●食品偽装(年間を通じて)
事例を整理した記事
  • 内容
    2007年の1年間を通じて、様々な食品偽装が秋からとなった。主なものをピックアップすると以下のとおり。
    • 1月、不二家が社内基準を超える消費期限を表示したプリン・シュークリームを出荷、また消費期限切れ牛乳を使用したシュークリームも出荷していたことが判明した。
    • 6月、ミートホープが豚肉や鶏肉を混ぜたものを「牛肉100%」として出荷していたほか、様々な偽装を行っていたことが判明、同社は自己破産した。
    • 8月、白い恋人が賞味期限を改ざんしたり返品された菓子を再利用していたことが発覚した。
    • 10月、赤福が製造日偽装をしていたことが発覚した。またこれに似た御福餅でも製造日偽装が発覚した。
    • 10月、比内地鶏がブロイラーを地鶏と偽って販売していたことが発覚。宮崎地鶏でも同様の偽装が見つかった。
    • 10月、船場吉兆で消費期限偽装とブランド偽装が発覚した。
    このように様々な事例があるが、基本的には消費期限偽装とブランド偽装の2つに分けられる。また多くの例は、従業員・元従業員による内部告発により表面化している。

  • 考察(技術者ができること)
    一連の食品偽装は、
      (1) 消費期限偽装・返品再利用
      (2) ブランド偽装
    に分けられる。前者は原価抑制により儲けようという動機であり、後者は付加価値をつけることにより高く売って儲けようということである。
    このように動機は結局「儲けよう」ということに尽きる。儲けたいと思うのは経営者として当然であり、そうでなくては従業員に対しても株主に対しても期待に応えられない。儲けるのは経営者の職務である。しかし、世の中(客)に役立つ・喜んでもらえるものやサービスを提供し、その対価として儲けるという原則が逆転し、まず自分が儲けることを最優先してはいけない。コンプライアンス、すなわち法を犯さないということは当然であるが、法を犯さなくても儲け最優先では、コンプライアンスからさらに一歩進んで企業に求められるCSRの社会的要求に応えられない。
    以上のことは「経営者としてなすべきこと・してはいけないこと」であるが、技術者としてはどうであろうか。それぞれについて考察してみる。
    • 消費期限偽装・返品再利用を抑制するために技術者ができること
      考えられるのは、消費期限を長くする技術開発により原価を抑えるというアプローチである。
      基本的に消費期限偽装や返品再利用偽装の動機は「原価を抑えて儲けたい」なのだから、その経営者ニーズに技術者として応えるのである。
      これは、建設業界における脱談合のために技術力アップや新技術開発などを行い、価格競争に打ち勝つ企業力をつけるというアプローチと同じである。
    • ブランド偽装を抑制するために技術者ができること
      こちらは「付加価値をつけて高く売って儲けたい」という経営者ニーズであるから、これに応え、美味しいとかきれいとか洒落ているとか、とにかく商品に付加価値をつけることで競争力をつけ、価格競争から商品の付加価値競争に持ち込めるよう、技術開発部門としてできることをするというアプローチである。消費者にとっての付加価値は、たとえばCMイメージのように技術力だけで付けられるものではないが、「技術者にできることはない」はずがない。
      これは建設業界にたとえれば、新技術開発や資格取得その他によりプロポーザルなどの技術競争型発注方式に勝てる体制を整えることである。
    このように、経営者としてはコンプライアンスを堅持しつつ価格を抑える様々な努力が必要であるが、技術者にもできることがある。技術者が経営者のように仕入先を考えるなどのことをする必要はないが、技術者には技術者だからこそできることがあって、大切なのは技術者が「自分にできることは何か」、「自分だからこそできることは何か」と考えることである。

