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2004年度 技術士第一次試験(専門科目)



問題・解答及び怪しげな解説

 

 

農 業 部 門

 

 

 

 

 

 

試験時間:2時間

 

※お気づきの点がありましたならお知らせ願います。

W 次の30問題のうち25問題を選んで解答せよ。(解答欄に1つだけマークすること。)

 

W−1 日本の農業経営の現状に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

@ 農業就業人口に占める65歳以上の者の割合は上昇を続けており、高齢化が著しく進行している。

A 認定農業者は、平成14年度末で約172千経営体となり年々増加している。

B 新規就農者の数は、平成2年以降増加傾向にあり、平成14年には離職就農者等を含んで約8万人が新たに就農した。

C 平成15年において女性は農業就業人口の約55%、基幹的農業従事者の約46%を占めており、農業や生活面で重要な役割を果たしている。

D 平成15年において農業生産法人の営農類型をみると、果樹が約29%と最も多く、次いで米麦作が約22%、畜産が約12%となっている。

正解……Dが誤り(畜産が29%、米麦作22%、野菜12%:H15白書p124)

 

W一2 日本の食生活を取り巻く最近の状況に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

@ 日本の穀物自給率は、人口1億人を超える10カ国(EUは含まない)の中では最下位である。

A 平成13年における生鮮野菜の第1位の輸入相手国(輸入金額べ一ス)は、アメリカである。

B 野菜の自給率は、魚介類の自給率よりも高い。

C カロリー(供給熱量)べ一スでみた場合に、米の消費量の減少と、畜産物と油脂類とを合わせた消費量の増加とはほぼ同じ位であり、代替関係にある。

D 豆腐等食品用大豆の自給率は、平成9年の約14%から平成15年には約25%に上昇している。

正解……Aが誤り(1位中国425億円、2位米国207億円:H14白書統計表p25)

 

W−3 日本の食品産業をめぐる状況に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

@ 平成12年度の農業、漁業、食品産業等の国内総生産は約52兆円で、全産業約515兆円の約10%を占める「1割産業」となっている。

A 最近、輸入農産物の増加や産直の増加等により、生鮮食品が卸売市場を経由する割合は低下傾向にある。

B 平成12年度において農業、漁業、食品産業の就業者数等は、全体で約1,200万人を超え、全就業者数約6,300万人の約2割が食料の供給に携わり、雇用面においても重要な役割を担っている。

C 平成12年において食品製造業が地域の製造業全体に占める出荷額等の割合は、北海道や沖縄県で高く、東海地域で低い。

D 最近の厳しい経済情勢の中、弁当や総菜等の中食並びにレストラン等の外食産業は、ともに市場規模が増加している。

正解……Dが誤り(外食産業の市場規模は平成10年以降減少している:H14白書p50)

 

W−4 世界の貿易状況に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

@ 2002年における日本の農産物輸入額の大きい国は、大きい方からアメリカ、中国、オーストラリアの順である。

A 2002年における日本の農産物輸出額は、コスト高による国際競争力の低さ等から約2千億円にとどまっている。

B 世界の年間1人当たり穀物生産量は、最近においてやや減少傾向である。

C 2000年における大豆の輸出量の多い国は、多い方からインド、中国、ブラジルの順である。

D 中国は世界最大の穀物生産国であり、2001年における世界の穀物生産量の約2割を占めている。

正解……Cが誤り(1位米国、2位ブラジル、3位アルゼンチン:H14白書統計表p23)

 

W−5 日本の米の生産、消費状況に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

@ 平成15年における水稲の作付面積の多い都道府県は、多い方から北海道、新潟県、秋田県の順である。

A 平成15年における水稲の作柄は、全国平均で作況指数が90となり、平成に入り最大の不作となった。

B 平成15年における水稲の品種別収穫量は、多い方からコシヒカリ、ヒノヒカリ、ひとめぼれの順である。

C 米の消費は、長期的に減少傾向にあり、平成14年には1人1年当たり消費量(供給べ一ス)は、約63キログラムとなっている。

D 米の家庭用消費以外の分野での消費量は、最近において増加傾向で推移している。

正解……Aが誤り(作況指数74の平成5年の方が低い:H15白書トピックp13)

