コラム:筆記の成績が悪いと口頭試験は不利?

口頭試験は筆記試験とは全く別に採点されます。筆記成績が悪くても、きちんとフォローしてあれば大丈夫です。

 よく、筆記試験の成績がボーダーぎりぎりだと口頭試験が厳しくなり不利だと言われます。
口頭試験は、あくまで口頭試験の成績だけで(時間内に60点取れたかどうかで)合否判定がなされます。筆記試験の成績が90点だったから最初から口頭試験点数にゲタをはかせるとか、そういったことはありません。

 その一方で、口頭試験では筆記試験の答案をベースにして専門技術力の確認を行います。さらに、
口頭試験試験官は筆記試験採点者であると言われています。(確認したわけではありません)
 真面目な試験官なら、筆記採点時に「これは口頭試験で聞こう」と思うような所にマークしているでしょう。実際、平成14年度に私が建設部門を受験したときは、明らかにそういう視点で作成されたチェックシート(おそらく試験官が独自に作ったもの)に基づいて質問が来て、クリアするたびにチェックを入れていました。
 このようなことから、筆記試験の出来がよくないと、突っ込み所がいっぱいあることになり、必然的に「これはおかしいんじゃないのか」といった厳しい質問が多くなり、逆に筆記試験結果が非の打ち所がないと雑談風になるということだと思います。

 では、筆記点数が低いんじゃないかと思われる人は、どのような対策をしておけばいいのでしょうか。
それは、「
筆記答案のフォロー」に尽きます。「あそこは間違っていた」「あそこは説明不足だった」「あそこはこう言ったほうがよかった」というように筆記答案について改善点を抽出し、「改良答案」を用意しておくのです。こうすることで質問にも切り返せますし、資質向上の責務を実行していることをアピールできます。
口頭試験は口頭試験での設問回答で点数がつくので、たとえ筆記でボロボロの点数だったとしても、それには関係なく口頭試験での回答内容のみで点数がつけられます。
逆に、筆記試験と同レベルの回答しかできないと、技術力向上の努力をしていないととられ、資質向上に関して辛い評価がなされるかもしれません。
 筆記答案のフォローは必ずしてください。
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コラム:内部告発が正当化される条件は?

ポイントは、内部告発が正当化される条件と、何が公益かです。


ディジョージは、内部告発の道徳的正当化の5つの条件をあげています。これは、いわば内部告発チェックリストといえるでしょう。
 (1) 一般大衆に深刻かつ相当被害害が及ぶか?
 (2) 上司へは報告したか?
 (3) 内部的に可能な手段を試みつくしたか?
 (4) 自分が正しいことの、合理的で公平な第三者に確信させるだけの証拠はあるか?
 (5) 成功する可能性は個人が負うリスクと危険に見合うものか?

ディジョージによれば、(1)〜(3)が満たされれば内部告発は道徳的に許されます(内部告発してもよい)。さらに、(4)と(5)も満たされれば内部告発は道徳的に義務となります(内部告発すべきである)。
他にも内部告発の是非を判断する基準はあります。たとえばボウイ&デュスカの基準は以下のようなものです。
 (1) 適切な道徳的動機から行われていること。
 (2) 告発の前に、自分の意見を内部のすべてのチャンネルを利用して伝えていること。
 (3) 内部告発が理性的な人達を説得し得る証拠に基づいていることを告発者が確信していること。
 (4) 道徳違反の深刻さ、切迫さ、特定性などについて注意深い分析をしてから行動していること。
 (5) 内部告発が、道徳違反を回避し、暴露することの責任とつりあっていること。
 (6) 成功する可能性があること。

