Q.あなたの経歴について説明してください。
A.経歴が確かなものであるか、またそれがきちんと身についているかを確認します。
  • 経歴書に書いた経歴を覚えておき、口頭試験の場ではこれをかいつまんで説明します。
    「私は○○年に△△会社に入社しました。○○年までは□□の立場で◎◎や▽▽といった業務に携わりました。・・・・」といった具合。
  • ただし、業務の内容は多少具体的内容に踏み込んだほうがいいです。
    例えば、単に
    「道路設計に携わりました」
    というのでなく、
    「軟弱地盤対策を伴うような道路盛土を中心とした道路設計」
    などと言うことで、自分という技術者の個性・持ち味がアピールできます。
  • 多くの場合、この設問が最初になります。頭の中にあることをしゃべるだけなので楽なはず。
    ダラダラ話にならないよう注意しながら、はっきりと声を出して、ゆっくり気味に話しながら、試験官を観察しましょう。リラックスできます。
  • 経歴書の内容と矛盾してはいけません
  • 特に若い人は、最初のほう(ペーペーだったころ)の経歴での自分の立場が大切です。
    ペーペーなので当然補助的立場ですが、そこで基礎的な勉強をしっかりやったことをアピールします。
    「管理技術者の補佐技術員として、橋梁設計に関する勉強を2年間みっちりやらせていただきました。そしてその後、管理技術者の下で主たる担当者して、橋梁設計に3年間携わってまいりました。」
    など、自分が着実に成長してきて今に至っていることをアピールしましょう。
  • ただやったことを並べるだけでは意味がありません。設問の目的は、そのような経歴を積んできた結果の今現在の受験者が、技術士としてふさわしいか、すなわちそれだけの成長を遂げてきているかを確認することにあります。
    自分の技術者としての成長ドラマを要約するつもりで説明しましょう。
  • 「何分以内で」と時間制限をかけられる場合があります。これまでの例を見ると、3分程度で説明を求められることが多いようです。たとえ時間制限をかけられなくても、「3分スピーチ」はしゃべる時の原則ですから、3分以内で説明できるようにしておきましょう。
【変化球的な質問】
たまに変化球的な質問がきますから、あらかじめ答えられるようにしておきましょう。
  • 経歴の中から、筆記試験で取り上げた以外の事例を選び、説明してください。※19年度は多く出題されています。
    経歴の中で、特定の職務について説明を求められることもあります。
    職務1行ごとに、代表的業務について簡単にまとめておきましょう。
    まとめる内容は、
     (1) 業務の概要と立場・役割
     (2) 課題および問題点
     (3) 技術的解決策
     (4) その成果と評価、今後の展望

    といったところで、文章にするのではなく骨子表に整理して頭に入れておくことをお勧めします。
  • 記載した中から、失敗例と成功例を選んで説明してください。
    失敗例は、本当の失敗ではなく、おおむねよかったが不十分だった(改良の余地があった)ものがいいです。
    また、その失敗を糧に何かを勉強したかを述べるようにしましょう。
  • あなたの実際に行った役割を述べてください。
    公務員受験者に対しては受託業者に、管理職に対しては部下に、実際はまかせっきりで、自分自身は何もしていないんじゃないの?という疑いを持たれた場合に、このような質問が来るときがあります。さらに疑われると、実際に担当した者でないとわからないようなエピソードなどを根掘り葉掘り聞かれることもあります。
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Q.技術士受験の動機は何ですか。

A.技術士というものをどう考えているか、また積極性を確認します。

  • ポイントは、自分のための動機と社会のための動機をバランスよく組み合わせることです。
     (自分のための動機)
      スキルアップ・自己研鑽、先輩にあこがれて、やる気、力試し
     (社会のための動機)
      責任ある立場でインフラ整備により積極的に貢献、国民に対する自らの品質保証