 

W−6 日本の花きに関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

@ 平成15年において、花きのうち鉢もの類の出荷量は、切り花類の出荷量を上回っている。

A 平成14年の花きの産出額は、農業産出額の約20%を占めている。

B 花きの産出額は、平成10年をピークとして、それ以降は頭打ち状況となっている。

C 平成15年において、切り花類の出荷量の多い都道府県は、多い方から青森県、静岡県、沖縄県の順である。

D 平成15年において、出荷量の多い切り花類の種類は、多い方からりんどう、ばら、ひまわりの順である。

正解……Bが正しい

@誤り……切り花類約3,000億円に対し、鉢もの類約1,600億円(生産農業所得統計)

A誤り……総産出額の5.0%(H15白書統計表p118)

C誤り……1位ダントツで愛知県、2位千葉県、3位福岡県(生産農業所得統計)

D誤り……1位キク、2位カーネーション、3位バラ(生産農業所得統計)

 

W一7 農作物の病害虫防除に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

@ センチュウ類の被害を回避するため、耕種的防除法として連作が有効である。

A トビイロウンカは、梅雨期に南西風にのって南方から我が国へ飛来するものが多い。

B 沖縄県のウリミバエの根絶対策は、不妊化虫の放飼法によって成し遂げられた。

C 病害虫抵抗性品種の栽培は、有効な防除手段の一つである。

D イネいもち病発生は、気象条件によって影響される度合いが高いことから、年次変動が大きいとされている。

正解……@が誤り(連作→輪作)

 

W−8 日本におけるバイオマスに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

@ バイオマスとは、再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたものである。

A 廃棄物系バイオマスの利用の推進において、バイオマスの収集・輸送のための費用負担が大きいことなどの課題がある。

B バイオマスに由来するプラスチックは、土壌微生物によって二酸化炭素と水に分解されない。

C 家庭や学校から出される廃食油からバイオディーゼル燃料を製造し、農業用トラクターや地方自治体の公用車に利用するなどの取組が行われている。

D 化石資源の代替資源としてバイオマスの利用を促進することにより、二酸化炭素発生を抑制し、地球温暖化の防止に貢献することができる。

正解……Bが誤り(澱粉を用いている生分解性プラスチックは、澱粉と他の樹脂との混合が多く、細かくなるだけで完全分解しないものもある。これらを分けて自然崩壊性プラスチックと呼ぶこともある。したがって、分解されるものもあるとするのが正しいようだ)

 

W−9 日本の中山間地域の現状及び課題に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

@ 中山間地域は、国土の5割程度の面積を占めるが、国内の食料供給の維持を図る上では大きな役割を果たしていない。

A 中山間地域における水田農業は、耕地の平坦さや圃場区画の大きさ等の地形的条件が大きく影響して、生産性の面で平地地域との格差がある。

B 中山間地域は、平地地域に比べて耕作放棄地率が高く、また、農業集落の減少が進んでいる。

C 中山問地域の豊かな自然やゆとりある居住空間等を求めて都市と農村との交流が行われている。

D 中山間地域では、農業生産活動等の維持を通じて多面的機能を確保することを目的として、農業生産条件の不利を直接的に補正する直接支払制度が実施されている。

正解……@が誤り(国土の7割の面積、農業粗生産額の4割を占め、我が国の農業・農村に大きな地位を占めているH15白書p213)

 

W−1O 土壌に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

@ 火山灰土壌のリン酸固定力が高いのは、主に活性のアルミニウムが多く含まれるためである。

A 我が国の農地では、雨が多いため塩基類が溶脱しやすく、土壌が酸性化しやすい。

B 脱窒作用とは、土壌中の硝酸態窒素が嫌気的条件下で窒素ガスに変化する反応をいう。

C 拮抗作用とは、ある微生物が土壌中でほかの微生物の活動を促進する働きをいう。

D 酸性土壌で生息しやすい病原菌の活動は、石灰施用による土壌pHの上昇により抑制される。

正解……Cが誤り(土壌微生物には有機物を分解して養分にする働きのほか、拮抗作用といい病原菌の影響を相対的に抑制する働きがある。なお、促進する働きは「協力作用」という→ピクシィさんのメールより)

