技術士第一次試験 平成16年度 適性科目 問題 課題1 技術者とは、技術業(エンジニアリング)に携わる専門職業人(プロフェッショナル)である。技術業とは、数理科学、自然科学および人工科学等の知識を駆使し、社会や環境に対する影響を予見しながら資源と自然力を経済的に活用し、人類の利益と安全に貢献するハードウェア・ソフトウェアの人工物やシステムを開発・研究・製造・運用・維持する専門職業である。専門職業とは、社会が必要としている特定の業務に関して、高度な知識と実務経験に基づいて専門的なサービスを提供するとともに、独自の倫理規程に基づいた自律機能を備えている職業であり、単なる職業とは区別される。技術士は、ここに定義される専門職業人の一つである。 2−1------------------------------------------------------  次に、専門職業人としての技術者になるための要件、そして、専門職業人として業務を提供するときの要件が示されている。この要件の中で、ふさわしくないものほどれか。 (1) 適切なエンジニアリング教育を受け、エンジニアリングの基礎知識とその応用について学ぶ、あるいは、これに相当する知識と応用を習得する。エンジニアリング教育には、明確な教育目標があって、第三者によって認定されたものであることが望ましい。 (2) 専門分野の実務を自分の判断で実施するようになるには、エンジニアリング教育修了後、優れた技術者の監督のもとで、一定期間以上の十分な訓練を受け、経験を積むことが必要である。この期間は、少なくとも4年間が必要であるとされる。 (3) 実務を行うときには、自分のもつ専門分野の能力を最大限に発揮して行い、専門外のことであっても、自分の判断で実施することが重要である。 (4) 技術者の資格を定める法律や、技術者協会の規程には、技術者が遵守すべき倫理規程が示されている。技術者は実務遂行の過程において、これらの倫理規程をその意思決定の基準とする。 (5) 技術の進歩は目覚しく、最新技術ほど陳腐化が早い。常に最新の知識をベースに仕事をするためには、技術能力を向上させるための継続的な能力開発が不可欠である。 課題2 企業に所属する技術士の態度について、次の記述を読み、ふさわしい態度を○、ふさわしくない態度を×として、その正しい組合せを選べ。 2−2------------------------------------------------------ ア)法令と規則が遵守されている限り、技術倫理は十分に徹底されているから、その範囲内での判断は全て経営問題に属する。したがって、技術的な判断はさしはさむべきではない。 イ)企業に所属している技術士は、企業の利益と公衆の利益が相反した場合には、雇用主である企業の利益を最優先に考えるべきだ。 ウ)企業は受注した仕事を実施する義務を発注者に対して負っているから、発注者の意向には従わなければならない。仮に、法令に違反した内容の指示を発注者から受けても、それは発注者の責任であるから、受注側企業に所属する技術士としては、指示どおり実施すべきだ。 エ)技術士は、企業に所属する以前に、技術士という専門職業人であると考えるべきであり、所属する企業が技術に関して法令違反をしているのに気付いたら、まず最初に、企業の外部に対して告発をすべきだ。 (1)  (ア)× (イ)○ (ウ)× (エ)○ (2)  (ア)○ (イ)○ (ウ)× (エ)○ (3)  (ア)○ (イ)× (ウ)○ (エ)× (4)  (ア)× (イ)× (ウ)○ (エ)○ (5)  (ア)× (イ)× (ウ)× (エ)× 課題3 水を使って試運転しないと個々の性能が分らない機械で、水で試運転すると錆(さび)が発生するので、試運転後は分解し乾燥してから錆(さび)を落としている。機械としては長期間作り続けている製品であるので性能は安定している。しかし顧客から1台毎の性能検査成績表の提出を求められているので、成績表を提出しなければならないが試験費用がかなりかかる。代表的な性能検査成績表1枚の提出では、個々の機械の成績にはならないので、単に数値が異なるように乱数を使って性能検査成績表を作成することにした。これによって、水による試運転試験を省略し、ユーザのコストダウンの要求に対応している。 2−3------------------------------------------------------  次のうち、水を使った試験に対応する設計担当者として、とるべきふさわしい態度を選べ。 (1) 試験のデータに関してはユーザからは何の問い合わせもないし、性能上問題はないのだから、問題が起きない限りそのまま続ける。 (2) 品質管理の問題だが、事実に反する記録を残すのは好ましくない。試験を実施するように社内を説得する。説得が完了するまで乱数表を使った成績表を作成する。 (3) 実際に性能を満足する製品を長期間供給してきた実績により、ユーザと協議して、全数検査から抜き取り試験、さらには無試験に順次変えていく。その間は費用がかかっても水を使った試験を実施する。 (4) 現在まで性能上全く問題ないのであるから、検査事務簡略化のために抜き取り検査に変更する旨ユーザに申し出る。了解か得られるまでは現状のやり方を続ける。 (5) 顧客のコストダウンに対応して行ったとはいえ、正しくない試験成績の提出方法であるから、社内の説得を抜きにして顧客に実情を申し出て、顧客から試験方法改善の要求をしてもらう。 課題4 次の記述は、平成16年6月14日に成立した「公益通報者保護法」に関するものである。この中から、正しい記述を選べ。 2−4------------------------------------------------------ (1) この法律は、公益通報者の保護を図るとともに、国民の生命、身体、財産その他の利益の保護にかがある法令の規定の遵守を図り、もって国民生活の安定及び社会経済の健全な発展に資することを目的としている。 (2) ここでいう「公益通報」とは、労働者が、公益に反する犯罪行為などの発生、もしくはこれによる被害の拡大を防止するために必要であると認められる行政機関に通報することのみをいう。 (3) この法律により保護される労働者とは、労働基準法第9条に規定するもので、企業などを含む事業者の従業員および公務員である。ただし、派遣労働者は含まない。 (4) この法律でいう「公益に反する犯罪行為」とは、刑法、食品衛生法、証券取引法、農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律、大気汚染防止法、廃棄物の処理及び清掃に関する法律、などの法律に違反する行為である。しかし、個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)にはすでに公益通報者保護の規定があるので、「公益通報者保護法」には適用されない。 (5) この法律は、書面による公益通報の対象となった事業者が、当該公益通報に係る通報対象事実の中止その他是正のために必要と認める措置をとったときはその旨を、また、当該公益通報に係る通報対象事実がないときはその旨を、行政機関に対し、できるだけ早く通知するよう努めなければならないことも定めている。 課題5 次に、技術者が直面するであろう警笛鳴らし(Whistle Blowing)に該当すると思われる事例が述べてある。参考として、リチヤード・ド・ジョージ(Richard T.De George)は、1)一般の人々に深刻な害を及ぼすと予測される、2)自分の上司に報告した、3)社内で行えることはすべて実行した、などの条件を満たした場合には、警笛鳴らしは正当化されるとしている。 ア)自分が勤務する会社において、「会社の製造した製品に欠陥があり、リコールが必要であるのに上層部が相談の上これを放置している(いわゆるリコール隠いがある」と同僚たちのうわさで耳にしたので、直ちにマスコミに投書した。 イ)工場の検査担当者として発見した製品の欠陥を上司に報告したが握りつぶされた。技術部門を総括している担当の取締役に事実関係を詳細に記した報告を提出したがこれに関しても黙殺されてしまったので、この件についてはできることはすべて行ったと考え、そのままにした。 ウ)自宅で使用している同業他社の製品について、家族が使用性について不満を述べていた。自分も技術的に考えて家族の意見に賛成なので、欠陥商品ではないかとマスコミに投書した。 エ)以前に勤務していた会社で設計した構造物について強度が不足していたことを、別の構造物を設計する過程で気がついた。放置すると危険なため、事情を正確に記述した文書を前の会社に送付したが、一年以上にわたって何の反応もなかった。かつての所属長に文書を再送したが返事が無いため、やむを得ず直接監督官庁に同様の文書を送付した。 2−5------------------------------------------------------  これらの事例が、適切な警笛鳴らしであるかどうかを判定して、その正しい組合せを選べ。 (1)  (ア)○ (イ)× (ウ)× (エ)× (2)  (ア)× (イ)○ (ウ)× (エ)× (3)  (ア)× (イ)× (ウ)○ (エ)× (4)  (ア)× (イ)× (ウ)× (エ)○ (5)  (ア)○ (イ)○ (ウ)○ (エ)○ 課題6 技術者のエンジニアリング教育のありかたについては、多くの国際的な合意が生まれてきた。エンジニアリング教育の質の向上と継続的改善のためには、社会の要請を認識し、適切な学習・教育目標を設定し、この目標に沿って実施し、点検し、継続的に改善する仕組みを構築して運用することが重要であるという観点もその一つである。学習・教育目標の設定においては、エンジニアリング教育を修了した者が備えるべき能力について、多面的な検討がなされ、それらの能力を育成するための具体化した技術者教育のプログラムが運用されていることが求められる。 2−6------------------------------------------------------  次に、エンジニアリング教育を修了した者が備えるべきいくつかの能力が示されている。この中で、ふさわしくないものはどれか。 (1) リスクマネジメントなどの体系とその限界について理解し、マネジメントやエンジニアリング実務の全般について説明できる能力 (2) 専門職技術者としての倫理、責任および業務規範をよく理解し、遵守する能力 (3) 技術的な解決が社会に与える影響について理解し、そして持続可能な開発の必要性について説明できる能力 (4) チームリーダーの指示する課題の達成のために、それが及ぼす社会への影響への配慮よりも、チームワークを優先して忠実にメンバーとしての役割を果たす能力 (5) 複雑なエンジニアリング課題とその解決法について技術者同志や、さらに社会全般に理解させるためのコミュニケーション能力 課題7 技術士法ならびに技術士倫理要綱に則ると、次の技術士A、BおよびCの行動で技術士としてふさわしい行動はどれか。ふさわしい行動を○、ふさわしくない行動を×として、その最も適切な組合せを選べ。 2−7------------------------------------------------------ ア)技術士Aは、Y製造会社のエンジニアであり、異動によって同社L工場の保守点検の責任者となった。工場が繁忙期に入る前に、部下のMが工場の重要な機械に「安全性には問題ないが、法律で許されない種類のキズがある。」という報告をした。しかし、その法律は、工場の安全を重視するあまり、機械やそれに使われている材料の経年度化かまったく考慮されておらず、常に工場に新品同様の機械を扱うことを求めているような現実に即していないものであった。Mによると、業界全体で、安全性に問題がない範囲ならば、この法律は遵守しないことが日常化しているという。そこで、技術士Aは現場に詳しいMの意見を尊重して、このキズの件は上司や本社に知らせず、放置することにした。 イ)技術士Bは、環境技術を専門とするコンサルタントである。技術士Bは、ある大手企業から、その企業が所有する化学工場跡地の環境調査を請け負うことになった。この企業の代理人である弁護士Xは、契約の条件として、裁判所に命令されない限り、この土地に関するBの調査結果(データ、所見、結論などを含む)の情報を、関係者以外には開示しないという機密保持契約に署名することを要求した。しかし、技術士Bは工場で扱っていた化学薬品の性格から判断して、公衆の安全に関わる調査結果がでる可能性が十分あったため、この機密保持契約に署名することを拒否した。 