技術士第二次試験 平成21年度 総合技術監理

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※択一正解は、技術士会の公表正解に関して、臨時掲示板での議論を参考に解説を加えたものです。
 異論や情報などありましたら、掲示板あるいはメールにてお願いします。


択一問題

  1. ISO9000ファミリーに関する(ア)〜(オ)の記述のうち、不適切なものの数を@〜Dの中から選び答えよ。

    (ア)ISO9000ファミリーは、ISO(国際標準化機構)によって制定された「品質管理及び品質保証に関する規格」である。
    (イ)ISO9000ファミリーは、製品の品質そのものを保証するための要求事項を規定している。
    (ウ)ISO9001は、2000年の改定によりISO14000ファミリーとの整合性をとるためにPDCAサイクルが適用されるようになった。
    (エ)ISO9001は、2000年の改定により、顧客志向・顧客満足という考え方も取り入れられるようになった。
    (オ)ISO9000ファミリーの要求事項を基にした品質マネジメントを行うことにより、顧客の信用と販路拡大、品質の安定と不良率の提言といったメリットが期待できる。


    @ 0 A 1 B 2 C 3 D 4

    正解は2
    ※(イ)は品質そのものではなく、品質システムを保証するための要求事項を規定しています。他は正解です。青本p.214など。

  2. 財務会計と財務諸表に関する次の記述のうち、最も不適切なものを選び答えよ。

    @ 貸借対照表は、一定時点(通常は決算日)における資産、負債、資本の財政状態を表すもので、組織の健全性を分析する基礎資料となる。
    A 財務会計は、組織の外部者に対して報告することが目的であるため、財務諸表(決算書)が一定の形式で作成される。
    B 損益計算書は、一定期間(通常は1年の会計期間)における収益、費用、利益の内容を、経営成績として明らかにするものである。
    C 貸借対照表における債務超過とは、負債が資本を上回った状態である。
    D 貸借対照表の貸方は負債と資本の和であり、借方は資産である。


    正解は4
    ※債務超過とは、負債が資産を上回り、資本がマイナスである状態です。青本p.52-53。

  3. 次の我が国で販売されている製品に貼付されているマークに関する説明は、@〜Dのうちどのマークに対するものかを選び答えよ。

    「消費生活用製品のうち、一般消費者の生命又は身体に対して特に危害を及ぼすおそれが多いと認められる製品を特定製品として政令で指定し、国で定めた技術上の基準に適合し、そのマークを表示していないものは、販売又は販売目的での陳列が禁止されている。」

    @ GSマーク A PLマーク B CEマーク C SGマーク D PSマーク

    正解は5
    ※青本p.37。

  4. 基準生産計画(MPS:Master Production Schedule)と資材所要量計画(MRP:Material Requirements Planning)に関する次の(ア)〜(オ)の記述のうち、不適切なものの数を@〜Dの中から選び答えよ。

    (ア)MPSは、総合生産計画によって生産する製品全体の生産計画を、最終的に製品ファミリー(共通の段取りコストを持つ製品アイテムのグループ)単位のものへと分解することがその機能である。
    (イ)総合生産計画からMPSへ分解する第1ステップでは、製品アイテム(色・装飾・サイズなどがそれぞれ異なる特徴を持つ品目のグループ)単位の生産計画に分解する。
    (ウ)MRPは、製品アイテムを構成する部品や原材料の生産や調達を決定することがその機能である。
    (エ)MRPのインプット情報には、MPSの他に製品構成、リードタイム、手持在庫量、受入確定量などがある。
    (オ)MRPシステムの目的は、必要な量だけを生産し、余分な量を生産しないことである。


    @ 0 A 1 B 2 C 3 D 4

    正解は3
    ※MSPでは、第1ステップで製品ファミリーに分解し、第2ステップで製品アイテムに分解します。よって(ア)と(イ)が不適切です。青本p.27。

  5. ある工事において、A〜Fの各作業の所要日数と先行作業(その作業を開始する前に完了しているべき作業)が下表のようになっている。
    作業名 所要日数 先行作業
    A 6 なし
    B 10 なし
    C 10 なし
    D 8 A
    E 8 B,C,D
    F 10 B
    この工事の最短の所要日数は22日であるが、発注元からの依頼により18日以内に終了する必要が生じた。
    18日以内にするための次の@〜Dの対策のうち、誤っているものを選び答えよ。

    @ 作業A、作業B、作業Eをそれぞれ2日短縮する。
    A 作業A、作業B、作業Fをそれぞれ2日短縮する。
    B 作業A、作業D、作業Fをそれぞれ2日短縮する。
    C 作業B、作業D、作業Eをそれぞれ2日短縮する。
    D 作業D、作業E、作業Fをそれぞれ2日短縮する。


    正解は2
    ※下図のように、A→D→Eがクリティカルパスとなります。22日を18日に短縮するのですから、4日短縮です。選択肢では3つのパスをそれぞれ2日短縮するとありますから、4日短縮のためには、この3つのパスのうち2つがクリティカルパス上にある必要があります。つまり、A、D、Eのうち2つが短縮パスになっていないといけないわけです。
    この条件を満足しないのはAです。クリティカルパス上の作業はAしか入っていませんから、全体工程は2日しか短縮できません。



