1,875/(X+1)
    2になります。(見込み損害額=損害額÷損害発生確率)
    (当てはめ計算の場合)
     当てはめ計算をする場合は上式にX=3、X=4、X=5・・・・を当てはめてCを算出します。
      X=3のとき・・・・C=30*3+1875/16=207.2
      X=4のとき・・・・C=30*4+1875/25=195
      X=5のとき・・・・C=30*5+1875/36=202.1
      X=6のとき・・・・C=30*6+1875/49=218.3

      X=7のとき・・・・C=30*7+1875/64=239.3
     よってX=4のときが最小。よって正解は2。
  2. 微分
    C=30X+1,875/(X+1)2=30X+1,875(X+1)-2であり、微分とはy=aX
    bのときy’=(a*b)Xb-1ということですから、
    30X=30X
    1を微分して(30*1)X1-1=30X0=30
    1,875(X+1)-2を微分して(1875*(-2))(X+1)
    -2-1=-3750(X+1)-3 ・・・・ここでは(X+1)をy=aXbのときy’=(a*b)Xb-1のXに当てはめています。
    よって、C=30X+1,875/(X+1)2
         dy/dx=30-3750(X+1)-3=0=30-3750/(X+1)3
         -3750/(X+1)3=-30
         3750/(X+1)3=30
         (X+1)3/3750=1/30
         (X+1)3=3750/30=125=5
    3
           ・・・・3750/30は電卓を使いましたが、125はちょうど5
    3になっている関数電卓は不要です。(試験ですものね^^)
    よって、X+1=5
         X=4
    ※高校数学レベルではありますが、1/Xaが1*X-aであること、これを微分すると-aX-a-1=-aX-(a+1)になるということがわかっていれば簡単に解けます。これがパパッと出てこなければ、当てはめ計算のほうが速くなります。なお、当てはめ計算もX=5まで行ったら「底」がX=4にあることはわかるわけですから、ここで切り上げてもかまいません。

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1-1-3 地震時には、図−1のように水平方向の揺れによって交互に慣性力が構造物に作用する。はりと柱から或る骨組構造物がこの方を受けた場合には、結果的に図−2のようにどちらかの方向に「マッチ箱がつぶれるような」破壊(せん断破壊)をすることがある。はりと柱で囲まれた壁の部分が、モルタルなどのひび割れが発生しやすい材料で造られていて、鉄筋などの補強もないものとする。この壁の部分が「単純せん断状態」(せん断応力のみがはりと柱から伝えられる)にあり、ひび割れが主引張応力と直交する方向に発生するものとするならば、骨組の破壊に先立って顕著に発生するであろうひび割れは、理論上どのようなものになると予想されるか。最も適切なものを@〜Dの中から選べ。

正解は5

地震時には、家屋が図2のような形に変形しようと左右に揺れるため、引張応力と圧縮応力は図のように対角線方向に働きます。問題文にあるように、「ひび割れが主引張応力と直交する方向に発生」するので、選択肢(5)のような対角線を結んだような亀裂ができます。実際、阪神大震災ではこういう亀裂ができています。

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1-1-4 循環型社会に関するる次の記述の[ ア ]〜[ エ ]に入る言葉として最も適切なものを(1)〜(5)の中から選べ。

 循環型社会とは、「第1に製品等が廃棄物等となることを抑制し、第2に排出された廃棄物等についてはできるだけ資源として適正に利用し、最後にどうしても利用できないものは適正に処分することが徹底されることにより実現される、天然資源の消費が抑制され、環境への負荷が低減される社会」である。
 廃棄物の発生自体を抑制することを
[ ア ]、いったん使用された製品や部品、容器等を再使用することを[ イ ]、廃棄物等を再利用することを[ ウ ]という。これらの3つの頭文字をとって3Rと呼んでいる。
 原材料採取から製造、流通、使用、廃棄に至るまでの製品の一生涯で、環境に与える影響を分析し、総合評価する手法を
[ エ ]という。

(1) (ア)リサイクル  (イ)リユース  (ウ)リデュース  (エ)ゼロ・エミッション
(2) (ア)リデュース  (イ)リユース  (ウ)リサイクル  (エ)ライフサイクル・アセスメント
(3) (ア)リサイクル  (イ)リデュース (ウ)リユース   (エ)ライフサイクル・アセスメント
(4) (ア)リデュース  (イ)リユース  (ウ)リサイクル  (エ)マテリアル・フロー解析
(5) (ア)リサイクル  (イ)リデュース (ウ)リユース   (エ)マテリアル・フロー解析

正解は2

知識問題ですが、(ア)〜(ウ)は常識レベルの知識です。「リデュース・リユース・リサイクル」で1つの単語みたいなものですね。
この時点で正解は2か4に絞り込まれます。
(エ)については、
 ゼロ・エミッション:事業に伴って発生する廃棄物(エミッション)をゼロにする取り組み
 ライフサイクル・アセスメント:製品の原材料採取から製造・流通・使用・廃棄に至る製品のライフサイクルに渡る環境負荷の予測評価
 マテリアル・フロー解析:モノ(特に有害物質)の流れに注目して、これを定量的に表現し、評価・解析する手法
ですが、これらも環境関連用語としては基礎的なものです。

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1-1-5 ある施設の計画案ア〜オがある。これらの計画案による施設の建設によって得られる便益が、将来の社会環境条件a,b,cにより表1のように変化するものとする。また、それぞれの計画案に要する建設費用が表2に示されるとおりとする。将来の社会環境条件の発生確率が、それぞれa=60%,b=30%,c=10%と予測される場合、期待される価値(=便益一費用)が最も大きくなる計画案を(1)〜(5)の中から選べ。

