西安紀行2006 〜その4〜

2006.6.26

●上海車事情
上海の朝、ホテル前にずらっと車が並んでいる。なんだなんだ何かあったのかと思って少し歩くと、交差点である。それだけ。月曜日だからかもしれないが、けっこう猛烈なラッシュだ。そして多いのが自転車とバイク。特にバイク。信号が変わるとうわーっとあふれ出してくる。聞くと、このバイクの多くはバイクタクシーらしい。ラッシュの間をぬって走れるので、こちらのほうが車のタクシーより良いらしい。

ホテルの窓から、上海の朝。 交差点に溢れるバイクと自転車。後部シートの人が
ヘルメットをかぶっている2人乗りがバイクタクシー。
とにかくバイクや自転車が多い。

車といえば、上海ではユニークな道路財源確保をしている。ナンバー登録は有料である。金額がすごくて、車で60万円、バイクで30万円くらいとのこと。ナンバー料金が、である。さらにオークションにかけるらしい。中国人は縁起担ぎが強いので、末広がりの8などのナンバーは金を出しても買うそうだ。こうして稼いだ費用で道路インフラを整備する。税金ではなく、受益者負担で財源を確保するわけだ。そのかわり高速道路もタダである。
道を行くと、高層マンションが林立する。マンションは2000万円くらいとのこと。2000年は700万円で買えたらしい。伴働きで2人とも月10万という収入がある人は、20年ローンで2000万円のマンションを買うとのことだが、こんなことができるのはリッチマンだけである。それでも、2000万マンションのニーズは高いらしい。どんどん発展する中国が、ここでも垣間見られる。

朝のビル街。 建設中のビルも多い。 高層マンション。2000万とか。

●上海タワー
上海タワーに着いた。正式には上海オリエンタルパールタワーといい、アジア1の高さを誇る468mのスーパータワーである。
タワーに上り、周囲を見渡す。適度にもやがかかり、高層ビルが立ち並ぶ上海の街が眼下に広がる。タケノコのようなデザインの世界第3位の超高層ビル・ジンマオタワーが見える。見渡す限りの都会である。

上海タワー。とにかく高い。 超高層ビル街。 ジンマオタワー。タケノコタワーとも言われる。

やはりスタートが早い分だけ、上海のインフラは分厚さを感じさせる。西安にも高層ビルがどんどん建っているが、高層ビルの足もとにレンガ作りの古い家が残り、まだまだインフラは薄っぺらい。これから西安はどんどん変わっていくだろうが、華清池のようなわけにはいくまい。
それでも、変化のエネルギーは相当なものだ。高度成長経済のころの日本のように、「豊かになるんだ」が社会的コンセンサスなのだろう。社会全体がそちらを向いて、少々のノスタルジーなどは休憩時間の茶飲み話程度にしておいて、猛烈に社会が突っ走っていく。上海や北京ももちろんそうだけれど、瀬案のような「後発組」はもっとしゃかりきである。
この「突っ走り」は当分続くのだろう。日本がそうであったように、都会も地方も対して暮らし向きが違わない、地方には都会にない利点がある(土地が安いとかね)という認識が行きわたって、総中流意識みたいな状態になって、初めて成長が緩和されるのかもしれない。そしてそれはさらなる成長へのインセンティブの低下という効果ももたらすのかもしれない。

見渡すばかりのビル街。上海のインフラは分厚い。

タワーの展望台の賑わい。 展望台売店をのぞくと、あったあったミニチュアタワー。
東京タワーも上海タワーも、こんなところは似てる。^^;
タワー1階に面白い光景が。世界の観光地の風景写真の
前で撮影すれば、あなたも世界旅行?アリバイ横丁か?

●上海街風景
バスは観光街へ。ナントカいう「袖の下」をため込んだ役人が作ったという馬鹿げた庭園を見学したあと、昼食、ショッピング。旅先では「人々の生活」が一番の関心事である私には、こういったものはあまり印象に残っておらず、道端の店先風景のほうがよほど興味深かった。安売りPRのけばけばしい紙がベタベタ貼ってあって、大阪っぽい商魂がかいまみえて面白い。こういうところも都会だなぁ。
ビルの改築現場に竹の足場が組んである。香港でもよく見た光景だが、西安では見なかった。そういえば竹林もあまり見なかったように思う。モウソウチクは西安にはあまりないのか?しかし泰嶺山脈はパンダの生息地だとか言ってたような・・・・
香港でもよく見た光景と言えば、窓の外にはり出した物干がある。西安でも高層マンションはあるだろうが、あそこでは物干をどうでしているのだろう。