  6. PFI(Private Finance Initiative)に関する次の記述のうち、最も不適切なものを選び答えよ。

    @ PFIとは、公共施設等の建設、維持管理、運営等を民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用して行う手法のことである。
    A PFIの導入により、国や地方公共団体の事業コストの削減、より質の高い公共サービスの提供を目指すものである。
    B PFI事業においては、事業を担う企業体の法人格上の独立性又は事業部門の区分経理上の独立性が確保されることが求められる。
    C PFI事業におけるVFM(Value For Money)評価のVFMとは、事業期間全体を通じた公的財政負担の見込額の現在価値のことである。
    D リスク管理においては、リスクが顕在化した場合の追加的支出の分担を含む措置について、具体的かつ明瞭に規定することに留意する必要がある。


    正解は4
    ※従来公共事業方式における費用(PSC)とPFIで実施した場合の費用(ただしLCCで、税収調整後の金額)の差額です。VFM>0(PSC-PFILCC>0)ならPFIにする価値があります。

  7. 負荷計画に関する(ア)〜(オ)の記述のうち、不適切なものの数を@〜Dの中から選び答えよ。

    (ア)負荷計画は、工数計画もしくは余力計画とも呼ばれている。
    (イ)負荷計画において負荷不足を生じた場合に調整するための対策として、人員や設備の削減やオーダの投入時期の後倒しなどがある。
    (ウ)労働時間基準における負荷工数は、「負荷工数=就業時間×生産数+段取り時間」で計算される。
    (エ)負荷の平準化調整における手法としては、CPM(critical path method)が主に利用される。
    (オ)計画通りの生産を実現するためには、リードタイムを安定させることが重要である。


    @ 0 A 1 B 2 C 3 D 4

    正解は4
    ※以下のとおり。
    (ア)・・・・○
    (イ)・・・・× 負荷不足ということは余裕があるのですから、オーダの投入時期を前倒しします。
    (ウ)・・・・× 負荷工数=標準時間×生産数+段取り時間です。(就業時間ではなく標準時間)
    (エ)・・・・× CPMは工程短縮に関わる手法です。平準化調査手法としては、山積み・山崩し法があります。
    (オ)・・・・○。


  8. TPM(Total Productive Maintenance)とその活動構造に関する次の記述のうち、最も不適切なものを選び答えよ。

    @ TPMにおける重複小集団活動とは、定常組織には組み込まれない複数の小集団に所属し活動するもので、その自主性が大いに期待されている。
    A 階層軸では、経営階層レベル、中間階層レベル、下位階層レベルの3つに分け、各階層レベルの問題として取り扱う。
    B 生涯過程軸では、生産システムの調査研究・設計に始まり、製作、運転、保全にいたる生涯過程に活動範囲を拡大し、高い生産性の確保を目指す。
    C 設備に関しては、調査研究・設計段階では保全予防、運転段階では予防保全、改良保全などのように、保全方式を計画的に実施する。
    D 保全活動における基本は、劣化への対応であり、劣化防止、劣化測定、劣化回復の3つの活動がある。


    正解は1
    ※青本p.58

  9. 人の行動や組織に関する次の記述のうち、最も不適切なものを選び答えよ。

    @ マグレガーによれば、基本的に性悪説に立つものがX理論、性善説に立つものがY理論であり、現代の組織運営ではY理論に基づいたやる気を引き出す管理が適しているとしている。
    A マズローによれば、人間の欲求には5段階あり、それは物質的(又は生理的)欲求、安定(又は安全)欲求、連帯(又は社会的)欲求、尊敬(又は尊厳)欲求、自己実現欲求であるとしている。
    B テイラーの科学的管理法によれば、作業者毎の作業分析や動作分析に基づいた作業者別計画を作成することにより、作業者が管理から開放されるとしている。
    C 三隅のPM理論によれば、組織の目標達成や課題解決に関する機能と、組織の維持を目的とする機能の両者をともにバランス良く持つ者が優れたリーダーだとしている。
    D ハーシーとブランチャードのSL理論(シチュエーショナル・リーダーシップ理論)によれば、望ましいリーダシップのスタイルは部下の成熟度によって異なるとしている。


    正解は3
    ※青本p69-70

  10. 組織においては、構成員の間で様々な分業や調整が行われており、組織形態とは組織における分業と調整の体系のことを示す。
    (ア)〜(カ)に列挙した項目のうち、組織において分業と調整の大筋を決めるために明確に定める必要があるものとして、不適切なものの数を@〜Dの中から選び答えよ。

    (ア)分業関係
    (イ)部門分化
    (ウ)組織風土
    (エ)伝達・協議関係
    (オ)公式ルール化
    (カ)組織文化


    @ 0 A 1 B 2 C 3 D 4

    正解は3
    ※青本p.71

  11. 労働時間や休暇などについては、法令により規定されているが、労働基準法の条文で示されている原則的な事項に関する次の記述のうち、最も不適切なものを選び答えよ。