表1(単位:億円)     表2(単位:億円)
条件\計画案
5 4 3 6 7
4 6 7 4 5
3 7 8 3 4
計画案
建設費用 3 4 3 4 6

(1) ア   (2) イ   (3) ウ   (4) エ   (5) オ

正解は3

まずは問題文の意味を頭に入れましょう。
たとえば計画案アの条件aに着目します。期待できる便益は5億円ですが、これが発生する確率は60%です。よって、期待値は5億円×60%=3億円となります。同様にb、cについても期待値を計算すると、bは4億円×30%=1.2億円、cは3億円×10%=0.3億円となり、合計4.5億円となります。そして建設費用が3億円かかるのですから、差し引き4.5億円−3億円=1.5億円が期待値になります。ひとまとめにして書くと、5*0.6+4*0.3+3*0.1-3=1.5となります。
なお、手早くやるには「×0.6」などとせずに「×6」というようにして単位を「億円」ではなく「千万円」にしてしまうと楽です。この場合、計画案アの期待値は15となります。
同様に計画案イ〜オについて計算すると、
 (イ)4*6+6*3+7*1-40=9
 (ウ)3*6+7*3+8*1-30=17
 (エ)6*6+4*3+3*1-40=11
 (オ)7*6+5*3+4*1-60=1
となり、(ウ)の期待値が最も高くなります。
※期待値の絶対値を求めるのではなく代償評価をするのが目的ですから、単位が何でも同じことで、少しでも早く楽にできる方法を使うのが得策です。「×6」なら暗算でもすっとできますが、「×0.6」とか「×60」だと時間がかかるか電卓を余計に操作しなければなりません。

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2群 情報・論理に関するもの (全5問題から3問題を選択解答)

1-2-1 数本の指を使い、それぞれの曲げた状態と伸ばした状態を考える。たとえば2本を使った場合には、次の4通りの状態を表現できる。

人差し指 親指
曲げている 曲げている
曲げている 伸ばしている
伸ばしている 曲げている
伸ばしている 伸ばしている

10本の指を使う場合には、5本の指を使う場合と比べて表現できる状態の数は何倍になるか。

(1) 2倍  (2) 4倍  (3) 8倍  (1) 16倍   (5) 32倍

正解は5

これはビットの情報量に関する問題です。
「指の曲げた状態と伸ばした状態」はオン・オフ、つまり0か1というデジタル信号の「2通りの状態」と同じです。
そして「2本を使った場合には、次の4通りの状態を表現できる」というのは、2
2=4ということです。この場合の「2本」は「2乗」ということを表わします。つまり、(指を曲げた状態/伸ばした状態の2通り)^(2本の指)ということになります。ですから指3本を使えば23、つまり8通りの状態表現ができますし4本なら24、つまり16通りの表現ができます。
このように、曲げた/伸ばした、0と1のように2通りの状態を表現できる要素がn個集まって表現できる状態の数(情報量)は、2
nとなります。これを「nビット」といいます。
したがって、10本の指を使えば10ビット=2
10、5本なら5ビット=25の情報量になります。
2
m÷2n=2m-nですから、210÷25=210-5=25=32となります。
※ビットに関する問題であるということ(あるいは情報量=2nであるということ)がわかれば、計算は高校数学レベルです。

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1-2-2 データをネットワークで伝送する場合には、ノイズ等の原因で一部のビットが反転する伝送誤りが発生する可能性がある。伝送誤りを検出するために、データの末尾に1ビットの符号を付加して伝送する方法を考える。付加するビットの値は、元のデータの中の値が「1」のビットの数が偶数であれば「0」、奇数であれば「1」とする。たとえば、元のデータが「1001011」という7ビットであるとき、値が「1」のビットは4個で偶数である。よって、付加するビットは「0」であり、「10010110」という8ビットを伝送する。このとき、正しいものを次の中から選べ。

(1) データの中の1ビットが反転したことを検出するためには、元のデータは8ビット以下でなければならない。
(2) データの中の1ビットが反転したことを検出するためには、元のデータは2ビット以上でなければならない。
(3) データの中の2ビットが反転した場合には、伝送誤りを検出できない。
(4) 8ビットのデータの中の1ビットが反転した場合には、どのビットが反転したかを特定できる。
(5) データによっては付加するビットの値を決められないことがある。

正解は3

ビットに関する設問で、ここでは値が「1」であるビット数を数え、偶数かどうかで付加する値を0か1か判断しています。
正解選択肢を見ると頻繁に出てくる言葉が「ビットが反転」ですね。ビットが「反転する」とは、1なら0に、0なら1に変わってしまうことです。つまり、値が「1」であるビット数が、反転したビット数だけ増減します。
もし1個だけ反転したとしましょう。0から1に反転したのであれば値が「1」のビット数は1つ増えます。1から0に反転したのであれば1つ減ります。
3個だとどうでしょう。3個とも0から1に反転したのであれば値が「1」のビット数は3つ増えます。2個が1に、1個が0に反転したのであれば、相殺して2-1=1個増えます。1個が0に、2個が1なら1-2=-1個増える、つまり1個減ります。3個とも0に反転したなら3個へります。
このように、反転したビット数が奇数なら、値が「1」であるビット数は奇数個だけ増減します。つまり、値が「1」であるビットの数は偶数/奇数が入れ替わります。よって最後に付加される1ビットの値は「0」→「1」あるいは「1」→「0」のように変化します。
一方偶数だと、反転したビット数が2個の場合、2個とも1に反転したなら値が「1」のビット数は2個増、1個は1に、もう1個は0に反転したなら相殺して変化なし、2個とも0に反転したなら2個減となります。同様に反転したビット数が4個の場合、1に反転したビット数:0に反転したビット数が4:0なら値が「1」のビット数は4個増、3:1なら2個増、2:2ならプラスマイナス0、1:3なら2個減、0:4なら4個減となります。
このように、反転したビット数が偶数なら、値が「1」であるビット数は偶数個だけ増減します。つまり、値が「1」であるビットの数は偶数/奇数が入れ替わりません。よって最後に付加される1ビットの値は変化しません。
以上のように、反転ビット数が奇数であった場合は、最後に付加される1ビットの値が変化したかどうかを調べることで、反転が起こったかどうかを知ることができます。言い換えると、このような方法では、反転ビット数が奇数であった場合しかそれを検出できないことになります。

以上を踏まえて選択肢を見ていきます。
(1)と(2)は元のデータのビット数について述べていますが、反転ビット数が奇数か偶数かで検出可能かどうか決まるのですから、データのビット数は反転検出には関係ありません。よって誤りです。
(3)は上記により正しい記述となります。
(4)は、反転の有無しか検出できないことにより、誤りです。
(5)は、付加ビット値は、値が「1」のビット数が奇数か偶数かで決まりますから、奇数でも偶数でもない数というのは存在しません。よって誤りです。


