技術士二次試験問題(農業部門−必須科目)
13時〜17時 |
2-1 |
次の20問題のうち15問題を選んで解答せよ。(解答欄に1つだけマークすること。) |
2-1-1 |
近年の我が国の食料・農業・農村をめぐる情勢の変化に関する次の記述のうち、適切でないものを選べ。
@国内の農業生産は、消費者が加工食品や外食への依存度を高め、また、品質や生産方法等に特色のある農産物への志向を強めているなどの変化に十分対応できていない。
A過去10年間の農家一戸当たり平均経営耕地面積の拡大は0.2ヘクタールにとどまるなど、土地利用型農業を中心に農業経営の規模拡大の動きは遅い。
B農村においては、過疎化・高齢化・混住化等の進展により農業生産活動の停滞・後退や集落機能の低下がみられる。
Cアジア諸国の経済成長による所得水準の上昇や、中国、台湾等のWTO加盟による市場アクセスの改善を背景に、我が国の高品質な農産物や食品は輸出拡大の好機を迎えている。
D食生活の現状については、栄養バランスの面では脂質の摂り過ぎ等の傾向は改善されたが、食習慣の面で若い世代を中心に高い割合で朝食の欠食がみられる。 |
2-1-2 |
我が国の農地及びその利用状況に関する次の記述のうち、適切なものを選べ。
@1960年以降、農業用ガラス室・ハウスの設置面積は一貫して増加してきたが、1990年に減少に転じた。
A1999年における農業用ガラス室・ハウスの設置面積は、積雪寒冷地である北海道、東北及び北陸を除く地域では農地面積の約2割を占めている。
B2000年における耕作放棄地率を全国農業地域別に見ると中国地域、四国地域及び関東・東山地域が大きい。
C全国の耕地利用率は徐々に減少を続けており、2002年には80%以下となっている。
D近年の農地かい廃要因としては、自然災害が最も多い。 |
2-1-3 |
我が国農業の担い手等の現状に関する次の記述のうち、適切なものを選べ。
@認定農業者数は近年急増しており、平成16年8月現在約40万経営体となっている。
A認定農業者は、現在1経営体当たり1人に限定されている。
B農業法人数は近年急増しており、平成15年1月現在約17万経営体となっている。
C農業生産法人は平成16年1月現在約7千経営体で、組織別では、株式会社の数が一番多い。
D集落営農組織は現在約1万組織あり、うち約7割が稲作主体のものである。 |
2-1-4 |
食料・農業・農村基本計画(平成17年3月策定)においては、総合食料自給率について供給熱量ベースに加え、生産額ベースの目標も設定している。これについて、下表の(ア)〜(エ)に当てはまる組合せ@〜Dのうち、適切なものを選べ。
区 分 |
平成15年度現在 |
平成27年度目標 |
供給熱量ベースの総合食料自給率 |
(ア)% |
(イ)% |
生産額ベースの総合食料自給率 |
(ウ)% |
(エ)% |
(ア) (イ) (ウ) (エ)
@40 45 70 76
A40 45 80 86
B40 50 70 76
C45 50 70 76
D45 50 80 86 |
2-1-5 |
食料・農業・農村基本計画(平成17年3月策定)において平成27年度の望ましい食料消費の姿が示されている。その前提とされた栄養の取り方に対応したP(たん白質)、F(脂質)、C(炭水化物)の熱量比(供給ベース、%)に関する次の組合せのうち、適切なものを選べ。
P F C
@13 27 60
A18 31 51
B19 16 65
C20 33 47
D30 22 48 |
2-1-6 |
世界の農畜産物の生産量と輸出量の現況(最近年の概数)に関する次の記述のうち、適切でないものを選べ。
@小麦の生産量は約6億トン、そのうち約25%が輸出の対象となっている。
A米の生産量は約6億トン、そのうち約35%が輸出の対象となっている。