ウ)技術士Cは、高層ビルなどの構造設計を専門とする技術者である。技術士Cは特別な建築条件のある建物の構造設計を請け負った。制約条件が厳しいため、設計は困難を極めたが、技術士Cは斬新なアイデアを使って、独創的な仕事を成し遂げた。数年後、ビルは無事竣工し、ビルの所有者をけじめ多くの人々が技術士Cの業績を称え、その年の建築学会賞も受賞した。ところが、技術士Cは、偶然、彼の知らないうちに、施工方法が変更されており、ビルの構造が設計時の強度を持っていないことに気付いた。風洞実験のデータなどを再確認し、計算をやりなおした結果、このままでは、「100年に一度」の確率でこの地域に来襲する台風の風力で、ビルが倒壊する可能性が非常に高いことがわかった。技術士Cは、自分の計算に自信がなかったし、台風による被害の可能性も「100年に一度」という強さの場合のみであるために、また、施工方法の変更は自分の責任ではなかったため、このことをビルの所有者には伝えなかった。 (1)  (ア)○ (イ)○ (ウ)○ (2)  (ア)○ (イ)× (ウ)× (3)  (ア)× (イ)○ (ウ)× (4)  (ア)× (イ)× (ウ)○ (5)  (ア)× (イ)× (ウ)× 課題8 1986年1月に発生したスペースシャトル・チャレンジャー号の事故では、技術者の安全に関する技術的な判断が、経営的な判断によって最終的に覆されてしまったことが事故を防げなかった原因の一つといわれている。技術者としての判断を下すための準拠枠組みとして、各学協会では倫理規定等を制定している。次に、個々の技術者のさまざまな判断の過程が示されている。 ア)個々の技術者が倫理規定等に準拠して技術的判断を行う。 イ)上記のア)の技術的判断は最終的なものであり、自分以外から干渉をされることはない。 ウ)経営者などの技術者以外の者からの技術的な判断への干渉は、必ずしも、受け付けない。 エ)他の技術者の判断へは技術者として干渉しない。 オ)個々の技術者の判断を基に、ピア(同等の技術能力を持つ仲間)の技術者の間で相談して最終的な技術的判断を練り上げる。 2−8------------------------------------------------------  これらの記述の正誤を判定して、その正しい組合せを選べ。 (1)  (ア)○ (イ)× (ウ)× (エ)× (オ)× (2)  (ア)× (イ)× (ウ)○ (エ)○ (オ)× (3)  (ア)○ (イ)× (ウ)○ (エ)× (オ)○ (4)  (ア)○ (イ)○ (ウ)○ (エ)○ (オ)× (5)  (ア)○ (イ)○ (ウ)○ (エ)○ (オ)○ 課題9 「人間が関わってひとつの行為を行ったとき、望ましくない、予期せぬ結果が生じること」を失敗と定義した場合、この失敗を忌み嫌わずに直視することで、新たな失敗や、さらに重大な、致命的失敗の発生を防ぐことにつながる。よく知られているものに、「ハインリッヒの法則」がある。これは、1件の重大災害の裏には、29件のかすり傷程度の軽災害があり、さらにその裏にはケガまではないものの300件のヒヤリとした体験が存在する、というものである。この「ヒヤリとした」「ハッとした」という体験の中に潜在的な危険や失敗が潜んでいる。それを自覚し、対処することで、致命的な危険を未然に防ぐことができるという教訓である。 2−9------------------------------------------------------  上記の考え方にしたがえば、次のア)からウ)について、技術者の態度としてふさわしいものを○、ふさわしくない態度を×として、その正しい組合せを選べ。 ア)失敗についての情報は、過ちを犯した当人の人事評価にもつながりかねないから、なるべく限定的に扱うべきであり、組織内で広く共有することは避ける。 イ)失敗から得た知識をうまく利用するためには、失敗そのものの正確な分析よりも、失敗が起こる頻度の情報の方が重要だから、失敗情報は分かりやすく単純化して責任者に報告し、発生の経緯などの詳細な情報については、報告の対象から除外する。 ウ)品質改善活動は、マニュアルを作成しただけで見直さないでいると、形骸化する恐れがある。「マニュアルに沿っていれば十分である」という態度ではなく、軽度の失敗にも常に着目して、その情報の積極的な活用を心がける。  (1)  (ア)○ (イ)○ (ウ)○  (2)  (ア)○ (イ)○ (ウ)×  (3)  (ア)○ (イ)× (ウ)○  (4)  (ア)× (イ)× (ウ)○  (5)  (ア)× (イ)× (ウ)× 課題10 1986年1月のスペースシャトル・チャレンジャー号の爆発事故に続いて、 2003年2月にはスペースシャトル・コロンビア号の空中分解事故が起こった。この2つの事故に関して、次の記述がある。 ア)これらの事故の原因はそれぞれ全く違うものであり、相互の関連はない。したがって、2つの事故を関連づけて反省する必要はない。 イ)これらの事故の背景には米国航空宇宙局の慣習的要因がある。具体的には、技術者間の意思疎通が妨げられており、専門家間の意見の相違が表面化しなかったことがあげられる。 ウ)技術者が倫理規定に則って行動したとしても人聞の過ちは必ず起こるものであり、米国航空宇宙局が努力を重ねてきたことを考えると、20年に1回程度の事故は許容される範囲と考えるべきである。 エ)いずれの事故でも事故を起こした直接の原因については、事前に問題点が指摘されていた。なぜ事故の前に是正されなかったのかについて検討する必要がある。 2−10----------------------------------------------------  これらの記述の正誤を判定して、その正しい組合せを選べ。 (1)  (ア)×  (イ)×  (ウ)×  (エ)○ (2)  (ア)×  (イ)○  (ウ)×  (エ)× (3)  (ア)×  (イ)○  (ウ)×  (エ)○ (4)  (ア)×  (イ)○  (ウ)○  (エ)○ (5)  (ア)○  (イ)○  (ウ)○  (エ)○ 課題11 次の記述は、製造物責任(Product Liability)に関するものである。間違っている記述を選べ。 2−11---------------------------------------------------- (1) 製造物責任とは、製品の欠陥が原因で、生命・身体あるいは物に被害が生じたときに、製品の製造者が被害者に対して負う損害賠償責任のことである。 (2) 古い考え方では、製品事故が生じたとき、製造者を訴えるためには、製造者の「過失」(negligence)が問題とされていた。しかし、新しい考え方では、製品事故における賠償責任を「欠陥」(defect)という点から見る。これを「厳格責任」(strictliability)という。厳格責任では、責任を根拠づける要素としての過失は考えない。つまり、「結果が悪ければ欠陥であり、言い訳は許されない」という考え方である。 (3) 日本では、製造物責任法が1995年7月1日に施行された。これ以前でも製品に関する事故で製造者を訴えることは可能であったが、製造者の「故意または過失」を立証しなければならなかった。 (4) 日本の製造物責任法において、対象となる「製造物」とは、「製造又は加工された動産」(第2条第1項)である。ここでいう「製造」とは、部品又は原材料に手を加えて新たな物品を作り出すことであり、「加工」とは、物品に手を加えてその本質を保持しつつこれに新しい属性又は価値を付加することをいうものとされている。したがって、例えば未加工の農産物などは、部品や原材料に手を加えて製造されたわけでもなく加工されたわけでもないので、製造物責任の対象とはならない。これに対し、農産物を加工して漬物にした際に、有害物質が混入したようなケースでは、漬物は製造物責任の対象となる。 (5) 日本の製造物責任法では、欠陥とは、「当該製造物の特性、その通常予見される使用形態、その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期その他の当該製造物に係る事情を考慮して、当該製造物が通常有すべき安全を欠いていること」と定められており、この法律は、「製造上の欠陥」(例えば、製造過程で組み立てを誤ったとき)を対象とし、「設計上の欠陥」には適用されない。 課題12 製造物の欠陥の一つに、「指示・警告上の欠陥」があり、これは製品の取扱説明書や警告ラベル等の欠陥のことを指す。ある治療薬の投与上の危険に関する警告不備により、その治療薬との併用が危険を及ぼす抗がん剤との同時投与がなされた。その同時投与が原因となって、その治療薬の発売後、1ヶ月のうちに死亡事故が発生した。 2−12----------------------------------------------------  次に示すこの治療薬を製造・販売した企業の責任に関する記述について正誤を判定して、その正しい組合せを選べ。 ア)医薬品は、厚生労働省の承認を得て製造・販売しているので、企業は責任を問われないが、医師に対して常に薬品に関する情報を提供する。 イ)併用投与が原因で死亡事故を起こしたのであるから、投与上の説明をよりわかりやすく記載するように変更して、販売は続行する。 ウ)開発危険の抗弁、すなわち「当該製造物をその製造業者等が引き渡した時における科学または技術に関する知見によっては、当該製造物にその欠陥があることを認識できなかったこと」にあたり、企業はいかなる場合でも損害賠償責任を免れる。 エ)併用投与の副作用の可能性が予測できたのに、投与上の説明書の記載が不十分であったことが原因であるので、企業に責任がある。 (1)  (ア)×  (イ)○  (ウ)×  (エ)○ (2)  (ア)×  (イ)×  (ウ)×  (エ)○ (3)  (ア)○  (イ)×  (ウ)×  (エ)○ (4)  (ア)×  (イ)×  (ウ)○  (エ)○ (5)  (ア)×  (イ)○  (ウ)×  (エ)× 課題13 昨今、企業の[ ア ]が重要視されるようになっている。この立場に立てば、技術者は、企業の活動の結果、環境中に放出される化学物質などの環境に与える負荷については、法令の遵守、すなわち[ イ ]をもって十分とするのではなく、企業の経済活動との両立も考慮したうえで、環境に及ぼす影響を可能な限り小さくするよう努めるべきである。例えば、化学物質の場合は、個々の物質の排出量が排出基準値を下回っていても、複数種の物質が環境に及ぼす影響の起きる確率、すなわち[ ウ ]の総和が、公衆の受忍限度を超える可能性もある。したがって、必要なコストを勘案しながら、[ ウ ]を可能な限り低減する姿勢が求められるのである。また、企業活動による環境負荷を考える上では、商品や生産活動の最初から最後までを対象にして考える[ エ ]の考え方も、近年注目されるようになってきている。 2−13----------------------------------------------------  上記の環境影響に関する記述の中の[ ア ]、[ イ ]、[ ウ ]、[ エ ]に、下記の(1) 〜(5) のうちから適当な語句を入れるとした場合、どれにも当てはまらないものはどれか。 (1) エンドポイント (2) 環境リスク (3) ライフサイクルアセスメント (4) コンプライアンス (5) 社会的責任 課題14 技術者の倫理や責務に関する教育には、事例研究が使用されることが多い。技術者としての倫理的そして職業的な関心は、これらの実務上の事例に対して、最大限に発揮され、解決に向けての努力が払われる。この場合、技術者が直面する事例に含まれるモラル上の課題を解決する方法について学んでおくことが望ましい。  技術者が出会うモラル上の課題(=モラル問題)の一つのタイプとして、技術者倫理において[ ア ]と名づけられているものがある。これは、モラル問題が連続して濃淡が変化していく一本のスペクトル上にあり、そのスペクトルの一端には明らかに正しい行為が、他端には明らかに不正な行為があるが、スペクトルの両極の間に、正しいか不正かはっきり決められなくてためらうような灰色域がある場合に生じる問題である。  [ ア ]の解決法としては、哲学の領域では知られていた[ イ ]という古い方法が適用される。[ イ ]とは、与えられた事例を評価するについて、参考事例と比較して決める方法である。 2−14----------------------------------------------------  [ ア ]に入る言葉として、最も適当な言葉を選べ。 (1) 相反問題  (2) 概念上の問題  (3) 人道問題  (4) 線引き問題  (5) 人工物問題 2−15----------------------------------------------------  [ イ ]に入る言葉として、最も適当な言葉を選べ。 (1) 決疑論  (2) 黄金律  (3) 徳倫理  (4) 正義論  (5) 義務論 ////////////////////////////////////////////////////////////////////// 技術士第一次試験 平成15年度 適性科目 課題1  技術士法第4章、第45条の2には、技術士等の公益確保の責務として、次の規定がある。   第45条の2 技術士又は技術士補は、その業務を行うに当たっては、公共の安全、環境の保全その他の公益を害することのないよう努めなければならない。  この規定の背景には、技術士の責務について次のような認識がある。  現代社会において、[ ア ]は社会の隅々まで浸透し、多くの便益をもたらし、安全で豊かな生活を可能とすると同時に今後の経済社会の発展の基盤として不可欠な存在となっている。しかしながら、一方で、[ ア ]は安全問題や環境問題を生じさせる場合もある等、[ ア ]が社会に及ぼす影響の大きさは、正の効果も負の効果も拡大する傾向にある。  したがって、[ ア ]に携わる者は、実務担当能力を有することはもちろんのこと、社会や公益に対する責任を[ イ ]等の活動の前提にする旨の高い職業倫理を備えることが必要である。  また、自己の能力の範囲を明確に認識し、業務遂行上、専門的な助力の必要性に関して的確に判断し、適切に助力を得ること等も重要である。  こうした職業倫理を徹底するためには、技術者が属する[ イ ]等を含め社会全体がその重要性等について十分に理解することが不可欠である。 2−1------------------------------------------------------  4ヵ所の[ ア ]には、同じ言葉が入るが、最も適当と思われるものはどれか。 (1) 人工物  (2) 情報  (3) 科学  (4) 遺伝子  (5) 技術 2−2------------------------------------------------------  2ヵ所の[ イ ]には、同じ言葉が入るが、最も適当と思われるものはどれか。 (1) 政府  (2) 企業  (3) 地域  (4) 利害関係者  (5) 大学 課題2  専門職技術者が組織する学協会は、技術業が公衆の信頼のうえに成り立っていること、そして、その信頼を維持することが、技術業と公衆全体のために有益であることを認識している。そのような信頼と尊敬を高めるために、学協会の多くは、その専門職業の価値観と抱負を述べた声明書を発表するようになり、それが一般に「倫理規程」とよぱれるものである。  倫理規程の発展過程をみると、当初は、技術者とその依頼者との相互関係、及び技術者の間の相互関係について定めた。その後、公衆に対する技術者の責任が規定され、最近になって環境との関わりが重要視されるようになった。 2−3------------------------------------------------------  次に学協会が倫理規程を採用する根本的な動機が示されている。この中で動機として、ふさわしくないものはどれか。 (1) 技術者の学協会が社会と結ぶ契約の意味がある。 (2) 専門職として、どう行動し判断するかを技術者に助言する。 (3) 法律のように技術者に倫理を強制する。 (4) 学協会の技術者たちが互いに支え合う助けになる。 (5) 公衆の善のためという価値観を背負った意思決定を奨励する。 課題3  技術者倫理の目標をよく示す概念として「[ ア ]倫理」がある。これは「[ ア ]医学」とのアナロジーで作られたものである。私たちは、病気がひどくなる前に注意深く私たちの健康のニーズに耳を傾けることにより、そのような病気になることを防ぐことができる。同様に、注意しないと倫理的危機になり得るような種類の倫理問題を予想することにより、そのような危機の発生を防ぐことができるのである。 2−4------------------------------------------------------  2ヵ所の[ ア ]には、同じ言葉が入るが、最も適当と思われるものはどれか。 (1) 基礎  (2) 臨床  (3) 補完 (4) 予防  (5) 社会 課題4  「公衆の安全、健康、及び福利を最優先すること」は、技術者倫理で最も大切なことである。さて、公衆は技術業の業務によって危険を受けうるが、技術者倫理における一つの考え方として、「公衆」は、[ イ ]である」というものがある。 2−5------------------------------------------------------  [ イ ]に入るものとして、最も適当と思われるものはどれか。 (1) 国家や社会を形成している一般の人々 (2) 背景などを異にする多数の祖織されていない人々 (3) 専門職としての技術業についていない人々 (4) よく知らされた上での同意を与えることができない人々 (5) 広い地域に散在しながらメディアを通じて世論を形成する人々 課題5  技術者倫理教育の目標は、アメリカのヘースティングス・センターが提示した高等教育倫理プログラムの5つの目標を基礎にしている。それは次のような目標である。  1)モラル[ ア ]を刺激すること。  2)倫理上の問題点を認識すること。  3)解析的な技量を仲ばすこと。  4)責任感を引き出すこと。  5)不一致と[ イ ]を許容すること。 2−6------------------------------------------------------  [ ア ]と[ イ ]に入る言葉として、正しい組合せを選べ。 (1)  (ア)想像力  (イ)曖昧さ (2)  (ア)思考力  (イ)厳密さ (3)  (ア)説得力  (イ)不和 (4)  (ア)持続力  (イ)不器用さ (5)  (ア)影響力  (イ)無駄 課題6 企業の社会的責任が問われる時代になった。企業が外部に提供すべき情報として環境情報があり、そのために環境報告書が約1,000社によって作られている。しかし、近年、企業によっては、サステイナビリティー報告書に切り替えるところが出てきた。サステイナビリティ― (Sustainability)については、次の記述がある。 ア)1992年にヨハネスブルグで行われた地球サミットの正式名はWorld Summit on Sustainable Developmentである。 イ)トリプルボトムライン論では、サステイナビリティーを実現するためには、環境的側面、政治的側面、社会的側面を考慮すべきだとされている。 ウ)サステイナビリティーの定義には、様々なものがあるが、ブルントラント委員会による定義が有名である。 エ)持続可能性にとって最大の問題だと国際社会か認識していることがアフリカなどにおける貧困の克服である。 2−7------------------------------------------------------  これらの記述の正誤を判定して、その正しい組合せを選べ。 (1)  (ア)○ (イ)○ (ウ)○ (エ)× (2)  (ア)× (イ)○ (ウ)○ (エ)○ (3)  (ア)○ (イ)× (ウ)× (エ)○ (4)  (ア)○ (イ)○ (ウ)× (エ)× (5)  (ア)× (イ)× (ウ)○ (エ)○ 課題7 原子力関係の倫理違反が様々な観点から指摘されているが、実際に被害者を出したのは, 1999年9月に東海村で起きたJCOの臨界事故である。この事故については、次の記述がある。 ア)この事故で2名の死者が出たが、それは、日本における原子力産業における急性障害による初の死者であった。 イ)正式な操作手順書に従った操作が行われず、作業効率を高めるため、違反した操作手順で行われたことが、事故の直接的原因であった。 ウ)臨界事故とは、臨界量を超す放射能が外部に漏洩する事故をいう。 エ)この事故によって近隣住民への健康影響が心配されたのは、強いアルファ線が放出されたためである。 2−8------------------------------------------------------  これらの記述の正誤を判定して、その正しい組合せを選べ。 (1)  (ア)○ (イ)○ (ウ)○ (エ)× (2)  (ア)× (イ)○ (ウ)○ (エ)○ (3)  (ア)○ (イ)× (ウ)× (エ)○ (4)  (ア)○ (イ)○ (ウ)× (エ)× (5)  (ア)× (イ)○ (ウ)○ (エ)× 課題8 環境対策に関して、予防原則(precautionary principle),予防的措置(precautionary approach)などといった言葉がある。これらは、科学的に不確実性がある場合であっても、なんらかの環境面での対策をとるべきであるといった主張に使用される。これらの概念に対しては、次の記述がある。 ア)環境に関わることには、かなり不確実性が多い。ヒトの健康リスク・ゼロを実現するために、これらの概念は存在している。 イ)発ガンリスクに対する人工的な化学物質の寄与は極めて大きいために、できるだけ天然物質を使用すべきであり、そのような社会を実現するために、これらの概念はある。 ウ)地球温暖化は科学的に確実な事象であるから、気候変動防止条約は、これらの概念とは異なる。 エ)熱帯林の消滅を防止するために、紙の使用量を削減する行為は、これらの概念に基づく。 2−9------------------------------------------------------  これらの記述の正誤を判定し、その正しい組合せを選べ。 (1)  (ア)× (イ)× (ウ)× (エ)× (2)  (ア)× (イ)× (ウ)× (エ)○ (3)  (ア)○ (イ)× (ウ)× (エ)○ (4)  (ア)○ (イ)○ (ウ)× (エ)× (5)  (ア)× (イ)○ (ウ)○ (エ)× 課題9  阪神淡路大震災の経験から、既存の桁後において地震時の振動により、後桁が橋脚から落下する可能性があることが判明した。このため、落後防止装置を設置する工事が全国規模で進められた。この防止装置は橋脚本体に穴を開け、アンカーボルトを用いて本体と装置を接合する必要がある。ところが、このボルトの長さが不足したまま工事を完了している事例があるとの通報があった。発注した県の技術者が調査した結果、81の後のうち33の橋から、長さが不足しているポルトが見つかった。 2−10----------------------------------------------------  この防止装置の設置工事に関する次の記述を読み、正しい記述の組合せを選べ。 ア)施工業者は、契約で求められた工事を正しく行っておらず、いわゆる手抜き工事の典型で、施工業者の責任は重大である。 イ)施工業者の側からは、発注者側に協議を申し入れるということはなかった。これは、これまでの慣習にもよるが、基本的にはお互いの間で技術的な問題について話し合いをする雰囲気も機会もないという状況が背景にあるものと思われる。この点の改善も必要である。 ウ)発注者側の技術者は、このような事態をまったく予測していなかったと語っている。しかし、橋脚内の鉄筋の密な配置状況を考えれば、新たに穴をあける場合にかなりの頻度で鉄筋に遭遇し、アンカーボルト用の穴の作成とボルトの挿入に支障を生じることは技術力と想像力を持った技術者であれば、ある程度予測のつく事態であると思われる。このような点に関しては発注者側の積極的な努力が求められる。 (1)  (ア)○  (イ)○  (ウ)○ (2)  (ア)○  (イ)○  (ウ)× (3)  (ア)○  (イ)×  (ウ)○ (4)  (ア)×  (イ)○  (ウ)○ (5)  (ア)○  (イ)×  (ウ)× 課題10  日本技術士会を始めとする各技術者学協会では、技術者の継続教育のプログラムを数多く提供している。 2−11---------------------------------------------------- この継続教育プログラムに対する技術者の態度について、次の記述を読み、正しい態度の組合せを選べ。 ア)継続教育は経験の乏しい若い技術者のためのものであるから、組織内の若手の技術者に限って積極的に参加を勧める。 イ)自分の属する組織ではオンザジョブトレイニングの体制が確立しているため、このようなプログラムに参加する必要は無い。 