技術士第一次試験 基礎科目演習問題(環境・エネルギー・技術)


 次の問題に答えよ。

  1. 地球温暖化に関する以下の記述について、正誤の正しい組み合わせはどれか。
    (ア) 地球温暖化は、地球表面から宇宙への熱放出が温暖化ガスにより妨げられて、気温が上昇する現象である。
    (イ) 温暖化ガスは温室効果ガスとも言われる。代表的物質は二酸化炭素であるが、そのほかにメタンやフロンも温暖化ガスに含まれる。
    (ウ) 1997年に第3回気候変動枠組条約締約国会議において、温暖化ガス削減目標が決定された。この会議は京都で開催された。
    (エ) 上記会議において、日本は2008年から2012年までの5年間の平均で、2000年比で6%の削減を約束した。
    (オ) 温暖化ガス削減には様々な方法があるが、
        ●高濃度の温暖化ガスを排出する発展途上国の老朽化工場に対して、排出削減技術をもって温暖化ガス排出量を低減する。
        ●目標以上に温暖化ガス排出量削減が可能な国に対して、その取り組みに要する費用を援助する。
      といったことによって削減された分を、自国の温暖化ガス削減達成分に組み入れることが認められている。


    (1) × ×
    (2) × × ×
    (3) × ×
    (4) × × ×
    (5) × ×


  2. ダイオキシンに関する次の記述について、正しいものを選べ。

    (1) ダイオキシンはプラスチック類の焼却によって発生する。したがって、紙を燃やしてもダイオキシンは発生しない。

    (2) ダイオキシンは脂肪と結びつきやすいため、母乳中に濃縮するという性質を持っている。

    (3) ダイオキシンは強い毒性を持つが、比較的速やかに対外に排出されるという特徴を持つ。

    (4) ダイオキシンは比較的低い温度で生成されるため、家庭での焚き火などはやめ、高温(600℃以上)焼却施設で処理すべきである。

    (5) プラスチック類を焼却すると、プラスチックの種類にかかわらずダイオキシンが多く発生する。



  3. 生物多様性について、次の中から誤っているものを選べ。

    (1) ある地域の生物の保全を考える場合、絶滅の可能性のある生物種に限定して保全措置を講ずることは適当ではない。

    (2) 「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」は、通称バーゼル条約と呼ばれている。

    (3) 上記条約では、象牙のような体の一部やクマノイ(クマの胆嚢)の入った漢方薬のような製品も規制対象となっている。

    (4) 人間の活動によって多くの生物が絶滅の危機にさらされているが、地球の歴史の中ではもっと大規模な絶滅もあった。

    (5) 食物連鎖をはじめとする、自然界における生物の相互関係を熟知することは、生物多様性を保全する上で重要なことである。



  4. 環境問題に関する次の記述の中で、正しいものを選べ。

    (1) 酸性雨は、自動車や工場から排出される窒素酸化物や硫黄酸化物が、化学変化により酸化ガスとなり、強酸性の雨となって地上に降り注ぐものである。日本においては、交通量が多く工場も集中している太平洋側で酸性の度合いが強くなっている。

    (2) 「持続可能な開発」(Sustainable Development)とは、環境に配慮しつつ開発を進めることをうたっているが、対象として貧困撲滅、グローバリゼーション、健康、水資源管理、防災などの社会問題も含んでいる。

    (3) 化石燃料を燃やすと、含まれている炭素量に応じた二酸化炭素が排出される。燃料中の炭素の割合は、天然ガス>石油>石炭であるから、化石燃料の中でも石炭の利用を促進することは、地球温暖化対策の一助ともなる。

    (4) 日本の全火力発電所平均熱効率は約40%で、残り約60%は排気中の水蒸気や温排水のような排熱として捨てられる。この排熱を有効利用する技術として注目されているのがコジェネレーションで、火力発電の余熱から蒸気や熱水を作って冷暖房や給湯に回すというもので、発電所近隣地域における地域冷暖房や大病院、工場などで普及しつつある。これによって、電気と熱供給を合わせて60%近い熱効率の達成が可能とされている。

    (5) 「アジェンダ21」とは、2002年にヨハネスブルグで開かれた地球サミットで採択された行動計画で、「持続可能な開発」をうたっている。


  5. いわゆる新エネルギーに関する以下の記述について、誤っているものを選べ。

    (1) 太陽光発電は、光を受けると電気を発生する太陽電池(光電池)を利用した発電方式で、枯渇の心配がない・発電時にCO2などを出さないといったメリットがある反面、エネルギー密度が低く、火力・原子力発電と同等の電力量を得ようとすると広大な面積が必要であること、雨・曇りの日や夜間は発電できないこと、コストが高いことなどがデメリットである。