  • 考察(トリプルボトムライン)
    今回の一連の食品偽装で特筆されるべきことは、食中毒などの健康被害が出ていないにもかかわらず、非常に厳しい批判が集まり、これが国や検察を動かしたという流れである。例によって煽り報道やみのもんたに代表される暴言などマスコミの過剰反応の影響は大きく、マスコミ報道を情報ソースにして判断する国民がいかに多いかが改めて浮き彫りになった現象ともいえる。このように客観性・論理性に疑問のある行動は多いものの、コンプライアンスやCSRに関する国民の関心は高く、これらを軽視する企業に対しては容赦ない批判を浴びせるという意識が醸成されていると思われる。
    かつて企業の評価軸、すなわちボトムラインは会計つまり儲かっているかどうかだけであった。儲かっており収益が大きければ株主配当も多くなるからみんなが株を買ってくれ、これが企業の評価となり、企業は伸びた。
    今はトリプルボトムラインの時代と言われる。会計だけでなく、CSR(コンプライアンス含む)と環境配慮・環境負荷軽減が新しいボトムラインとして加わっているのである。
    マスコミの煽り報道などに影響されつつも、しかし国民全体として、社会的責任や環境配慮といった公の部分での努力、企業の公共心を企業の評価尺度として重視する時代になってきたということではないかと考える。
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●エキスポランドジェットコースター事故(2007年5月)
事例に関するWikipedia記事
  • 内容
    2007年5月5日、大阪エキスポランド(以下、EL)のジェットコースターが走行中に脱輪し、乗客の一人が手すりに叩きつけられ死亡した。
    事故原因はコースター車軸の金属疲労による折損であり、その後の調査で管理体制の杜撰さが明るみに出て、監督省庁はフールプルーフ等を採り入れた多重安全構造等の再発防止策報告を求め、ELは長期間の営業休止となった。
    夏休みに入り、プールのみの営業もしようとしたが、吹田市が許可せず断念。
    その後全施設の点検を終え、死亡女性の遺族からの一定の理解も得たとして8月に営業再開したが客足が伸びず12月9日
    また、8月の再開後もコースターの停止や誤動作などのトラブルが発生している。
    ELは毎年1〜2月に当該コースターの定期検査を行い、探傷試験も実施していたが、2007年は試験場所確保不能として探傷試験のみをGW後に延期していた。なお、前年度までの探傷試験結果は見つかっておらず、また折損した車軸はコースター運行が始まった1992年以来一度も交換せず(メーカーは8年ごとの交換を推奨)、また耐用年数をメーカーに問い合わせることもしていなかった。
    業務上過失致死傷容疑で幹部が、さらに建築基準法違反(定められた検査での2004年度以降の「良好」報告は虚偽である可能性が高いと判断)で技術系幹部と法人としてのELが書類送検されたようだが、その後の情報が不足でわからない。

  • 考察(ELについて)
    1年間で折損するほど金属疲労が生じるとは思いがたいが、耐用年数に至っていたのならそういうこともあるかもしれない。ただ探傷試験で見つからないものであろうか。
    「耐用年数には至っていない」&「2006年度の探傷試験は妥当で異常もなし」という条件が満たされれば、事故予見は不可能という結論もありえるであろうが、耐用年数未確認&試験記録破棄あるいは散逸ということから、管理責任を果たしていたとは到底いえない。
    このような絶叫マシーン系は、トラブルが利用客の安全を損ねる危険性が高い。同じ遊具でもコーヒーカップなどとは故障時のリスク(被害規模)が大きく異なるのである。
    人の命に関わるリスクについて経済比較によるリスク保有を行うことは、フォード・ピント事件などの事例より非倫理的行為とされるのが一般的である。ELはフォード社のように確信を持ってリスクを保有していたわけではないだろうが、感覚的に「大丈夫だろう」という判断でリスクを保有していたと判断される。だからこそ試験を稼ぎ時であるGW後に回したのであろう。
    業務上過失致死に問われるのは当然であるし、倫理的にも公共の安全を脅かすこと著しい行為であり、またレジャーランド業界にとっては信用失墜行為でもある。