ウ)技術者である限り、常に技術力を磨く必要があり、組織内の技術者にあまねく参加の機会を与え、それぞれの経験に応じた能力の向上を図る。 エ)場合によっては自ら参加料金を負担し、休暇をとってでもプログラムに参加し技術力の向上を目指す。 (1)  ア と イ (2)  ア と ウ (3)  ア と エ (4)  イ と エ (5)  ウ と エ 課題11 次に述べる行動の中で、技術士としてふさわしい行動はどれか。ふさわしい行動を0、ふさわしくない行動をxとして、問題H−12(アイウ)及ぴ問題H−13(カキク)の各群について、最も適当と思われる組合せを選べ。 2−12---------------------------------------------------- ア)技術士Aは、Sケミカル社に勤務し、同社工場の排水処理責任者である。Aは、最新の測定方法によると、排水中の有害物質の含有量が、排水基準の許容限度を僅かだが超えていることに気がついた。しかし、超えている量は僅かであり、定められた公定の分析方法では、限度以下であった。また、工場は繁忙期でフル稼働していたので、工場長や関係者に報告しなかった。 イ)技術士Bは、M機械会社の資材購買責任者である。新しい製品に使用する材料の納入業者の選定作業に追われていた。10社あまりの候補の中から、B及び担当技術者の評価によって、最も技術力がすぐれており、価格も適正であったN工業を選定した。購買契約の場で初めて、Bは彼の大学時代の後輩がN工業の取締役であることを知った。契約を締結した後、その後輩の取締役から連絡があり、かに料理で有名な料亭で夕食を共にすることになった。大学卒業以来の再会であり、夕食は楽しい席となった。料亭での支払いは高額なものになったが、後輩がこれからもお世話になることですから払わせてほしいと頼むので、すべて後輩に支払いをまかせた。 ウ)技術士Cは、これまで勤めていた大手企業を最近退職し、新しく設計コンサルティング会社を設立した。Cは、その他の会社からも3名の有能な若手技術士を引き抜き、本格的に新会社の営業活動を始めようとしていた。そこで、新会社のパンフレットに、新会社のクライアントとプロジェクト実績として、自分自身や引き抜いた技術士が以前勤務していた会社のもつクライアントや、そこで自分たちが担当したプロジェクト実績をそのまま列記した。 (1)  (ア)○  (イ)○  (ウ)○ (2)  (ア)○  (イ)×  (ウ)× (3)  (ア)×  (イ)×  (ウ)○ (4)  (ア)×  (イ)○  (ウ)○ (5)  (ア)×  (イ)×  (ウ)× 2−13---------------------------------------------------- カ)技術士Dは、Y大学から工学博士号を得るために、これまでの研究の成果をとりまとめ博士論文を執筆していた。Dの指導教授はU教授であった。Y大学の内規では、論文博士として博士論文が認められるには、最低2編の研究論文が、査読のある専門学術雑誌に掲載される必要があった。しかし、Dはこれまで1編しか掲載された論文がなかった。そこで、U教授は、教授が大学院生を指導して執筆している論文の共著者にDを加えようと提案してくれた。この論文は、Dの博士論文と共通の研究テーマを扱ってはいるが、D自身はその研究に実質的に関与していなかった。ありがたい申し出ではあったが、Dは教授の提案を丁重に辞退することにした。 キ)技術士Eは、大手自動車会社の品質管理部に勤務する若手エンジニアである。新型車の発売に先立ち最終的なチェックをしているとき、シフトギアとクルーズコントロールスイッチを非常に稀な順序で動かすと、クルーズコントロールが誤作動してエンジンの回転数が制御できないことに気づいたが、確信はもてなかった。直属の課長に相談したところ、「そんなやり方で車を運転する人間はいない。それに安全性に問題があると言っても確信はもてないのだろう。もう既に発売日を確定して広報は大々的なキャンペーンに入っているんだから、そんな些細なことは無視しろ。」と一蹴され、Eは大いに不満であった。そこで、誰にも相談することなく、すぐさま、インターネットを使ってこの情報を匿名で外部に通報した。 ク)情報工学部門の技術士Fは、ソフトウエア関連のコンサルティング会社の共同経営者である。しかし、Fは重い病気のために約1年間入院していた。この間、ほとんど新聞や情報技術雑誌を読むこともできなかったし、ましてや、専門技術書を読み、インターネットで情報を検索して調査をすることなどはできなかった。ようやく病気も完治し、仕事に戻ろうとしていた矢先、共同経営者のGから、「Fさん、半年ほど前に発表された新しいOSをご存知ですよね。流通業のP社からこの新しいOSを使用するシステム構築のコンサルティングの依頼が来ていますので、担当していただけませんか。他のエンジニアは、いま忙しいので、Fさんには、お一人で仕事をやっていただかなければなりませんが。」という相談があった。Fは、「もちろんです。よろこんでお引き受けしますよ。」と答え、ただちにP社との技術打ち合わせに入った。 (1)  (カ)○  (キ)○  (ク)○ (2)  (カ)○  (キ)○  (ク)× (3)  (カ)○  (キ)×  (ク)○ (4)  (カ)○  (キ)×  (ク)× (5)  (カ)×  (キ)×  (ク)○ 課題12 学術情報として認められるためには、十分な品質管理を受けたものであることが条件となる。学会はこのために「ピア、レヴュ― (peer review)」というシステムを設けている。これは投稿された論文に対して、その論文としての品質を出版前に同分野の研究者が評価する手続きを指す。これを「査読」という。  査読による評価の狙いは、次のようにいわれている。  1)新しい事実、[ ア ]、理念が示されているか。  2)他の研究者による先行研究を公平に評価しているか。  3)示された[ イ ]で示された結果を得ることができるか。  4)他の[ ウ ]が導かれることはないか。  5)著者の示した[ ウ ]は、本質的で、強固で、正当か。  査読のあり方は専門分野により異なる。日本の場合について示せば、論文ごとに査読者を設けて査読している学会は、理学、工学、農学においては70%台に達しているが、一方、法学において20%、文学において29%、経済学においては38%にとどまっている。医学は中間の50%である(日本学術会議、1994)。 2−14----------------------------------------------------  査読による評価の狙いについて、4ヵ所の[  ]に入る言葉の組合せとして、最も適当と思われるのはどれか。 (1)  (ア)結論  (イ)知見  (ウ)方法 (2)  (ア)結論  (イ)方法  (ウ)知見 (3)  (ア)方法  (イ)知見  (ウ)結論 (4)  (ア)知見  (イ)方法  (ウ)結論 (5)  (ア)方法  (イ)結論  (ウ)知見 課題13  特許法は、その35条3項で、従業者は、「契約」、「勤務規則その他の定」により、職務発明について使用者に特許を受ける権利を承継させたときは、「相当の対価」の支払を受ける「権利」を有する、と定めている。  使用者は、職務発明に係る承継に関しては、「勤務規則その他の定」により一方的に定めることができるものの、F相当の対価」の額についてまでこれにより一方的に定めることはできないものと解するのが相当である。  上記条項(特許法35条3項を指す)は、職務発明に係る承継を生じさせるものとして、従業者の「[ ア ]を必須の要素とする「契約」と並んで、従業者の[ ア ]を要素としない「勤務規則その他の定」を明確に定めているから、使用者が従業者の[ ア ]いかんにかかわらず、「勤務規則その他の定」により、一方的に承継を生じさせることは、文言上、明らかである。  しかし、同条項は、従業者は、その[ ア ]によるにせよ、その[ ア ]に反してであるにせよ、職務発明に係る承継があったときには、「相当の対価」の支払を受ける「権利」を有することを明瞭に定めている。このように、従業者に「権利」として支払を受けることの認められた「相当の対価」の具体的な額を、その権利に関する義務者である使用者が一方的に定め得るとすれば、それは、法律上むしろ異様な状態というべきである。 2−15----------------------------------------------------  この文章はある企業における職務発明をめぐる争いに関する判例の一部を引用したものである。5ヵ所の[ ア ]には同じ言葉が入るが、最も適当と思われるのはどれか。 (1) 指図  (2) 思惑  (3) 承諾  (4) 了解  (5) 意思 ////////////////////////////////////////////////////////////////////// 技術士第一次試験 平成14年度 適性科目 課題1 技術士の義務に関する規範として、技術士法第4章の規定がある。次に掲げる技術士法第4章を読んで,問題1及び2に答えよ。 技術士法第4章 技術士等の義務(技術士等とは,技術士及び技術士補を指す。) (信用失墜行為の禁止) 第44条 技術士又は技術士補は,技術士若しくは技術士補の信用を傷つけ,又は技術士及び技術士補全体の不名誉となるような行為をしてはならない。 (技術士等の秘密保持義務) 第45条 技術士又は技術士補は正正当の理由がなく,その業務に関して知り得た秘密を漏らし,又は盗用してはならない。技術士又は技術士補でなくなった後においても,同様とする。 (技術士等の公益確保の責務) 第45条の2 技術士又は技術士補は,その業務を行うに当たっては,公共の安全,環境の保全その他の公益を害することのないよう努めなけれぱならない。 (技術士の名称表示の場合の義務) 第46条 技術士は,その業務に関して技術士の名称を表示するときは,その登録を受けた技術部門を明示してするものとし,登録を受けていない技術部門を表示してはならない。 (技術士補の業務の制限等) 第47条 技術士補は,第2条第1項に規定する業務について技術士を補助する場合を除くほか,技術士補の名称を表示して当該業務を行ってはならない。 2 前条の規定は,技術士補がその補助する技術士の業務に関してする技術士補の名称の表示について準用する。 (技術士の資質向上の責務) 第47条の2 技術士は,常に,その業務に関して有する知識及び技能の水準を向上させ,その他その資質の向上を図るよう努めなければならない。 1-----------------------------------------------------------  技術士には名称表示の場合の義務が課されている。名称表示の説明として、適切でないのはどれか。 (1)  技術士は、名称を表示できる自分の有能な領域においてのみ業務を提供するという義務がある。 (2)  名称表示ができる技術部門については、有能であることが証明されているので、継続的な能力開発に努めることは求められていない。 (3) 技術は変化し進歩するので、名称を表示できる自分の有能な領域は、能力を開発し拡張することによって、変える余地がある。 (4) 技術士が提供できる業務の範囲を、提供する相手側によく理解させるために名称表示が必要である。 (5)  自分の有能な領域の能力を維持するためにも、継続的な能力開発が必要である。 2-----------------------------------------------------------  技術士等の秘密保持義務の説明として、適切でないのはどれか。 (1) 技術士等が秘密保持義務を負うのは、技術士等又は技術士等が所属する組織が業務を提供する相手である個人又は組織に対してである。 (2) 技術士等が所属する組織との間で秘密保持契約があっても、技術士等が担当する業務について、その業務を提供する相手との間で、別に秘密保持契約を結ぶことがある。 (3) 技術士等が業務を提供している相手の組織において、公衆の安全、健康及び福利に反する行為が行われていることを発見したときは、その事実を確認し、相手の組織をその事実を伝えることがある。 (4)  相手の組織が、公衆の安全、健康及び福利に反する行為を行っている事実を認めようとしない場合、又は、認めても是正しない場合には、技術士等は所属する自分の組織にその事実を伝え、相手の組織との間において適切な処置をとるように求める。 (5) 技術士等は、所属する組織の業務について秘密保持義務があるが、退職してその組織を離れた後は、その秘密保持義務に制約されることはない。 課題2 次の文章はある技術者協会の倫理規定の抜粋である。