 

W−11 土壌・肥料に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

@ 窒素は主として、水田ではアンモニア態窒素、畑では硝酸態窒素の形で植物に吸収される。

A 樹皮や稲わらは、家畜ふんきゅう肥に比べて炭素窒素比(C/N比)が高い。

B 田植えと同時に苗の側方に施肥をする方法を側条施肥という。

C 土壌消毒には、薬剤を用いる化学的方法と蒸気、太陽熱などを利用する物理的方法がある。

D 施肥設計に当たっては、堆きゅう肥の窒素は作物の肥料成分として考慮することはない。

正解……Dが誤り(施用した堆きゅう肥・圃場残渣・緑肥等に含まれる窒素やカリの成分を考慮して、各地域で定めた「施肥標準」よりも化成肥料の施用量を減肥するよう指導している)

 

W一12 日本における食品に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

@ トレーサビリティシステムとは、食品の生産・加工・流通等に関する履歴情報を追跡できる方式である。

A JAS法に基づき認定された有機農産物以外のものでも有機の表示はできる。

B PFC供給熱量比率とは、たんぱく質、脂質、ビタミンの3栄養素の供給熱量比率である。

C 食品衛生法で販売が禁止されている玄米のカドミウム含量は、lOOppm以上である。

D 国民の食生活において、平均栄養所要量に対しカルシウムはほぼ充足しているが、ビタミンAやビタミンCは不足している。

正解……@が正しい

A誤り……「有機JASマークを貼付した農産物」以外のものに「有機」等を表示することは禁止された。(H15白書p197)

B誤り……P:タンパク質、F:脂質、C:炭水化物H14白書p38)

C誤り……100ppm→1.0ppm(H14白書本文p21)

D誤り……ビタミンAは2,000IU/日の所要基準に対して摂取量2,654IU→充足

ビタミンCは100mg/日の所要基準に対して摂取量128mg→充足

カルシュウムは600mg/日の所要基準に対して547mg→やや不足

(五訂食品成分表2003)

 

W−13 日本における食品に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

@ JAS法において、賞味期限は品質が保持される期限、消費期限は安全性が保たれる期限をいう。

A 最近の野菜の国民一人当たり消費量(供給べ一ス)は、年間約100キログラムで果実より多い。

B 食事により人に取り込まれるダイオキシン類のうち、約8割は魚介類からの摂取である。

C JAS法では、生鮮食品の一部及び加工食品の全てにおいて原産地表示を義務付けている。

D 食生活の乱れをただし、食の重要性の認識を深める食に関する教育(食育)が推進されている。

正解……Cが誤り(改正JAS法において、加工品は「名称」「原材料名」「内容量」「賞味期限」などは義務付けされているが、原料の原産地表示は義務付けされていない。ただし、加工品の原料原産地表示は漬物等一部の製品で義務づけられており、またその対象は拡大される傾向にある。ただ、設問では原料原産地でなく、原産地としか書いていないので、製造地の意味なら製造者もしくは輸入者を記入しなければいけないらしい。紛らわしい問題であるが、「全ての加工食品に該当」ではないので、Cが誤りであることには間違いない→よひさんからのメールより)

また、@については、平成15年5月にJAS法と食品衛生法で統一して規定した(H15白書前文p8)「賞味期限」とは、全ての品質が十分に保持しうると認められた期限で、「消費期限」とは、腐敗などの衛生上の危害が発生するおそれがないと認められる期限としている。概ね5日以内の期間で品質が劣化する食品には消費期限、品質の劣化が比較的緩やかな食品には賞味期限が記載される。