※ここで取り上げられているビット付加による伝送誤り検出方法は「パリティチェック」と言われるもので、1であるビット数の偶数・奇数情報を載せて最後に書き込む1ビットのことをパリティビットといいます。実際の伝送では、受け側はパリティビット以外のビット(情報本体)を調べて値が1であるビットを数え、これをパリティビットと照合します。合致しなければデータ伝送にエラーがあったと判断し、送り側に再送を要求します。
誤り検出としてはもっともポピュラーな方法で、コンピュータ内部の回路間データ転送、通信回線を使ったコンピュータ同士の通信に幅広く利用されていますが、選択肢(3)のような短所があります。

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1-2-3 機械A,Bを用いて材料P,Q,Rを加工したい。材料はいずれも機械A,Bの順に加工しなければならない。
機械Aで材料P,Q,Rを加工するのに要する時間はそれぞれ10分,20分,13分であり、機械Bで材料P,Q,Rを加工するのに要する時聞はそれぞれ12分,15分,5分である。
各機械は一度に1つの材料しか加工できない。機械が1つの材料の加工を始めたら、その加工を中断することはできない。2台の機械は、異なる材料を加工するのであれば、並行して使用できる。材料が機械間を移動する時間や段取りに要する時間は考えなくてよい。
機械A、Bのいずれにおいても材料をP,Q,Rの順に加工するとしたら、最初の加工が始まってから最後の加工が終るまでの時間の最小値はいくらか。次の中から選べ。

(1) 32分  (2) 43分  (3) 47分  (4) 50分  (5) 75分

正解は4

工程管理に関する問題です。
わかりやすいようにバーチャートにしてみましょう。

機械A→機械Bの順で加工しなければならないので、まず機械Aで材料Pを加工します。その後機械Aでは材料Qの加工を始め、機械Bでは材料Pの加工を始めます。
機械Aは20分かかって材料Qを加工し、それが終わったら材料Rにとりかかります。そして43分で加工を終えます。
一方、機械Bは材料Pの加工は12分で終わるのですが、「2台の機械は、異なる材料を加工するのであれば、並行して使用できる」という条件がついていますから、機械Aが材料Qを加工し終えるのを待たねばなりません。そして13分待った後に材料Qを加工し始め、45分に終えます。この時点で機械Aはもう全材料の加工を終えていますから、これに影響されることなく直ちに材料Rの加工に入れます。そして5分間で加工を終え、50分に全工程を終了します。
以上により、選択肢(4)が正解となります。
バーチャートではなくアローダイヤグラムで整理すると下図のようになります。ここで結合点3〜結合点4、結合点5〜結合点6の矢破線はダミーです。

Cまで@→A→Cとくれば22分ですが、BのA-Q工程が終わっていることがB-Q工程開始の条件になっていますから、@→A→Bの30分たってからでないと開始できません。
結局、@→A→B→C→E→Fという経路がクリティカルパスとなり、10+20+15+5=50分が最小時間となります。

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1-2-4 関数を積分したり、微分方程式の解を求めたりするときに、数式処理で解を求めるのでなく数値的に解を求める場合は、誤差が生ずる。誤差についての記述中の[  ]に入る字句の組合せとして最も適切な組合せを(1)〜(5)の中から選べ。

[ ア ]はコンピュータで扱う数値が有限桁のビットで表されることによる誤差である。
[ イ ]は本来は無限項から成る式を有限項の式で置き換えることによる誤差である。

(ア) (イ)
(1) 丸め誤差 打ち切り誤差
(2) 相対誤差 打ち切り誤差
(3) 桁落ち 丸め誤差
(4) 桁落ち 絶対誤差
(5) 丸め誤差 絶対誤差

正解は1

コンピュータが数値データを扱うとき、どのようにしてメモリに格納しているのでしょうか。
コンピュータが基本的に扱える情報は、電流が流れているかいないか、つまりON/OFFの2種類の情報(デジタル情報)だけです。
だけどこれでは1と0しか扱えません。そこで、数値を格納するための「入れ物」をいくつも用意します。たとえば

  □□□□□□□□
このように「箱」を8つ用意したとします。全部の箱がカラの状態(全部の桁の値がゼロの場合)は、数値は0になります。
数値「1」は、
  □□□□□□□■
のように一番下の桁に「1」が入っています。(電流が流れています)
数値が一つ増えて「2」になると、一桁目にはもう入りませんから、
  □□□□□□■□
のように二桁目に「1」が入り、かわりに一桁目は「0」になっています。
さらに数値が増えて「3」になると、
  □□□□□□■■
のように、さらに一桁目に「1」が入ります。以下、
  □□□□□■□□ ・・・・4
  □□□□□■□■ ・・・・5
  □□□□□■■□ ・・・・6
  □□□□□■■■ ・・・・7
  □□□□■□□□ ・・・・8
というようになります。
ここで、□を「0」、■を「1」と読み替えると、
 数値1・・・・□□□□□□□■・・・・00000001=   1
 数値2・・・・□□□□□□■□・・・・00000010=  10
 数値3・・・・□□□□□□■■・・・・00000011=  11
 数値4・・・・□□□□□■□□・・・・00000100= 100
 数値5・・・・□□□□□■□■・・・・00000101= 101
 数値6・・・・□□□□□■■□・・・・00000110= 110
 数値7・・・・□□□□□■■■・・・・00000111= 111
 数値8・・・・□□□□■□□□・・・・00001000=1000
となります。これは、それぞれの数値を2進数で表した数値です。このように、コンピュータで計算する場合に入力する10進数は、コンピュータ内部では2進数に変換されてメモリに格納されます。

【丸め誤差】
この10進数から2進数への変換の際、2進数できっちり表せる数値(4(2
2)、0.5(2-1)、0.75(2-1+2-2)など2nで表せる数値)は正確な値となりますが、それ以外の大部分の数値は無限小数になります。
しかしコンピュータのメモリなり記憶装置は有限ですから、1つの数値に割り振れるビット数も有限となります。これが有効桁数です。コンピュータは、メモリが有限であるがゆえ、有効桁数には自ずと制限ができるのです。
このため、2進数への変換は有効桁数までで打ち切られ、それ以降は切り上げ・切り捨て・四捨五入・五捨六入などにより端数処理され、丸められます。
たとえば下の例では、コンピュータに同じように打ち込んだ0.5は2-1ですから2進数では10
-1=0.1して正確に計算でき、コンピュータには正確に入力されますが、0.1は2進数では無限小数となり、途中で計算が打ち切られます。このため、コンピュータに入力された数値は正確には0.1ではなくなります。