  • 次のような答えが一般的です。
    社会資本整備により積極的に貢献するため、技術士取得が有効であると考えた」
    発注者の信頼をより高いものとするため、社会的に信頼されている技術士を取得しようと考えた」
    「技術者として最高の資格である技術士の取得に挑戦することで、自分の力を確認したかった」
    「重要なプロジェクトに携わったり、その中で重要な技術的役割を担うことにより、技術者としてスキルアップしていく契機として」
  • あまり一般的な答え、理念的に過ぎる答えは、かえって心証を悪くすることもありえます。
    やはり技術者なのですから、自分の立場に対する社会ニーズを的確に把握認識した上で、それに応えようという姿勢を見せるのが適当でしょう。
  • より強く自分をアピールしたいならば、特有性、すなわち自分のオリジナルな状況を前に出してもいいでしょう。たとえば・・・・
    「私は東京で10年間大手コンサルに勤めてきたが、そこで培った技術と経験を、生まれ故郷の発展のために還元したいと思い、Uターン就職した。しかし、地方の中小コンサルでは、地元にとってのビッグプロジェクトの中枢部には携われないことが多い。技術士資格を取得することによって、会社にとっても自分にとっても、地域発展に今より深く関わり、地域の発展に寄与できるのではないかと考えた」
    「よりグローバルな社会資本整備に貢献したいと思っているので、研鑚を積んでCPDを積み上げ、APECエンジニア登録して、東アジア一帯に活躍の場を求めたい」
  • 逆に、「持っていないと生き残れない」「会社が取れといった」「みんな持っているから」といった消極的な印象を与えないよう、注意が必要です。
    「給料アップのため」と公言して合格した方もおられるようですが、それは他の設問に対する回答などで決して利己的な人間ではないことが確認できたなどの状況があったのだと思います。そういうユニークな回答1つだけを取り上げて右往左往しないようにしましょう。
  • 公務員技術者の場合、技術士のニーズが自己研鑽以外になかなか説明しにくいという現実があり、多分に理念的な回答になって、かえって嫌味・・・・みたいな例も見られました。
    しかし品質確保法が施行された今、この「品質確保」がキーワードになっていると思います。
    すなわち、公共には、国民に対して、低廉で良質な、つまりコストパフォーマンスの高い公共インフラを提供する責務があります。入札透明化により、「低廉」はすいぶん対応できてきたのですが、「安かろう悪かろう」の回避、つまり品質の確保が問題となっています。
    先だって施行された品質確保法は、まさに公共に対してコストパフォーマンスの確保を義務づけた法律であり、これは国民のニーズでもあります。
    このニーズに応える方法として、たとえばプロポーザル(入札時に価格でなく質で選ぶ)や業務評定(納品時に点数をつけることで、質の悪い業者を排する)などがありますが、これらにおいて、「評価」を行う発注者側評価者の技術レベルが求められるのです。
    そして、たとえば技術士という資格は、質の高い評価が可能な技術力を持っているということを、国民に対して保証する手段の一つでもあります。
    すなわち、公務員技術者には、質の高い評価を行えるだけの技術レベルを持つことが求められ、それを国民に保証する(説明する)責務があります。これに応えるのが技術士資格の取得である、という考え方ができると思います。
  • この質問が口頭試験の第1問になることも多くあります。焦らず、自分の思いをしっかりと伝えましょう。

【変化球的な質問】
たまに変化球的な質問がきますから、あらかじめ答えられるようにしておきましょう。
  • 前回不合格だった原因は何だと思いますか。
    ほとんどの場合、「前回不合格」という情報は試験官は持っていないのですが、話の中でそういう情報を試験官が持つに至った場合に考えられます。
    実際の不合格原因はおそらく試験官にはわかりません。「経験論文の表現力(あるいは突っ込みなど)がいまひとつであった」とか「専門分野に知識が限定される傾向があり、広い視野が不足していたように思う」とか、自分に合った回答を用意しておきましょう。
  • あなたは技術士資格はいらないんじゃないですか?
    公務員の方がよく言われた質問ですが、今は、プロポなどの必要上、公務員も技術力が問われます。品質確保法施行後はなおさらです。
    また、非常に若い人(20歳台)や逆に50歳を越え、実務には携わっていないのではないかと思われる人は、「そういう立場で技術士を取ってどうするの」と聞かれる可能性があります。会社で上級管理職についておられる方が、「技術者じゃなくて経営者なんじゃないの」というスタンスで言われることもあります。これは受験動機にも関連しますが、そういうときにきちんと答えられるようにしましょう。
  • 短い経験年数で技術士になることについて、ご意見はありますか。
    経験が長いですが、技術士を取得しようと思わなかったんですか?

    経験年数が長かったり短かったりすると、それなりの長所短所が出てきます。
    経験年数が短いことについて質問が来た場合、まずは「経験年数は短くても密度が濃い経験をしている」ことをアピールしましょう。しかしそれだけでは生意気っぽいですから、「今後さらに経験を積みながら自己研鑽に励み、技術力向上に努めます」みたいな謙虚さも出しておきましょう。
    経験年数が長いのになぜ技術士を取ってないの?という質問が来た場合、たとえば
     ・より大きなプロジェクトに携わるようになって、資格の必要性を強く感じた。
     ・部下の技術研鑽を奨励するため、自分が範を示そうと思った。
    などが考えられます。基本的に利己的でない理由(資格を取らないとリストラ対象になるとかはダメ)がいいです。
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Q.技術士になったときの抱負は何ですか(何をやりたいか、どのようにありたいか)。