Bとうもろこしの生産量は約6億トン、そのうち約15%が輸出の対象となっている。
C大豆の生産量は約2億トン、そのうち約30%が輸出の対象となっている。
D牛肉の生産量は約6千万トン、そのうち約10%が輸出の対象となっている。 |
2-1-7 |
近年の世界の食料・農業・農村をめぐる状況に関する次の記述のうち、適切でないものを選べ。
@世界の穀物収穫面積は1970年代半ば以降低迷し、1人当たりの収穫面積は継続的に減少している。
A化学肥料の多投入、過放牧、農地周辺の森林の伐採等に起因する土壌劣化、土壌流亡などにより、農地の荒廃が進行している。
B主として開発途上国では、水利施設の不適切な維持管理によるかんがい効率の低下という問題も生じている。
C工業用水、生活用水は使用量が急増する一方、農業用水は穀物収穫面積の低迷に伴い使用量は減少すると見込まれている。
D窒素肥料の多用による地下水汚染等の問題から、EUなどでは環境保全に対する意識が高まっていることも、農業生産拡大の制約要件となりつつある。 |
2-1-8 |
食品安全基本法に関する次の記述のうち、正しくないものを選べ。
@この法律には、国、地方公共団体及び食品関連事業者が行わなければならない責務と、消費者が果たす役割とが定められている。
Aこの法律によって内閣府に食品安全委員会が設置されるとともに、リスク分析手法が導入され、リスク評価を行う部門とリスク管理を行う部門とが分離された。
B農薬などの人の健康に及ぼす影響について科学的に評価することは、リスク評価に含まれ、農林水産省が担当する。
Cリスク評価の結果に基づき、国民の食生活を考慮して、基準を設定したり規則を決めるなどの行政的な対応を行うことは、リスク管理に含まれる。
D消費者や食品関連事業者などの幅広い関係者との間で、リスクに関する情報及び意見を交換することは、リスクコミュニケーションに含まれる。 |
2-1-9 |
バイオマスに関する次の記述のうち、適切でないものを選べ。
@バイオマスの炭素は、もともと植物が大気中の光合成により吸収したものであるため、バイオマスをエネルギーとして燃焼させること等により発生する二酸化炭素は、大気中の二酸化炭素の量を増加させない特性を有している。
Aバイオマスは、一般に狭い範囲に濃密に存在する利活用しやすい資源であり、地域の経済社会の活性化の観点からも、その積極的な利活用が求められている。
Bバイオマスの利活用の推進は、二酸化炭素の発生の抑制による地球温暖化の防止や循環型社会の形成等に資するものとして期待されている。
Cバイオマスの利用を進めるには、利活用の高度化、収集・輸送の効率化によるコスト削減や地域特性及び利用方法に応じたシステム構築の推進が必要である。
D廃棄物系バイオマスの再利用または再生利用される割合(循環利用率)は、廃棄物全体の循環利用率と比べて低くなっている。 |
2-1-10 |
作物の病気や害虫の発生に関する次の記述のうち、適切でないものを選べ。
@水稲の「いもち病」は、夏期冷涼で雨の多い年に多発しやすい。
A昼間の乾燥と夜間の多湿という乾湿が繰り返される施設栽培では、キュウリやトマトなどに「うどんこ病」が多発しやすい。
B水稲害虫の「セジロウンカ」と「トビイロウンカ」は、中国大陸などから日本へ長距離飛来すると考えられている。
C害虫の冬眠が誘導される最も重要な要因は低温である。
D土壌伝染性病害や土壌害虫は、作物の連作障害の重要な原因になる。 |
2-1-11 |
農業のもつ多面的機能に関する次の記述のうち、適切でないものを選べ。
@農業のもつ多面的機能を貨幣評価すると、土砂崩壊防止機能や気候緩和機能は評価の高い部類に、洪水防止機能や保健休養・やすらぎ機能は低い部類に入る。
A農業のもつ多面的機能は、農業生産と密接不可分に作り出され、誰もが対価を直接支払わずに享受することができる公共財的な性格を有している。