    @ 使用者は、労働力に対して、毎月少なくとも2回の休日を与えなければならない。
    A 使用者は、労働者に、休憩時間を除き、1週間に40時間を超えたり、1日に8時間を超えて、労働させてはならない。
    B 使用者は、労働者に法定労働時間を超えて労働させる場合(時間外労働)には、書面による協定をし、行政官庁に届け出る必要がある。
    C 使用者は、時間外労働の場合には、25%以上の割増賃金を支払わなければならない。
    D 使用者は、その雇入れの日から起算して6ヶ月間継続して勤務し全労働日の80%以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない。


    正解は1
    ※休日は週1回です。労基法第35条、青本p.76。

  12. 次の賃金総額と経営諸指標の関係を表す式において、【ア】、【イ】に入る用語の適切な組み合わせを@〜Dの中から選び答えよ。
      賃金総額=【ア】×【イ】×従業者数

        【ア】      【イ】
    @ 労働分配率  労務比率
    A 付加価値額  労務比率
    B 付加価値額  労働分配率
    C 付加価値額  労働生産性
    D 労働分配率  労働生産性


    正解は5
    ※青本p.77。

  13. 近年、従業者の雇用形態が多様化しているが、雇用形態により従業員は、一般に直用と非直用に大別できる。
    (ア)〜(カ)に示した従業員のうち、非直用の従業員をすべて挙げている組み合わせを、@〜Dの中から選び答えよ。

    (ア)パート
    (イ)派遣社員
    (ウ)アルバイト
    (エ)有期契約社員
    (オ)請負作業員
    (カ)嘱託


    @ (ア)と(エ)
    A (イ)と(オ)
    B (イ)と(ウ)と(オ)
    C (ウ)と(エ)と(カ)
    D (ウ)と(オ)と(カ)


    正解は2
    ※青本p.81。

  14. 人間関係管理に関する次の(ア)〜(エ)の記述には、適切なものと不適切なものとが含まれている。その組合せとして正しいものを@〜Dの中から選び答えよ。

    (ア)人間関係管理においては、企業などの組織は、物的・技術的メカニズムとしての技術的組織と、人間関係の複合体としての人的組織との二面性を持っているとしている。

    (イ)人的組織のうちの非公式組織は、従業員の育成環境や職場の居心地の決定などに影響を与え、職場の行動規範の決定には影響を与えない。

    (ウ)組織において、従業員の生産性を上げることは大きな管理目的であるが、その前提として職場の人間関係の円滑化を重視するのが人間関係管理の考え方である。

    (エ)人間関係が円滑であっても、それだけで従業員の作業能率が向上する訳ではない。働こうという意欲を持つためには、動機付けが重要であることが認識されるようになり、行動科学的アプローチの重要性が強調されている。


    (ア) (イ) (ウ) (エ)
    @ 不適切 適切 適切 不適切
    A 適切 不適切 適切 適切
    B 不適切 適切 不適切 適切
    C 適切 不適切 適切 不適切
    D 適切 不適切 不適切 適切

    正解は2
    ※青本p.83。

  15. 派遣労働者に関する次の記述のうち、最も適切なものを選び答えよ。

    @ 派遣労働者の組合からの団体交渉の要求については、労働組合法上の原則として、派遣先が受けなければならない。
    A いわゆる労働者派遣法では、派遣労働者の社会・労働保険の加入については、派遣先事業主に義務付けられている。
    B いわゆる労働者派遣法では、派遣先に対し、派遣労働者の就業環境の維持、診療所の利用の便宜などの措置をとるよう努力することが義務付けられている。
    C 労働者派遣契約を締結するに際して、派遣先は受け入れる派遣労働者を選別するために事前に面接を実施しなければならない。
    D 雇用均等法の職場におけるセクシュアル・ハラスメント防止に関する配慮義務、妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置の規定は派遣元ではなく、派遣先事業主に課せられている。


    正解は3
    ※労働派遣法第40条第2項。

  16. 教育訓練手法・技法に関する次の(ア)〜(エ)の記述のうち、不適切なものの数を@〜Dの中から選び答えよ。

    (ア)知識教育は、商品や技術に関する専門的な情報や仕事の手続きを知識として理解させることを目的として、主として講義や見学などにより実施される。

    (イ)技能教育は、知識を活用して仕事に生かす技能を伸ばすことを目的として、主として実習などの形式で実施される。

    (ウ)態度教育は、職場の同僚と協力する姿勢や仕事に積極的に取り組む態度を向上させ、対人能力を高めることを目的として、主としてブレインストーミングやイメージトレーニングなどの形式で実施される。

    (エ)問題解決能力開発は、組織が求める課題を設定する能力や問題解決の能力を養成することを目的として、主としてケーススタディや課題研究法などが用いられる。


    @ 0 A 1 B 2 C 3 D 4

    正解は2
    ※(ウ)が不適切です。青本p.87。

  17. 情報のセキュリティポリシーに関する次の(ア)〜(オ)の記述のうち、不適切なものの数を@〜Dの中から選び答えよ。

    (ア)セキュリティーポリシーの策定には、組織の長が深く関与しなければならない。
    (イ)セキュリティーポリシーは、コンピュータで管理されない情報は対象としない。
    (ウ)セキュリティーポリシーを高く掲げても実現困難なものでは意味がない。
    (エ)セキュリティーポリシーの策定では、まずセキュリティ事故対処方法から検討すべきである。
    (オ)セキュリティーポリシーは、既成のものの真似でなく自ら策定する必要がある。