A.向上心と積極性をアピールします。

  • 動機と同様、自分のためと社会のための抱負をバランスよく持っていることが望ましいと思われます。
    自分のためとは、さらなる向上や新たな挑戦です。
    社会のためとは、技術士資格を活かして活躍し、社会に貢献することです。
  • 技術士になると、業務の管理技術者になったりして、職務上の責任がぐっと重くなります。また、「技術士の言うことだから」と言葉の重みが出てきますし、重要プロジェクトにかかわる機会も増えます。さらに、技術的指導などを行う機会が増えます。公務員技術者の場合も、委託における評価や事業遂行にあたり、主導的役割を担うことになってきます。
    すなわち、技術社会での影響力が増します。
    このことを十分認識し、今まで以上に社会的責任を自覚し、今まで以上に向上心を強く持つことが求められます。
  • したがって、回答ではそういった姿勢をアピールするようにします。たとえば・・・・
    「技術士となることで、より高度な技術的判断を求められることもあろうかと思いますので、今まで以上に技術の研鑚に励みたいと思っております。また、これまで以上に社会的責任が重くなると思いますので、そのことを強く自覚し、公共の利益の確保ということを胸に刻み、資質の向上に努めたいと存じます。」
  • また、技術士会などを通じた人脈拡大も大きなメリットです。
    技術士会におべっかを使う必要はありませんが、
    「技術士会に入会し、諸先輩や同輩との交流の中で、研鑚を積んでいきたい」
    というように、会社や地域などにしばられた「井の中の蛙」から脱却して視野を広げたいといった抱負を語るのもいいでしょう。
  • もし受験動機も聞かれているときは、抱負は当然ながら動機とリンクしていなくてはなりません。
    「○○がしたい」とか「○○になりたい」と思って受験したのですから、合格・取得したら、「したい」ことをして、「なりたい」ものになるのが当然です。
【変化球的な質問】
たまに変化球的な質問がきますから、あらかじめ答えられるようにしておきましょう。
  • 合格すると、どのような利益がありますか。
    動機や抱負から、技術士になってもあまり実利がないように思われる職務についている場合に、質問されることがあります。
  • 具体的に例をあげて説明してください。
    観念的・抽象的な答え方をした時や、非常に建前的に取れる答え方をした時に、質問されることが考えられます。
    あまり実利的になってもいけませんが、過度に精神論的になると、わざとらしいものです。
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Q.あなたの会社での役割はどのようなものですか。

A.技術者としての役割・管理者としての役割を答えます。

  • 技術士になって、その力が発揮できるような位置にいることを確認するのが目的の1つです。
    逆に、すでに隠居状態であるとかして、技術士の名義目当てではないかということの確認でもあります。
  • 「会社の中での技術士の役割は?」といったように、コンサル以外の会社では技術士の社内的地位(認知されているか)を聞かれることもあります。
    似たような質問で、「技術士を取ると社内でどのように扱われるか?」というのもあります。
    どちらも、総じて重要視されている、という方向で回答するとよいです。ただし、ウソはいけません。
【変化球的な質問】
たまに変化球的な質問がきますから、あらかじめ答えられるようにしておきましょう。
  • あなたは普段どのような仕事をしていますか。
    技術士としてふさわしいこと、すなわち「科学技術に関する専門的応用能力を必要とするような計画、研究、設計、分析、試験又は評価の業務」に該当することをしている必要があります。
    たとえば分析でも、完全にマニュアルどおりの分析(たとえば土質試験)を単純にやっているのでは技術士としてふさわしいとはいえません。「その分は経歴から差っぴく」と言われた例もあります。
  • 会社を変わっておられますが、どうしてですか。
    転職は技術者としての経験やスキルにあまり関係ないようにも思いますが、質問されることがあります。
    転職原因が、技術的問題や技術者倫理に関わるような問題でなければ、正直に話して差し支えないと思います。
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Q.技術的体験論文の内容説明