  • 考察(製造者責任の観点から)
    このコースターのメーカーは、8年ごとの車軸交換を推奨していたようであり、耐用年数を超えると推定される著しく不適切な使用での折損事故なので、製造者責任を問われることはないのではないかと思われるが、ELでの使用実態を把握していたのであろうか。
    把握していながら放置していたか把握していなかったかのどちらかであれば、出荷ロットが多くない商品であることも考えると、安全に関わるアフターサービス(顧客に対してだけでなく利用者に対して)を怠っていたということで、これも非倫理的行為である可能性が否定できないと思われる。
    そのことを怠ったと非難することは酷なようにも思われるが、「命を預けるスリルを楽しむ遊具」の特異性をどこまで認識し、製造物責任を捉えていたかはぜひ知りたいところである。
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●ボンバルディア機トラブル頻発(2007年3月など)
事例に関する一連のYahooニュース
国交省とボンバルディア社の会議内容
  • 内容
    2007年3月13日、伊丹発高知行全日空ボンバルディアDHC8−Q400型機が着陸時に前輪が出なくなり、高知空港上空を数十回にわたり旋回したものの前輪が出ないまま、胴体着陸を敢行し、機首を滑走路にこすりつけ火花を上げながらも着陸に成功した。
    事故原因を調査していた国土交通省航空・鉄道事故調査委員会は、前輪格納扉を開閉するアームのボルトがなく、ボルトを通す筒部品がずれて他の部品にひっかかり、このため扉が開かなかったと判断した。2005年7月に機体が納入されて以来、全日空はこの部分に触れる整備を行っていないことから、ボンバルディア社が製造段階でボルトを取り付けるのを忘れたとの見方を強めている。
    ボンバルディア社の同型旅客機はこの事故以外でもたびたびトラブルを起こしている。
    • 2004年11月、高知空港で滑走路から脱輪する重大事故が発生した。
    • 2005年から2006年の間、機器表示エラーや格納不能などで70件以上のトラブルが発生している。
    • 2007年3月6日、全日空伊丹発佐賀行便で、離陸後に警告灯が消えず伊丹空港に引き返した。
    • 2007年3月16日、琉球エアーコミューター那覇発与那国行便で、速度計測器の凍結防止用ヒーターが断線し那覇へ引き返した。
    • 2007年3月20日、天草エアライン天草発熊本行便で、熊本着陸時に車輪が出ないトラブルが発生、手動に切り替えて着陸した。
      国交省は高知での胴体着陸直後で、それも緊急点検後に同種のトラブルが起きたことを重視、緊急時用手動レバーで車輪を出して着陸したケースについて調査したところ、この天草の件を含めて7件発生していたことが判明した。
    2007年4月に国交省とボンバルディア社が会議を持った時点では、重大インシデント1件、イレギュラー運行79件であった。
    ボンバルディアはカナダの鉄道車両会社であるが、航空会社を傘下に治め、中・小型機の分野で高いシェアを持つに至っており、日本でもボンバルディア機は数多く飛んでおり、特にDHC8型のターボプロップ機は、同じプロペラ機であるYS−11型機の後継機として地域間航空に使われている。
    構造的な重大欠陥はないようで、2007年4月に国交省とボンバルディア社が会議を持ち、複数の改善案が示されたようである。
    このように、現時点では明確な「製造者責任」は発生していないようである。

  • 考察
    状況はどうあれ、「ボンバルディア」の名は国民の間にすっかり有名になった。エレベーターに乗ったとき、「おいおい、シンドラーじゃないだろうな」という冗談が交わされるのと同様、飛行機に乗るときに「ボンバルディアじゃないだろうな」という冗談が交わされるようになっては、安全を大前提とするメーカーとしては信用失墜もいいところである。
    全日空は引き続きボンバルディアを使うようであるし、乗客の側とすれば、エレベーターが怖いから階段で・・・・というような選択肢はなく、否が応でもボンバルディアに命を預けるしかないのであるから、地道な整備と設計改善によって信頼性を上げていくしかないのであろう。
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●中華航空機着陸炎上(2007年8月)
事例に関するasahi.comの特集
  • 内容
    2007年8月20日、中華航空ボーイング737(台北発那覇行)が那覇空港に着陸直後、駐機場にて右主翼エンジン付近から出火、まもなく爆発炎上した。出火時機内には乗客・乗員が残っていたが迅速に脱出し、全員無事であった。爆発炎上は避難直後で間一髪であった。地上整備員が燃料漏れを発見して機長に連絡、迅速に緊急避難措置をとったため大惨事を免れることができた。
    その後行われた調査の結果、右主翼のフラップ付け根のボルトが外れて翼内にある燃料タンクを突き破り、ここから燃料漏れを起こしたところにエンジンから引火したことが判明した。このボルトはナットの直径がボルト穴より小さく、ワッシャーがないとボルトがナットごと穴から抜けてしまうことから、整備点検時にワッシャーをつけ忘れたことが原因とみられる。その後10月に中華航空機は社長が引責辞任し、ボーイング社は設計変更を決めた。
    また那覇空港当局は消防に連絡するのを忘れ、たまたま火災を見つけた非番の消防署員が連絡して初めて出動するという事態であった。