    @ 0 A 1 B 2 C 3 D 4

    正解は3
    ※(イ)と(エ)が不適切。青本p.122。

  18. 次の記述のうち、1つの処理を複数台のコンピュータで処理する分散処理に最も関連性が低いものを選び答えよ。

    @ エンドユーザーコンピューティング
    A グリッドコンピューティング
    B クラウドコンピューティング
    C クラスタリング
    D クライアントサーバシステム


    正解は1
    ※青本外からの出題。以下により、@がもっとも関連性が低くなります。(臨時掲示板より引用)
    @エンドユーザがシステム構築・運営等に携わること
    Aネットワーク上の複数コンピュータを統合したシステムとしてサービスを提供
    Bネットワーク上のサーバに処理を分散させることが前提
    C複数のコンピュータを1台のように管理できる
    D分散型システム


  19. 次の記述のうち、SaaS(Software as a Service)の説明として最も適切なものを選び答えよ。

    @ 企業の各種情報システムを互いに連結し、素早い意思決定や効率的な企業経営を実現する方法
    A 企業の経営を効率化するために、基幹業務を統合的に管理する方法
    B ソフトウェアを部品化し、サービスの組み合わせとして情報システムを構築する方法
    C 企業内の膨大なデータを、経営者や社員が分析して、企業の意思決定に役立てる方法
    D ユーザが必要とするソフトウェアの機能だけをネットワークを介してサービスとして配布し、利用できるようにしたソフトウェアの配布方法


    正解は5
    ※青本外からの出題。SaaSで検索するとすぐ出てきます。

  20. 情報セキュリティに関する次の記述のうち、最も不適切なものを選び答えよ。

    @ ワンクリック不正請求とは、会員制サイトなどを装って、単にクリックしただけで、入会金などの名目でユーザに支払いを求める不正行為である。
    A スパイウェアとは、ユーザが気付かないうちにパソコンに侵入し、個人情報などの情報を収集する不正プログラムである。
    B 暴露ウィルスとは、パソコン内に保存されているデータをインターネットに公開する不正プログラムである。
    C フィッシング詐欺とは、電話で実在する人物を偽り、利用者IDやパスワードを聞き出し、悪用しようとする不正行為である。
    D サービス妨害攻撃(DoS攻撃)とは、サーバに大量のデータを送って過大な負荷をかけ、サーバの性能を極端に低下させたり、サーバを機能停止に追い込んだりする不正行為である。


    正解は4
    ※青本外からの出題。実在するサイトを偽りIDやパスワードを入力させて盗むなど。

  21. 個人情報保護法(個人情報の保護に関する法律)で規定されている、個人情報取扱事業者の義務に関する次の記述のうち、最も適切なものを選び答えよ。

    @ 個人情報の利用の目的を完全に特定すること。
    A 個人データの内容が事実でないという理由によって、本人から訂正を求められた場合には、必要な調査を行い、その結果に基づき、訂正を行うこと。
    B 個人情報を取得する手段を予め開示すること。
    C 従業者の個人データの適正な取扱いに関する安全管理のために、モニタリングを常時に行うこと。
    D 個人情報を第三者に提供する場合には、必ず本人の同意を得ること。


    正解は2
    ※青本p.112のF

  22. 知的財産権に関する次の基(ア)〜(オ)の記述のうち、適切なものの数を@〜Dの中から選び答えよ。

    (ア)半導体集積回路の回路配置は保護の対象にならない。
    (イ)新たに品種改良された植物は権利保護の対象にならない。
    (ウ)未登録の商標は全て保護の対象にならない。
    (エ)企業の営業秘密は保護の対象にならない。
    (オ)音楽の演奏など著作物の実演を行う者は保護の対象にならない。


    @ 0 A 1 B 2 C 3 D 4


    正解は1
    ※全て誤りです。青本p.101。

  23. 情報漏えいを想定した事業継続計画(BCP)に関する次の記述のうち、最も不適切なものを選び答えよ。

    @ 事業継続計画発動の基準に関する情報を共有できるようにしておくことが重要である。
    A 漏えいの経路、漏えいした情報の項目などの原因が分からない段階では、原因調査自体にリスクをはらんでいることから、少人数、極秘を大前提とすることが必要である。
    B 十分時間をかけて原因調査を行うべきであるが、調査が完了する前であっても随時情報を公開することも重要である。
    C 情報漏えい事故を起こした企業は、信頼回復のためにも再発防止策を講じた後での事業再開を選択する場合もある。
    D 大量情報漏えい事故が発生した場合などの緊急性が高い場合には、情報公開はインターネットを用いるものに限定することが重要である。


    正解は5
    ※限定するのはよくありませんし、それもなぜネット?