    (2) 風力発電は、風車を回す力で発電機を回して発電する方式で、風のエネルギー密度が小さいことやエネルギー変動の大きいこと、日本においては風力発電に適した場所の気象条件が厳しく、耐久性や信頼性などが課題になっている。

    (3) 燃料電池は、天然ガス、ナフサなどの燃料ガスを分解して水素を製造し、これを空気中の酸素と化学反応させて電気を発生させるものである。クリーン発電で発電効率も高く、都市部のビル内に設置してコストや送配電ロスを抑えることができるという特徴を持つ。まだ実験段階であるが、実用化のためには、コスト低減、信頼性の向上、長寿命化などが課題となっている。

    (4) 地熱発電は、地下からの蒸気でタービンを回して発電する方式で、燃料費がいらないうえ稼働率が高く、安価で安定したエネルギー源といえ、すでに商用化されている。問題は、大容量の発電所ができにくいこと、設置場所が火山帯に限られること、適地調査に多額の費用と長い期間がかかるという点である。

    (5) 一般的なエネルギー変換効率は、地域によるばらつきはあるものの、風力発電が太陽光発電を上回る。



  6. 太陽に直面する受光面を持った太陽電池システムは、1平方メートルあたりおおむね4×109Jy-1の太陽エネルギーを受け取ることができる。
    一方、代表的な化石燃料である石油は、1トンあたりおおむね4×1010Jの発熱量を持っており、日本は年間約2億トンを消費している。
    いま、年間石油消費量の0.1%を節約すべく、これを発電効率を10%の太陽電池システムで代替するとすれば、受光面積40m2の太陽電池システムをおよそ何基作ればよいか。もっとも適当と思われるものを選べ。

    (1) 1万基
    (2) 2万基
    (3) 10万基
    (4) 20万基

    (5) 50万基


  7. 電磁波に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

    (1) 人間の目に見える電磁波は「可視光」と呼ばれ、波長の違いが色の違いとして認識される。可視光の中でも波長の短いものは紫色に、波長の長いものは赤色に見える。波長の短い光は大きく屈折し、波長の長い光はあまり屈折しないので、大気中に水蒸気が多量に存在するときには大気がプリズム効果を果たし、虹が現れる。

    (2) 夕焼けが赤く見えるのは、波長の短い紫〜青色の可視光は屈折角が大きいため散乱してしまい、波長が長く屈折しにくい赤色の光が選択的に届くためである。

    (3) 可視光の全波長域の電磁波が同じように放射されている場合、それぞれの波長の光が相互に打ち消しあうので、人間の目には黒色に見える。

    (4) 可視光よりやや波長の短い電磁波は紫外線と呼ばれ、殺菌効果があることが知られている。紫外線は成層圏中にあるオゾン(O3)層でその90%ほどが吸収されている。しかしオゾンはフロンガスなどに含まれる塩素ガスによって破壊される。オゾン層が破壊されると紫外線が多量に地表に到達し、ガンの増加などの問題が多発することが懸念されている。

    (5) 可視光よりやや波長の長い電磁波は赤外線と呼ばれる。赤外線は熱線とも呼ばれ、熱的作用が強いのが特徴である。この赤外線の中で比較的波長の長い3〜100ミクロンのものは遠赤外線と呼ばれている。天然石の多くはセラミックを含むが、これを加熱すると遠赤外線を放射する。この性質を利用したものの代表例が「石焼きイモ」である。


  8. 装置やシステムの故障に関する特性には次のようなものがあるが、この中から誤っているものを選べ。

    (1) フェール・セーフ(fail safe)とは、部品やシステムなどの故障が確実に安全側のものとなること、すなわち異常や故障を生じた装置を安全な方向に停止させる機能である。

    (2) フォールト・トレラント (fault tolerant) とは、故障や誤動作が発生しても機能が正しく維持されること、すなわち耐故障性である。これは、大抵は構成要素の多重化 (冗長化) によって実現される。

