技術士第二次試験 平成13年度 建設一般

問題と解答案(2004.7.12更新)

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択一問題
 2-1 次の15問題を解答せよ(解答欄に1つだけマークすること)。


2-1-1 公共工事の品質確保のための取組みに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)建設時のみならず維持管理・更新時をも含めたライフサイクルにわたる品質・コストの評価を行うことが重要である。
(2)公共工事の品質を確保・向上しながらコストの縮減を図るためには、入札・契約段階における施工者の技術力の評価を重視することが重要である。
(3)性能規定の技術基準は新技術の採用に当たって制約となることがあるため、仕様規定に移行することにより、優れた新技術を採用しやすい環境を整備する必要がある。
(4)設計業務の成果の良否は公共工事の品質コストに大きな影響を与えるため、これを担当する者、マネジメントする者の技術力が重要である。
(5)IS09000シリーズによる品質マネジメントシステムの構築は、組織内のそれぞれの立場における役割分担、責任の所在を明確にするという観点から積極的に対応していくことが望ましい。


解答は3
※「性能規定」と「仕様規定」が逆です。
 「○○には、△△と××がある」というような並列的列挙で、名称逆にして説明するというのはよくある択一セオリーです。

2-1-2 公共投資の部門別割合の一部を示した以下の図の中で線(ア)は次のどの部門を示すか。

名目公的固定資本形成の割合の推移
(公的固定資本形成とは公共投資額から用地費、補償費等を除いたもの)

(1)治水  (2)道路  (3)下水道  (4)公園  (5)農林漁業


解答は2
※身の回りの事業量から感覚的にわかると思います。

2-1-3 IS09000 シリーズにおける品質マネジメントシステムに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)監査は公平な立場の外部機関が行うだけでなく、企業自身が社内で行う。
(2)製品の品質管理のため統計的手法が活用される。
(3)プロセスを標準化するとともに、その記録も整理保管する。
(4)手順書は、品質に有害な影響を及ぼす可能性があるものについては作成しなければならない。
(5)品質システムの確立、維持、実行の権限がある管理責任者は、社外から選任する。


解答は5
※社内から選任します。

2-1-4 建設CALS/ECに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)膨大な各種情報を標準化、電子化することにより、ネットワーク上での情報の共有が可能となる。
(2)電子入札により、契約締結までの現場説明等の発注者との会議の回数を少なくすることができる。
(3)公共事業の電子商取引きを2004年までに行うことが情報公開法(通称)によって定められている。
(4)施工段階の情報交換が容易となり、事業全体の効率化が図れる。
(5)電子データの活用により、工事等での品質向上や効率化が期待される。


解答は3
※電子商取引を2004年までに行うこと自体は確かですが、それCALS/ECのアクションプログラムで決められたことで、情報公開法で定められたものではありません。

2-1-5 循環型社会形成推進基本法及びその関連法に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)「循環型社会形成推進基本法」は、社会における物質循環の形成及びこれによる天然資源の消費抑制と環境負荷低減を目的に制定された。
(2)「循環型社会形成推進基本法」では、排出抑制が最も重要であることを明確にしている。
(3)「循環型社会形成推進基本法」では、製品製造などの事業者に対して、製品使用後の段階における責任はないことを明確にしている。
(4)「建設リサイクル法」(通称)は、工事受注者に建築物の分別解体や建設廃材の再資源化などを義務づけ、建設資材などの再生利用を促進することを目的に制定された。
(5)「グリーン購入法」(通称)は、国などの各機関が自ら基準を定めて環境物品の調達を推進するために制定された。


解答は3
※製品使用後の段階に責任があることを明らかにしています。
 
「無責任そうなもの」が違っているのは択一問題のセオリーパターンです。

2-1-6 設計VEに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)設計VEを実施する場合の透明性を確保するため、設計VEの実施手続きがWTO政府調達協定に定められている。
(2)発注者には、設計VEによる技術提案を適切に審査する技術力が必要である。
(3)提案者にインセンティブを与えることが良質な提案に結びつき、設計VEの成功につながる。
(4)アイデアを出せる人に設計VEを担当させることが、コスト縮減に効果的である。
(5)設計VEによって公共事業に民間技術力が積極的に活用できるため、建設コスト縮減や機能向上が期待できる。


解答は1
※そんなことまでWTO協定には定められていません。

2-1-7 次の法律のバリアフリーに関する記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」は、鉄道等の公共交通機関の車両、旅客施設に加え周辺の道路、駅前広場等を一体的にバリアフリー化することを目的としている。
(2)「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律」が対象にしている建築物は、病院、百貨店等不特定多数の者が利用する建築物である。
(3)「大都市地域における優良宅地開発の促進に関する緊急措置法」は、宅地開発事業計画の認定基準として高齢者、身体障害者等の公共施設の円滑な利用の確保を定めている。
(4)「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づく日本住宅性能表示基準には、高齢者等への配慮に関することが含まれている。
(5)「都市計画法」に基づく都市計画区域マスタープラン及び市町村マスタープランにおいて、地方公共団体は国が定める都市計画基準に基づき都市のバリアフリー化に関して記述しなければならない。