10進数 2進数 コンピュータ入力値
0.1 0.0001100110011001100110011001・・・・ 0.1
|    ← 24ビット →   |→計算打切
0.5 0.1 0.5

このため、これらの数値を使って繰り返し計算をすると、誤差が累積していくことになります。

数値 X=0.1000 X=0.5000
累和回数 計算値 正確値 計算値 正確値
1,000 99.999 100 500 500
10,000 999.903 1,000 5,000 5,000

この誤差が丸め誤差です。つまり、数値(小数)を有限桁数のビット情報として格納するために生じる誤差です。
最も単純な例としては、電卓に「10」「÷」「3」「=」と入力してたとえば「3.3333333」という解答を得た後に「×」「3」「=」と入力すると答えが10ではなく「9.9999999」になる現象が丸め誤差です。

【桁落ち】
有効桁数8桁で√1250から√1249を引いてみましょう。つまり、1250
0.5−12490.5ですね。
 12500.5=35.35533906・・・・ → 35.355339 に丸められてメモリに格納(ここで丸め誤差が生じている)
 12490.5=35.34119409・・・・ → 35.341194 に丸められてメモリに格納(ここで丸め誤差が生じている)
メモリに格納された丸め誤差を持った数値同士で減算をすると、
 35.355339-35.341194=0.014145
となって、有効桁数が5桁に減ってしまいました。これが桁落ちで、値がほぼ等しく丸め誤差をもつ数値どうしの減算を行った場合、有効数字が減ってしまう現象です。
この場合、浮動小数点計算では、0.014145=0.14145E-01というようにべき乗を後ろに持ってくることでメモリ格納上の小数点位置を移動させてしまいます。もともとメモリには8桁分の「箱」が用意してありますから「0.14145」の後ろにはまだ空きがあるにもかかわらず、ここには「0」が強制的に入れられて、これ以下の桁の数値はなくなってしまい、ここに誤差が生まれます。

【打ち切り誤差】
たとえばπの値や√2の値といった無限小数を計算するとします。計算を続けると計算値はどんどん真の値に近づいていきますが、その結果を格納する変数にあてがうメモリ量から制限される有効桁数、あるいはそれほどの精度を必要としないなどのプログラマ側の意思などにより、処理を続ければ精度がよくなるにもかかわらず、途中で計算を打ち切る場合、打ち切ったところから先の「計算処理を続ければ算出されたはずの値」は捨てられますから、ここに誤差が生じます。このように、無限項の計算をあらかじめ決めた有限項で打ち切ることにより生じる誤差を打ち切り誤差といいます。

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1-2-5 10進数の「7分の1」を2進数表示したものは次のうちどれか。ただし、小数点以下16位までを表示している。

(1) 0.0101001000100001   (2) 0.0011011101111011
(3) 0.0010010010010010   (4) 0.0001010000101000
(5) 0.0111000000000000

正解は3

10進法でも2進法でも何進法でも、小数点以下は「m進法における小数点以下n桁」=m-nの桁となります。10進法では0.1は10-1ですし、2進法の0.1は2-1です。したがって、たとえば選択肢(1)の0.0101001000100001は、2-2+2-4+2-7+2-11+2-16となります。
それを踏まえ、以下に解いてみます。

1/7=1/8+α=2-3+α。2-3は2進数で0.001なので、1/7は2進数で0.001+α。この条件に合う選択肢は(2)と(3)。
まだ絞りきれないので、αについて検討する。
α=1/(7*8)=1/56。56=2
5(32)と26(64)の中間なので1/56=1/64+α=2-6+α。
2-6は2進数で0.000001なので、先の2-3と合わせ、2進数で0.001001.この条件に合う選択肢は(3)のみ。よって(3)が正答。

他にもいろいろな解き方があると思います。10進法と2進法の間を頭の中で行ったり来たりできればどんな解き方でも正答にたどり着けると思います。

【別解1:暗算のみ、消去法】
1/7の前後の1/2nは1/4(=2-2)と1/8(2-3)であり、1/7はこの間にあるので、2-2>1/7>2-3=0.01>1/7>0.001。
よってこの段階で(2)か(3)以外ない。(2)と(3)の違いは2-4(=1/16)が1かどうか。つまり選択肢(2)>2
-3+2-4>選択肢(3)。
つまり2-3+2-4=1/8+1/16=1.5/8であり、1.5/8は8/1.5≒5.3であることから、1.5/8≒1/5.3>1/7。よって(2)もなくなり、選択肢(3)が残る。

【別解2:電卓使用、概算】
電卓を持っている場合(あるいは1/7を暗算できる場合)、1/7=0.1428・・・・が出る。
 2
-1=0.5
 2
-2=0.25
 2
-3=0.125
 2
-4=0.0625
 2
-5=0.03125
 2
-6=0.015625
    :
    :
であり、1/7(0.1428)は2
-3よりやや大きい。よって0.1428-2-3=0.1428-0.125=0.0178
0.0178は2-6よりやや大きい。よって 0.0178≒2
-6→2進数で0.000001
よって1/7は2進数で2
-3+2-6程度=0.001+0.000001程度=0.001001 ・・・・一番近いのは選択肢(3)

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3群 解析に関するもの (全5問題から3問題を選択解答)

1-3-1 下図のように上端が固定され、下端に下方向の荷重を受ける中空円筒がある。この円筒の下端の変位が許容値よりも犬きかったので、これを小さくする対策を考える。下端の変位が最も小さくなるのは次のうち、どの場合か。なお、材料はフックの法則にしたがう弾性体であり、円筒の長さは直径に比較して十分大きいものとする。



(1) 円筒の長さLを2倍にする。
(2) 縦弾性係数E(ヤング係数)が2倍の材料を使用する。
(3) 縦弾性係数Eが2分の1の材料を使用する。
(4) 内径Diを変更せずに、肉厚tを2倍にする。
(5) 肉厚tを変更せずに、内径Diを2倍にする。