 出題者はこの選択肢を「正しい」と判断するだろうと考えているようであるが、「腐敗などの衛生上の危害が発生するおそれがない期限」のことを「安全性が保たれる期限」と表現することが妥当か否か疑問が残る。

なお、Bについては、ダイオキシンは主として呼吸により人の体内に吸収されるが、食品では比較的魚介類に多く含まれ、8割が魚介類から摂取されているので「正しい」といえる。ただし、耐容一日摂取量を大きく下回っているので通常では健康に心配はない(H14白書p21)。

 

W−14 日本の農業生産環境に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

@ 化学肥料や農薬の低減等に取組む稲作経営の経営費は、慣行栽培を行う経営に比べて高い傾向にある。

A 農業由来の廃棄物は減少傾向にあるが、全産業廃棄物に占める割合は約60%と圧倒的に多い。

B 世界的な地球温暖化対策の取組みを担保する京都議定書では、二酸化炭素の削減を目指している。

C 産業廃棄物の適正な処理を確保するために、処理記録などを管理する産業廃棄物管理票制度が導入されている。

D 環境容量とは、環境に対し悪影響を生じることなく汚染物質を受け入れることができる収容力若しくは限界量をいう。

正解……Aが誤り(平成13年の農業由来の廃棄物の全産業廃棄物に占める割合は22.6%で、電気・ガス・熱供給・水道業に次いで2位:H15白書p191)

ただし、Bにおいて、京都議定書は二酸化炭素の他に、メタン、一酸化二窒素、HFC、PFC、SF6の削減を目指している。問題には「農業生産環境に関する」と書いてあるが、H15白書p331にもあるように、農業分野での二酸化炭素のほか、メタンや一酸化二窒素の削減に取り組むとしており、誤りとも解釈され兼ねない疑問の残る問題である。

 

W−15 日本の畜産の現状に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

@ 平成14年度における畜産の産出額は、農業総産出額の約50%を占めており、日本農業の基幹部門の一つとなっている。

A 平成14年度における牛肉の自給率(重量べ一ス)は、約70%である。

B 過去10年間における乳牛の飼養戸数は、経年的に小規模層を中心に減少しており、一戸当たり乳牛(経産牛)飼養頭数も同様に減少している。

C 和牛の子牛価格は、BSEの発生に伴い平成13年度から14年度にかけて低下し、15年度も、回復の兆しは見られない。

D 鶏肉の消費量は、平成9年度以降、やや減少傾向で推移したが、国外及び国内での高病原性鳥インフルエンザ発生以降、さらに減少傾向で推移した。

正解……Dが正しい

@誤り……50%→28%(H15白書統計書p119) 

A誤り……70%→39%(食糧需要表)

B誤り……戸当り乳用牛頭数:平成7年44頭→平成15年58頭(農林水産統計)

C誤り……雄和子牛の全国価格は平成12年を100とすると、13年93.8、14年88.2から15年には104.0とBSE発症前の12年よりも高くなった。なおその後、アメリカでのBSE発症による平成15年12月24日以降の牛肉輸入停止措置もあり、価格はさらに急速に上昇している。(農村物価統計)

 

W−16 日本の自給飼料に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

@ 平成14年度の酪農経営における飼料自給率(TDNべ一ス)は、北海道と都府県の差はなく、50%前後である。

A 海外飼料に依存したままの状態で自給飼料の増産を伴わない畜産物の消費拡大は、食料自給率を低下させる原因の一つとなっている。

B 平成14年度の飼料作物の作付面積は、平成9年度に比べて、北海道及び都府県のいずれの地域でも減少している。

C 平成14年度における自給飼料の年産コストの全国平均値は、輸入粗飼料価格よりは低いが、畜産経営においては利便性、労力面の負担などの要因により輸入粗飼料に依存する傾向にある。

