平成18年度技術士第二次試験問題(原子力・放射線部門)
 ●原子力一般  問題および択一正解
提供:電力マンさん

各部門の部屋Topへ
第二次試験過去問題Topへ


択一問題
 2-1 次の20問題のうち15問題を選んで解答せよ(解答欄に1つだけマークすること)。

第二次試験過去問題Topへ


2-1-1 原子炉システムの設計で考慮すべき制限事項についての次の記述のうち,誤っているものを選べ。

(1) 原子炉冷却材圧カバウンダリは,通常運転時,保修時,試験時及び異常状態において,脆性的挙動を示さず,かつ,急速な伝播型破断を生じないことが要求される。

(2) 事故時において,原子炉停止系に含まれる独立した系の少なくとも一つは,炉心を臨界未満にでき,また,原子炉停止系に含まれる独立した系の少なくとも一つは,炉心を臨界未満に維持できる設計であることが要求される。

(3) 原子炉施設には,原子炉の急速な高温停止ができ,かつ,適切な手順を用いて引き続き低温停止ができる,制御室外からの停止機能の確保が要求される。

(4) 炉心を構成する燃料棒以外の構成要素及び圧力容器内で炉心近辺に位置する構成要素には、「異常状態」を除き、原子炉の安全・・・・要求される。

(5) 原子炉格納容器バウンダリは,通常運転時,保修時,試験時及び異常状態において,脆性的挙動を示さず,かつ,急速な伝播型破断を生じないことが要求される。


正解は4

2-1-2 今,ここに余剰反応度が0.15△keffを持ち,これを制御体系により補償している原子炉システムがある。これをある設計計算コードシステムの使用による解析評価に基づき,制御体の設計を行うものとする。この計算コードシステムは,余剰反応度の解析に0.0075Δkeffの,また制御体の補償反応度価値の解析に0.015△keffの評価誤差があることがわかっているとする。この時,この制御体系によってこの体系を0.01△keff以上の未臨界度を持って原子炉を停止できるようにするためには,この制御体系に持たせるべき設計上の反応度価値はいくらにすればよいか。次の中から選べ。

(1) 0.185Δkeff
(2) 0.175Δkeff
(3) 0.165Δkeff
(4) 0.160Δkeff
(5) 0.150Δkeff


正解は1

2-1-3 次の文章は「発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針」の指針26(最終的な熱の逃がし場へ熱を輸送する系統)から引用したものである。

「最終的な熟の逃がし場へ熱を輸送する系統は,その系統を構成する機器の( イ )の仮定に加え,( ロ )が利用できない場合においても,その系統の安全機能が達成できるように,多重性又は( ハ )及び独立性を適切に備え,かつ,( 二 )を備えた設計であること」

文章中の(  )部分に入る語句の組合せとして正しいものを(1) 〜(5) の中から選べ。

(イ) (ロ) (ハ) (ニ)
(1) 系統分離 外部電源 冗長性 安全性
(2) 重大事故 非常用電源 多様性 安全性
(3) 単一故障 外部電源 多様性 試験可能性
(4) 単一故障 非常用電源 冗長性 経済性
(5) 重大事故 直流電源 信頼性 試験可能性


正解は3

2-1-4 次の記述のうち,正しくないものを選べ。ただし,用語は「発電用原子力設備に関する構造等の技術基準を定める告示」第1章総則による。

(1) 「膜応力」とは,断面の垂直応力の平均値に等しい当該断面に垂直な応力成分をいう。
(2) 「曲げ応力」とは,垂直応力の平均値からの変化成分をいう。
(3) 「一次応力」とは,外力,内力及びモーメントに対して単純な平衡の法則を満足する垂直応力又はせん断応力をいう。
(4) 「二次応力」とは,隣接部分の拘束又は自己拘束により生ずる垂直応力又はせん断応力をいう。
(5) 「ピーク応力」とは,応力集中又は局部熱応力により生じる一次応力の増加分をいう。