    (3) フェール・ソフト (fail soft) とは、故障が発生した際に、機能を完全に喪失するのではなく、可能な範囲で機能が維持されるようにすることである。

    (4) フォールト・アボイダンス (fault avoidance) とは、故障の可能性が充分に低いこと、すなわち高信頼性である。この特性は、グレースフル・デグラデーション (graceful degradation) と呼ばれることもある。

    (5) フール・プルーフ (fool proof) とは、人間が「いたずら」をしても危険を生じないことで、たとえば小さい子供には開けにくいように工夫した薬瓶などである。



  9. 経営活動・生産活動においては、リスクマネジメント(リスク管理)の手法が用いられる。リスクマネジメントに関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

    (1) 影響度・生起確率ともに大きい危険事象については、そのリスクを低減する他に、保険等によるリスク移転という対応も考えられる。

    (2) 生起確率が大きい危険事象は、リスク低減、あるいは当該分野からの撤退などによるリスク回避の、いずれかの対策をとる必要がある。

    (3) リスクマネジメントは組織やプロジェクトにおけるリスクのうち、確実なもの・顕在化したものを対象に行うものである。

    (4) リスクマネジメントを行うにあたっては、リスクを特定する作業に先立って、リスク対応の基本方針を策定しておく必要がある。

    (5) リスク分析とリスク評価、そしてリスク対策までをまとめて「リスクアセスメント」と呼ぶ。



  10. 図のようなリスクカーブにおいて、(ア)〜(エ)に入る言葉の組合せとして最も適切と思われるものを選べ。

    (1) 危険事象による
    合計被害金額
    改善効果 改善後の
    カーブ
    想定被害額
    (2) 改善効果
    合計金額
    減少見込
    被害額
    改善後の
    カーブ
    危険事象による
    合計被害金額
    (3) 危険事象による
    合計被害金額
    減少見込
    被害額
    改善後の
    カーブ
    想定被害額
    (4) 危険事象による
    合計被害金額
    改善効果 減少見込
    被害額
    危険事象による
    合計被害金額
    (5) 改善効果
    合計金額
    減少見込
    被害額
    改善後の
    カーブ
    想定被害額



<正解>

  1. (5)
    (ア)○ そのとおり。
    (イ)○ そのとおり。フロンはオゾン層破壊だけでなく、温暖化ガスでもある。
    (ウ)○ そのとおり。この時の取り決めは、「京都議定書」と呼ばれている。
    (エ)× 2000年比ではなく1990年比。
       ※1997年の会議で2000年比で目標をたてるわけありませんね。
    (オ)× そのような提案をアメリカや日本がしているのは確かだが、EUなどが反対し、まとまっていない。
       ※特に世界最大の二酸化炭素排出国であるアメリカは、京都議定書に調印していません。こと地球温暖化に関しては、アメリカは世界最大の「ならず者国家」です。

  2. (2)
    (1)× 紙には漂白のため塩素が使われている。ダイオキシンは有機塩素化合物の焼却で発生するため、紙からも発生する。
    (2)○ そのとおり。
       ※脂肪分の少ない魚介類(エビ・タコ・イカ・貝類)にはあまり含まれません。濃度が高くなりやすいのは、サバ、イワシ、アジ、ハマチなどの近海魚です。
        ※妊娠中に胎児が高濃度ダイオキシン汚染され、奇形やアトピー発生率が高くなったりすると言われています。
        ※母乳中のダイオキシン濃度は牛乳の数十倍に達するという報告もあります。

    (3)× なかなか体外に排出されず、体内に蓄積されるのが特徴。
       ※ゴミ焼却灰などから溶出したダイオキシンが河川水から海水に入り、プランクトンから魚類といった食物連鎖の過程で徐々に蓄積され高濃度になる。
        ※最後はこれを人間が摂取するという過程をたどる。人間の体内に入るダイオキシンの95%は食物から、そしてその60%が魚類からであるとされている。

    (4)× ダイオキシンの発生を抑えるためには、焼却温度を850℃以上にしなければならない。
       ※ダイオキシンの生成温度は300〜600℃と言われており、野焼きはちょうどダイオキシンの生成されやすい温度になるため、今では全面禁止されています。
       ※従来の焼却施設は850℃まで温度が上がりません。従って、「燃えるゴミ」が何度で焼却されるのかを熟知した上でゴミを分別することが望ましいといえます。
        ※野焼きの焼却灰中にはダイオキシンが高濃度で生成しており、これが雨で流され、川から海に流入することが魚介類へのダイオキシン蓄積の大きな原因となります。