D 稲発酵粗飼料の作付面積は、平成13年度で急増し、平成15年度見込みでは約5千ヘクタールとなっている。

正解……@が誤り(平成11年の全国の飼料自給率は25%程度〔飼料増産計画:農水省〕、平成10年の北海道の飼料自給率は50%強〔北海道農政部〕。また平成15年の生乳100kg当り購入飼料費は都府県3,108円に対して北海道1,572円と半分〔畜産物生産費統計〕であり、これからも誤っていることが判る)

 

W−17 鳥インフルエンザに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

@ 鳥インフルエンザウイルスは、鳥から鳥に感染する感染症であるが、生きた鳥との濃密な接触等により、大量の鳥インフルエンザウイルスが人の体内に入った場合に、ごくまれに人に感染することもある。

A 鳥インフルエンザウイルスが人から人に感染し科学的に証明された例は、報告されていない。(※青イタリック体は試験会場で追加・訂正した部分)

B 食品としての鳥類(鶏肉や鶏卵)を食べることによって、人が鳥インフルエンザに感染した例がある。

C 鳥インフルエンザウイルスが変異し、人から人に強い感染力を有する新型インフルエンザウイルスとなる可能性がある。

D 海外には鳥インフルエンザ用のワクチンはあるが、日本を含め世界のほとんどの国では、ワクチンに頼らない殺処分による防疫措置がとられている。

正解……Bが誤り(このような例は未だない:H15白書p20、p246。なお、Aについては、今年の9月になってから、タイで人から人への感染の疑わしい事例が発生してしまったので問題に追加、訂正したようだ→これもよひさんからのメール)

 

W−18 「牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法」に基づく制度の概要に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

@ 国内で生まれたすべての牛に、1O桁の個体識別番号が印字された耳標が装着されるが、生体で輸入した牛には耳標を装着しなくてもよい。

A 個体識別番号によって、牛の性別や種別に加え、出生から、肉用牛であれば肥育を経て屠殺まで、乳用牛であれば生乳生産を経て廃用・屠殺までの飼養地等がデータベースに記録される。

B 牛肉となってからは、枝肉、部分肉、精肉と加工され流通していく過程で、その取引に関わる販売業者等により、個体識別番号が表示され、仕入れの相手先等が帳簿に記録・保存される。

C 消費者は、購入した牛肉に表示されている個体識別番号により、インターネットを通じて牛の生産履歴を調べることができる。

D 販売業者等にとっては、消費者からの信頼が高まり、酪農家や肉用牛農家等にとっては、個体識別番号による各種情報の統合や、個体確認を伴う経営支援対策の確実な実施等への活用が期待されている。

正解……@が誤り(生体で輸入した牛に耳標を装着しなくても良いという特例はない:H15白本文書p25)

 

W−19 日本における家畜排せつ物に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

@ 平成11年11月1日に施行された「家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律」に基づく管理基準は、平成16年11月1日から全面的に適用される。

A 法律上の家畜排せつ物とは、ふん尿の状態のものだけではなく、発酵後の堆肥や液肥までを含めている。

B 「家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律」に基づく管理基準は、飼養頭羽数の少ない農家にも適用される。

C 平成11年度における年間の家畜排せつ物の処理・利用の状況は、野積み・素掘りへ約9百万トン、農地・草地還元へ約75百万トン、浄化やメタン発酵等へ約6百万トンとなっている。

D 畜産環境に起因する苦情発生戸数は、ここ数年、減少傾向にある。

正解……Bが誤り(「家畜排せつ物法」では、牛10頭、豚100頭、鶏2,000羽、馬10頭以上規模の飼養者に管理基準が適用される)

 

W−20 日本における農村地域計画策定上の留意事項に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

@ 農村地域は、生産・生活・生態環境がひとつの空間において重なり合い、切り離しがたいシステムとして成立している。

A 地域の環境・資源に働きかける個別具体的事業は、いずれも地域の環境を変化させるが、その影響は直接的なものばかりではなく、何段階かの因果関係を経て意外な環境要素に及ぶ場合がある。