A.技術的論文の内容について問われます。

  • ポイントについては本論に書いたので省略します。
  • 忘れてはいけないのは、試験官は経験論文の内容を覚えていない(あるいは事前に読んでいない)可能性があることです。また、複数いる試験官で役割分担のようにしている可能性もあります。
    しっかり読み込んでいる試験官に対して基本的なところから説明しても、読んだだけでは理解できなかった点を補足しつつ聞いてくれるか、その必要がないと判断すれば簡単に説明するように求めてくるでしょう。いずれにしてもそれで評価が悪くなったりはしません。
    しかし読み込みが足りなかったり読んでいない試験官に対して基本的なところを省略して説明すると、せっかくの業績が理解してもらえずに終わり、結果として内容確認質問が多くなり、時間を取ってしまうばかりか「穴」が見つかって墓穴を掘る可能性もあります。
    やはり口頭試験の場で初めて聞くものとして対応すべきで、「自分の論文を一度読んでもらっている」などと勝手に前提を作ると、技術的体験論文の内容をうまく伝えられません。話がかみ合わなければ得点できないのです。
  • 論文自体は採点の対象ではなく、口頭試験でのプレゼンテーションと補足説明で試験官の疑問が解消されればいいのです。この点が、口頭試験における「経験論文」と「技術的体験論文」の一番の違いです。
    そして、提出した体験論文の内容に、口頭試験の場で補足修正追加を加えてもかまいません
    技術的体験論文を、特に技術士としてふさわしい創意工夫などがあるかどうかという視点で見直して、不足があると思えば、その点を補う事項を考えておき、口頭試験で補足します。口頭試験時点での技術力を評価することを忘れないでください。
    補足する場合は、できるだけ自分から言い出しましょう。試験官に批判されてから補足するより印象が良いです。
  • 技術上のオリジナリティをアピールした場合は、「実証実験はしましたか」「これはどこかで前例がありますか」「どこの文献から引用したのか」というようなことが聞かれます。要は「浅はかな思いつきではないか」ということです。
    オリジナル技術・手法がある場合は、その正当性が主張できるような根拠を用意しておきましょう。理論的根拠でもいいですし、実績や実証実験などでもいいです。掘り下げられる可能性もありますので、
     「それはなぜですか」
     「Aだからです」
     「なぜAなのですか」
     「Bだからです」
     「なぜBなのですか」
    といったような、「なぜ」の繰り返しに耐えられるかどうか(つまり、論理的根拠を積み重ねた上での結論になっているか)を確認しておきましょう。
  • 設問のレベルが高くなって、その方面の先端技術や最新トピックなどに至るときがあります。
    自分の能力を超えた時、わからない時は、無理をしないで「わかりません。これから勉強します」と答えましょう。
    わかっているようなふりをしてごまかしていると、バレたときのダメージが大きいです(不合格例の大きな要因です)。
  • 技術的な議論になりそうになったら、適当な段階で引きましょう。
    決してアツくなって議論にならないように。不合格例の最も典型的なパターンです。
    「確かにご指摘のようなことも考えられるかと思います。貴重なアドバイスをいただきましたので、これからさらに精進したいと思います。」とでも答えてサッと引きましょう。
    ただし、引っ掛け質問である場合もありますので、安易な迎合は慎みましょう。
  • 質問内容を早とちりしないようにしてください。ズレた回答をがんばってしても、1点にもなりません。時間が無駄です。
    一度頭の中で質問内容を整理し、少しでも不安があったら、
     「ご質問の内容は、○○○○ということでよろしいでしょうか」
    というように確認したほうが間違いありません。
  • 回答も拙速を避けましょう。
    緊張していると、予想外の質問に対して、後で思えば「何であんなバカな回答を」を思うような、技術的に稚拙な回答をしてしまうことがよくあります。
    それは、「早く答えなければ」と思うあまり、最初にパッと思いついたことを言葉に出してしまうことが大きな原因です。普通なら、最初に思いついたことを足がかりに、様々な知識や経験に照らしながら「ああだったらこうする」というように考えを練り上げるのですが、焦っていると最初の思いつきだけで言葉にしてしまうのです。そして言葉に出してしまうと、神経やしゃべるほうに行ってしまって、考えをまとめるという作業が止まってしまうため、稚拙な内容にとどまると思われます。
    こういうことを避けるために、少し時間がかかってもいいですから、よく考えて答えをまとめてから口に出しましょう。
    なお、「少し考えさせてください」などと断っておきましょう。でないと、緊張のあまり思考停止に陥ったと取られてしまいかねません。このように理解されてしまうとかなりの痛手です。
  • ライフサイクルにおける川上・川下への目配りも問われることがあります。