正解は4

以下、臨時掲示板より村民さんのレスを引用します。

@ 円筒の長さLを2倍にする。
  この場合、応力、ひずみ一定で長さが倍になるので変位は寧ろ増加すると考えられます。
A 縦弾性係数E(ヤング係数)が2倍の材料を使用する。
  σ=Eε
  上式より応力一定化ではひずみは半分となり、したがって、変位は半分(×0.5)となります。
B 縦弾性係数Eが2分の1の材料を使用する。
  Aと同様の考え方から変位は2倍になります。
C 内径Diを変更せずに,肉厚tを2倍にする。
  断面積の式を見れば分かります。即ち、
  A = π×t(D+2t)
  上式よりtが2倍になるとAが2倍以上になることが分かります。
  したがって応力、ひずみは1/2未満となります。
D 肉厚tを変更せずに,内径Diを2倍にする。
  Cの式より、Dが2倍になってもAは2倍以下であることが分かります。
  したがって応力、ひずみは1/2以上であることが分かります。
したがって、C。


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1-3-2 材料が線形弾性体であることを仮定した構造物の応力分有を有限要素法により解析するときの要素分割に関する次の記述のうち、最も不適切なものを選べ。

(1) 応力の変化が大きい部分に対しては、要素分割を細かくするべきである。
(2) 応力の変化が小さい部分に対しては、応力自体の大小にかかわらず要素分割の影響は小さい。
(3) 粗い要素分割で解析した場合には常に変形は小さくなり応力は高めになるので、応力評価に関しては安全側である。
(4) 要素分割の影響を見るため、できれば複数の要素分割によって解析を行い、結果を比較するのが望ましい。
(5) ある荷重に対して有効性が薙認された要素分割でも、他の荷重に対しては有効とは限らない。

正解は3

メッシュを粗くすると応力が小さくなり、危険側の評価となります。

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1-3-3 下図に示すような両端を剛体壁に固定された断面積S、長さ/のはりがある。はりを二等分する点をB点とし、AB間、BC間の縦弾性係数(ヤング係数)をE1、E2とするとき、荷重Pがはりの軸方向に負荷された場合の点Bの変位δとして正しいものを(1)〜(5)の中から選べ。



(1)Pl/2SE1  (2)Pl/2SE2  (3)Pl/2S(E1+E2)  (4)3Pl/2S(2E1+E2)  (5)Pl/2S(E1-E2)

正解は3

以下、臨時掲示板より村民さんのレスを引用します。

Bです。
考え方は以下の通り。

両固定単に反力P1,P2を考えます。
水平方向のつりあいより、
P1+P-P2=0
P1-P2=-P (a)

荷重作用面での変位(ひずみ)は絶対値等しい。
(ただし圧縮、引張の違いあり)すなわち、
ε1=-ε2 (b)

また、
ε1=P1/(S・E1)
ε2=P2/(S・E2 (c)

(a)、(b)、(c)より
P1=-P・E1/(E1+E2)
ε1=-P/S(E1+E2)   (=δ/(L/2))
よって
δ=PL/2S(E1+E2)
ちなみにマイナスは部材1を圧縮部材としてP1の向きを設定したのに対し、実際の変位は引張方向であることを示します。

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1-3-4 次の数式中にある記号、【ア】〜【ウ】に入れるべきものとして、適切な組合せを(1)〜(5)の中から選べ。なお、a1、a2、・・・・an(n≧1)は任意の正の整数であるものとする。

 (1+a1)(1+a2)・・・・・・・・(1+an)
 =
【ア】(1/2+a1/2)(1/2+a2/2)・・・・・・・・(1/2+a2/2)
 =
【ア】(1+(a1-1)/2)(1+(a2-1)/2)・・・・・・・・(1+(an-1)/2)
 
【イ】【ア】(1+(a1-1)/2+(a2-1)/2)+・・・・・・・・+(an-1)/2)
 【イ】【ア】(1+(a1-1)/(n+1)+(a2-1)/(n+1)+・・・・・・・・+(an-1)/n+1)
 =【ア】/【ウ】(1+a1+a2+・・・・・・・・+an)

(ア) (イ) (ウ)
(1) 2 n
(2) 2n n
(3) 2 n
(4) 2 n+1
(5) 2n n+1

正解は4

  1. 最も単純にn=3とおいてみます。(n=2と置かないのは、そうすると2nも2nも同じ4になるため)
    (1+a1)(1+a2)(1+a3)=1+a1+a2+a3+a1a2+a1a3+a2a3+a1a2a3となります。
    (ア)については2
    nか2nかという選択肢ですから、これにn=3を当てはめると、2nなら8、2nなら6になります。
    (1/2+a1/2)(1/2+a2/2)(1/2+a3/2)=1/8+a1/8+a2/8+a3/8+a1a2/8+a1a3/8+a2a3/8+a1a2a3/8となります。
    よって(ア)は2
    n
    ※ここでは解説のため面倒な解き方をしていますが、2番目の式で全項に1/2が乗じられていることから、これらを掛け合わせると1/2n=2-nになっていくことから(ア)が2nであることはわかります。
  2. 次に(イ)ですが、2式目と3式目で【ア】は同じなので、(1+(a1-1)/2)(1+(a2-1)/2)・・・・・・・・(1+(an-1)/2)と1+(a1-1)/2+(a2-1)/2)+・・・・・・・・+(an-1)/2のどちらが大きいかあるいは等しいかという問題になります。手っ取り早くa1=2、a2=3とすれば、
     2式目:(1+(a1-1)/2)(1+(a2-1)/2)=(1+(2-1)/2)(1+(3-1)/2)=1.5×2=3
     3式目:1+(a1-1)/2+(a2-1)/2=1+(2-1)/2+(3-1)/2=1+0.5+1=2.5
    となり、2式目>3式目となり、選択肢より(イ)は≧。これで正解は(2)か(3)に絞られました。
  3. 最後の(ウ)は、4式目と5式目を整理すると
      (1+(a1-1)/(n+1)+(a2-1)/(n+1)+・・・・・・・・+(an-1)/n+1)
     =1/【ウ】(1+a1+a2+・・・・・・・・+an)
    ということになります。4式目を整理すると、
      (1+(a1-1)/(n+1)+(a2-1)/(n+1)+・・・・・・・・+(an-1)/n+1)
     =1/(n+1)(n+1+a1-1+a2-1+・・・・an-1)
    2つ目の( )内各項の「-1」wpまとめるとn個ありますから、
     =1/(n+1)(n+1+a1+a2+・・・・an-n)
    より2つ目の( )内の先頭のnと最後の-nが相殺されて
     =1/(n+1)(1+a1+a2+・・・・an)
    となります。よって、(ウ)はn+1。