  24. ITサービスの提供者が、一定の基準値を守ってユーザにサービスを提供することを保証する契約であるSLA(Service Level Agreement)の構成要素には、サービス用件やSLA評価項目などがある。SLAで規定されるSLA評価項目に当てはまらないものを@〜Dの中から選び答えよ。

    @ 同時接続可能端末数
    A 障害復旧時間
    B 稼働率
    C ネットワーク内遅延時間
    D オンライン応答時間遵守率


    正解は1
    ※@はSLA評価項目ではなくサービス用件に区分されます。

  25. 次の記述のうち、労働安全衛生管理活動を実施するときの基本原則として留意するべきこととして、最も不適切なものを選び答えよ。

    @ 安全対策は設計者や製造者の側で行うことが基本である。
    A 災害の原因を単なる人間のミスとして安易な処理をしない。
    B 機械は故障し、作業者は誤りを犯すことを前提としている。
    C 明確な危険と認識されなければ安全と見なしてよい。
    D ライフサイクルアセスメントの発想が必要である。


    正解は4
    ※これは常識間隔でわかると思います。

  26. メンタルヘルスを維持するための段階は一次予防、二次予防、三次予防の3つに分けられるが、次の記述のうち、二次予防に関するものとして、最も不適切なものを選び答えよ。

    @ 早期治療を行える状況をつくる。
    A 従業員の兆候を読みとるための環境作りを行う。
    B 早期相談体制の整備を行う。
    C 日常からメンタルヘルスの啓蒙を行う。
    D 職場復帰する従業員に対する職場環境を整備する。


    正解は5
    ※職場復帰は三次予防です。青本p.148。

  27. 製造工程で用いているガスの毒性について調べたところ、ガスAの許容濃度が低く、万が一の漏洩事故の発生時のリスクレベルを見積もると、社内安全管理基準に照らして許容されないリスクレベルになることがわかった。
    そのため、生産原単位は少し高くなるが許容濃度の高いガスBを代替品として選び、社内安全管理基準をクリアした安全な工程に変更した。
    また作業現場の環境測定を行うこととした。
    以上の一連の作業において、リスク管理の観点から見て、最も関係の薄い項目を@〜Dの中から選び答えよ。

    @ リスク監視
    A リスク算定
    B リスク評価
    C リスク回避
    D リスク低減


    正解は4
    ※リスク回避はガスの使用や製造そのものをやめることになります。

  28. ある食品メーカで、景気の悪化に伴う売り上げ減少を打開するために、過去に発売して好評であった製品を特に生産コストの低減に注目して、大幅に改良した新しい製品を発売したところ、まもなく食べたら気分が悪くなったという最初の苦情が寄せられた。
    類似の苦情が前製品でも発売当初にあったら、結局、前製品には問題がなかった。
    そこで、お客様相談室長は、新製品に対する生産管理変更情報の確認などは必要ないと判断して、今回は何らの対処もせず放置した。
    その後同様な苦情が増加し、極めて重大な食品安全事故に発展した。
    リスク認知を歪める@〜Dのバイアスのうち、この室長の最初の苦情者への対応について最も当てはまるものを選び答えよ。

    @ 楽観主義的バイアス
    A カタストロフィー・バイアス
    B ベテラン・バイアス
    C 正常性バイアス
    D バージン・バイアス


    正解は3
    ※ベテラン・バイアス:過去のリスク対処により得られたリスク耐性が災いし、新たなリスクに対する判断を誤らせる可能性のこと。

  29. 大型航空機は複数のエンジンを搭載し、いずれかが故障しても墜落することなく飛び続けられるよう設計されている。
    これはシステムの信頼性、安全性に関連する@〜Dの手法・概念のうちどれに該当するか、最も適切なものを選び答えよ。

    @ フォールトトレランス
    A フールプルーフ
    B フォールトアボイダンス
    C フェールセーフ
    D タンパープルーフ


    正解は1
    ※機能を保っているわけですからフォールトトレランスもしくはフェールソフトになります。青本p.153-154。

  30. 安全やリスクに対する国や地方自治体の最近の動きに関する次の記述のうち、最も不適切なものを選び答えよ。

    @ 平成17年の労働安全衛生法の改正により、危険性又は有害性等の調査(リスクアセスメント)及びその結果に基づく措置の実施が事業者の努力義務として規定された。
    A H5N1型鳥インフルエンザからの新型インフルエンザの発生に備え、治療薬及びプレパンデミックワクチンの備蓄を進めている。
    B 自動回転ドアでの死亡事故の後、自動回転ドアの安全規格がJIS規格として新たに制定された。
    C 地震の発生直後に震源や地震の規模を推定し、各地での主要動の到達時刻や震度を予測し知らせる緊急地震速報が一般向けに提供されるようになった。
    D 平成16年に消防法が改正され、戸建を除く全ての住宅に火災警報器の設置義務が規定された。


    正解は5
    ※常識的に戸建が除かれる合理的な理由がありません。

  31. 次の図は、災害の発生事象Tを頂上事象とし、A1、A2を中間事象、X1、X2、X3を原因事象とするフォールトツリー(FT)の図である。
    この図に対応した次の(ア)〜(オ)の記述のうち、誤っているものの数を@〜Dの中から選び答えよ。
    なお、(イ)〜(オ)の各記述の中で、記載されていない原因事象は発生していないものとする。