    「設計にあたり、調査結果をどのように反映させましたか」とか、「その調査結果は、設計ではどのように生かされましたか」、「設計上の工夫が、施工品質にどのように反映されましたか」といった設問で、要は「自分のやったことが後々どう反映されていったか、ちゃんと確認して、それを技術向上にフィードバックしているか」ということの確認です。
  • その道の権威といえるような人がいる場合、「誰かに指導を受けたか」と聞かれることもあります。正直に答えましょう。場合によっては、「あなたの考えはこの分野の技術の趨勢から見るとマイナーだ(あるいは間違っている)」と突っ込まれることもありますが、そのときは「貴重なご指摘ありがとうございます。これからよく勉強して行きたいと思います」といって降参しましょう。無理に突っ張ってはいけません。
  • 新しい手法などをアピールした場合は、「その後どこかで応用したか」という質問も考えられます。
    そのような事例があれば、内容をかいつまんで説明できるよう用意しておきましょう。
【変化球的な質問】
たまに変化球的な質問がきますから、あらかじめ答えられるようにしておきましょう。
  • 技術士としてふさわしいと思う点は、一言で言えば何ですか。
    結局のところ、技術的体験論文は「技術士としてふさわしい創意工夫があるか」ということが重要な評価ポイントですから、それが論文から読み取れない場合に、その点だけに絞って聞くこともあります。
    業務要約版のような論文になっている場合に、質問が来やすくなります。
    1分以内で説明できるようにしましょう。
  • それが技術士としてふさわしいと思う理由は何ですか。
    さらに突っ込んで、創意工夫の中身を説明させようとします。「コロンブスの卵」的な、思いつき的側面が強い創意工夫に対して質問されます。理論的に積み上げた根拠が示せる必要があります。
  • 適用範囲についてはどうですか。
    斬新なアイデアや新工法・手法の開発などがネタの場合、その汎用性をきちんと検討しているかどうか確認します。
  • もし○○が△△ならどうしますか。
    創意工夫となる工法・手法などを選ぶに至る条件が変化した場合にはどうなるかを聞くことで、応用力を確認します。
  • 最初から予想できなかったんですか?
    失敗をカバーしたようなエピソードをネタにしている場合や、対処療法的な内容になっている場合に、質問されることがあります。
    責められているようでプレッシャーになり、調子が出なくなってしまいがちですので、そういった「揚げ足取り」的質問にもちゃんと答えられるよう考えをまとめておきましょう。
  • もし同様のケースに遭遇したらどうしますか。
    当時の対応に改善点はないか、ということです。現時点での評価に関して、別の方向から聞いていると思っていいでしょう。当然ながら論文の「現時点での評価」の内容がベースになります。
  • そういったことに関する研究例があれば、あげてください。
    創意工夫が、自分だけで考えたものである場合、往々にして研究事例などがありながら、それを取り入れていない「井の中の蛙」的なものになっていることがあります。
    特に事例が古い場合、その後の研究・技術革新をちゃんとフォローしているかという視点で訊ねられやすくなります。
  • 将来展望について具体的に言ってください。
    論文の最後に、「今後は○○していきたい」といったことをよく書きますが、ちょっと調子に乗って、流行の技術などを書き加えることがあります。そういう部分が「本当にわかってんのかな」と思われると、こういった質問が来たりします。論文に書いたことは、全部ちゃんと調べておきましょう。
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Q.専門知識についておうかがいします。
A.体系的専門知識を直接確認する質問です。
  • ごく基礎的な知識を聞かれることが、14年度から多くなり、18年度からは定常的に実施されているようです。これは、当たり外れのある、あるいは選択問題であるがゆえに得意分野を選べる筆記答案だけで行っていた技術力の確認を、基礎知識の確認でも行おうという、まさに技術士の基礎資格化に沿った動きではないかと思います。
  • この内容は、選択科目によって、また試験官によって異なるようですが、最低限求められるのは一次試験専門科目程度の知識体系です。
    また、選択科目の範囲程度の出題範囲です。すなわち、専門とする事項の範囲内とは限りません。
    むしろ、「ご専門が土質ですから基礎のほうから」というように、どちらかというと不得意ではないかと思われる内容について聞いてくる可能性があります。
  • したがって、一次試験対策資料や過去問題、あるいは選択科目における基礎的文献・指針基準類を使って、基礎知識を広く浅く整理しておきましょう。
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Q.専門問題(あるいは一般問題)でのあなたの回答ですが・・・・