これを読んで問題3に答えよ。 倫理規定 「自己の専門的能力の向上を図り、学理・工法の研究に励み、進んでその結果を学会等に報告し、技術の発展に貢献する。」 「自己の人格、知識、及び経験を活用して人材の育成に努め、それらの人々の専門的能力を向上させるための支援を行う。」 3-----------------------------------------------------------  技術士Aは数人の技術者を部下にもつ技術部門のリーダーとして技術業務を指揮している。上記の倫理規定に従うと、技術士Aの態度としてふさわしいものを組み合わせたものはどれか。ア)からウ)までの態度を読み、その組合せの正しいものを(1)から(5)の中から選べ。 ア)日頃の業務の中で、部下がマニュアルのみに頼って自分でよく考えない場合にはそれを指摘する。さらに時間がかかっても構わないから、技術的な能力が向上するように部下を鍛えていく。 イ)技術者の成長は実務場面で仕事をすることにより期待できるため、学会発表はなるべく避ける。 ウ)直接的な業務以外にも、部下の技術的な能力の向上を図るため、部内で技術的な会話が促進されるように気を配る。   ア イ ウ (1) ○ ○ ○ (2) ○ ○ × (3) ○ × ○ (4) × ○ ○ (5) × × × 課題3 次の文章はある技術者協会の倫理規定の抜粋である。これを読んで問題4に答えよ。 倫理規定 「施設構造物の機能,形態,及び構造特性を理解し,その計画,設計,建設,維持,あるいは廃棄に当たって,先端技術のみならず伝統技術の活用を図り,生態系の維持及び美の構成,並びに歴史的遺産の保存に留意する。」 4-----------------------------------------------------------  技術士Bは海外のコンサルタント業務として、ある途上国の山岳地帯の治水用構造物の設計を請け負った。この山岳地帯では古くから、伝統的な植生を利用した制水工法があるが、人口の増加に伴ってこれまで人がすまなかった地域に居住するようになったために、水害の被害が増加してきた。上記の倫理規定に従うと、技術士Bの態度としてふさわしいものを組み合わせたものはどれか。ア)からウ)までの態度を読み、その組合せの正しいものを(1)から(5)の中から選べ。 ア)現地に伝わる伝統的な工法の意味を考え、先端技術との調和ある併用を考える。 イ)地域の人口増加に伴う土地利用の変化、地域の社会構造の変化などの社会的な変化を検討項目に加える。 ウ)日本で実績のある先端技術を駆使して堤防の設計を行う。   ア イ ウ (1) ○ ○ ○ (2) ○ ○ × (3) ○ × ○ (4) × ○ ○ (5) × × × 課題4 次の文章はある技術者協会の倫理規定の抜粋である。これを読んで問題5に答えよ。 倫理規定 「施設構造物の機能,形態,及び構造特性を理解し,その計画,設計,建設,維持,あるいは廃棄に当たって,先端技術のみならず伝統技術の活用を図り,生態系の維持及び美の構成,並びに歴史的遺産の保存に留意する。」 「技術的業務に関して雇用者、若しくは依頼者の誠実な代理人、あるいは受託者として行動する。」 5-----------------------------------------------------------  技術士Cは道路建設工事の施工現場の所長を務めている。ある日、下請企業の責任者から遺跡らしいものを発見したとの報告があった。自ら図面で調べてみた結果、どうやらこの場所には大正時代の屋敷跡があるようである。上記の倫理規定に従うと、技術士Cの態度としてふさわしいものを組み合わせたものはどれか。ア)からウ)までの態度を読み、その組合せの正しいものを(1)から(5)の中から選べ。 ア)大正時代のものなど新しいものなので、遺跡として検討に値しない。工期も迫っているのでそのまま工事を進める。 イ)大正時代の遺跡とは断定できないので作業員に任せずに自分で調べに行き、状況を確認する。 ウ)確認作業に当たっては、必要に応じて工事の依頼者である地方公共団体の担当者へも報告する。    ア イ ウ (1) ○ ○ ○ (2) ○ ○ × (3) ○ × ○ (4) × ○ ○ (5) × × × 課題5 産業界と大学との連携、いわゆる産学連携に付随して、教授などの大学人が対処すべき問題として、利益相反、責務相反といった問題がある。法律的に決めることのできる問題ではなく、どちらかといえば、グレーゾーンに属する問題にどう対処すべきかという課題であって、技術者倫理と似た性格をもっている。  利益相反とは、産学連携に関して、個人の利益と大学の利益のどちらを優先するかにかかわる問題であり、責務相反とは、大学のために費やす時間と労力と、産学連携に費やす時間と労力のバランスをどのように取るかという問題であると言えよう。 6-----------------------------------------------------------  英文では、利益相反をA of B、責務相反をA of Cと呼ぶ。A,B,Cの組合せとして正しいものは、次のどれか。   A B C (1) Contradiction Profit Duties (2) Contradiction Benefit Procedure (3) Contract Interest Duties (4) Conflict Profit Procedure (5) Conflict Interest Commitment 課題6 次に述べる行動の中で、技術士としてふさわしい行動はどれか。ふさわしい行動を○とし、ふさわしくない行動を×として、問題7(ABC)、問題8(DEF)の各群について、○×の最も適切な組合せを選べ。 7----------------------------------------------------------- A)ある建設会社の研究所に勤める技術士D(建設部門)は、新しく同社が開発した建材の強度試験を行っていた。技術士Dの部下が実際には試験を行ったが、報告されたデータを見る限り、建材の強度にはまったく問題がなかったので、技術士Dはその旨を報告書に仕上げ、その建材は市場に出されることになった。発売の直前になって、技術士Dは部下がデータの3%程度を捏造していたことを知った。しかし、たかだか3%程度なので、黙認することにした。 B)技術士E(電気・電子部門)の実家は、電子部品を製造する町工場であったが、不況のため経営不振に陥っていた。大手の家電製造会社で製品開発を担当する技術士Eは、新製品に必要な電子部品の選定を任されていた。数十社の製品の性能と価格などを綿密に調べた結果、技術士Eは明らかに自分の実家が製造する製品が技術的にも価格的にも優れていると確信し、これを採用することにした。ただ、上司には、自分の実家の製品であることは、私的なことであると考えたので報告しなかった。 C)技術士F(機械部門)は、ある会社のコンサルタントをしている。この会社はもともと機械関係の製造会社であるが、情報技術関連の新会社を設立するために、資金を集めることになった。そこで、同社の社長は、「Fさん、申し訳ないけど、新しい会社のコンサルタントもやってくれないかな。会社設立の時点から、技術コンサルタントを雇っていることを伝えれば、出資者も安心するだろうし、よろしくお願いしますよ。技術士Fとだけ書いて、Fさんの専門分野が機械であることは伏せておきますから。」と技術士Fに依頼した。社長とは長い付き合いなので、技術士Fは承諾した。   A B C (1) ○ × ○ (2) × × ○ (3) × ○ ○ (4) × ○ × (5) × × × 8----------------------------------------------------------- D)技術士G(電気・電子部門)は、Kテクノロジー社が新製品を開発するに当たり、コンサルタントを務めることに同意した。製品の基本的な設計を含めた報告書を技術士GがKテクノロジー社に提出したところ、技術士Gのアイデアは承認され、製品化に向けて開発は急ピッチで進んだ。技術士GとKテクノロジーとの間で交わされた契約書には、製品の特許に関しては明確な規定はなかった。製品の開発段階で技術士Gは、自分が出したアイデアを基にしてKテクノロジー社が開発した新しい技術を知ることができた。製品が市場に出た段階で、技術士GとKテクノロジー社の契約は修了した。その後、技術士GはKテクノロジー社のライバルであるMアドバンスト社とコンサルティング契約を結び、同じような製品の開発に携わることになった。そこで、技術士Gはコンサルタントとしては当然のことと考えて、自らのアイデアだけでなく、Kテクノロジー社の技術の内容についても、Mアドバンスト社に報告した。 E)技術士 H(建設部門)は、大手建設会社であるN建設と、厳密な守秘義務条項を含むコンサルタント契約を結んでいる。新しい開発プロジェクトについて業務を行うなかで、技術士Hはこのプロジェクトが深刻な環境破壊と地域住民への健康被害を引き起こす可能性があることを確信し、N建設に対して、計画の抜本的な見直しを提言した。しかし、N建設は、そのプロジェクトが国の予算で進められるものであり、計画の大幅な遅延は許されないとして、技術士Hの主張を退け、プロジェクトを当初の予定通りに推進した。さらに、技術士Hをプロジェクトからはずし別の仕事を与える際には、技術士Hに契約書の守秘義務条項を示して、技術士Hの懸念を社外に漏らさないよう強く要求した。その後も、技術士Hは可能な限りの手段を使ってN建設の方針を変えさせようとしたが、ついに、技術士Hは契約書にある守秘義務条項を破って、関係官庁にN建設のプロジェクトの内容と自らの懸念を報告した。 F)技術士 I(生物工学部門)は、大手の薬品会社に勤めている。同社の画期的な新薬開発プロジェクトに発足当時から関与している技術士Iは、遠縁に当たる人物から会食の誘いを受けた。この人物は、技術士Iの会社の大株主であると同時に、技術士Iは知らなかったが、同社の競合相手を含む複数の薬品会社の株を所有していた。プロジェクトは最終段階に達しており、認可を受けるための治験を完了し、データは新薬の優れた効果を示して、安全性にもまったく問題なかった。技術士Iは上司の指示で、近日中に行う予定の新聞発表に資料を整理し報告書を作成している最中であった。会食の席で、技術士Iは、大株主である人物に報告書の内容と新聞発表の日時を尋ねられたので、すべてを正直に話した。   D E F (1) ○ ○ ○ (2) × ○ ○ (3) × × ○ (4) × ○ × (5) ○ × × 課題7 35年ほど前に、次のような事故があったと仮定する。X社は、食用油の加熱脱臭装置の熱媒体としてPCB(ポリ塩化ビフェニル)を使用していたが、工事のミスによって、食用油に大量のPCBが混入してしまった。PCBが混入した油は別途保存していたが、技術者Yは、PCBは蒸発する性質があるため、再度、加熱脱臭することによってPCBを取り除くことができると考えた。そして、PCBを含む油を処理し精製した食用油は、商品化することができた。  それまでも、加熱脱臭装置によっって除去された臭い成分は、通常ダーク油と呼ばれ、鶏の飼料の原料に使用されていた。  ところが、鶏の大量死という事故がおきた、との報告が自治体にあった。原因はこのPCBが混入した油から得たダーク油を使用した飼料であることが、すぐに判明した。  2,3ヵ月後から、この食用油によると思われる患者がでた。西日本一帯で患者の届出数は14,000名に及んだ。死者はでなかったものの、健康被害は激甚であった。  PCBが単に混入したのであれば、PCBの職業的中毒の場合と比較して、これほど治りにくい症状がでるとは考えにくかった。真の原因はなかなか分からなかったが、15年以上経ってから、この油に含まれていたPCDF(ポリ塩化ジベンゾフラン)という強い毒性をもつ物質が原因であることが分かった。  当時、PCBが混じった食用油を脱臭装置で加熱するとPCDFが生成することも、また、PCDFが非常に強い毒性をもつ物質であることも、さらに、PCBにはコプラナーPCBという有毒成分が微量含まれていることは、まったく知られていなかった。  このような状況における技術者倫理について議論をしたところ、まったく未知のことが多かったとはいえ、食用油を製造したX社は責任を負うべきであるとの見解は共通であった。しかし、それに加え、以下のような3つの意見がでた。 A)PCBを製造した企業も、PCBを食品工業に販売するには慎重であるべきだった。 B)PCBのような有毒物の製造を許可した国も、責任を負うべきである。 