**********皆様からの情報・ご指摘*****いなかものさんに情報をいただきました。ありがとうございます。
都市計画マスタープランに記載する内容は、
@ 都市計画の目標(都市づくりの基本理念、市街地像など)
A 区域区分の方針
B 土地利用に関する主要な都市計画の決定方針
C 都市施設の整備に関する主要な都市計画の決定方針
D 市街地開発事業に関する主要な都市計画の決定方針
E 自然的環境の整備または保全に関する都市計画の決定方針
となっています。
したがって、明らかにDが間違い、だと思います。
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**********皆様からの情報・ご指摘*****島びとさんに情報をいただきました。ありがとうございます。
「都市計画区域のマスタープラン」とは「都市計画法第六条の二」にある「都市計画区域の整備、開発及び保全の方針」のことで、「市町村マスタープラン」とは「都市計画法第十八条の二」にある「当該市町村の都市計画に関する基本的な方針」のことです。
 〜都市計画法法第六条の二第2項〜
 都市計画区域の整備、開発及び保全の方針には、次に掲げる事項を定めるものとする。
 一 都市計画の目標
 二 区域区分の決定の有無及び当該区域区分を定める時はその方針
 三 前号に掲げるもののほか、土地利用、都市施設の整備及び市街地開発事業に関する主要な都市計画決定の方針
以上のようにバリアフリーについては触れられていません。よってDが間違いです。
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解答は5

2-1-8 平成10年3月に閣議決定された現行の「全国総合開発計画」に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)第5次の全国総合開発計画であり、「21世紀の国土のグランドデザイン」と呼称されている。
(2)目標年次2010-2015年までの計画期間中に、時代に適合した課題を設定して、戦略的に施策を展開することとしている。
(3)東京への一極集中から多極分散型国土の形成を図るため、新産業都市構想を提唱している。
(4)計画期間中の国土基盤整備の投資額は示さず、国土基盤投資の重点化、効率化の方向を示している。
(5)多様な主体の参加と地域連携による国土づくり、地域づくりを推連することとしている。


解答は3
※新産業都市構想は一全総です。

2-1-9 環境に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)平成10年現在、建設工事に伴い排出される建設廃棄物が全産業廃棄物の排出量の約2割、最終処分量の約3割以上を占め、その発生抑制、リサイクルの推進が強く求められている。
(2)内分泌擾乱化学物質(いわゆる環境ホルモン)の問題は、生態系や人の健康に様々な影響を及ぼすことが懸念される重要な課題であり、健全な水循環、住環境の構築のために必要な調査研究が行われている。
(3)地球温暖化のメカニズムは、大雑把には二酸化炭素等の温室効果ガスが大気中に過剰に蓄積された結果、日射を吸収して加熱された地表面からの赤外線放射を温室効果ガスが吸収してしまい、宇宙への熱の放出が過剰に妨げられ、地球規模で気候が温暖化するというものである。
(4)平成9年に京都で開催された気候変動枠組条約第3回締約国会議において京都議定書が採択され、平成20年(2008年)から平成24年(2012年)までの期間中に、日本は温室効果ガスの排出を平成2年(1990年)レベルより3%削減することが課せられた。
(5)ダイオキシン問題は、将来にわたって、国民の健康を守り、環境を保全するために政府を挙げて取り組んでいくべき重要な課題であり、「ダイオキシン類対策特別措置法」が平成12年から施行されている。


解答は4
※3%ではなくて6%です(参考:こちら)。ずっと修正を忘れていたのを、魔法使いさんのご指摘で気がつきました。ありがとうございました。

2-1-10 次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)JISは工業標準化を促進することによって品質の改善、生産能率の増進、生産の合理化、取引きの単純公正化、消費の合理化を図ること等を目的として制定された。
(2)PFIとは、国民のニーズにより的確に応える事業の円滑な推進のため、計画段階から一般の人々の意見を聴取し事業を進める方式である。
(3)WTOでは、物品の貿易に加え、サービスや知的所有権の貿易も対象とした協定と紛争解決、貿易政策、政府調達等の協定が発効された。
(4)SI単位系とは、国際度量衡協会で世界的な標準化を進めるために採択された単位系で、SI単位とSI接頭語から構成される。
(5)ISOとは、製品やサービスの世界的な標準化を進めることを目的として設立された組織である。