正解は5

2-1-5 軽水炉で3〜4%の濃縮ウラン燃料を,30GWd/t燃焼させたときに蓄積されるプルトニウム中のPu-239濃度として一番近いものを次の中から選べ。

(1) 10%  (2) 20%  (3) 40%  (4) 60%  (5) 80%

正解は4

2-1-6 原子炉の出力変化に伴う原子炉内のキセノン(Xe)濃度の変化を記述した文章として正しいものを次の中から選べ。

(1) 100%出力から50%出力へ原子炉の出力変化を行ったとき,キセノン濃度はいったん低下するが,やがて上昇して100%出力時のキセノン濃度に達し一定となる。

(2) 100%出力から50%出力へ原子炉の出力変化を行ったとき,キセノン濃度はいったん上昇するが,やがて低下して元の100%出力時のキセノン濃度に達し一定となる。

(3) 50%出力から100%出力へ原子炉の出力変化を行ったとき,キセノン濃度はいったん低下するが,やがて上昇して100%出力時のキセノン濃度に達し一定となる。

(4) 50%出力から100%出力へ原子炉の出力変化を行ったとき,キセノン濃度はいったん上昇するが,やがて低下して100%出力時のキセノン濃度に達し一定となる。

(5) 100%出力から50%出力へ原子炉の出力変化を行ったとき,キセノン濃度はいったん低下するが,やがて上昇して50%出力時のキセノン濃度に達し一定となる。


正解は3

2-1-7 次の記述は,現在の沸騰水型原子力発電所(BWR)と加圧水型原子力発電所(PWR)に関するものである。このうち誤っているものを選べ。

(1) BWRでは炉心内で冷却材である水が沸騰し,発生した蒸気温度はPWRの冷却材温度に比べ高い。
(2) PWRでは制御棒を炉心の上部から挿入するが、BWRでは炉心の下部から挿入する。
(3) 過去に、BWRでは冷却材配管の応力腐食割れ(SCC)のトラブルが多く発生し,PWRでは蒸気発生器伝熱管の漏えいトラブルが多く発生した。
(4) BWRでは炉心冷却水の流量を変えることにより,制御棒を操作しなくても原子炉出力を増減させることができる。
(5) BWRではタービン建屋は放射線管理区域となるが、PWRではタービン建屋は通常は放射線管理区域とならない。


正解は1

2-1-8 次の記述は,発電用原子力設備の技術基準のうち,監視試験片に関するものである。文章中の(  )部分に入る語句の祖合せとして正しいものを(1) 〜(5) の中から選べ。

 原子炉施設に属する容器であって,一メガエレクトロンボルト以上の(A)の照射を受けその材料が著しく劣化するおそれのあるものの内部には,当該容器が想定される運転状態において(B)を引き起こさないようにするために,照射の影響を確認できるよう次の各号に定める監視試験片を備えなければならない。
 一 監視試験片を採取する材料は,(A)の照射領域にある容器の材料と同等の(C)を有するものであること。
 二 監視試験片は,容器の使用開始後に取り出して試験を実施することにより,容器の材料の機械的強度及び(D)の変化を確認できる個数とすること。

(A) (B) (C) (D)
(1) γ線 脆性破壊 製造履歴 破壊じん性
(2) γ線 応力腐食 溶接条件 表面状態
(3) γ線 疲労破壊 合金成分 破壊サイクル数
(4) 中性子 疲労破壊 合金成分 破壊サイクル数
(5) 中性子 脆性破壊 製造履歴 破壊じん性

正解は5

2-1-9 核燃料サイクルに関する次の記述のうち,誤っているものを選べ。

(1) 我が国のウラン資源は僅少であり,必要量はすべて海外から輸入されている。
(2) 天然ウランから,4%濃縮ウランを1トン(金属ウラン換算)生産するには,テイル濃度が0.25%の場合,約8トンのウラン供給が必要である。
(3) 海外で再処理して回収されるプルトニウムは,現状では海外においてMOX燃料に加工して,我が国に輸送される。
(4) 我が国の軽水炉使用済燃料から,ピューレックス(PUREX)法により高純度のウラン,プルトニウムが回収されるが,この方法はアメリカ合衆国で最初に行われた。
(5) 高レベル放射性廃棄物を処理したガラス固化体には,ネプツニウムなどの超ウラン元素は含まれていない。