C)鶏の被害から食用油の毒性を推測できなかった自治体も責任を免れない。 9-----------------------------------------------------------  社会的に求められている意見を○、必ずしも認められていない意見を×とすれば、もっとも妥当と思われる組合せは以下のどれか。   A B C (1) ○ × × (2) × ○ × (3) ○ × ○ (4) × ○ ○ (5) × × × 課題8 次の文章は公務員汚職事件の判決文の一部である。この文章を読んで、問題10及び11に答えよ。  証券行政は、国民経済の適切な運営と投資家の保護を目的として行われるべきものであり、また、金融行政は、信用を維持し、預貯金等の保護を確保するとともに金融の円滑化を図り、国民経済の健全な発展に資することを目的として行われるべきものである。  それらの目的を達成するためには、大蔵省証券局や銀行員の、証券会社や銀行に対する指導・監督についても、それがただ適正でありさえすればよいというものではない。それが【ア】であり、かつ、その【ア】に対する国民の信頼が確保されることも強く要請されているといわなければならない。  しかしながら、被告人は、証券会社や銀行の大蔵省担当者が、監督官庁である証券局や銀行局におけるやり手のいわゆるキャリア官僚である被告人に対し、種々の便宜な又はメリットのある取り計らいをしてもらうことを期待して接待等を行ってくることを承知の上で、その職務に関し、本件の一連の接待等を受けたものである。のみならず、被告人は、大手証券4社及び○○銀行に対し、種々便宜な取り計らいを行ったものである。  したがって、本件は、大蔵省による証券行政及び金融行政の【ア】さに対する国民の信頼を著しく失墜させたばかりでなく、その【ア】さそれ自体をも損なったというべきものであり、この面から、被告人は強く非難されなければならない。(「大蔵省」は、現在の財務省をいう。「キャリア」は、国家公務員試験1種合格者である者の通称) 10-----------------------------------------------------------  アの4ヵ所の【  】には同じ語が入るが、次の(1)〜(5)のうち最も適当と思われるものはどれか。 (1) 厳格 (2) 公正 (3) 適正 (4) 誠実 (5) 明白 11-----------------------------------------------------------  この文章に述べられていることに関して、以下のような考え方の中で、適切でないものを選べ。 (1) 行政には国民の信頼を確保する義務がある。 (2) 行政が行う指導・監督は国民の信頼を失墜させてはならない。 (3) 国民経済の適切な運営のためには国民の信頼が重要である。 (4) 国民の信頼の確保はいわゆるキャリア官僚だけが要請されている。 (5) 国民の信頼が必要なのは証券行政及び金融行政だけではない。 課題9 次の事例を読んで,問題12に答えよ。  1994年から95年にかけて、A社のコンピュータチップ(マイクロプロセッサ)の最新バージョンに欠陥があることが発見され、新聞などで広く報道された。最初A社は、この情報を隠蔽しようとし、問題があること自体を否認した。次に、問題は確かにあるが、それは複雑なアプリケーションにおいてのみ重大になるのであって、大多数の人たちはエラーが起こったということに気づきすらしないだろうと主張した。マスコミは、A社が実は早くから問題に気づいていて、すでにそれを直そうとしていたと報じた。このことが世間に広く知られた結果、A社のチップを積んだコンピュータを購入した多くの人たちが、欠陥のあるチップの交換を求めだした。世間の抗議の声が大きなものになるまで、A社はチップの交換を拒否した。しかし、ついにA社は消費者の求めに応じて欠陥のあるチップを交換することに同意した。 12-----------------------------------------------------------  この辞令のもっとも適切と思われる対処は次のどれか。 (1)  情報の隠蔽を基本方針とし、隠蔽しきれなくなった場合にのみチップを交換する。 (2)  個別にクレームに対応し、クレームをつけた顧客のみにチップの交換をする。 (3)  チップの欠陥を公表するが、救済は一切しない。 (4)  欠陥を公表(いわゆるリコール)し、顧客から要求されたすべての欠陥のあるチップを交換する。 (5)  チップを載せたコンピュータに警告のラベルを貼る。それには、ある種のアプリケーションにはこのチップは使われるべきではないと書かれている。チップは交換しない。 課題10 次の文章を読んで,問題13及び14に答えよ。  技術者は、地球を思いやり環境を守るために重要なことができる特別な立場にある。技術者が環境倫理を理解し尊重することは非常に大切である。民間の依頼者も政府の依頼者も、何かやろうとすると、技術者のノウハウを利用しなければならない。したがって、技術者は最も広い意味での【ア】の役割として、依頼者が考えつかないような選択肢、考え方、あるいは【イ】を提供する責任がある。そのとき専門職技術者は、倫理を、その意思決定に組み込むのである。増大する人口、加速する科学技術の発展、増加する自然環境への負担とともに、環境倫理は、社会において技術者が果たす役割の中で、かつてないほど大きな部分を占めるであろう。 13-----------------------------------------------------------  【ア】に入れる言葉として、最も適当と思われるものは次のどれか。 (1) 生きもの (2) 人間 (3) 社会人 (4) 専門職 (5) 個人   14-----------------------------------------------------------  【イ】に入れる言葉として、最も適当と思われるものは次のどれか。 (1) 法律 (2) 学説 (3) 価値観 (4) 芸術 (5) 経済システム 課題11 ときに技術者は、自分が了解していることを批判的に検討する必要がある。次の文章を読んで,問題15に答えよ。  春の学会が開催され懇親の夕食会で、桜田一郎は、野原桃介と谷川薫子の間に座っている。一郎と薫子は、さまざまな関心事についていろいろ議論する。そのなかには、2人に共通の技術業(engineering)に関係するものがある。夕食の終わりのとき、一郎は桃介に向かって、ほほえみながら言った、「今夜は君ともっと話せなかったのは残念だった。しかし君よりも彼女のほうが美しいからね」。  薫子のような典型的な女性の技術者は、たいてい男性の技術者といっしょに働いている。彼女は、女性は男性のようには技術業には適していないという、ありきたりの見解があることは知っている。大学では、そういう態度をあからさまに示されたことは、あまり多くなかった。工学部でのクラスメートの20パーセントぐらいが女性だったが、教授たちは理解があり、男の学生が彼女が間違った専門職業を選んだと感じさせることはなかった。 しかしながら、仕事につくと、がらりと変わった。彼女はその部で唯一の女性技術者である。いま仕事について1年になるのだが、彼女は自分の考えを他の人が真剣に受け止めるよう、戦わなければならない。それだから、この夕食のとき、一郎と”仕事の話”を楽しんだのだ。しかし一郎の桃介への一言で、たとえそれが無邪気だったとしても、彼女は呆然とした。彼女はその会話を、突然、非常に違った照明のもとで見るような気がした。ここで再び彼女は、技術者として真剣に受け止められていないと感じたのである。 15-----------------------------------------------------------  セクハラ(=セクシャルハラスメント)の要素がありそうな場面であるが、ここで適切な解決を見いだす考え方として、次の(1)から(5)の中で、最も適当と思われるものほどれか。 (1) これはもっぱら一郎1人の男性中心的な倫理問題である。 (2) 薫子は女性として尊重されたのだから不満をもつのは適当でない。 (3) 桃介は一郎の隣にいて話しかけられただけだから何の責任もない。 (4) 一郎、薫子、桃介の3人それぞれの立場でできることがある。 (5) この夕食会は社交的な催しだから、仕事の話をするのは不適切である。 ////////////////////////////////////////////////////////////////////// 技術士第一次試験 平成13年度 適性科目 課題1 技術士等の義務に関する規範として,法律には技術士法第4章の規定があり,日本技術士会には技術士倫理要綱がある。次に掲げる技術士法第4章を読んで,問題1と2に答えよ。 技術士法第4章技術士等の義務(注1) (信用失墜行為の禁止) 第44条 技術士又は技術士補は,技術士若しくは技術士補の信用を傷つけ,又は技術士及び技術士補全体の不名誉となるような行為をしてはならない。 (技術士等の秘密保持義務) 第45条 技術士又は技術士補は正正当の理由がなく,その業務に関して知り得た秘密を漏らし,又は盗用してはならない。技術士又は技術士補でなくなった後においても,同様とする。 (技術士等の公益確保の責務) 第45条の2 技術士又は技術士補は,その業務を行うに当たっては,公共の安全,環境の保全その他の公益を害することのないよう努めなけれぱならない。 (技術士の名称表示の場合の義務) 第46条 技術士は,その業務に関して技術士の名称を表示するときは,その登録を受けた技術部門を明示してするものとし,登録を受けていない技術部門を表示してはならない。 (技術士補の業務の制限等) 第47条 技術士補は,第2条第1項に規定する業務について技術士を補助する場合を除くほか,技術士補の名称を表示して当該業務を行ってはならない。 2 前条の規定は,技術士補がその補助する技術士の業務に関してする技術士補の名称の表示について準用する。 (技術士の資質向上の責務) 第47条の2 技術士は,常に,その業務に関して有する知識及び技能の水準を向上させ,その他その資質の向上を図るよう努めなければならない。 注1 : 技術士等とは,技術士及び技術士補を指す。 1-----------------------------------------------------------  技術士等の義務に関する説明として,適切でないものはどれか。 (1) 技術が社会に及ほす影響の大きさは,正の効果も負の効果も拡大する傾向にあるので,高等の専門的応用能力を備える技術士等には,専門職技術者としての責務が生ずる。 (2) 専門的職業といわれる会計士や弁護士などは,技術士とは別の分野の専門家であるが,同じように専門的職業人としての義務がある。 (3) 技術士等は,公衆の安全,健康及び福利を最優先とする技術士倫理要綱を遵守する限りにおいては,技術士法で定める義務から免れる。 (4) 技術士等の義務は,専門職技術者としての義務であり,国際的に共通するものである。 (5) 技術士等が,第4章に規定された義務を果たさなかった場合には,制裁を課されることがある。 2-----------------------------------------------------------  技術士は,「一般的な職業人」ではなく,科学技術に関する「専門的な職業人」であるという社会の認識がある。このような専門的職業人の特質の説明としてふさわしくないものはどれか。 (1) 技術士は,実務能力とともに,社会や公益に対する責任を企業等の活動の前提とする旨の高い職業倫理を備えることが必要である。 (2) 技術士は,適切な教育を受け,専門的な技術業務を遂行するのに十分な基礎的知識を備えている。 (3) 技術士は,自らの判断で業務を遂行する能力をもつ一方で,個人の技量が業務の成果に与える影響が大きい。 (4) 技術士は,特定の業務の実施について権限を与えられると,その権益を守ろうとして,他の技術者を排除しようとする傾向がある。 (5) 技術士は,自らの判断で業務を遂行する能力をもたなければならないが,その能力の範囲を明確に認識し,業務遂行上必要な場合には,他の専門職の助力を受けることがある。 課題2 次に述べる行動の中で,技術士としてふさわしい行動はどれか。ふさわしい行動を○とし,ふさわしくない行動を×として,問題3(ABC),問題4(DEF),問題5(GHI)の各群について,○と×の最も適切な組合せを選べ。 