成功する可能性を重視しているのは、成功の見込みのない内部告発はするなということではなく、正当化されることが少ないということです。このように、内部告発の基準はおおむね似たような内容です。
ところで、内部告発と似た用語に「警笛鳴らし」(whistle-blowing)があります。これは、組織が重大な不正を犯していると被用者が考える場合に、その被用者が公表することです。まるっきり内部告発と同じでは?といと思えますね。警笛鳴らしは一般に名乗るか、名乗るまでもなく身元がわかります。対して内部告発は、匿名という方法があります。
すなわち、組織の被用者が組織の不正を公表する行為は内部告発で、名を名乗ってそれをするのを特に警笛鳴らしというと覚えておけばいいでしょう。
警笛鳴らしは名乗るがゆえに本人が不利な扱いを受ける可能性が高く、それゆえに保護が必要になります。このための法律がいろいろと整備されつつあります。
そういった法律の、我が国における代表が公益通報者保護法です。
この法律では、公益通報の対象となるもの、さらに公益通報者として保護してもらえる条件と保護内容が定められています。
●何が「公益通報」とみなされるか?
以下のような法律に違反する行為(すでに生じた場合、まさに生じようとしている場合)
刑法、食品衛生法、証券取引法、JAS法(食品表示)、大気汚染防止法、廃棄物処理法、個人情報保護法、その他(その他の個人の生命又は身体の保護、消費者の利益の擁護、環境の保全、公正な競争の確保その他の国民の生命、身体、財産その他の利益の保護にかかわる法律として政令で定めるもの)

●保護要件等は?
 その通報先によって異なる。
 (1) 事業者内部での通報・・・・不正な目的でなければ保護対象となる。
 (2) 行政機関への通報・・・・不正な目的でないこと、真実相当性を有すること。
 (3) 事業者外部への通報・・・・不正な目的でないこと、真実相当性を有することに加え、
                    ・内部通報では証拠隠滅の恐れあり
                    ・書面による内部通報後20日以内に調査を行う棟の通知がない
                    ・人の生命・身体への危害が発生する急迫した危険がある
                   など、一定の要件を満たすこと。
●どう保護するか?
公務員を含む労働者を、以下のように保護する。
 (1) 解雇の無効
 (2) 労働者派遣契約の解除の無効
 (3) その他、降格・減給・派遣労働者交代などの不利な扱いの禁止
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コラム:遅い日程・時間の受験者は成績が低い?

全てただのウワサ、デマです。


 「午後遅い時間の口頭試験受験者は、筆記試験の成績が低いので合格しにくい」
 「遅い日程の口頭試験受験者は、筆記試験の成績が低いので合格しにくい」
というウワサが、ずっと以前からまことしやかに流れていますが、これはデマです。

 そもそも口頭試験は筆記試験の成績とは関係なしに行われます。筆記試験に合格したという時点で、その点数に関係なく受験者は横一線なのです。別コラムに書いたように、筆記答案内容のレベルが低いことにより厳しい質問が多くなるということはあるのでしょうが、筆記成績によって扱いが変わるということはありません。

 では何をもって試験日程・時間が決まるかというと、基本的には試験官の都合です。
筆記試験採点者が口頭試験の試験官を務めるのが原則のようです。さらに採点者は複数です(2人〜4人)。よって、その採点者全員が試験官として集まれる日・時間に、筆記を採点してもらった受験生が割り当てられることになります。当然ながらその試験官グループは部門・選択科目、さらに場合によっては専門事項が同じ受験生をまとめて採点していますから、その人のところに部門・選択科目などが同じ受験者が固まります。受験生が多い科目だと、試験官も複数のグループになります。試験官グループが異なれば都合のよい日程も異なるので、同じ部門・選択科目でも離れた日時に試験日が分かれてしまうこととなります。

 次に受験番号です。上記の試験官グループの中での順番は、単純に受験番号順になっていることが考えられます。また、交通の便を考慮してあるかもしれません。遠方の人は、上京に要する時間を考慮して遅めの時間に集めてあるかもしれません。逆に帰宅に配慮して早めの時間に集めてあるかもしれません。
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コラム:口頭試験日程は変更できない?

難しいと思いますが、要請してみる価値はあります。


 別コラムのように、
  ●口頭試験試験官は、筆記試験採点者(複数人数)が務める
  ●口頭試験日程は、試験官グループの都合によって決まる。
と推定されます。
このようなことから、試験日程の変更がなかなか難しいということがご理解いただけると思います。
 しかし、上記のような事情で日程が決まるということは、
  ●もし試験官が複数日程を持っておれば、その中で融通してもらえる可能性がある。
  ●筆記採点者でなくても試験官をお願いできるかもしれない
ということが考えられます。
口頭試験は午前9時あるいは10時から午後5時までやっているようです。つまり試験官は昼休みを除いて7時間程度口頭試験を行うと思われます。1人30分ですから、休みなく行って14人。これがMAXでしょう。筆記試験合格率を単純に20%とすれば、採点した筆記答案は14人÷20%=70人となります。このことは、もし複数日試験官を務めるとすれば、筆記答案を100人以上採点していることになります。無論、経験論文だけでなく部門一般筆記、専門問題もです。これはかなり難しい話だと思われますが、可能性はなくはありません。
筆記採点者以外が試験官を務めるということはあるのでしょうか。どうしても日程が合わないとか、直前にどうしても来られなくなった場合は、誰かが代理を務めることが考えられます。体験記を見ると、明らかに筆記答案内容を知らないと思われる質問があります。この中には「忘れている」のではなく、「初見である」からというものも混じっているかもしれません。