    (ア)A1とA2が発生すれば、Tが起こる。
    (イ)X1とX2のいずれかが発生すれば、A1が起こる。
    (ウ)X1とX3のいずれかが発生すれば、A2が起こる。
    (エ)X1とX2が発生すれば、Tが起こる。
    (オ)X1とX3が発生すれば、Tが起こる。


    @ 0 A 1 B 2 C 3 D 4

    正解は3
    ※(イ)と(オ)が誤りです。
     (イ)・・・・X1とX2がともに発生しないとA1は起こらない。
     (オ)・・・・X1とX3が発生してもX2が発生しなければA1が起こらないのでTも起こらない。

  32. 厚生労働省の「機械の包括的な安全基準に関する指針」(平成19年7月改正)の考え方等に関する次の記述のうち、最も不適切なものを選び答えよ。

    @ 機械メーカでの設計・製造段階で機械の安全化を図ることが、本質的な安全化を進める根本的対策として最も効果的である。

    A 機械メーカでは、機械を操作する者に頼らない本質的な安全方策を優先して設計・製造することが重要である。

    B 機械ユーザーは、発注の段階で安全に関する仕様を専門家である機械メーカに任せるべきである。

    C 機械ユーザーは、メーカーから提供された「使用上の情報」を活用し、リスクアセスメントを実施し、「使用上の情報」に記載のあった事項以外も含め必要な保護方策を実施する。

    D 機械ユーザーは、リスクアセスメントを実施するうえで必要な情報がメーカーから提供されていない場合には、メーカーに情報の提供を求める。


    正解は3
    ※常識敵意わかります。

  33. いわゆる「拡大生産者責任」に関する次の記述のうち、最も適切なものを選び答えよ。

    @ 拡大生産者責任とは、生産者が資源採取から製品の廃棄後に至るまでの環境負荷に対して全ての責任を負うという考え方である。

    A 拡大生産者責任の主要な目標として、発生源での抑制、廃棄物の発生抑制、より低コストな製品設計などがある。

    B 拡大生産者責任の効果として、生産過程の下流側へのプレッシャーや、内部環境コストを外部化するよう適切なシグナルを送ることができる。

    C 拡大生産者責任を果たす具体的な手法として、製品の引き取り、デポジット、リファンドなどがある。

    D 日本では拡大生産者責任の概念を明記している法律はないものの、個別のリサイクル関連法において具体的な取組みが担保されている。


    正解は4
    ※青本p.177

  34. 環境に関する現象についての次の(ア)から(オ)の説明のうち、最も不適切なものの数を@〜Dの中から選び答えよ。

    (ア)アオコ:水底の有機物の分解による酸素の大量消費により生成される酸欠水塊が水面に上がり、青緑色に見える現象。
    (イ)酸性雨:化石燃料の燃焼に伴い放出される二酸化炭素が主原因となり生成される酸性度の強い降水。
    (ウ)赤 潮:プランクトンが大量増殖し、海などが赤色や褐色に見える現象。富栄養化、水温等の条件により発生すると考えられている。
    (エ)逆転層:一般的には、都市部などにおいて風のない冬に、大気の温度が、通常とは逆に高度が下がるほど低くなる気層。
    (オ)オゾンホール:温室効果ガスである二酸化炭素の放出が主原因で、成層圏に形成されるオゾン層のオゾンが減少した部分。


    @ 1 A 2 B 3 C 4 D 5

    正解は3
    ※(ア)、(イ)、(オ)が誤り。(臨時掲示板引用)
     (ア)・・・・× アオコは植物プランクトン
     (イ)・・・・× 酸性雨の原因は「二酸化炭素が主」ではない
     (ウ)・・・・○
     (エ)・・・・○
     (オ)・・・・× オゾンホールの原因はフロンなど


  35. LCA(ライフサイクル・アセスメント)に関する次の記述のうち、最も適切なものを選び答えよ。

    @ LCAの手法の1つとして、企業全体で環境に与える負荷を物量値で測定・把握し、環境負荷の入出力を表にまとめる方法がある。

    A ライフサイクル・インベントリ分析の対象は製造から廃棄段階まであるが、使用・消費段階は消費者の選好等により大きく異なるため対象には含めない。

    B LCAの手法の1つである産業連関法は、産業連関表を基礎とする方法であり、特に個々の製品の分析や、新技術やリサイクルを含めた分析に適している。

    C LCAの対象とする環境負荷物質は主として二酸化炭素であり、その他の環境負荷物質・エネルギー等については全て二酸化炭素に換算して対象に取り込む。

    D LCAの影響評価における各カテゴリーの重み付けには、専門家で構成するパネルでの決定、目標値と実際の数値との比較、経済価値への換算、の方法がある。


    正解は5
    ※青本p.203

  36. 自然環境保全に関する次の記述のうち、最も適切なものを選び答えよ。

    @ 「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」に基づき、日本では2009年4月現在、自然遺産として富士山、白神山地、屋久島、知床の4件が登録されている。