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1-3-5 気体の定圧熱容量と定積熱容量の比は、通常γと表示される。空気のγを求めるための次の実験の説明について、[ ア ]〜[ ウ ]に入れる語句として最も適切な組合せを(1)〜(5)の中から選べ。

 図のようにガラス瓶にコルクの栓をし、これに断面積Aのガラス管を垂直上向きに立てた後、ガラス管にピストンの役目をする金属球を入れる。ただし、ガラス管と金属球との間には隙聞が無く、摩擦も無視できるものと仮定する。
 金属球が平衡位置から移動したときの
[ ア ]をy(上方を正とする)とすると、金属球によって閉じ込められた空気の体積増加ΔVは次式で表される。
  ΔV=yA
 また、このときの内部圧力の変化をΔPとすると、金属球に作用する力(上方を正とする)Fは
  F=AΔP
で与えられる。ここで、空気が理想気体であり、金属球の平衡位置からのずれが十分小さいと仮定すると、金属球によって閉じ込められた空気の平衡状態での体積avVと圧力avPを用いて
  ΔP=γavPΔV/avV
の関係が成立する。以上の式を用いるとFは以下のように求まる。
  F=γyavPA
2/avV
本式は、変位に比例するカで金属球が
[ イ ]ことを意味する。したがって、金属球は[ ウ ]し、その周期τは次式で与えられる。
  τ=2π√(mavV)/√(γavPA
2)
ここで、mは金属球の質量である。この式を用いれば、金属球の周期を測定することによって、空気のyを求めることができる。


(ア) (イ) (ウ)
(1) 平衡位置からのずれ 引き戻される 単振動
(2) 位置エネルギーの増大 引き離される 放物運動
(3) 平衡位置からのずれ 引き戻される 放物運動
(4) 位置エネルギーの増大 引き戻される 放物運動
(5) 平衡位置からのずれ 引き離される 単振動

正解は1

以下、臨時掲示板ふっしさんのレスを引用します。

問題文は長いですが、ポイントだけ読めばすむ問題だったかも・・・
周期と来ている時点で単振動。
振動だから、力としては「引き戻される」。
「本式は,変位に比例するカで・・・」とあるからyは変位=ずれ。

よって@。

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4群 材料・化学・バイオに関するもの (全5問題から3問題を選択解答)

1-4-1 次のア〜オの濃度の各水溶液1L(リットル)ずつを、(1)〜(5)の組合せで混合するとき、得られる水溶液が酸性になるものを選べ。

 1.0 mol/L 硫酸(H2S04
 2.0 mol/L 水酸化ナトリウム(NaOH)
 1.0 mol/L 塩酸(HCl)
 2.0 mol/L アンモニア水(NH4OH)
 1.0 mol/L 酢酸(CH3COOH)


(1) アとイ    (2) アとエ    (3) イとウ    (4) イとオ   (5)エとオ

正解は2

酸はア、ウ、オですが、アのみ強酸で、全て1mol。よって正解は(1)か(2)になります。
水酸化ナトリウムは全て解離する強塩基であり、2H+2OH=2H
2O。つまり中性。
一方アンモニア水は全て解離せず弱塩基となり、硫酸と混合すると弱酸性になります。

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1-4-2 鉛蓄電池の反応に関する次の文章の[ ア ]〜[ オ ]に入る語句の組合せとして、最も適切なものを(1)〜(5)の中から選べ。

 鉛蓄電池は希硫酸に鉛の電極と二酸化鉛の電極を浸した電池であり、起電力は約2Vである。放電にともない[ ア ]において(a)の反応が、[ イ ]において(b)の反応が生じる。
   Pb+SO
42- → PbSO4+2e-           (a)
   PbO2+4H
++SO42-+2e- → PbSO4+2H2O    (b)
 放電反応では、
[ ウ ]が酸化され、[ エ ]が還元される。また、放電により硫酸が硫酸鉛になるとともに、希硫酸の密度は[ オ ]なる。

(ア) (イ) (ウ) (エ) (オ)
(1) 負極 正極 酸化鉛 大きく
(2) 正極 負極 酸化鉛 大きく
(3) 負極 正極 酸化鉛 小さく
(4) 正極 負極 酸化鉛 硫酸鉛 大きく
(5) 負極 正極 酸化鉛 小さく

正解は5

電池では負極から電子が正極に流れます。(a)の反応では電子が発生し、(b)では電子を受け取っていますから、(ア)は負極、(イ)は正極です。(昔、小学校の理科の授業で見たNHK教育テレビあたりでよくやっていました)
次に酸化と還元ですが、
電子を失うことを酸化、受け取ることを還元といいますから、(ウ)は鉛、(エ)は酸化鉛です。これで正解は(1)か(5)に絞られました。
そして硫酸が硫酸鉛になっていくのですから硫酸は減っていきます。よって(オ)は「小さく」。
全体に高校化学程度のレベルで十分解けます。
※ここでは解説のために(ア)から順に考えて行きましたが、実際の試験ではわかるところから絞り込んでいきます。たとえば(オ)などは直感で「小さく」であることがわかりますから、最初から正解が(3)か(5)に絞り込まれます。(3)と(5)の違いは(ウ)と(エ)ですから、(ア)や(イ)には目もくれずに酸化還元のことを考えれば、迅速に正解が絞り込めます。

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1-4-3 物質や材料の性質に開する次の記述のうち、最も不適切なものを選べ。