A.実は筆記試験以降のフォローやレベルアップについて確認されています。

  • 筆記試験答案で、著しい勘違いや知識不足、およびちょっとしたポカミスや思い違いがあったとき、これについて再度質問されることがあります。
    これは、自分で「あやしいな」と思った知識について、後でちゃんと調べてフォローしているか、という技術向上の姿勢を確認されています。
    筆記であやふやであったところなどは、しっかりとフォローしておきましょう。
    口頭試験時点の技術力を評価されるわけですから、筆記がかんばしくなかったと思う人は特に力をいれてください。
  • もっとはっきりと、「あなたはこの問題の成績が悪いが、何か補足することはありますか?」と聞かれたという例もあります。これは、救いの言葉です。
    ここで、「○○については△△と思い違いをしておりました。△△とは・・・・です。」とか、「○○についても記述すべきだったと思います。」というようにフォローできると、専門技術力の点数(あくまで口頭試験での点数です)を稼げます。
    逆に何もフォローできないと、筆記でとった悪い成績通りの技術力だと判断され、点数が落とされます。
  • 非常に特異な技術やトピックなど、「ごく一般的な答え、模範回答」からずれたようなことを書いたとき、「おもしろいな」と思われるようなユニークな回答をしたときは、それについても訊ねられることがあります。
  • 一般問題などでは社会資本整備のあり方などに関する意見を求められることもあります。
    教科書通りでなく、自分の言葉でこれからの社会資本整備のあり方などについて述べられるようにしておきましょう。
【変化球的な質問】
たまに変化球的な質問がきますから、あらかじめ答えられるようにしておきましょう。
  • 選択記述問題の、もう一つの問題について、どう思いますか。
    職務内容などから、見識が狭いのではないかと疑われた場合など、建設一般の場合、2つの記述問題から1つ選択しますが、選択しなかったほう(不得意であろうと思われるほう)についてどう思うか聞かれることがあります。
  • ○○についてどう思いますか?
    国土交通白書に出ているような、様々なインフラ整備の中から、何か具体的事例をあげて、「どう思うか」と聞かれることがあります。これも、見識が狭くないか確認しようという場合に出されます。
    特に、都市部在住の人なら地方、地方在住の人なら都市部に、それぞれ特有の問題が出されると、日頃身近でないだけに、答えに窮することがあるかもしれません。
  • あなたの身の回りでの事例をあげてください。
    国土交通白書では、抽象的・総論的記述が多くなっているため、自分の身近なところでのインフラ整備となかなか結びつきにくいことがあります。そういった状態に陥らず、全国的・広域的なインフラ整備のあり方の中で、自分の身の回りのインフラ整備をとらえているかどうか確認しようという質問です。
    また専門問題においては、机上の知識と、身の回りの実例がちゃんと結びついているかどうかを確認します。若年技術者にありがちと思われます。
  • ご自分の仕事の社会的役割は何だと思いますか。
    「上司に命令されたことをやる」のではなく、社会の役にたっているか、社会経済の中でどのような位置づけにあるかといった、俯瞰的視野をもっているかどうか確認します。特にライフサイクルの中での位置づけを意識しておいてください。
  • ○○の果たすべき役割(インフラ整備の中での役割)は何だと思いますか。
    受験者の職業、あるいは受験者とは異なる職業(たとえば受験者が公務員なら「○○」はコンサルといったように)についての社会的役割を答えさせ、技術的見識が「井の中の蛙」になっていないかを確認する質問が時々あります。
    公務員技術者には、「お役所的体質」、たとえば都合の悪いことはでるだけ公開しないとか、手続き至上主義(「決まったことだから」)といった発想が染み付いている人が時に見受けられます。こういう傾向が見て取れたときは、たとえばこれは技術者倫理に関する質問ですが、
    「公表すると国民に不安を与え、役所の重大な責任が問われるような設計ミスを発見した。上司に相談したが、役所の信頼失墜は社会のためにならないとして反対された。あなたはどうするか」
    といった感じの問いかけが来たりします。(もちろん上司の言うことは間違っています。「社会のためにならない」のではなく、自分たちのためにならないだけで、談合と同じく間違った功利主義です。
    また、コンサル技術者には、マニュアルエンジニア的発想から抜け出られない人がいますし、施工業技術者には、目の前のモノを設計図通りに作ってしまえば後は知らない、設計ミスが後で発見されてもオレには責任はないという人が時におられます。
    こういう人は、発想の切り替えがなかなかできない嫌いがあります。そういう傾向があると自分で感じる人は、この機会にできるだけ見識を広げましょう。
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Q.あなたの専門分野で、今注目しておられるようなトピックはありますか。

A.これは資質向上のための情報収集を確認しています。

  • 学会誌や雑誌、インターネットなどで、自分の専門分野でのトピックを確認しておきます。
  • 回答したトピックについて、「あなたの意見は?」と聞かれる可能性もあります。
    無理をせず、答えられる範囲で答えましょう。「わかったふり」は墓穴を掘ります。
    わからなければ、「申し訳ありません。注目はしているのですがまだよく勉強しておりません。」とでも言って逃げましょう。
  • 決して議論しないように
【変化球的な質問】
たまに変化球的な質問がきますから、あらかじめ答えられるようにしておきましょう。
  • 今あなたの専門分野では○○が注目されていますね。これについて何かご意見はありますか。
    専門分野がズバリ試験官と一致すると、このような質問が来ることがあります。
    専門分野のトピック情報を集めているかどうかが、如実に現れます。
  • あなたの専門分野とは関係ありませんが、○○についてどう思われますか。
    ここまでの問答の中で、見識・知識の狭い、専門バカ的・I型人間的と疑われると、あえて専門分野と違ったトピックなどを提示して、見識を問うことがあります。
    特に、地球環境などの広い範囲の問題や、NPOなどの住民参加系、新しい考え方(性能設計、特定都市河川法、社会資本整備重点計画、アセットマネジ、ユビキタス、品質確保法など)について聞かれることが考えられます。
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Q.技術士とはどういうものですか。

