技術士第一次試験 基礎科目演習問題(材料・化学・バイオ)


 次の20問について、それぞれ正しい記述であれば○、誤った記述であれば×を解答欄に記入せよ。

  1. DNAとはデオキシリボ核酸の略名で、ヌクレオチドから成る二重らせん構造を有しているが、このヌクレオチドは、リン酸と塩基の2つの成分で構成されている。

  2. DNAの2本の鎖は、アデニン・チミン・グアニン・シトシンの4種類の塩基によって結合しているが、この結合は、アデニンとチミン、あるいはグアニンとシトシンの組合せ(塩基対)になっている。これには例外はないとともに、この構造は生物種に関わりなく同一である。

  3. DNAは、ヒストンと呼ばれるタンパク質が集まった塊に規則正しく巻きついたヌクレオソーム構造を形成し、これが集まって染色体を形成している。さらにこの染色体は細胞核の中に格納されている。この染色体は人間の場合44本(22対)あり、うち22本が父親由来、22本が母親由来である。

  4. 細胞核分裂が起こる際には、DNAの二重らせんがほどけて1本ずつになり、これに酵素がヌクレオチドを結合させて新しいDNAの鎖を合成する。この酵素をDNAポリメラーゼというが、ヌクレオチドを一方向にしかつなげていくことができない。

  5. 細胞核分裂の際には、DNAの二重らせん鎖をいったんほどき、その各々の鎖を鋳型にして、DNAポリメラーゼの作用でもう1本のDNA鎖が作られていくが、これらの過程を転写という。
  6. DNA上の遺伝子情報は、RNAにコピーされ、これが細胞核の外に運ばれてタンパク質を作るための遺伝情報となる。RNAはリボ核酸の略名で、m RNA、t RNA、r RNAの3種類のRNAがあるが、このうち遺伝情報を持っているのは伝令RNAと呼ばれるm RNAだけである。

  7. 細胞分裂においては、(1)核の中でDNAの遺伝情報をコピーしたRNAが作られ、(2)このRNAが核の外に出てリボソームと結合して遺伝情報通りのタンパク質が作られるという2段階の過程を経るが、過程(1)を「読み取り」、過程(2)を「書き込み」という。

  8. RNA(リボ核酸)は、細胞核内でDNAから遺伝情報をコピーした後核外に出て、タンパク質を作る細胞小器官(オルガネラ)であるリボソームに遺伝情報を伝える役目を担っている。DNAとRNAの構造上の違いは、糖がデオキシリボースではなくリボースであること、4種類の塩基のうち1つがチミンではなくウラシルであること、および二重らせんではなく一重らせんであることの3点である。

  9. RNA(リボ核酸)は、細胞核内でDNA(デオキシリボ核酸)から遺伝子情報をコピーして作られるが、このときに作用する酵素がRNAポリメラーゼである。RNAには伝令RNA、運搬RNA、リボソームRNAの3種類があるが、RNAポリメラーゼは1種類のみでこれら3種類のRNAを作り分ける。

  10. 遺伝情報は、4種類の塩基3個の配列によって決まる。この塩基3個による暗号をコドンと呼ぶが、コドンは43=64通りがある。これに対してタンパク質を構成するアミノ酸は20種類しかないので、コドンの数が多すぎることになる。しかし実際には、アミノ酸の種類を決めるのに有効なコドンは20種類に限られ、後の44種類のコドンはアミノ酸の種類決定に関しては意味をなさないため、問題は起こらない。

  11. 細胞分裂には体細胞分裂と減数分裂がある。前者は染色体数の変化しない細胞分裂、後者は染色体数が1/2に減少する細胞分裂である。前者は通常の細胞分裂であり、後者は精子や卵子を作るときのみの細胞分裂である。

  12. ウィルスの中には、DNAではなくRNAを遺伝子として使うものがある。

  13. 細胞小器官(オルガネラ)の1つにミトコンドリアがあるが、これは酸素呼吸により、細胞がエネルギーとして使うアデノシン二リン酸(ADP)を作り出す役目を担っており、このADPにリン酸がさらに結合してアデノシン三リン酸(ATP)となるときにエネルギーが放出される。なお、ミトコンドリアは元々は独立した生物で、あるとき別の細胞に入り込んで共生したために生じたと考えられている。

  14. クローンには、胚細胞クローン(または卵細胞クローン、受精卵クローン)と体細胞クローンの2種類がある。いずれも細胞から取り出した遺伝子を、核を除去した卵細胞に移植して発生させるものであるが、遺伝子をどこから取り出すかが異なっており、胚細胞クローンは受精卵から、体細胞クローンは普通の細胞から遺伝子を取り出す。特に倫理上の問題が指摘されているのは胚細胞クローンである。