(1) シリカゲルや活性炭には微細な空隙が多数あって、単位質量に対する表面積がきわめて大きく、吸着剤として脱臭・脱色などに使われる。

(2) 天然ガスの主成分はベンゼンであり、冷却圧縮して液体にしたものを液化天然ガスLNGという。 LNGは都市ガス用や化学工業の原材料などに使われる。

(3) 銅は赤色光沢のある金属で、電気・熟の良導体である。乾燥した空気中では常温で変化しにくいが、湿気のある空気中では酸化されて緑青を生じる。

(4) 酸化チタンに紫外線が当たると、光化学反応を起こし、このとき生じる活性酸素はさまざまな有機物を分解し、抗菌や脱臭、汚れ防止などの効果をもたらす。

(5) ステンレス鋼にはクロムが含まれており、表面にクロムの酸化皮膜ができ、これが不動態となるため優れた耐食性を示す。

正解は2

(1)・・・・○ シリカゲルは乾燥剤としてもよく目にしますが、脱臭・脱色効果もあり、猫砂としてよく用いられています。

(2)・・・・× ベンゼンではなくメタンです。ベンゼンは常温ですでに液体ですから、ガス燃料には使えません。
(3)・・・・○ 祠や神社などで銅版葺の屋根はそういう色をしていますね。これを「緑青」(ろくしょう)といいます。
(4)・・・・○ 酸化チタンのコーティング膜は、紫外線を吸収すると表面で光触媒反応によりイオン化酸素分子を発生し、有機物等を酸化分解します。
(5)・・・・○ ステンレスがめっきや塗装をしなくても錆びないのは、まさにこのクロムの酸化皮膜ができるためです。

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1-4-4 植物がその体をつくり、また体内の化学反応をバランスよく進めるためには、一般に少なくとも16種類の元素(炭素、酸素、水素、窒素、リン、カリウム、カルシウム、マグネシウム、イオウ、鉄、マンガン、ホウ素、亜鉛、モリブデン、銅、塩素)が必要とされている。質量でそれぞれ乾燥植物体のほぼ0.1%以上を占める9元素を多量元素と呼び、それ以下の7元素を微量元素という。これら元素について、植物と肥料に関する次の記述のうち、最も不適切なものを選べ。

(1) 16元素のうち炭素、酸素、水素は、光合成の原料になる二酸化炭素と水から取り込まれるので、補給の必要はない。
(2) 肥料とは、農作物の収量を増やしたり、成長に不足しがちな元素を植物に補給するために与える物質である。
(3) 天然肥料を施すと、含まれている有機物の酸化反応によって二酸化炭素を生じるが、土壌を酸性化させることはない。
(4) 化学肥料には、窒素、リン、カリウムのどれかを主成分とした無機化合物が多い。
(5) 微量元素は、植物体内の酵素の成分として含まれるものや、酵素の活性化、光合成などに必須なものが多い。

正解は3

(1)・・・・○ そのとおり。
(2)・・・・○ そのとおり。これが肥料の基本的考え方です。
(3)・・・・× 二酸化炭素を水に溶かすと酸性になります。地球温暖化の一つの問題として海洋酸性化が指摘されています。
(4)・・・・○ そのとおり。
(5)・・・・○ そのとおり。

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1-4-5 遺伝子操作に開する次の文章の[ ア ]〜[ エ ]に入る語句の組合せとして、連切なものを(1)〜(5)の中から選べ。

 運搬体となるDNA、すなわち[ ア ]に酵素などを用いて異種のDNAを試験管内で組み込み、これを宿生細胞内に導入することを組換えDNA実験といい、また、このようにして得られたDNAを組換え体DNAと呼ぶ。多くの組換え体の中から同一の遺伝情報をもつDNAを単離することを[ イ ]という。遺伝子組換えに用いられる酵素には、DNAを合成するためのDNAポリメラーゼ,、RNAを鋳型としてDNAを合成する逆転写酵素、DNAを特定の塩基配列の部分で切断する種々の[ ウ ]、DNAの断片を連結するDNA[ エ ]などがある。

(ア) (イ) (ウ) (エ)
(1) ベクター クローニング 制限酵素 リガーゼ
(2) ベクター スクリーニング 分解酵素 リパーゼ
(3) ベクター クローニング 分解酵素 リガーゼ
(4) プローブ スクリーニング 制限酵素 リガーゼ
(5) プローブ クローニング 分解酵素 リパーゼ

正解は1

以下、臨時掲示板よりちゃーはんさんのレスを引用します。

@です。DNAの運び屋はベクター、DNA切断は制限酵素、DNA連結はリガーゼです。

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5群 技術連関 (全5問題から3問題を選択解答)

1-5-1 電気エネルギーの貯蔵や発電に間する次の記述のうち、下線部が最も不適切なものを選べ。

(1) 天然ガス複合発電では、天然ガスの燃焼ガスのエネルギーを利用してまず蒸気タービンを駆勤し、その排熱を用いてガスタービンを駆動することにより、総合的な発電効率を上げている。

(2) 一次電池とは、マンガン乾電池のように一度で使いきりとなり、再び使用できない電池のことであり、二次電池とは、リチウムイオン電池やNi-Cd電池のように、充電して再び使用することのできる電池のことをいう。

(3) 電気二重層キャパシタは急速な充放電が可能であり、充放電サイクル寿命が優れた蓄電デバイスである。近年、ハイブリッド自動車や燃料電池車でエネルギーの有効利用を目的とした電気二重層キャパシタの搭載が検討されている。

(4) 揚水発電は、夜間の余剰電力で貯水池などにある低所の水を高所にくみ上げ、その位置エネルギーを利用して昼間に発電するものであり、電気エネルギーを貯蔵するシステムといえる。

(5) 燃料電池は、「水の電気分解」と逆の原理で発電する。水の電気分解は、水に外部から電気を通して水素と酸素に分解するが、多くの燃料電池は、水素と酸素を電気化学反応させて電気を作る。

正解は1

ガスのエネルギーを利用するのがガスタービン、排熱を使うのが蒸気タービンです。

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1-5-2 わが国の資源やリサイクルに関する次の(ア)〜(エ)の記述について、正誤の組合せとして最も適切なものを(1)〜(5)の中から選べ。

(ア)石油などの化石燃料の自給率は低い砿金属鉱物資源は豊富であり、とくに鋼鉱石の自給率は現在でも50%以上(銅の含分として計算)である。

(イ)PET(ポリエチレンテレフタレート)ボトルは焼却するとダイオキシンが大量に生成することが知られているため、分別回収、洗浄して再使用することが進められ、その割合は回収量の20%を超えている。