  • 考察(中華航空について)
    中華航空は、事故の多い会社として知られている。
    1994年には名古屋空港で着陸直前のエアバスがタッチアンドゴーの失敗と見られる墜落事故を起し、乗客271人中264人が死亡するという大惨事を引き起こしている。
    その5年前の1989年には台湾国内で離陸直後に山腹に激突して乗員乗客54人が全員死亡、1998年には台北で住宅街にエアバスが墜落し乗員乗客全員だけでなく住民も巻き添えになって合計202人が死亡、さらに2002年には台湾海峡上空でジャンボ機が空中分解して乗員乗客225人全員が死亡している。
    一説には退役軍人が多いため荒っぽいとか様々なことが言われているが、2002年の空中分解や今回の爆発炎上事故は機体整備上の問題と思われ、パイロットの教育訓練・機体整備の両面での安全管理体制への疑問がわく。

  • 考察(ボーイングについて)
    ナット径がボルト穴径より小さいというのは驚きであるが、意味もなくそうはなっていないだろうから、設計上の何らかの理由で遊びが必要なのかもしれない。
    いずれにせよ、ボーイングはこの部分の設計変更を航空各社に伝えたようなので、何らかの改善がなされることだろう。
    人的被害を出すことなく安全性向上に資する改善がなされることはよいことであり、訴訟で引っ張ったりしない分だけ短期間でニュースバリューが低くなってマスコミ報道も早期になくなるのも好ましいことである。

  • 考察(消防連絡について)
    単なる「失念」ではあるが、那覇空港と消防との間には、火災が発生したら直ちに連絡するという協定が結ばれていたそうである。
    それが実行されなかったのは、緊急時連絡体制に不備があったか、その確実な実施体制が確保できていなかったかのどちらかである。
    「決まりごと」が守られない原因は、ほとんどの場合以下の3つのどれかである。
    1. それを実施するための「決まりごと」が十分でない
      多くの場合、5W1Hが不明確であること、つまり管理システム不備による。
      5W1Hとは、たとえば「一番近くにいつ人が」「手の開いたときに」「気がついたときに」「各自の方法で」などである。
      緊急時には周囲の状況を見渡して役割分担をしている暇がないから、役割分担はあらかじめ具体的に決めておく必要がある。
    2. その「決まりごと」を守る体制が十分でない
      多くの場合教育訓練が不足している。緊急時には冷静な判断力が失われているから、日ごろからの訓練で頭と体に刷り込んでおかねばならない。小学校の避難訓練と同じである。
    3. その「決まりごと」を意図的に破った
      東海村JCO臨界事故などがそれである。これの前には管理システムも教育訓練も関係なくなってしまう。
      こういった行為を防ぐための方策は、談合などの非倫理的行動を抑制する方策と同じで、他律・自律・仕組みの3つにより対処するのが適当である。
      具体的には、
        他律・・・・決まりごとを意図的に破った場合の厳罰化
        自律・・・・決まりごとを守ることの必要性を技術者倫理等の形で教育
        仕組み・・・・決まりごとを破ることができないようなハード&ソフト、手続等の整備
      といった内容が考えられる。
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●タミフル10代使用中止(2007年3月)
事例に関するasahi.comの記事
  • 内容
    インフルエンザ特効薬であるタミフルを投与された患者の異常行動が中学生の転落死等によってクローズアップされ、厚生労働省は、タミフルの10代の患者への原則使用中止を決定し、輸入販売元の中外製薬に緊急安全性情報を出すよう指示した。
    なおタミフル投与後の事故報告例は3年間で15件であるが、6年前の発売以来の国内販売量は約3500万人分で、発症率としては高くない。
    12月16日、タミフルと異常行動などとの因果関係について調査していた厚生労働省研究班の調査結果報告では、異常行動を起こした患者の6割がタミフルを服用していたとのことである。ただ
    タミフルを服用していなかった異動行動患者も4割いたことから、タミフルが直接の原因である可能性は低いという意見もある。厚生労働省は、別の研究班の調査結果も合わせて、12月中にタミフルとの因果関係の評価を行う。