B 歴史的文化的価値の投影された農村景観が全体として、人々に、やすらぎ、ゆとり、なつかしさ、といった多様な心理的効果をもたらすことも重視されつつある。

C 近年の農村地域では、兼業化や混住化が進行しているが、住民の意識や価値観は一様であるので、住民参加による合意形成は、計画策定上重要な鍵ではない。

D 土地のほとんどは私有財産であるが、土地利用は隣接する土地の利用状況に影響されるので、優良農地の保全に留意するなど、土地の公共惟にも十分配慮する必要がある。

正解……Cが誤り(住民の意識や価値観は多様であるので、住民参加による合意形成は、計画策定上重要な鍵である

 

W−21 日本の農村における地域物質循環システムに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

@ 地域社会の持続可能な発展のためには、資源の過剰な消費や廃棄物・汚染物質の発生を抑制するなどにより地球環境への影響を抑えることが大切である。

A 有害化学物質であるダイオキシンやPCBは、農業や農村の持つ自然の浄化機能の働きを利用してその分解などを促進することが重要である。

B 農業生態系は、農業生産・農村生活から発生するアウトプットの相当量を、その系内で自己完結的に再利用あるいは分解・消化する物質循環機能を持っている。

C 畜産廃棄物の処理において量的・質的に問題になるものはふん尿である。

D 生活系アウトプットのうち農地還元が可能な有機性廃棄物は、生ゴミなどの一般廃棄物と下水汚泥が代表的である。

正解……Aが誤り(ダイオキシンやPCB等の人工合成物質は自然分解しないので、農地等に還元したなら重大な土壌汚染となる。PCB等の処理法としては、アルカリ触媒法、超臨界酸化法、熱分解法や紫外線分解法等が考えられている)

 

W−22 平成15年10月に閣議決定された土地改良長期計画(「以下計画」という。)に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

@ 計画では,食料・農業・農村基本法の理念を国民・消費者に対してサービスを提供していく観点から捉え、「いのち」、「循環」、「共生」の各視点から、政策目標を設定している。

A 計画では、政策目標ごとの目指す主な成果、事業量及び事業費を示し、その計画期間は、平成15年度から平成29年度までの15カ年間である。

B  意欲と能力のある経営体の育成という政策目標においては、目指す主な成果として、農業生産基盤の整備地区において、意欲と能力のある経営体への農地の利用集積率を事業実施前より20ポイント以上向上させるとしている。

C 総合的な食料供給基盤の強化という政策目標においては、水稲と畑作物の選択的作付を可能とする基盤整備の実施により対象農地における耕地利用率を105%以上に向上させるとしている。

D 安定的な用水供給機能等の確保という政策目標においては、基幹的農業用用排水施設の長寿命化やライフサイクルコストの低減を図りつつ、施設が有する延べ約250万ヘクタールの農地に対する安定的な用水供給機能及び排水条件の確保を図るとしている。

解答……Aが誤り(平成29年度までの15カ年間→平成19年度までの5カ年間:H15白書巻末p46)

 

W−23 日本の水田農業の歴史に関する次の記述のうち、誤っているのはどれか。

@ 大化の改新は、唐の律令をもとに公地公民公水主義を打ち出し、農地、水利の整備は、今も残る雄大な条里制に示されるように、国家によって強力に進められた。

A 鎌倉時代から室町時代に進むにつれ、守護・地頭による水田開発管理、村落共同体による未端水管理、入会による肥料自給という日本独自の水田農業体系の原型が出来上がった。

B 戦国時代、諸大名により、中小河川、あるいは大河川支流での水田開発が進んだ。さらに江戸時代前期から中期にかけて、関東流及び紀州流と呼ばれる技術体系が形成され、大河川中下流部での水田開発が可能となり、これにより沖積平野農業開発の基本的枠組みが確立された。

C 明治32年「耕地整理法」が制定され、農地の整形、交換を行い、30アール程度以上の区画に整備された水田の整備率は、明治年代末までに約7割となり、排水改良、乾田馬耕とあいまって、多肥・品種改良の小農型明治農法を生み出した。