解答は2
※それはPFIではなくてPI(パブリック・インボルブメント)です。

2-1-11 従来の環境影響評価実施要綱(昭和59年8月閣議決定)に代わり、平成11年6月に全面施行された環境影響評価法の新たな特徴についての次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)第一種事業に準ずる規模の第二種事業について、環境影響評価の実施の必要性を個別に判定する仕組みを導入した。
(2)環境影響評価の準備書の手続きの前に、対象事業実施区域、環境影響評価の項目並びに調査、予測及び評価の方法等について記した方法書を作成しなければならなくなった。
(3)環境保全対策を実施しようとする場合、その措置を講ずることとするに至った検討の状況を準備書に記載すべきことが規定された。
(4)許認可などに係る個別法の審査基準に環境保全の視点が含められていない場合を除き、アセスメント結果に応じて、許認可等を与えないことや条件を付すことができることとなった。
(5)従来、環境庁長官(現、環境大臣)は主務大臣から意見を求められた時しか意見を述べられなかったが、本法では必要に応じて意見を述べることが可能となった。


**********皆様からの情報・ご指摘*****青い炎さんに情報をいただきました。ありがとうございます。
解答は4

※個別法に環境保全の視点が含められていなくとも、アセス結果に応じて許認可等を与えないこと・条件を伏す事ができます(法第33条)。
 なお、(1)は同法第2条、(2)は第5条、(3)は第14条、(5)は第23条に定められています。環境影響評価法の概要は
こちらが参考になります。

2-1-12 社会資本の整備に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)社会資本整備の評価においては、「どれだけの量を整備したか」というアウトプット指標に加えて、「整備した結果、利便性や快適性がどれだけ増大したか」というアウトカム指標による評価が重要である。
(2)公共事業の実施に当たって、発注者は、良質なモノを低廉な価格でタイムリーに調達するという責任を果たさなければならない。
(3)「企画立案→実施→評価→政策の改善」という政策のマネジメントサイクルによって、期待どおりの成果を挙げているかを確認し、改善しながら事業を進めていくことが重要である。
(4)公共投資の効果には、形成される社会資本が利用されることにより長期的に経済を活性化させ生活を豊かにする「フロー効果」と公共投資が短期的な有効需要を創出する「ストック効果」がある。
(5)費用便益比(B/C)とは、一定期間における総便益と総費用の現在価値の比であり、これが1より大きければ社会経済的にみて実施する価値があることを意味する。


解答は4
※フロー効果とストック効果が逆です。
 「○○には、△△と××がある」というような並列的列挙で、名称逆にして説明するというのはよくある択一セオリーです。

2-1-13 最近の日本の建設事情に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)建設業者数は、全国で50万社を超えるが、そのうち従業員100人以下の規模の会社が90%以上を占めている。
(2)建設就業者の全就業者数に対する割合は約10%であり、この比率は欧米先進国の比率より低い。
(3)建設投資額のGDPに対する比率は、欧米先進国に比べてかなり低い。
(4)建設工事額のうち海外工事の占める割合は10〜20%である。
(5)建設投資額のGDPに対する比率は約30%である。


解答は1?
※すぐ調べられるのでしょうが、時間がなく調べていません。どなたか情報をいただけるとありがたいです。

2-1-14 次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)CADとは光ケーブルを用いて、遠隔地の災害情報を総括的に管理するシステムである。
(2)GISとは地図とそれに付随する各種データを一体的にコンピューターに蓄積し、空間的な検索、解析あるいは表示などができるようにしたシステムである。
(3)TDMとは交通需要マネジメントのことをいい、自動車の効率的利用や公共交通への転換など交通行動の変動により、渋滞の緩和や環境負荷の軽減を図るシステムである。
(4)GPSとは人工衛星を使い地球上、の三次元座標を測定するシステムであり、近年建設現場の測量などに活躍されている。
(5)ITSとは情報通信技術等を用いることにより、渋滞の軽減等交通の円滑化を図るとともに、安全性、輸送効率及び快適性の向上の実現をねらいとするものである。


解答は1
※CADはコンピュータ上での製図作業です。明らかな誤りを見つけたので、後は全く見ていません。

2-1-15 「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律」によって、定められている適正化を図るための基本原則に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)入札・契約の過程、内容の透明性の確保
(2)入札参加者の公正な競争の促進
(3)談合、その他不正行為の排除の徹底
(4)公共工事の予算の削減
(5)公共工事の適正な施工の確保


解答は4
※予算の削減は入札適正化には関係ありません。

記述問題
 2-2 次の2問題のうち1問題を選んで建設部門全体の問題として解答せよ。(茶色の答案用紙を使用し、解答問題番号を明記し、2枚以内にまとめよ。)

2-2-1 これからの社会資本の維持・管理と再生のあり方について、あなたの意見を述べよ。

2-2-2 経済社会の構造改革が求められている中で、今後の技術開発のあり方について、あなたの意見を述べよ。