3----------------------------------------------------------- A)環境分野を専門とする技術士Aは,自分の出身地である地方都市X市が,新しい事業を開始するに当たり環境アセスメントのコンサルタントを必要としていることを,その市の市長を務める父親から知らされた。  技術士Aは,数ヶ月後に公示された一般入札に応募し,この環境アセスメント業務を受託した。X市の規則には,自治体関係者の親族が入札に参加することを禁止する条項はなかったので,技術士Aは,自分が市長の息子であることをあえて関係者に明らかにはしなかった。 B)ある企業に勤める技術士(建設部門)Bは,同社の上得意先であるY町の町役場を訪問した際,担当者から,町が所有する歩道橋の改築工事に伴う構造上の安全確認業務を,口頭で個人的に依頼された。相手は頻繁に会う得意先であるし,仕事も忙しかったので,技術士Bは十分に明確な契約は結ばなかった。業務は全く問題なく無事終了し,最初に申し合わせた報酬は,約束どおり期日までに,技術士Bの銀行口座に振り込まれた。 C)ある企業に勤める技術士(電気・電子部門)Cは,自分が設計段階から関わっている同杜の新製品を宣伝するための文書を作成するように上司から指示を受けた。そこで原案を作成し,上司に見せたところ,上司は「なんだか,地味だね。もっと派手に新しい機能を宣伝してよ。どうせ素人にはわからないんだから,世界で最も進んだ技術による新機能であるとか,他社製品より数倍優れているとか,という宣伝文句を入れて,派手な文章にしてよ。」とコメントした。技術士Cは,その製品が,「世界で最も進んだ技術」も,「他社製品より数倍優れた機能」も持っていないことをはっきりと認識していたので,悩んだ末,「技術士として,そのような誇大広告はできません。」と上司に伝えた。   A B C (1) ○ × ○ (2) × × ○ (3) × ○ ○ (4) × ○ × (5) ○ × × 4----------------------------------------------------------- D)情報技術関連の企業に勤める技術士(機械部門)Dが,配置転換で会社業務のシステム管理をコンピュータで行う業務を担当する部署に配属された。情報技術を専門に学んだ経験はないが,もともと大学時代からコンピュータに強い関心のあった技術士Dは,この配属を喜んだ。技術士Dは,すでにいくつかのプログラム言語を熟知していたし,ネットワーク関係にもかなり詳しかったので,ある得意先の業務管理システムのソフト開発を社内で担当することになった。得意先の担当者が打ち合わせに訪れたとき,たまたま名刺をきらしていたので,技術士Dは,「今回のソフト開発を担当させていただいている技術士のDです。」と自己紹介をした。 E)技術士(衛生工学部門)Eは,大学時代の友人とあるゴルフ場でばったりと再会した。中規模の産業廃棄物処理工場を経営するこの友人は,Eが技術士であることを知ると,是非技術コンサルタントとして,彼の会社の廃棄物処理業務の監査をしてもらいたいと依頼した。技術士Eは,この申し出に同意し,厳格な守秘義務条項を含むコンサルタント契約を,友人の会社と結んだ。数ヶ月後,技術士Eがコンサルタントになる前の処理が原因で,この会社が法律で厳しく規制されている重金属による土壌汚染を引き起こしていることを,技術士Eは業務の中で発見した。技術士Eは友人にこの件を公表して,汚染処理を速やかに行うことを助言したが,友人は資金難を理由にこれを拒否した。また,技術士Eに契約書の守秘義務条項を示して,この事実を社外に漏らさないよう強く要求した。その後も,技術士Eは何度も友人を説得したが,友人はどうしても説得に応じようとしないので,ついに,技術士Eは契約書にある守秘義務条項を破って,関係官庁にこの事実を報告した。 F)技術士(経営工学)Fは,大手の建設関係の企業に勤めている。同社のある新規プロジェクトに発足当時から関与している技術士Fは,最近,そのプロジェクトの下請業者を選定する仕事を任せられた。下請業者の候補には,技術士Fが幼い頃世話になった叔父が経営する会社も含まれていた。ここ数年この叔父とはほとんど会っていなかったが,下請業者を最終的に選定するその週になって,叔父から電話が入った。叔父は「やあ,元気かい。お父さんやお母さんもお変わりないかな。ところで,赤坂に値ははるが,すこぶるうまい料理を出す料亭を見つけたんだが,今夜一緒に行かないか。久しぶりだからおごるよ。」と技術士Fを誘った。技術士Fは「時間は空いていますし,是非ご一緒させていただきたいのですが,仕事のこともありますので,来週以降にしませんか。」とこの申し出を断った。   D E F (1) ○ ○ ○ (2) × ○ ○ (3) × × ○ (4) × × × (5) ○ × × 5----------------------------------------------------------- G)ある造船会社に勤める技術士(船舶部門)Gが,ある会合で,大学時代の山岳部の先輩に再会した。同じく船舶部門の技術士であるこの先輩は,自分がプロジェクト・リーダーとなって最近完成させた新しい巨大海洋構造物の設計の特徴について,多くの聴衆の前で得意げに発表していた。先輩の発表によると,この構造物は近々この設計で着工されるそうである。技術士Gはその発表を聞きながら,設計の致命的な欠陥に気がついた。もし,このままの設計で建設されると,ある条件下では,構造物が崩壊し,多大な人的被害が発生する可能性が予見できた。しかし,それが本当に欠陥であるかどうか確信が持てなかったし,先輩の立場を考えると,その場で問題点を指摘することは,先輩の技術士としての名誉を傷つけることになると考えちゅうちょした。その後,問題点を再検討した結果,技術士Gは先輩の設計には明らかに欠陥があることを確信したが,他杜が担当する設計であるし,自らの業務も忙しくなったので,技術士Gはこの問題を放置した。 H)米国の製薬会社Pコープに勤務していた技術士(生物工学部門)Hは,ヘッドハンティングで日本の大手製薬会社Z製薬に引き抜かれた。技術士HがPコープ社で開発したある技術を,Pコープ社は日本でも特許申請をしていたが,まだ,正式には認められていなかった。技術士HがZ製薬で担当した仕事は,現在のところ,特許申請中の技術とは直接関係しなかったが,将来的には,この技術がZ製薬のある製造工程を飛躍的に改善し,コストを大幅に軽減する可能性があった。そこで,技術士Hの直属の上司が,技術士Hにこの技術の核心部について社内の関係者に口頭で説明するように求めた。技術士Hは,Pコープ社との雇用契約には守秘義務条項があったことと同社が現在日本で特許申請中であることなどを説明した上で,上司の要求を拒否した。 I)ある化学薬品会社の技術コンサルタントを20年以上勤めている技術士(化学部門)Iの自宅に,ある夜突然,この会社の社長から電話が入った。「Iさん,折り入って頼みがあるんだが。実は,先月フランスの得意先から我が社の主力商品の製造工程に関する質問が来たので,企業秘密に触れない部分についてだけ適当に答えておいたんだが,今日,その工程について来週までに詳しいデータが欲しいといってきた。ところが,担当者が休暇で海外に出ていて連絡が取れない。Iさん,申し訳ないが,適当にそれらしいデータを並べた報告書を作ってくれないかな。データはうちの若いエンジニアにどこかの論文から持ってこさせるから。もちろん,報酬はコンサルタント料とは別に払うよ。」と社長は懇願した。社長とは長年のつきあいであるし,この会社からのコンサルタント料は,技術士Iの収入の大きな部分を占めていたので,技術士Iはこの仕事を引き受け,社長の指示どおりに報告書を完成させた。   G H I (1) × × × (2) × × ○ (3) × ○ ○ (4) ○ × × (5) × ○ × 課題3 次の倫理綱領を読んで,問題6に答えよ。  ある仮想的団体の倫理綱領は,次の3項目からなっている。 1)自然を尊重し,現在及び将来の人々の安全と福利,健康に対する責任を最優先し,人類の持続的発展を目指して,自然及び地球環境の保全と活用を図る。 2)自己の属する組織にとらわれることなく,専門的知識,技術,経験を踏まえ,総合的見地から事業を遂行する。 3)公衆,依頼者及び自身に対して,公平,不偏な態度を保ち,誠実に業務を行う。 6-----------------------------------------------------------  この仮想的団体の倫理綱領は,いくつかの構成要素から成り立っているものと考えられる。ここでは,その構成要素を,仮に,以下の5項目に分類できるものとする。   (あ)守るべき対象   (い)同業者としての倫理   (う)葛藤対応(忠誠の対象が複数ある場合)   (え)自己啓発   (お)環境保全 この文章で表現されている構成要素を正しく記述しているのは,次の(1)〜(5)のうちどれか。 (1) 守るべき対象,同業者としての倫理,葛藤対応,自己啓発,環境保全。 (2) 守るべき対象,葛藤対応,自己啓発,環境保全。 (3) 守るべき対象,同業者としての倫理,自己啓発。 (4) 守るべき対象,葛藤対応,環境保全。 (5) 守るべき対象,同業者としての倫理。 課題4 次の文章はある技術者協会の倫理規定の抜粋である。この倫理規定を読んで問題7に答えよ。 倫理規定 「自己の専門的能力の向上を図り,学理工法の研究に励み,進んでその結果を学会等に公表し,技術の発展に貢献する。」 7-----------------------------------------------------------  技術士Jは技術士登録後,日々の業務において毎日忙しく仕事をしている。上記の倫理規定に従うと,多忙を極める技術士として正しい態度を組み合わせたものはどれか。ア)からエ)までの態度を読み,その組み合わせの正しいものを(1)から(5)の中から選べ。 ア)毎日の忙しい業務の合間にも,時間を割いて,自分の専門に関する学術誌を読み,また,時間を見つけて継続教育に参加し,自分の能力を高めようとする。 イ)技術士として,職業人として,すべての時間は与えられた業務に充てるべきであり,講習会に参加するなどの活動は仕事の妨げとなるので好ましくない。 ウ)業務上開発した新しい技術的な方法は人にまねされないようにできるだけ隠しておき,自分1人の力で,完成された方法に作り上げる。 エ)自分が開発した新しい方法について,特許などにも配慮した上で,学会で発表し,業界全体の技術力の向上に貢献するとともに,他者の批判を受けることによりこの方法を更に良いものに育ててゆく。 (1) アとウが正しい。 (2) アとエが正しい。 (3) イとウが正しい。 (4) イとエが正しい。 (5) すべて正しい。 課題5 次の文章はある技術者協会の倫理規定の抜粋である。この倫理規定を読んで問題8に答えよ。 倫理規定 「構造物の機能,形態及び構造特性を理解し,その計画,設計,建設,維持,あるいは廃棄に当たって,先端技術のみならず伝統技術の活用を図り,生態系の維持及び美の構成,並びに歴史的遺産の保存に留意する。」 「技術的業務に関して雇用者,もしくは依頼者の誠実な代理人,あるいは受託者として行動する。」 「自己の属する組織にとらわれることなく,専門的知識,技術,経験を踏まえ,総合的見地から土木事業を遂行する。」 8-----------------------------------------------------------  技術士Kは,建設コンサルタントとして,鉄道地下駅の大規模な地下構造物の計画に従事している。構造物の施工に当たり,周辺の地下水位が高いために,水位を低下させる工法を採用する必要がある。周辺にはこの地域に残された貴重な林があり,樹齢150年を越える大木が何本か存在している。技術士Kの態度として正しいものは次のうちどれか。 (1) 依頼主との契約条項に樹木への影響を検討するという具体的な項目がないため,コンサルタントには関係ない。 (2) 地下水位の低下の樹木への影響については必ずしも因果関係が特定されているわけではなく,時間ばかりかかって結論が出ないことが予測される。コンサルタントの立場として特にこの問題に関わる必要はない。 (3) 地下水位の低下が及ぶ地域について算定し,その樹木への影響の可能性について依頼主である鉄道会社に意見を具申した。これに対して依頼主は特にこの問題に関心を示さなかった。コンサルタントとしても,依頼主に対して意見を具申したことで責任は果たしており,特にその後はこの問題を考慮しなかった。 (4) 地下水位の低下が及ぶ地域について算定し,その樹木への影響の可能性について依頼主である鉄道会社に意見を具申した。