(ウ)使用済みの飲料用アルミニウム缶は、80%以上が回収され、その過半がアルミニウム缶の原料として利用されている。また、回収した使用済みアルミニウム缶を融解して再生地金を得るほうが、鉱石を製錬して新地金を得るよりも、同量のアルミニウムあたりのエネルギー消費が少なくてすむ。

(エ)自動車の排出ガス浄化のための触総々燃料電池に用いられる白金は、その物性上リサイクルすることが困難であるが、金に比べて資源埋蔵量が格段に豊富で安価であり、環境保全対策技術のコスト低減のために大量に利用されている。

(1)
(2)
(3)
(4)
(5)

正解は2

ア・・・・× 銅の自給率は0%です。
イ・・・・× PETには塩素は含まれませんので、燃やしてもダイオキシンは出ません。また回収率は60%を超えています。
ウ・・・・○ 記述の通りです。
エ・・・・× 白金は希少金属です。以上により正解は(2)です。×になっているものは、いずれも感覚的に怪しいことがわかるのではないかと思います。

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1-5-3 ppm(ピー・ピー・エム)とは、parts per millionの略で、環境中の物質の濃度を表現する際によく用いられる単位であり、質量比、体積比のいずれにも適用される。次の(ア)、(イ)で述べた2つの濃度a、bの関係のうち、適切なものを(1)〜(5)の中から選べ。

(ア)深さ1m、長さ20m、幅10mのプールに満たされた純水に、1kgの食塩を均一に溶かしたときにできる食塩水の濃度をa(ppm)とする。ただし、濃度は質量比とする。

(イ)縦6m、横5m、高さ4mの密閉された1気圧の部屋の中で、1リットル、1.2気圧のヘリウムの入った風船が破裂し、ヘリウムが部屋の空気と均一に混ざったときの部屋の空気中のヘリウム濃度をb(ppm)とする。ただし、濃度は体積比とし、空気中には風船の破裂前に5 ppmのヘリウムが含まれていたものとする。


(1) a=2b    (2) a=b    (3) a<b<2a    (4) 2a<b<5a    (5) 10a<b

正解は4

(ア) プールの水は1×20×10=200m2。水の密度は1なので200t=200,000kg。これに1kgなので、1÷200,000=5×10-6=5ppm。
   なお、ppmは「per million」とある通り、百万分率、10
-6です。
(イ) 部屋の空気は6×5×4=120m3=120,000L。ここに1L、1.2気圧のヘリウムが放出されるので、ヘリウムは1×1.2=1.2L。
   よって、1.2÷120,000=1×10
-5=10ppm。もともと5ppmなので、合計15ppm。
よって、a<bで(1)、(2)は該当せず、2a=10ppmでbより小さいので(3)も不成立。(4)は10<15<25で成立。(5)は10a=50にて不成立。

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1-5-4 保全に間する次の文章の[ ア ]〜[ オ ]に入る語句の組合せとして、適切なものを(1)〜(5)の中から選べ。

 設備や機械などの対象(以下、アイテムと記す)を運用可能状態で維持し、故障などを回復するための処置及び活動は、保全と呼ばれる。保全は、アイテムが使用中に故障することを未然に防止するために、規定の間隔や基準に従ってアイテムの機能劣化や故障の確率を低減するという[ ア ]保全と、フォールトの発見後にアイテムを要求機能遂行状態に修復する[ イ ]保全とに大別される。また、[ ア ]保全は、定められた時間計画に従って行う時間計画保全と、アイテムの動作状態々劣化傾向のモニタリングに基づいて行う[ ウ ]保全とに分けられる。 さらに、時間計画保全は、予定の時間間隔で行う[ エ ]保全と、アイテムが予定の累積動作時間に途したときに行う[ オ ]保全とに分けられる。

(ア) (イ) (ウ) (エ) (オ)
(1) 定期 事後 往時 状態監視 予防
(2) 状態監視 往時 予防 定期 事後
(3) 定期 経時 予防 状態監視 事後
(4) 予防 事後 状態監視 定期 経時
(5) 予防 定期 状態監視 往時 事後

正解は4

一般的に設備保全の体系は以下のようになっています。(「技術士制度における総合技術監理部門の技術体系」参照)

1.予防保全 A)日常保全
 日常的な劣化防止・劣化測定・劣化復元活動
B)定期保全
 定期点検とオーバーホール
C)予知保全
 劣化傾向を管理し保全時期・周期を決める
2.改良保全
 故障しないよう、改善を加え設備上の弱点を補強
3.事後保全
 故障停止・有害な性能低下をきたしてから修理
4.保全予防
 設備更新段階で、信頼性・経済性などを取り入れ保全費・劣化損失を少なくする

選択肢の記載内容とは異なりますが、大枠についての記述である(ア)と(イ)に入るとすれば、「予防」と「事後」であることはわかります。この時点で(4)しか該当しないわけですが、あとは感覚的に妥当な言葉が選べると思います。
よって、正解は(4)です。

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1-5-5 知的財産基本法(平成15年7月改正)に関する次の記述のうち、最も不適切なものを選べ。

(1) この法律は、知的財産の創造、保護及び活用に関し、基本理念及びその実現を図るために基本となる事項を定めたものである。

(2) この法律で、知的財産とは、発明、考案、権物の新品種、意匠、著作物その他の人間の創造的活動により生み出されるもの、商標、商号などの情報をいう。

(3) この法律で知的財産権とは、特許権、実用新案権、育成青楼、意匠権、著作権、商標権その他の知的財産に関して法令により定められた権利又は法律上保護される利益に係る権利をいう。

(4) 国は、知的財産の創造、保護及び活用に関する基本理念にのっとり、知的財産の創造、保護及び活用に関する施策を策定し、及び実施する責務を有する。

(5) 知的財産の創造、保護及び活用に関する施策の推進は、創造性のある研究及び開発の成果の共有化を図り、世界の産業の持続的発展に寄与するものとなることを旨として、行われなければならない。

正解は5

(1)は知的財産基本法第1条の目的のとおりです。
(2)と(3)は法第2条の定義のとおりです。
(4)は法第5条のとおりです。
(5)は、「世界の産業」ではなく、「我が国産業」の持続的発展に寄与するとなっています。
よって、正解は(5)です。

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