B農業生産活動を通して多面的機能を確保するため、生産条件の不利を直接的に補正することを目的とした中山間地域等直接支払制度が実施されている。
C傾斜地水田は、かんがい用水をゆっくり地下浸透させ、地下水の安定的な流動に貢献するため、米生産に加え地滑りや土砂崩壊を防止する機能を有している。
D水田やため池は、流入水中の窒素・リンなどの栄養塩類を土壌や底質へ吸着させたり、作物への吸収あるいは脱窒作用によって低下させる水質浄化の機能を有する。 |
2-1-12 |
経済社会の構造改革の推進及び地域の活性化を図る構造改革特区として、農林水産業関係で実施することが決定した事項に関する次の記述のうち、適切でないものを選べ。
@農業生産法人以外の法人に係る農地法の特例。
A特定農地貸付法及び市民農園整備促進法の特例。
B農業生産法人の事業範囲の拡大。
C農地取得に際しての上限面積の緩和。
D昆虫の飼育事業に係る家畜排せつ物法施行規則の特例。 |
2-1-13 |
農産物貿易等において使われている略号についての次の記述のうち、適切でないものを選べ。
@AMS:特定の物品の輸入に、一定の数量までは低い税率(一次税率)、それを超える数量については高い税率(二次税率)を適用する制度。
ACAP:農業生産性の向上、農家の所得拡大、農産物市場の安定化を目的とするEU域内の各国共通の農業政策。
BFTA:2以上の国が、関税の廃止や制度の調整などにより物やサービスの貿易を自由にすることを目的として締結する協定。
CEPA:2以上の国が、貿易の自由化だけでなく、市場制度や経済活動等、幅広く経済的な関係を強化することを目的として締結する協定。
DWTO:ウルグアイラウンド合意を受け、関税及び貿易に関する一般協定に代わり発足した国際機関。 |
2-1-14 |
農業活動を通して排出される温室効果ガスに関する次の記述のうち、適切でないものを選べ。
@農耕地土壌からの二酸化炭素は、微生物による土壌有機物の分解と作物根の呼吸作用などに伴い排出される。地温が上昇すると時間当たりの排出量は増加する。
A我が国の農業分野におけるメタンの主な排出源は水田稲作で、家畜飼養から排出されるメタンは水田稲作からのそれの5分の1に過ぎない。
Bメタンは還元状態の発達した水田でより多く排出される。稲ワラを堆肥化して施用したり、水田の間断かんがいなどを行うとメタンの排出量を軽減できる。
C亜酸化窒素はアンモニアの硝化過程、硝酸の還元過程で排出される。硝化抑制剤入り肥料を利用することにより、亜酸化窒素の排出量を軽減できる。
D地球温暖化指数(GWP)は、温室効果ガスが一定期間内に及ばす温室効果の度合いを示す値であり、二酸化炭素を1としたときの単位質量当たりの比で示される。 |
2-1-15 |
次の(ア)〜(エ)は、畑地かんがい方式についての記述である。これらの記述と下段のかんがい方式a〜fの組合せ@〜Dのうち、適切なものを選べ。
(ア)機器から圧力水を噴出させて降雨状に土壌と植物に散布を行う方式で、薬剤等の散布にも使われる。
(イ)耕地を低い畦畔で短冊状に区切り水を薄層流として全面に流下させ土壌中に湿潤させる方式で、多くの場合、麦、牧草等のかんがいに用いられる。
(ウ)地表に設置された機器から連続的に根群域の土壌に用水を滴下補給する方式で、マルチでの栽培に適した作物にも利用可能である。
(エ)等高線に沿った溝を作ってかんがいする方式で、地形による制約が多いことから我が国ではあまり利用されていない。
かんがい方式
a.スプリンクラーかんがい
b.点滴かんがい
c.畝間かんがい
d.ボーダーかんがい
e.コンターディッチかんがい
f.水盤かんがい
(ア) (イ) (ウ) (エ)
@b e f c
Aa d b e
Bb d a e
Ca c d f
Da d b f |
2-1-16 |