これに対して依頼主は可能性が低いことを指摘して,特にこの問題に関わらず,放置しようとした。今後樹木の枯死などの問題が顕在化した場合,依頼主に多大な影響が及ぶことが明らかであり,また,貴重な林の重要性を考え合わせて,更に強く依頼主に意見を具申した。ただ,確実にそうなるとは断言できないため,この意見が受け入れられない場合には仕方がないのであきらめる。 (5) 地下水位の低下が及ぶ地域について算定し,その樹木への影響の可能性について依頼主である鉄道会社に意見を具申する。これに対して依頼主は可能性が低いことを指摘して,特にこの問題に関わらず,放置しようとした。今後樹木の枯死などの問題が顕在化した場合,依頼主に多大な影響が及ぶことが明らかであり,また,貴重な林の重要性を考え合わせて,更に強く依頼主に意見を具申する。この意見に対しても依頼主の検討許可を得られないため,コンサルタントとして独自に調査結果をまとめ,かなり高い確率で林の木々の枯死が起こると判断したため,地方行政機関にこの可能性について検討を求める意見書を送った。 課題6 次の文章を読んで,問題9及び10に答えよ。  株式会杜JCOの転換試験棟での作業は,核燃料サイクル開発機構の原子炉「常陽」の燃料用として,高濃度の硝酸ウラニル溶液の製造を目的としていた。1999年9月29日から3人で製造の作業を開始し,事故は翌30日に起きた。核燃料物質の使用許可による【ア】(いわゆる正規のマニュアル)では,溶解塔でウラン粉末に硝酸を加えて溶解し,その溶液(硝酸ウラニル溶液)をポンプで貯塔へ送ってウラン濃度を均一化する作業を,1バッチ(作業単位:2.4sU)ごとに管理して行うことになっていた。ところが,社内の【ア】(いわゆる裏マニュアル)では,溶解塔を使わずに,ステンレス製バケツ(10リットル)内で手作業で溶解するように変更され,さらに実際の作業では,その【ア】さえも無視して,使用目的の異なる大きな沈殿槽へ,溶液をステンレス製パケッ(5リットル)と漏斗を用いて手作業で注入していた。事故時までに,沈殿槽に7バッチ分が注入されたという。  30日午前10時35分頃,沈殿槽内の硝酸ウラニル溶液が臨界に達し,警報装置が吹鳴した。最初に瞬間的に大量の核分裂反応が発生し,その後,約20時間にわたって,緩やかな核分裂状態が継続した。10月1日午前2時30分頃から,沈殿槽外周のジャケットを流れる冷却水の抜き取り作業が開始され,午前6 時15分頃,臨界状態は停止した。その後,ホウ酸水を注入し,午前8時50分には臨界の終息が最終的に確認された。  事故の第一報がJCOから科学技術庁にもたらされたのは,30日午前11時19分であった。12時30分過ぎに科学技術庁から首相官邸へ連絡,午後2時には原子力安全委員会への正式報告がなされている。地元地方自治体では,午後3時に東海村による350m圏内の住民避難要請,午後10時30分に茨城県による10km圏内の屋内退避の勧告等,所要の対応が行われた。  作業をしていた3人のうち,1人が同年12月21日に,もう1人が翌年4月27日に死亡した。2人の死は,大量被ばくには【イ】も及ばないという現実を突きつけた。 9-----------------------------------------------------------  アの3箇所の【  】には,同じ言葉が入るが,次の(1)〜(5)のうち最も適当と思われるものはどれか。 (1) 就業規則 (2) 作業手順書 (3) 設備仕様書 (4) 原子力基本法 (5) 倫理規程   10-----------------------------------------------------------  イの【  】に入れる言葉として、次の(1)〜(5)のうち最も適当と思われるものはどれか。 (1) 住民避難 (2) 科学技術庁 (3) 原子力安全委員会 (4) 茨城県の対応 (5) 最新の医学 課題7 次の文章は,環境問題に対処する方法の1つ「予防原則」に関する議論である。この議論を読んで,問題11に答えよ。  工場排水中に含まれていたメチル水銀が,生物濃縮を経て魚類の体内に蓄積され,日常的に魚を摂取していた地域住民を中心に,メチル水銀中毒患者が出た。水俣病である。既往の病状と異なるものであったために,様々な要素が原因ではないかと指摘された。しかし,真の原因の特定と対策が遅れ,これが水俣病の被害を拡大した。原因として指摘された複数の要素の中に,真の原因が含まれているとするのならば,すべての要素を予防的に取り除くことができる。それは問題の解決に繋がる。したがって,一旦指摘されたすべての要素を取り除き,その後,精緻な調査を行って真の原因を突き止めると同時に,真の原因ではなかったと確定した要素についてはその時点で復活させればよい。これに類する主張を「予防原則」とよぶ。一方,近年における環境の状況下では,「予防原則」は有効でないという主張もある。 11-----------------------------------------------------------  「予防原則」について数名で議論をした結果,次に示すような意見が出た。現時点の状況を踏まえたとき,最も不適切だと思える意見はどれか。 (1) 人体にいささかでも悪影響を与える可能性のある有害物質を使用禁止にする方向は正しい方向である。 (2) 物質の有害性を誰が指摘するのか,を決めない限り予防原則は適用不可能である。 (3) すべての物質は,多かれ少なかれ有害性があるので,その物質を使用するメリットとデメリットのバランスで使用を決めるべきだ。 (4) 現在の環境の状況では,予防原則は適用困難である。なぜならば,非常に大きなリスクは回避できる社会的レベルに達していると同時に,環境リスク自身がほぼ無限に存在するからである。 (5) 今後起きるであろう環境問題にも,予防原則が適用できる場合もあれば,適用できない場合もあるだろう。 課題8 次の文章は,地球規模の環境問題,ここでは,地球温暖化について成立する一般論を述べている。この文章を読んで,問題12に答えよ。  環境問題を,地域環境問題と地球環境問題の2種類に分けて考えたとき,先進諸国における地域環境問題はかなり改善がすすみ,日本の場合においても 1970年頃の状況を汚染のピークとして,その後一貫して改善の方向にある。今後,発展途上国においても,地域環境の問題は解決に向かうことが期待できる。これに対して,地球温暖化の問題は解決が極めて困難である。なぜならば,それは,化石燃料という有限な資源をどのように分配すべきか,という経済の発展に直接関係する問題だからである。発展途上国は次のように主張する。「先進国がここまで経済的な発展を果たすことができたのも,石油を中心とする安価なエネルギーをふんだんに使うことができたからである。発展途上国が温暖化防止の枠組みに参加するということは,これまでの温暖化に対して途上国は責任がないにもかかわらず,自らの将来的な経済発展を阻害する可能性があって,不公平である。まず,先進国が自らの姿勢を正すこと,これが第一歩である」。  一方,先進国は,次のように主張する。「これまでの経済発展が,大量のエネルギー消費に支えられてきたことは事実だろう。しかし,その時点では,化石燃料の消費の結果放出される二酸化炭素が温暖化の原因物質であるといった指摘はなかった。したがって,その行為を非難するのは不適切である。そして,温暖化を防止することは,地球上に存在しているすべての人類の生存に関わることである。したがって,先進国のみならず,途上国を含めたすべての国家が,人類の未来のために二酸化炭素の放出量を削減する国際的枠組みに参加すべきである」。 12-----------------------------------------------------------  この問題を環境倫理として議論したところ,次のような意見が出された。最も不適切だと考えられる意見はどれか。 (1) 途上国の権利はやはり保護すべきだ。結果として,起きるかもしれない温暖化は受容しよう。 (2) 先進国と途上国との問題は,一般に南北問題と言われる問題である。 (3) 化石燃料の消費に起因する温暖化問題も,結局経済問題の一種であり,市場経済メカニズムによって解決すべき類の問題であろう。 (4) 未来世代の権利をいかに守るか,これは人類共通の課題である。 (5) 温暖化問題には不確実性がある。各国の経済に影響がある枠組みに対する反対は,ある程度当然である。 課題9 次の文章は製造物責任に関する判決文の一部である。この文章を読んで,問題13及び14に答えよ。 現代の社会生活は,他人が製造し流通に置いた製品を購入し利用することによって成り立っているといっても過言ではないが,規格化された工業製品の場合,流通の過程において販売会社や小売店が個々の製品の安全性を確認した上で販売することは通常予定されていないし,これを取得する消費者が個々の製品の安全性を判断する知識や技術を有しないことも明らかであるから,このような製品の流通は,製造者が製品を安全なものであるとして流通に置いたことに対する【ア】ということができる。  それゆえ,製品の製造者は,製品を設計,製造し流通に置く過程で,製品の危険な性状により利用者が損害を被ることのないよう,その安全性を確保する高度の注意義務(安全性確保義務)を負うというべきであるから,製造者が,その義務に違反して【イ】製品を流通に置き,これによって製品の利用者が損害を被った場合には,製造者は利用者に対しその損害を賠償する責任,すなわち製造物責任を負う。 13-----------------------------------------------------------  アに入れる言葉として,最も適当と思われるものほどれか。 (1) 調査の結論を尊重する (2) 価格の設定が適性である (3) 信頼に支えられている (4) 品質管理を徹底する (5) テレビ宣伝の効果による 14-----------------------------------------------------------  イに入れる言葉として,最も適当と思われるものはどれか。 (1)美しい包装の (2)利用者が喜ぶ (3)価格の高い (4)安全性に欠ける (5)持ち運びに便利な 課題10 次の事例を読んで,問題15に答えよ。  1974年,満員の大型旅客機DC-10の初めての墜落事故がパリ郊外で起こった。乗客乗員全員の346人が死亡した。これが倫理的に問題であるのは,ジェット機の設計の欠陥のためにそのような事故が起こるに違いないということが,前もって知られていたからである。  欠陥があったのは特に飛行機の胴体部であったが,それは,有名な飛行機会社D社の下請け業者C社によって開発されたものである。事故の2年前,胴体の開発計画を指揮する,C社の上級技術者Aは,同社の副社長宛にあるメモを書いた。それは,設計の欠陥が原因で起こるかもしれない様々な危険を箇条書きにしたものであった。彼が正確に記述していたのは,フライト中に貨物室のドアが吹き飛び,貨物室が減圧され,そのことによって貨物室の上にある客室の床が崩壊する可能性だ。操縦系統は客室の床下に沿って走っており,客室の床の崩壊は飛行機の全コントロールが失われるということを意味する。上級技術者Aは,ドアの設計のやり直しと,客室の床の強化を求めた。彼の考えでは,そのような変更をしなければ,DC-10の貨物室のドアが空中で開き,墜落を引き起こすということであった。  しかし,C社の最高幹部は,この問題に対する根本的な対策を行なわず,次のように主張した。すなわち,「C社がこうむるであろう経済的な負担を考えると,D社にこの情報を伝えることはできない。なぜなら,設計のやり直しと必要な安全性の改善のための出荷の遅れのコストは非常に高くつき,しかもこのことが取引先D社が競争上不利な立場に置かれるであろう時期に起こるからである」と。 15-----------------------------------------------------------  この事例に関して,以下の考え方の中で,適切でないものを1つ選べ。 (1)専門家には雇用者でも侵害できない公衆への義務というものがある。 (2)被用者である以上,雇用者を批判せず従うべきである。 (3)被用者としては,組織の長期的な利益を促進することを考えるべきである。 (4)雇用者に対して単なる攻撃的感情的態度をとることは好ましくない。 (5)公衆には,よく知らされたうえでの同意が必要であるから,場合によっては自分の技術者としての懸念が公衆に知られるようにすることも必要になる。