正解は5

2-1-10 熱中性子炉におけるMOX燃料の利用に関する次の記述のうち,誤っているものを選べ。

(1) プルサーマルとは,軽水炉等の熱中性子炉を活用しながら核燃料のリサイクルを図るものである。
(2) 海外では,軽水炉のMOX燃料使用実績がある。
(3) 我が国では,軽水炉においてMOX燃料の少数体規模での実証試験が行われた。
(4) 我が国では,プルサーマル用Mox燃料は既存の軽水炉燃料工場で製造される。
(5) 新型転換炉「ふげん」において,数百体以上のMOX燃料が使用された。


正解は4

2-1-11 核燃料物質に関する次の記述のうち,誤っているものを選べ。

(1) 核燃料物質は放射性であるために,取り扱うには,被ばく管理が必要である。
(2) 裸の金属球形の最小臨界質量は,235Uの方が239Puより小さい。
(3) MOX燃料ペレットの取り扱いは,閉じ込めたグローブボックス内で行われる
(4) UF6は,空気中に流出すると,水蒸気と反応し白煙をあげる。
(5) U02ペレットの特長は,水との化学的共存性が優れていることである。


正解は2

2-1-12 核燃料に関係深いアクチノイド元素(Th,U,Np,Pu,Am)についての次の記述のうち,誤っているものを選べ。

(1) 天然のトリウム元素は、232Thの同位体100%より構成されている。その地殻存在度はウラン元素のそれより低い。
(2) ウラン同位体234Uは,238U崩壊系列のα崩壊,β崩壊の結果により生成され,天然に約0.0055%存在する。
(3) ネプツニウム同位体237Npは,標記のアクチノイド元素の中で,その密度(常温)は最も大きい。
(4) 1940年にアメリカで発見された最初のプルトニウム元素は,同位体238Puであった。
(5) アメリシウム同位体241Amは,主に241Puのβ崩壊で生成される。


正解は1

2-1-13 エネルギーEのγ線が角度θ方向にコンプトン散乱後に持つエネルギーE’は
 E’=E/{1+E(1-cosθ)/mec2} (mec2:電子の静止エネルギー)
である。エネルギー1 MeVのγ線をNal(Tl)検出器で測定した時にコンプトンエッジは約何MeVになるか。正しいものを次の中から選べ。

(1) 1.0 MeV  (2) 0.8 MeV  (3) 0.6 MeV  (4) 0.4 MeV  (5) 0.2 MeV

正解は2

2-1-14 次のラジオアイソトープの利用に関する記述のうち,誤っているものを選べ。

(1) 63Niはガスクロマトグラフの線源に用いられている。
(2) 85Krは厚み計に用いられている。
(3) 89TcはSPECT薬剤に用いられている。
(4) 125Iは永久剌入線源に用いられている
(5) 241Amは煙感知器に用いられている。


正解は3

2-1-15 次の記述のうち,正しいものを選べ。

(1) 4MeVα線と1MeV陽子の空気中の飛程は,ほぼ等しい。
(2) 気体のW値は,放射線のエネルギーに比例して増加する。
(3) 電子の阻止能は,一般に,そのエネルギーに反比例して減少する。
(4) β線源は,その最大飛程より厚い物質を用いて完全に放射線が遮蔽出来る。
(5) 鉄(フリッケ)線量計のG(Fe2+→Fe3+)値は,放射線の種類に関係なく一定である。


正解は1

2-1-16 放射線と物質との相互作用に関する次の記述のうち,誤っているものを選べ。

(1) 中性子が物質中の原子核との弾性衝突で失うエネルギーは,原子核が軽いほど大きい。
(2) α線が物質中を通るときは,主に物質を構成する原子の中の軌道電子との相互作用によってエネルギーを失う。
(3) β線の強度が実質上ゼロになる吸収物質の厚さ(g/cm2)は,物質の種類によらず,ほぼβ線の最大エネルギーにより決まる。
(4) 光電効果では,γ線は軌道電子を電離させ,自らは消滅する。電離した電子のエネルギーは消滅したγ線のエネルギーに等しい。
(5) コンプトン散乱では,γ線は軌道電子を電離させ,自らは入射方向と異なる方向に散乱される。散乱後のγ線の波長は散乱前よりも大きくなる。