A.技術士の定義を理解しているか(技術士法の理解)を確認しています。

  • 技術士の定義は、技術士法2条に記してあります。
    技術士として登録を受け、技術士の名称を用いて科学技術に関する高等の専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、設計、分析、試験、評価又はこれらに関する指導の業務を行う者をいいます。
  • 技術士法の目的を問われることもあります。
    技術士法の目的(技術士法第1条)は、「技術士等の資格を定め、その業務の適正を図り、もって科学技術の向上と国民経済の発展に資すること」です。
  • 技術士は名称独占資格です。つまり、技術士が独占しているのは、仕事をする上で「技術士を名乗る」ことだけです。
    対して、医師や弁護士などは業務独占資格です。つまり、それらの有資格者でないとやってはいけない業務分野があります。
【変化球的な質問】
たまに変化球的な質問がきますから、あらかじめ答えられるようにしておきましょう。
  • 技術士の社会的役割はどのようなことだと思いますか。
    ぜひこのことについて考えてみてください。技術士がなぜ名称独占資格なのかということにも関連して、「技術士の存在価値」ということにもつながります。動機や抱負などにも厚みが増すかもしれません。
  • 外国の技術士相当資格を知っていますか。
    こちらが参考になります。アメリカのPE、イギリスのCEあたりを知っていれば十分でしょう。最近の東アジアブームだと、中国の登録工程士や韓国のPEを知っておくといいかもしれません。
  • 技術資格の国際相互承認についてどう思いますか。
    グローバル化の中、相互承認あるいは国際資格へのニーズが高まっており、技術士法にも盛り込まれています。
    APECエンジニアについても、時間があれば勉強しておくといいでしょう。こちら
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Q.部下や後輩の指導はどのようにしていますか。

A.後進指導も技術士に求められる資質の1つです。

  • 自分がやっていることを部下・後輩にも勧めているという答えでおおむね問題ないでしょう。
  • 社内教育には、
     (1)OJT(On the Job Traning)
     (2)OFF-JT
     (3)自己啓発
    があります。この区別と長所・短所をきちんとつかんで、目的・被教育者に合わせて適切に使い分けているということをアピールできればベストです。
  • OJTは仕事を通じて技能を学ぶことです。昔ながらの方法でもあります。仕事そのものを通した訓練でもあるので即戦力的効果は高いのですが、教えられる側に基礎力があることが前提です。体系的知識になりにくい(応用がきかない)などの短所があります。また、「指示待ち人間」と言われる最近の若者には効果が低いようです。
  • OFF-JTは、社内講習やシンポ・講習会・研修会のように、仕事とは別に教育訓練を行うものです。
    基礎的な力や先進技術に触れるには適切な方法ですが、経費がかさみますし、即効的効果はあまりありません。技術者としての地力をつけるためのものという性格が強い方法です。
    学校教育と同じく、多くの技術者の力を等しく引き上げたいときに有効です。
    「社外でやる研修会などがOFF-JTで、社内研修はOJT」という勘違いをしている人が時々います。そうではなくて、本来の仕事・作業そのものを通じて、スキル・ノウハウを得るのがOJTであり、手を止めて(作業以外のルーチンとして)勉強するのがOFF-JTです。
  • 総監のような内容になりますが、OJTで得られるのは暗黙知、つまりノウハウやスキルです。対してOFF−JTで得られるのは形式知、つまりテキスト化・記号化された体系的知識です。
    実際の教育訓練では、これらを組み合わせて効果を上げるようにします。
    たとえばOJTによりノウハウ・スキルを身につけさせてからOFF−JTで「これはこういう理論に基づくものだ」というように教えると、「なるほど、あれはこういうことだったのか」と理解が深まり学校教育でいう「知識の定着」が期待できます。学校の理科授業で実験や体験活動の後で教室での講義を行うことがよくありますが、それと同じです。
    いっぽう、OFF−JTで基礎理論を学んでから実際の現場でOJTによるトレーニングを積むと、理解した上で体験していくので、吸収が早くなります。すなわち、スキルアップが早くなります。わけもわからず「やり方を覚えろ」と言われるより、内容をきちんと理解してから覚えたほうがずっといいですよね。
  • 自己啓発は、要は本人がやる気を出すということです。
    会社や指導者に必要なのは、そのやる気を引き出すいろいろなこと、インセンティブの付与です。
    たとえば資格取得について言うなら、会社は報奨制度や地位向上・給与反映などですし、管理職はその権限の中での優遇(業務遂行上の主体的な役割に配置するなど)や前記のような会社としての取扱への推薦などです。
    講習会に行くのは、知識を増やすというだけでなく、「よーし俺もがんばろう」という気にさせるという狙いもあります。つまり、自己啓発のきっかけとなりそうな刺激を多く与えるということです。
  • いずれの手法も、できれば計画的に行うことが大切です。
    「気がついたときに」ではなく、年度始めでも月始めでも、あるいは業務着手時でもいいので、教育訓練の計画をたて、進捗状況を定期的にチェックして効果を判定し、適宜計画を見直しながら進めていくのがベストです。
    これは管理(マネジメント)ですから、5W1Hが明確に決めてあることが必要です。
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Q.資質向上・スキルアップのために何をやっていますか。