    A いわゆる「ラムサール条約」は、特に水鳥を中心に国際的に重要な湿地の保全及びそこに生息・生育する動植物の保全、適正な利用を推進することを目的としている。

    B 「自然公園法」に基づき、優れた自然の風景地の保護・利用増進などを目的として、国立公園、国定公園及び自然環境保全地域が指定されている。

    C 「文化財保護法」は、天然記念物などではなく、歴史的価値のある人工的な建造物などを保護対象としている。

    D いわゆる「外来生物法」に基づき、要注意外来生物に指定されると、飼育、栽培、輸入、野外への放出などが規制される。


    正解は2
    ※以下によりA以外は誤りです。
     @富士山は指定されていません。

     B自然公園法は国立公園、国定公園および都道府県立自然公園からなる自然公園を指定します。
     C天然記念物も含みます。
     D「要注意」ではなく「特定」です。

  37. 廃棄物に関する次の(ア)〜(オ)の記述のうち、不適切なものの数を@〜Dの中から選び答えよ。

    (ア)廃棄物には大きく一般廃棄物、産業廃棄物の2つに区別されることが、廃棄物の処理及び清掃に関する法律において定義されている。

    (イ)廃棄物の中で、爆発性、毒性、感染性、その他人の健康や生活環境に被害を生じるおそれがあるものは特別管理廃棄物とされ、収集から処分までの過程で厳重な管理が定められている。

    (ウ)日本全国の年間の廃棄物の総排出量は、一般廃棄物のうちのごみの方が全ての産業廃棄物よりも大きい。

    (エ)一般廃棄物の処理は市町村の責務と定められている。一方、産業廃棄物の処理は廃棄物を排出した事業者の責務とされている。

    (オ)産業廃棄物の処理に関してはマニフェスト制度があり、産業廃棄物の処理を受託した者がマニフェストを発行し、廃棄物処理の流れを管理している。


    @ 1 A 2 B 3 C 4 D 5

    正解は2
    ※(ウ)と(オ)が誤り。
     (ウ)・・・・× 産廃>一廃
     (オ)・・・・× 産廃を出したものが発行


  38. 環境経済評価に関する次の記述のうち、最も不適切なものを選び答えよ。

    @ 環境問題が深刻化する理由の一つに、環境を社会経済システムの外側においてきたことが挙げられる。

    A 近年では、規制的な手法だけでなく、市場の原理に基づいた形、すなわち人々の選好に基づく決定に委ねる形で環境問題を解決していく方法も注目されている。

    B 経済理論上では、環境利用を直接規制するよりも税や補助金などの経済的規制を用いることで、より多くの社会的費用が節約されると考えられている。

    C 環境の社会的評価手法には、表明選好型評価と顕示選好型評価があり、仮想評価法やコンジョイント分析は後者に属する。

    D 消費者の環境保全に対する意識が向上しつつあり、財やサービスを供給する企業の側の意識にも影響を及ぼし、製品に関する環境情報の発信が増えている。


    正解は4
    ※青本p.192

  39. 環境アセスメントに関する次の(ア)〜(オ)の記述のうち、不適切なものの数を@〜Dの中から選び答えよ。

    (ア)環境影響評価法において定められている第一種事業では、スクリーニング手続きが必要である。
    (イ)大気、騒音、土壌などに関しては、環境基本法に基づく環境基準として、維持されることが望ましい定量的な基準が定められている。
    (ウ)スコーピング手順においては、環境アセスメントの方法を決定し、環境影響評価準備書を作成する。
    (エ)水質汚濁に関しては、環境基準で定められている項目について公定の測定方法が示されている。
    (オ)動物への影響予測では、調査結果をもとに、食物連鎖の変化などに関する定性的な予測が主に実施されている。


    @ 1 A 2 B 3 C 4 D 5

    正解は2
    ※(ア)と(ウ)が誤り。
     (ア)・・・・× スクリーニングは第二種事業です。
     (ウ)・・・・× 準備書ではなく方法書を作成します。


  40. 地球温暖化に関する次の記述のうち、最も適切なものを選び答えよ。

    @ 「平成20年版 環境循環型社会白書」によると、世界で人為的に排出される二酸化炭素の量は、自然界の吸収量の5倍を超える水準に達している。

    A 京都議定書では、温室効果ガスの排出量を、第1約束期間(2008年〜2012年)において先進国全体で1990年レベルと比べて10%削減することを目標としている。

    B 我が国は、世界全体の二酸化炭素排出量を現状に比して2050年までに25%削減する目標を提案しており、その達成のためには、低炭素社会の構築と革新的技術開発が必要である。

    C 京都議定書目標達成計画では、温室効果ガスの排出抑制・吸収の量に関する目標には、森林経営による吸収量の確保は含まれていない。

    D 京都メカニズムは、京都議定書において導入された国際的に協調して数値目標を達成するための制度で、国際排出量取引、共同実施、及びクリーン開発メカニズムの3つの手法がある。