D 昭和24年「土地改良法」が制定され、土地改良事業の主体は地主から農業者となり、土地改良事業への公共の援助が約束され、国営土地改良事業の実施も定められ、現在に至っている。

正解……Cが誤り(平成4年で30a程度以上の区画に整備された水田の整備率は5割強〔土地利用基盤整備基本調査〕であるので、7割には現在でも到達していないはず)

 

4−24 日本の農業用水の特質に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

@ 農業用水は、灌概用水のほか様々な農業活動に使用される用水で、農村における消火、除雪、水環境形成などの地域用水としての機能も持っている。

A 農業用水は、温度や降雨など気象条件や作物の生育段階によって需要量が大きく変化する。

B 農業用水は、面的に広がった耕地に供給されるなど、地域の水循環に大きな影響を与える。特に、畑地潅漑用水は水田潅漑用水よりこの影響が顕著である。

C 農業用水には、長い歴史的過程を経て形成されたものが多く、複雑かつ固定的な水利慣行を持つ場合が多い。

D 河川からの取水開始年代が古い農業用水は、後発の都市用水などに対して優先取水の権利を持っているものが多い。

正解……Bが誤り(水田潅漑用水は畑地潅漑用水より水循環への影響が顕著である)

 

W−25 農地の排水計画に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

@ 農地の排水計画の目的は、農地の過剰な水を排除して、農作物の品質向上や農業の年産性向上を実現するとともに、湛水被害を軽減して安定生産を図ることである。

A 機械排水地区では、大雨時に水田や遊水池などに一時貯留すると、小さい排水ポンプでよく、しかも運転時間が長くなるため、稼働率の高い経済的な排水施設となる。

B 近年では、農村の混住化が進み、農地だけでなく地域全体の排水改良計画及び広域の排水管理が重要となってきている。

C 低平地では、堤防などで囲まれた地区毎に排水路で流出水を集めて、水門や排水ポンプで地区外の河川などへ排除する。

D 農地の排水事業計画では、畑作物の湛水被害は小さいので、大雨時には計画対象地区内の畑地においても水田と同じように湛水させることとする。

正解……Dが誤り(水田は許容湛水深30cmであるが、畑作物はゼロ湛水→ピクシィさんのメールを参照。畑地においては被害が大きいので湛水した場合でも、4時間以内排水を目指している)

 

W−26 圃場整備における土層改良に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

@ 土層改良とは、農用地の土層の状態を作物生育と農作業などに適するように持続的に改善する措置をいい、物理的方法、土木的方法などがある。

A 混層群は、表層土が理化学性の劣る土壌であって、下層土に肥沃な土層が存在する場合などにおいて、表層土と下層土を同時に耕起、混和又は反転などを行い、作土深の増加、作士の理化学性の改良を図る作業をいう。

B 心土破砕は、作土の直下層に新盤などの堅密層が形成され、十分な透水性、通気性が得られない場合や作物の根が伸張できない場合に、これを破砕する作業をいう。

C 除礫は、石礫含量の多い土層において作土の理化学性の改良を目的として、支障となる大きさの作土内の石礫を除去、破砕などを行う作業をいう。

D 不良土層排除は、取り除く以外に改良の手段のない火山灰地帯の軽石層などの物理性又は化学性の不良な土層を排除して作土厚や有効土層深を増加させる作業をいう。

正解……Cが誤り(除礫〔石礫除去)で礫の破砕は一般的には行わない〕

なお、@において、「土層改良には物理的方法、土木的方法などがある」としているが、土木的方法を用いて土層の物理性を改善するのではないかと考え、@の選択肢を誤りとした人も多いのではないか。「農業土木ハンドブック」にはこのような分類は記載されていない。そうするとDの「除礫は作土の理化学性の改良を目的とする」という記述も今一疑問が残る(誤りだから良いけれど……)。さらにDの土地改良事業工種として、「不良土層排除」は聞いたことがない。「排土」のことか?考えすぎると迷い込む問題である。

 