商品価格チラシがけばけばしい店先。 竹の足場。 軒先の物干。

●リニアモーターカー
上海に来たらこれ!というのがリニアモーターカーらしい。時速431km(うう、なんでこんな半端な数字?)で突っ走るとのことで、空港までこれに乗ることにする。
乗車率は70%程度かと思うが、窓際進行方向の席はことごとく埋まっている。みんなスピード目当てで乗っているのだ。
やがて出発。レールの音がしない、静かな走行だ。シュイーンという音が、未来感あふれていい感じだ。
あっという間に加速する。車内にはスピード表示板が誇らしげに取り付けられている。やがてその表示板が431kmで停止した。新幹線をはるかにしのぐスピード、風景が飛び去っていく。
最高速度での走行は5分ほどで終了し、徐々に減速。もう駅に着くのだ。車なら1時間ほどかかる行程、リニアでは10分台で着いてしまった。うーむ・・・・と理屈抜きに感心しながら降りる。

リニアモーターカーとホーム。 速度表示。新幹線でいえばテロップ表示板のあたりにある。 ビュワーンビュワーンはっしっる〜

●帰路
バスを待つ間にショッピングなどで思い思いに過ごし、迷子になりかかった人が出たりしてバタバタしつつも、やがて機上の人となった。
何度も訪ねるというのは、その土地を深く理解するためにはぜひ必要なことだ。私が西安をどれだけ理解しているかというと、その知識も経験もほとんどないに等しいけれど、1回目の訪問では感じなかったこと、日本と中国の文化のつながりの深さを強く感じた。小浜市サイドも2回目ということで慣れてきたのか、わっせわっせと観光地を回ることは少し控えて、市民との交流にも踏み出し始めていると感じた。いいことだ。
市民交流使節団として西安を訪れた市民は、のべ100人に達した。そして、昨年からロングステイして高校に通っているイーチェンが7月に帰国し、8月からはルイがやってくる。また7月末にはショートステイの5人もやってくるし、8月初めには小浜からのショートステイ派遣も実現する。西安に赴く高校生3人は、きっと視野が広がるだろう。異国へ行くとは、そういうことだ。そういう体験があってこそ、自分の国や自分の町の再発見もまたあるのだ。
こうしたゆっくりした歩みの中で、徐々に小浜と西安は親しくなっていくだろう。そして実利を伴う交流も始まることが期待されてくる。
ホテルでルイと会い、ショートステイの打ち合せをした後で外事弁公室の人を交えて雑談していたが、小浜にある看護学校に学び、小浜病院で働くことはできないかというような事を言っていた。小浜は田舎町だが、今度できる小浜歩病院の新施設は、自治体規模にしてはなかなかのもので、どこからかそういうことを知って、興味を示しているようだ。
西安にとっては、一人っ子政策の結果やってくる超高齢化社会を控え、若者が小浜の看護学校・小浜病院と学び経験を積んで西安に帰ってくることは有益だろうし、若者の少ない小浜にとっても、若く勤勉な労働力が病院に確保できることは少なからずメリットがあるだろう。こういうことがいい方向で実現して、Win−Winの関係を築いていければいいのだが。国際教育協会副会長という立場にもあるし、できることをやっていきたいと思う。

ずっと中国東方空港だった。

飛行機はセントレアに到着した。午後9時近い。小浜に帰ったら真夜中だ。早速に携帯電話で仕事の打ち合せをしながら、あわただしい生活に戻ってきたことを、空港出口ですでに実感した。
途中立ち寄ったサービスエリアで各自軽食を取った。本格的とはほど遠いうどんやラーメンだが、みんな「うまーい」と感嘆している。慣れ親しんだ味・風味は、理屈抜きにうまい。ルイは1年間そういったものと離れて暮らすんだなあと思うと可哀想にも思ったが、それもまた経験だろう。
ルイのいる間、西安は否応なしに身近な存在であり続けるだろう。その後も、きっとまた訪問することがあるような気がする。あのめまぐるしく変化する街を、もう一度見に行きたいなと思う。建物だけでなく、人や生活がどうなっていくかも見てみたい。
いつの間にか、西安という彼方の街と深くかかわろうとしている自分がいるわけだが、思えば昨年、まちづくり委員会の面々が、私も知らぬ間に第1回使節団に応募していたのが始まりだった。まあこれも縁だ。いろいろな経験を楽しみながら、できることをやっていこうと思う。