    正解は5
    ※解説は省略します。


記述問題

2−2 次の問題について解答せよ。

 複雑化し相互依存性の強い現代社会では、一見関係性が少ないと思われがちな現象の発生も、時として前提とされていた事業環境を急速かつ広域に変化させ、事業結果や社会へ多大な影響を与える場合がある。
 このような現代社会において、各種のプロジェクトや業務を遂行するに当っては、その基盤となる前提(社会動向、社会制度、経済状況、技術革新、自然環境、経営資源など)を適切に考慮し、技術の適用を慎重に行っていく必要がある。
 また、この際、あらかじめ前提や環境の変化を想定し検討しておくことは、考慮する前提や環境の変化は、自らのコントロール下に置けないとしても、次善策への展開などにおいて有益であることを忘れてはならない。
 以上の観点を踏まえて、あなたが経験した、あるいは経験をしなくとも知見を持つプロジェクトや業務を念頭において、総合技術監理の視点から次の(1)〜(3)の問いに答えよ。(それぞれの問いについて、指示された答案用紙の枚数以内にまとめること。)
 ここでいう総合技術監理の視点とは、「経済性管理」、「人的資源管理」、「情報管理」、「安全管理」、「社会環境管理」の5つを言う。

(1)あなたが対象とするプロジェクトや業務の中で、不測の事態が発生して多大な影響を与えたもの(下図のAケース)や、不測の事態が発生したが放置せず対処したので多大な影響に至らなかったもの(下図のBケース)のどちらか1つを取り上げて、そのプロジェクトや業務の概要と発生事態の具体的内容を答案用紙1枚にまとめよ。
ここで言う「不測の事態」とは、プロジェクトや業務の開始時点では、「想定できなかった事態」、「想定したが考慮しなかった事態」、「想定したが事前準備できなかった事態」のいずれかを指すものとする。
さらに、例えば「環境規制の強化によって事業途上や完了後に不適合となった」、「プロジェクトの前提としていた技術に対抗する革新的な技術の台頭によって技術が競争力を失った」、「想定外の経営資源の不足が発生し、事業に影響を及ぼした」、「事故原因として想定したが組織の対応として不十分なものとなってしまった」などのようなケースを想定しており、日常業務の小さなトラブルを言うものではない。但し、小さなトラブルの連鎖や同時発生によって、思いも拠らない結果に至りうるケースなどは本対象に当てはまる。

(2) (1)で挙げたプロジェクトや業務について、不測の事態が発生したことによる影響と、不測の事態を事前に想定できなかった原因あるいは想定していても準備できなかった原因を答案用紙2枚にまとめよ。
なお、想定できなかった(準備できなかった)原因の記述は、単なる見落としのような表面的なものではなく、その背景にある真の原因を幅広い視野で構造的に捉えて、体系的に記すことが望まれる。

(3) (2)の検討を踏まえて、そのプロジェクトや業務の計画の時点に戻ったとしたら、総合技術監理分野の技術者として、どのように各種の前提を想定するべきか、総合技術監理の5つの視点のうち、3つを用いて具体的な想定方法を解答用紙2枚にまとめよ。
ここで求める想定方法とは、対象とした不測事態だけではなく、あなたが(2)で記したものと同様の原因構造を持つようなものも拾い上げられるように、幅広く想定外をなくすためのものが望まれる。

記述問題の解説
【問題の解説】
 この問題は、冒頭に
「複雑化し相互依存性の強い現代社会では、一見関係性が少ないと思われがちな現象の発生も、時として前提とされていた事業環境を急速かつ広域に変化させ、事業結果や社会へ多大な影響を与える場合がある」
とあります。
 つまり不測の事態としては「複雑化し相互依存性の強い現代社会」において発生した「一見関係性が少ないと思われがちな現象」が、「前提とされていた事業環境を急速かつ広域に変化」させたようなものが適当といえます。
 さらに設問1の中で、
「環境規制の強化によって事業途上や完了後に不適合となった」
「プロジェクトの前提としていた技術に対抗する革新的な技術の台頭によって技術が競争力を失った」
「想定外の経営資源の不足が発生し、事業に影響を及ぼした」
「事故原因として想定したが組織の対応として不十分なものとなってしまった」

といった例もあげてくれています。
 つまり、要求事項・リソース・周辺環境の3つのインプットにおいて、以下のようなものが不測の事態を引き起こす要因として考えられるでしょう。
  要求事項の変化…技術基準・環境基準等の変更など
  リソースの変化…想定外のリソース調達困難
  周辺環境の変化…競合技術等による事業効果の喪失など
 また労働災害や環境トラブルなどの「事故」については、その原因について「想定したが組織の対応として不十分」だったものがいいようです。つまり事故や環境トラブルの発生そのものを「不測の事態」とするのではなく、「それが起こりうる原因は想定していたが対処がしてなかった」みたいなものがいいということです。
 「不測の事態」という言葉から、たとえば「大地震の発生」とか「強大な台風の襲来」など自然災害をあげる人がけっこう多いのですが、それらは「複雑化し相互依存性の強い現代社会」において発生した「一見関係性が少ないと思われがちな現象」ではありませんから、題意から外れてしまいますね。