W−27 農道に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

@ 一般に農道は、基幹的農道と圃場内農道に大別され、さらに圃場内農道は、幹線農道、支線農道、耕作道に分類される。

A 基幹的農道とは、農業地域と国道・都道府県道などを連絡するもので、地域の社会生活活動への利用を主たる目的としている。

B 圃場内農道は、圃場への通作、営農資材の搬入、圃場からの農産物の搬出などの農業生産活動に主として利用される。

C 圃場内農道のうち幹線農道は、集落と圃場区域、圃場区域相互間、一般道路や基幹的農道と圃場区域、圃場区域と生産・加工・流通施設等をそれぞれ結ぶ主要な農道である。

D 圃場内農道のうち耕作道は、収穫および防除作業等に利用するため、耕区の境界部または耕区内に設けられる農道である。

正解……Aが誤り(基幹的農道とは農業交通のほか、地域の社会生活活動〔一般交通〕への利用も重視する道路であるが、農業交通〔農業輸送+通作交通〕が過半数を占めることと規定されている)

 なお@については、農道は基幹的農道と圃場内農道のほかに開発農道の3つに分類するのが一般的である(農業土木ハンドブック他)ことから、誤りともいえる。正解が2つあるといわれても仕方のない問題である。

 

W−28 農業用ダムに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

@ 農業用ダムは、農業生産活動に必要不可欠な水を安定的に供給するものであるが、当該ダムに関係する地域とその環境に対し,一定の影響を与える可能性がある。このため、周辺地域の環境との調和にも配慮して建設しなければならない。

A ダムサイトとしては、ダムに必要な機能および安全性が確保され、かつ経済的に建設できる地点を選定する。

B 農業用水補給のための利水容量は、10年に1回程度の渇水を対象に、取水地点の不足水量とダム地点の貯留可能流量、貯水面蒸発量などの損失水量を考慮して決定する。

C ダムには、提体、基礎地盤および貯水池周辺地山の力学的、水理的安定性を確認するための構造物管理設備ならびにダムの適切な運用、操作および維持管理を行うための操作管理設備を設けなければならない。

D ダムを供用するに際しては、ダムを構成する施設、基礎地盤および貯水池周辺地山の安全性を数値計算によって確認し、試験湛水による確認は特別な場合を除き実施しない。

正解……Dが誤り(試験湛水による確認は必ず実施し、安全性を確認する)

 

W−29 農業用水パイプラインの路線選定に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

@ 路線距離が長くなっても管内水圧が最も高圧となる路線を選定する。

A 軟弱地盤地帯や被圧地下水が分布しているところは、できるだけ避ける。

B 道路、河川及び軌道の横断は、できるだけ直角交差とする。

C 施工や完成後の管理の便を考慮して、一般に道路や耕地の境界に沿って配置する。

D 制水弁やポンプの操作に伴い発生する水撃圧や負圧対策に配慮する。

正解……@が誤り(パイプラインの路線選定は余裕水頭を確保し、路線距離ができるだけ短くなるように路線を選択する→ピクシィさんのメールを参照)

 

W−30 農地の整備・保全のための調査計画に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

@ 地質・土質調査及び植生等の自然生態系調査は、既存資料により行い現地調査は実施しない。

A 気象調査データは、都道府県庁所在地における最近3年間の記録を解析して使用する。

B 地域農業や営農状況調査については、現在の状況だけでなく過去の推移、関係機関が定めた将来目標等を併せて調査する。

C かんがい用水の水質調査の調査項目としては、酸素イオン濃度(pH)、化学的酸素要求量(BOD)、全窒素濃度(T−N)、有機浮遊物質(SS)等があげられる。

D 調査や計画作成に使用する地形図は、1/30万の縮尺で作成する。

正解……Bが正しい

@誤り……現地調査は必ず実施する。 

A誤り……一般に気象調査データは、最も近いアメダス観測点等における10か年程度の記録を解析(1/10確率)して使用する。

C誤り……化学的酸素要求量(BOD)→(COD)

D誤り……1/25,000〜1/5,000程度の縮尺を用いるのが一般的である。