  • 考察(リスク管理の観点から)
    リスク管理として考えた場合、リスクは「タミフルの副作用による異常行動」である。
    問題は、この異常行動がタミフルの副作用によるものかどうかわかっていないことであり、その点でリスクアセスメント(リスク分析)が大変むずかしくなっている。
    異動行動がタミフルによる副作用かどうか見極めるためには、
      (1) タミフル投与患者と非投与患者の間に異常行動発症率に関して有意な差が認められるかどうか調査する
      (2) 異常行動の直接原因(幻覚や意識障害など)を把握し、実験等を含めてタミフルとの因果関係を調査する
    といったことが必要になってくるのだが、発症率が低いとサンプル数が少なくなって、調査が困難になってくるのである。
    結局、タミフル投与と異常行動の因果関係が究明されずに終わるかもしれない。

  • 考察(予防原則の観点から)
    今回、因果関係が不明であるにもかかわらず使用中止が決定されている。これは予防原則として捉えることができる。すなわち、科学的因果関係が証明されていなくても規制するという制度・考え方であり、行政としては珍しい対応である。
    なお、なぜ10代に限定した中止かというと、
      (1) 成人の発症例は少ないので、原因が不明でもリスクは小さいと経験的に判断できる
      (2) 10歳未満の子どもは、保護者による異常行動抑止が期待できるし、体力的に生命の危険につながるような異常行動を取る危険性が低い
      (3) 子どもや高齢者はインフルエンザによる死亡率が高いので、特効薬であるタミフルによる治療の便益が、発症リスクの低い異常行動のリスクに比べて低い
      (4) 10代は体力があるのでタミフルなしでもインフルエンザ死亡率は低く抑えられると期待できる
    といったことによるものと思われる。
    10代の異常行動リスクも高いとはいえないし、タミフルを使わないことによる死亡リスク増大も確かにあるのだが、マスコミがリスクを過大に報道している中、何ら対応を取らないことによる批判も考え、「何らかの手を打つ」という役所パフォーマンスもあったと思われる。
    タミフルが特効薬効果のない薬であったなら10代に限らず使用中止にしたかもしれないが、インフルエンザ特効薬という便益は非常に大きく、タミフル使用中止による患者死亡数の増加は比較にならない数にのぼると判断したのであろう。
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●北陸電力志賀原発臨界事故隠蔽(2007年3月発覚)
事例に関するEICネット記事
  • 内容
    1999年6月、北陸電力志賀原発1号機で、定期点検中に操作ミスで全89本の制御棒のうち3本を抜いてしまい、原子炉が部分臨界状態になった。定期点検中だったため制御棒の緊急停止装置が解除されており、手動で制御棒を戻し臨界状態を脱するまで15分かかった。格納容器のフタは外されていたが出力は低格出力の1%未満で放射能漏れや作業員被曝はなかった。
    発電所はこの事故を国へ報告せず、運転日誌にも記載せずに8年間隠蔽し続けていた。北陸電力幹部にも知らされていなかったとされる。