    (5)× ダイオキシンは塩素が含まれていないと生成されない。従って、塩化ビニルからは大量のダイオキシンが発生する。
       ※家庭からゴミとして出やすいダイオキシン原因物質はポリ塩化ビニルやポリ塩化ビニリデンなどです。
       ※ラップ類(ポリ塩化ビニリデン)やトレー等の容器類(ポリ塩化ビニル)などは特にダイオキシンが大量に出ます。毛布や靴下もポリ塩化ビニルを原料としているものがあります。

  3. (2)
    (1)○ 特定の生物種のみを保全するのではなく、生態系全体(生物の多様性)を保全すべきである。
    (2)× バーゼル条約は廃棄物の越境を規制する条約。正しくはワシントン条約。
    (3)○ そのとおり。
    (4)○ そのとおり。たとえば古生代と中生代の境にあった「大絶滅」では地球上の生物の1/3が絶滅したと言われている。
    (5)○ そのとおり。

  4. (2)
    (1)× 中国の工業地帯から大量に排出される工場排煙を原因とする亜硫酸ガスが酸性雨の主要原因であり、日本海側で酸性の度合いが強い。
    (2)○ そのとおり。ヨハネスブルグ・サミットでも貧困問題は克服しなければならない重要問題として位置づけられている。
    (3)× 含有炭素の順が逆である。石炭>石油>天然ガスで、石炭は二酸化炭素排出量が最も多く、地球温暖化対策としては好ましくない。
    (4)× 火力発電所の熱効率は、コジェネにより75〜80%まで高めることが可能とされている。
       ※火力発電の熱効率が約40%であることは覚えておいたほうが良いでしょう。
        ※家庭で1000ワットのドライヤーを使うと、そのドライヤーのために2500ワット分強に相当する燃料が焚かれ、1500ワット強の排熱が出ているという関係になります。
    (5)× アジェンダ21は「リオ宣言」とも呼ばれ、1992年にリオデジャネイロで開かれた地球サミットで採択された。

  5. (3)
    (1)○ そのとおり。
    (2)○ そのとおり。
    (3)× 実験段階ではなく、リン酸型燃料電池はすでに一部実用化されている。その他の記述はそのとおり。
    (4)○ そのとおり。
    (5)○ 一般的なエネルギー変換効率は、太陽光発電で約10%、風力発電で約30%である。

  6. (4)
    4*109J/y/m2の太陽エネルギーの10%なので、4*108J/y/m2
    石油1tあたり4*1010J/tだが、火力発電の熱効率は約40%なので、4*1010J/t×0.4≒1.6*1010J/t。
    2*108tの0.1%なので、2*105t。よって、エネルギーは1.6*1010J/t×2*105t=3.2*1015J。
    よって、3.2*1015J÷4*108J/y/m2=8*106ym2、8*106÷40=2*105=20万基。
       ※「火力発電の熱効率は約40%」ということを知っていないと、(5)になってしまいます。意地悪問題かもしれませんが、過去問題も同様のワナがありました。

  7. (3)
    (1)○ このような性質のため、虹は基本的に光源(太陽)を背にして現れる。まれにその反対側にも薄く現れるが、これは反射によるものである。
    (2)○ 同様に、空が青いのは短波長光が散乱されるためである。
    (3)× それぞれの光が重なって白く見える。光の三原色と同じ。
    (4)○ そのとおり。
    (5)○ そのとおり。

  8. (5)
    説明文は、フール・プルーフではなく、タンパー・プルーフ (tamper proof)またはタンパー・レジスタントと呼ばれるもののことである。
    フール・プルーフは、人間が誤って不適切な操作を行なっても危険を生じない、あるいは正常な動作を妨害されないことであり、安全インタロックのような機能のことである。

  9. (4)
    (1)× リスク移転が適用できうるのは、影響度は大きいが生起確率が小さい危険事象についてである。
    (2)× 生起確率が大きくても影響度が小さい危険事象であれば、リスクを保有できる可能性がある。
       ※生起確率は大きいが影響度の小さいリスクとは、たとえば報告書・設計書の細かな誤字脱字などが該当します。
    (3)× 不確定な潜在リスクを対象に行うものである。
    (4)○ そのとおり。基本方針策定→リスクの特定→リスクアセスメント(リスク分析・リスク評価)→リスク対策と進む。
    (5)× リスクアセスメントにはリスク対策は含まない。

  10. (1)