 このように考えると、よほどの事情がある場合、変更対応をお願いできる可能性もあるかもしれませんから、要請してみる価値はあると思われます。
ただし、筆記試験と同様、受験者個人の事情による場合はかなり難しいと思われます。たとえば、「その日はどうしても外せない会議があります」という場合も、口頭試験の時期は試験申し込み期間に示してあるので(といっても「12月〜1月」とすごく広いんですけどね)、その時期はスケジュールを空けるとか、仕事を代わりにお願いできる人を段取りしておくとかの対応は不可能ではないわけです。そういう対応がそもそも不可能なのであればともかく、「どうせ合格しないと思ったのでスケジュール入れちゃった」みたいなことでは「やむをえない」とはなかなかいえないでしょう。つまり、「誰がやっても不可能」なのであれば、「やむをえない」といえるので、お願いしてみる価値はあるのではないかと思うのです。
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コラム:3義務2責務や倫理を聞かれなかったら不合格?

ただのウワサ、デマです。


 「最後に3義務2責務を聞かれたら合格」
 「最後に3義務2責務を聞かなかったら不合格」
というウワサも、ずっと以前から流れています。これもデマです。実際にそんなことはなかった人がごまんといます。

 口頭試験のどこかで「技術者倫理」と「技術士制度の認識」について評価しないといけないのですから、聞かずに終わるわけにはいきません。たとえそれまでの過程で「ああ、もうコイツは不合格確定だな」と思っていたとしてもです。なぜなら、
  ●成績通知に○×評価を書かないといけない
  ●国家試験は、途中での採点打ち切り(足切り)は、事前にその実施と条件が通知してあるか、別に定める失格条項に該当していない限りできない
からです。これは筆記試験も同じで、部門一般の択一で足切りなどしていないはずですし、部門一般筆記の点数と合わせて不合格が決まったとしても、残りの経験論文を読まずに終えるなどしていないはずです。(逆に失格条項に抵触したら、その場で採点打ち切りのはずです)

 ですから、聞かれていないように思えても、どこかで確認しているはずです。そもそも採点しなければならないのは、3義務2責務がらみでは、「技術者倫理」と「技術士制度の認識その他」の2項目であって、「3義務2責務」などと指定はされていません。たとえばトピックに対する意見を聞いて技術者倫理に関しては問題のない見識を持っていると理解し、技術士法の目的や技術士とは何かを聞いて法制度認識もOKと判断すれば3義務2責務を聞かずに終わってもいいわけです。あるいは、経験論文に関する応答の中で倫理が判断できるようなものがあれば、わざわざ聞きなおさなくてもいいわけです。
また、下記はNSPE倫理綱領ですが、この中には経歴や動機・抱負、筆記答案に関する質問を通してでも判断できることがたくさん入っているとは思いませんか?
  ●公衆優先原則
   1.公衆の安全、健康、および福利を優先する。
  ●持続性原則
   (ASCE基本綱領:持続可能な開発の原理に従うよう努めるようにする。)
  ●有能性原則
   2.自分の有能な領域においてのみサービスを行う。
  ●真実性原則
   3.公衆に表明するには、客観的でかつ真実に即した方法でのみ行う。
  ●信頼関係原則
   4.雇用者または依頼者それぞれのために、誠実な代理人または受託者として行為する。
  ●公正業務原則
   5.欺瞞的な行為を回避する。
  ●同業発展原則
   6.みずから名誉を守り、責任をもち、倫理的に、そして適法に身を処することにより、専門職の名誉、名声、および有用性を高めるように行動する。

このように、そもそも3義務2責務は技術者倫理や法制度知識の確認のための一手段にすぎないのであうから、その質問があったとかなかったとかいって心配することはありません。

 なお、どうしても不安な方は、記録を送っていただければ、時間の許す範囲で拝見します。
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