  15. 体細胞クローン技術の特徴の1つに、老化の進行が遅くなることがあげられる。

  16. 胚細胞クローンは、受精後まだ初期段階にある細胞から遺伝子を取り出すため、生まれてくる子供は通常出産と同様、父親と母親の形質を1/2ずつ受け継いでいる。しかし体細胞クローンは、遺伝子を採取した「親」の体細胞の遺伝子情報を受け継ぐため、「親」の形質のみを受け継いで生まれる。

  17. 金は叩き延ばすことができ、金箔はほとんど原子レベルまで薄くすることも可能であるとされる。こういった性質は「展性」と呼ばれ、金属材料独特のものである。これは、金属は共有結合によって原子間が強く結びついているため、極度に薄く叩き延ばされても原子間結合が切れないことにより現れる性質である。

  18. 材料の破壊は、材料の種類によっていろいろな形態をとることが知られているが、材料中に傷や異物の混入があると、そこで応力が分散されるため、傷や異物混入がない時にくらべ、一般に破壊強度は大きくなる。

  19. 明治時代以降における日本の経済発展は、金属鉱床の採掘により支えられた面が多分にあるが、鉱山排水中に含まれる金属イオン類による環境影響、特に人体に害をもたらす「鉱毒」には十分に配慮しなければならない。明治期における日本最初の顕著な鉱毒事件として有名な足尾鉱毒事件は、銅鉱山の銅を含む排水によるものであり、また大正期や昭和30年〜40年代に神通川流域で発生したイタイイタイ病は鉱山排水中のカドミウムが原因であった。

  20. プラスチックは種々の考え方による分類があるが、熱的特性面からは熱可塑性樹脂・熱硬化樹脂の2つに分類するのが一般的である。


<正解>

  1. ×
    ヌクレオチドは、糖・リン酸・塩基の3つの成分からなっている。
    なお、この糖をデオキシリボースという。

  2. そのとおり。「最後の生物種に関わりなく同一」にひっかかりませんでしたか?

  3. ×

    前半は正しい。しかし人間の染色体は46本23対で、23本が父親、23本が母親。

  4. そのとおり。ヌクレオチドを構成する糖は5つの炭素を持っており、これによりヌクレオチドは5’方向と3’方向を持つ左右非対称となっているが、DNAポリメラーゼは5’→3’方向にしかつなげられない。このため、ほどけたDNA二重らせんの1本は5’→3’方向に連続的にヌクレオチドが合成できるが、もう1本は3’→5’方向の合成ができないため、5’→3’方向の合成を短い区間行い、この区間を5’→3’方向に移していくことで断続的な合成を行っている。

  5. ×
    複製という。「転写」を「複製」と読み替えれば、その過程は問題文のとおりである。

  6. そのとおり。t RNA(運搬RNA)はタンパク質合成に必要なアミノ酸を運搬し、r RNA(リボソームRNA)はタンパク質を作る細胞小器官であるリボソームの構成材料となっている。

  7. ×
    過程(1)を「転写」、過程(2)を「翻訳」という。


  8. そのとおり。

  9. ×
    リボソームRNAを合成するRNAポリメラーゼT、伝令RNAを合成するRNAポリメラーゼU、運搬RNAを合成するRNAポリメラーゼVがある。

  10. ×
    コドンが多すぎても問題がないのは、1つのアミノ酸を決定するコドンは複数あるためである。このようなコドンを同義コドンという。


  11. そのとおり。


  12. そのとおり。

  13. ×
    ADPとATPが逆。ミトコンドリアはATPを作り、ATPのリン酸どうしの結合が切れてADPとなるときにエネルギーが放出される。
  14. ×
    クローンの分類はそのとおりだが、倫理上問題があるのは体細胞クローンである。胚細胞クローンは、人工的に三つ子、四つ子を作り出す技術であり、食料の安定供給などの面で有望視される技術である。
  15. ×
    体細胞クローンは、老化が早くなる可能性が指摘されている。「羊のドリー」が平均寿命の半分程度の年齢で、老化症状を発症した末に死んだのは、遺伝子を採取した「親」の年齢分が加算された状態で生まれたからではないかと言われている。また、異常児発生率も大変高いため、人間への適用は論外と言える段階にある。


  16. そのとおり。体細胞クローンに必要なのは、遺伝子を提供する「親A」、卵細胞を提供する「親B」、子宮を提供して出産する「親C」の3つの親が必要であるが、遺伝子情報は親Aのもののみを受け継ぐ(卵細胞は核を除去して使うため、親Bの形質は全く受け継がない)。

  17. ×
    金属は原子間を自由に飛びまわる自由電子があることが大きな特徴である。この自由電子の存在により、金属の光沢が現れるとともに、展性のような性質も現れる。

  18. ×
    傷や異物混入箇所に応力集中がおこり、破壊しやすくなる。


  19. そのとおり。


  20. そのとおり。