  • 考察(安全システムの観点から)
    この事故の発生原因は、
     (1) 操作ミスで制御棒を抜いてしまったこと
     (2) 定期点検中で制御棒の緊急停止装置が解除されており、制御棒を直ちに戻せなかったこと
    の2つであり、安全システムの上では、(1)はフールプルーフ、(2)はフェールセーフ上の不備であると判断される。
    定期点検は原発運転上珍しいことではないから、上記の組み合わせによる事故発生は今後も起こりうると思われるので、再発防止策は必要である。おそらくフールプルーフとフェールセーフの強化という対応になろう。これにより安全システムを改善していくことが望まれる。
    なお、抜かれた制御棒の数や原発の多重防護設計を考えると核暴走のような大事故に至る危険性はなく、周辺への影響という点ではリスクは低いが、格納容器のフタが開いていたことを考えると、作業員被爆のリスクはそれなりにあったのではないかと思われるので、これをノーマル・アクシデントとして処理するのは危険ではないかと思われる。

  • 考察(安全文化の観点から)
    上記のようにこの事故はノーマル・アクシデントといっていいか疑問ではあるが、事故レベルとしてはさほど高いものとは思われない。
    問題は隠蔽行為である。
    このような事故は積極的に公表すべきであり、
     (1) 原発はこのようなトラブルが大事故に至らないような多重防護設計がなされていることを積極的にアピールし、国民の理解を深める
     (2) 事故事例・原因を我が国内外の原発にも水平展開することにより、世界中の原発の安全性を高めることに寄与する
    といったことにつなげていくべきである。
    公表することは自らのミスを認めることではあるけれど、それが上記のような効果を期待できる、改善のチャンスでもあるのだ。
    このような安全思想が組織の隅々まで浸透すれば、組織構成員は各々の立場・役割の中で常に安全システムの維持改善に対してプラスの行動を取ってくれるようになる。そしてヒヤリハットなどに至るまできちんと報告され、リスク情報を組織内で共有して安全向上に常に取り組むことができるようになる。これが組織の安全文化である。
    しかし今回はそれの逆の行動を現場は取り、組織上層部まで報告も行っていなかった。北陸電力に安全文化はなかったといえる。
    原発は、他と同様の科学技術でありながら、さらには多重防護により他の施設に比較すれば格段に重厚な安全設計となっているにもかかわらず、トラブルが過大評価される傾向が顕著である。中にはメルトダウンなど想定される事故の重大さから生じるカタストロフィ・バイアスによる過大評価もあるであろうが、意図的な過大評価あるいは曲解もかなりある。反原発団体によるアジテーションやマスコミの煽り報道や袋叩き報道などである。特にマスコミの煽りや袋叩きは、現場責任者や組織上層部のつるし上げ的批判に至ることもしばしばで、むしろそのような局面になることを望んでいるマスコミが多い。
    このような状況の中、原発関係者はトラブルを公表したがらず、それが技術的に見て問題のないレベルのものでも隠したがる傾向にある。
    こういった歴史の中で、市民やマスコミは原発の情報公開性に不信感を持つに至っている。しかし原発側は、トラブルの内容を客観的・科学的に見てもらえない(それゆえ事故が安全システム改善への好機であるということなど口にしたら大変である)と思っている。つまり両者の間に相互不信があり、それが隠蔽を呼び、隠蔽が感情的な批判を呼び、互いの不信感を増大させていくという悪循環に至っている。
    市民は原発事故に関する情報も専門知識も持たない公衆である。よってインフォームドコンセントを与えるためには、情報が不可欠であるとともに、バイアスのない客観的で科学的な判断ができるだけの素地を備えることも必要である。原発側や国等は、原発を理解するための科学知識を市民に付与するような啓発活動が必要であろうし、市民はそれを受け入れ、非科学的なアジテーションや煽り報道に踊らされないようになろうという姿勢が必要である。
    また原発の側は、隠蔽をなくす取り組み(違反した場合の厳罰化、高い倫理観の育成、隠蔽を不可能にするような仕組み作り)、そして安全文化の醸成が必要である。こういった相互の取り組みを継続的に続けることで相互信頼が培われ、スパイラルアップとなっていくのであろう。
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