正解は4

2-1-17 成人の身体内に存在する自然の放射性核種4oKの量として最も近いものを次の中から選べ。

(1) 4ベクレル
(2) 40ベクレル
(3) 400ベクレル
(4) 4,000ベクレル
(5) 40,000ベクレル


正解は4

2-1-18 体外計測法による内部被ばく検査の結果,3,000ベクレルの134Cs(半減期:2.0年)が全身均等に分布していることが分かった。生物学的半減期を100日とすると,1年後に残存する134Csの量として最も近いものを次の中から選べ。

(1) 70ベクレル
(2) 170ベクレル
(3) 340ベクレル
(4) 500ベクレル
(5) 700ベクレル


正解は2

2-1-19 次の記述のうち,誤っているものを選べ。

(1) 航空機乗務員の高高度飛行に伴う宇宙線被ばくは,ICRPの1990年勧告では,放射線防護の対象とされている。
(2) 数Gyの全身急性被ばくにより,末梢血液中の赤血球は,リンパ球よりも遅く減少する。
(3) 広島・長崎で胎児期に原爆を被爆した子供の精神発達遅滞の調査では,受胎後8週から15週の時期の放射線感受性が高い。
(4) 細胞死は,細胞の形態的変化に着目して,アポトーシスとネクローシスの2つに分類される。
(5) 精巣は放射線感受性が高く,1Gyの急性照射で永久不妊となる。


正解は5

2-1-20 非密封放射性同位元素の使用施設で火災が発生し,放射線障害が発生するおそれが生じた。このとき講じられた応急措置に関する次の記述のうち,誤っているものを選べ。

(1) 放射線施設内部及び付近にいる者に,避難するよう警告した。
(2) 密封されていない放射性同位元素を,事業所内の延焼のおそれのない安全な場所に移したあと,その場所の周囲をロープで隔離し,見張り人をつけて関係者以外の者の立ち入りを禁止した。
(3) 緊急作業に係る線量限度として,実効線量で120mSvまで被ばくできるものとして応急措置を計画した。
(4) 放射性同位元素による汚染が生じたので,速やかに,汚染拡大の防止措置を講じるとともに除染を行った。
(5) 直ちにその旨を消防署に通報した。

正解は3

記述問題
 2-2 次の3問題のうち、下表(番号表)に指定された選択科目に対応する2問題について解答せよ。(青色の答案用紙を使用し、問題ごとに用紙を替えて解答問題番号を明記し、それぞれ1枚以内にまとめよ。なお、青色の答案用紙綴りは3枚組となっているが、解答には1枚目及び2枚目の用紙のみを使用し、3枚目の用紙は白紙で提出すること。)

選択科目に対する問題の番号表

選択科目 解答する2問題の番号
20−1 原子炉システムの設計及び建設 2−2−2、 2−2−3
20−2 原子炉システムの運転及び保守 2−2−2、 2−2−3
20−3 核燃料サイクルの技術 2−2−1、 2−2−3
20−4 放射線利用 2−2−1、 2−2−2
20−5 放射線防護 2−2−1、 2−2−2


2-2-1 次の3設問のうち1設問を選んで解答せよ。(解答設問番号を明記すること。)
(1) プラントに異常・故障が発生した際に,原子炉炉心に蓄積している核分裂生成物が環境に放出されることを防止する多重障壁(多重防壁)について,知っていることを述べよ。
(2) チェルノブイリ原子力発電所と日本の軽水型原子力発電所を比べて,チェルノブイリ原子力発電所4号機と同じような事故が日本では起こらないと言われている理由を述べよ。
(3) 国際原子力事象評価尺度(INES)について,知っていることを述べよ。

2-2-2 次の3設問のうち1設問を選んで解答せよ。(解答設問番号を明記すること。)
(4) 核燃料サイクルの必要性について述べよ。
(5) 高レベル廃液ガラス固化処理について述べよ。
(6) 軽水炉使用済燃料の輸送の安全削こついて述べよ。

2-2-3 次の3設問のうち1設問を選んで解答せよ、(解答設問番号を明記すること。)
(7) 放射性炭素i1Cと14Cのいずれか一方の利用例を1つ挙げ,その原理と利用法について述べよ。
(8) 放射線滅菌の特徴を解説し,その工業的利用法について述べよ、
(9) 個人の外部披ばく線量を測定する線量計の中から3種類を選び,それらの測定原理と特徴について述べよ。

第二次試験過去問題Topへ