下図に示す河川に用水の取入口を設ける場合、取入口前面の滞砂を防止する観点のみから最も適切と思われる位置を選べ。
@ア Aイ Bウ Cエ Dオ
|
2-1-17 |
種苗法による農林水産植物の新品種保護のための登録制度に関する次の記述のうち、正しくないものを選べ。
@保護の対象となる品種は既存品種と重要な形質で明確な違いが認められ、特徴が安定し均質であれば、必ずしも優秀でなくともよい。
A品種が登録されると、その品種を育成した者に品種登録の日から25年(但し、永年性植物は30年)にわたり権利が発生する。
B新品種の名前は、不適切でない限り、登録を申請した者が命名することができる。
C品種保護に関する国際条約があり、これに加盟する国々の間でも新品種を申請・登録し、育成者権を保護することができる。
D保護の対象となる植物は全ての栽培品種を含むが、キノコ類は含まない。 |
2-1-18 |
家畜排せつ物の管理と利用に関する次の記述のうち、適切なものを選べ。
@家畜排せつ物による水質汚染、悪臭発生も家畜排せつ物法により初めて基準値が設けられ規制されることとなった。
A家畜排せつ物法は、家畜のふん尿の野積み、素掘り(穴に埋めること)を解消することが主眼であり、すべての畜産農家に恒久的な処理施設設置を義務付けている。
B家畜排せつ物はリサイクル可能な有機資源であるため、焼却等の処理法は地球温暖化の要因になることから禁止されている。
C肥料取締役法では、家畜ふんたい肥は特殊肥料として届け出てよいが、同じ有機質肥料である汚泥肥料は化学肥料と同様に普通肥料として登録が必要である。
D家畜排せつ物と都市生ごみを混合たい肥化したものは、安全性に問題があることから農業用たい肥として利用することが禁止されている。 |
2-1-19 |
食品保存に関する次の記述のうち、適切なものを選べ。
@食品中の結合水の量は水分特性として定義されており、水分特性が低いほど微生物による腐敗が抑制される。
A糊化したデンプンを放置しておくと、次第に離水して水に不溶性の状態に変化する。これをα化という。
B熱帯・亜熱帯原産の野菜や果実類の多くは低温に保存すると褐変やピッティングなどの障害を起こす。これを低温障害という。
C一般的に、同一pHにおける微生物増殖抑制効果は有機酸よりも無機酸のほうが高い。
D貯蔵中の空気組成を変えて青果物を保存する方法をCA貯蔵と呼ぶ。酸素を増加させ二酸化炭素を減少させることにより呼吸を抑制し、貯蔵期間を延ばすことができる。 |
2-1-20 |
農薬取締法で定義されている農薬に関する次の記述のうち、正しくないものを選べ。
@殺虫剤は農作物を加害する害虫を防除する薬剤、殺菌剤は農作物を加害する病気を防除する薬剤でいすれも農薬である。
A除草剤は雑草を防除する薬剤、殺そ剤は農作物を加害するノネズミなどを防除する薬剤で農薬である。
B農作物の生育を促進したり抑制する植物成長調整剤及び害虫をにおいなどで誘き寄せる誘引剤はいずれも農薬である。
C他の農薬と混合して用い、その農薬の付着性を高める薬剤である展着剤は農薬である。
D農作物を加害する害虫の防除のために放飼される天敵は農薬と見なさないが、微生物を用いて農作物を加害する害虫・病気等を防除する微生物剤は農薬である。 |
2-2 |
次の問題について解答せよ。(青色の解答用紙を使用し、3枚以内にまとめよ。)
平成17年3月に新しい「食料・農業・農村基本計画」が策定された。その基本方向や「食料・農業・農村基本法」の理念を踏まえ、次の課題の中から1つを選び、主として技術的側面からあなたの意見を述べよ。
(1)食の安全・安心をめぐる課題への取り組み
(2)世界の農産物需給と我が国の食料自給
(3)農業構造改革の加速化と国内農業生産の展開
(4)農村の地域資源の保全管理と多面的機能の維持・増進
(5)農村経済の活性化と活力ある農村の創造 |