A.今やっていること、これからやりたいことを答えます。

  • 無理しなくてもいいので、日頃からの地道な努力をアピールするのが王道です。
    文献・雑誌の中身には必ず目を通す/講習会やシンポにはできるだけ参加する/インターネットなどを利用して最新情報を集めるよう心がけている など。
  • 少し工夫を加えているところをアピールするといいです。
    印象に残った報文はサマリーを打ち込んで保存し、どの本に書いてあったか検索できるようにしている/講習会やシンポでは、終了後に講演者と直接話をするなど、より深く理解する機会を持つようにしている/毎朝始業前に15分間、ネット上の技術情報をチェックしている など。
  • 技術士CPDなどに対する積極性をアピールしてもいいですが、「今後のことは聞いていません」と言われそうな雰囲気だったらやめましょう。
  • もしシンポなどでの発表や報文投稿の経歴があるなら、どんどんアピールしましょう。
    ただし、守秘義務にからんで、「発表内容に制限が加えられたことはないですか?」を切り返されることがあります。
    「業務発注者に相談し、問題ないということで公表の許可をいただいてから発表しました」というのが一般的な回答ですが、あっさり「ないです」と言ってしまうという「そうだったんだから仕方がないじゃないか作戦」もあります。
  • 各種学会に入っているかと聞かれることもあります。個人としては入っていなくても、会社で会員になっていればフォローできます。会社がどの学会等の会員になっているかもチェックしておきましょう。
【変化球的な質問】
たまに変化球的な質問がきますから、あらかじめ答えられるようにしておきましょう。
  • 大学等の研究開発機関との交流はありますか。
    なければないでかまいません。
  • なぜ資質向上が必要とされると思いますか。
    意外と答えに詰まりやすい質問です。JABEEホームページなどに、継続教育の必要性について解説されていますので、そちらで勉強しておくといいと思います。
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Q.技術士法・技術士倫理についておたずねします。

A.技術士としての適性を確認します。

  • この設問は最後のほうになされることが多いようです。この設問が出たらあと一息です。気を引き締めてしっかり答えましょう。
  • 3義務と2責務は完全に暗記し、スラスラと言えるようにしましょう。
    3義務とは、信用失墜行為の禁止、守秘義務、名称表示の場合の義務です。
    2責務とは、公益確保の責務、資質向上の責務です。
  • 「教科書に書いてあるようなことじゃなくて、あなた自身の言葉で言ってください」といわれることもあります。
    きちんと理念を理解して、それを自分自身の言葉で表現できるようにしておく必要があります。
    • 信用失墜行為の禁止
      技術者最高資格である技術士としての自覚を持ち、これを卑しめるような言動をしてはいけないということです。
      技術士資格は、戦後復興期から高度成長経済期への移行期に制定されました。科学技術により国を建て直し発展していこうという中、高度な技術を持った専門職技術者を「技術士」として他の技術者とは区別して、「高い技術力の保証書」として活用しようという意図からの制定であったと私は考えます。
      そんな技術士という資格の信用を失墜させることは、当時においては国益を損じる行為だったといえましょう。さらに、名称独占資格である技術士の信用を失うということは、資格の存在価値の喪失にもつながります。そういった背景を持っての条文であると考えます。
    • 守秘義務
      業務上知りえた秘密を他に漏らしてはならないということです。
      特に技術士の場合、単なる業務契約だけでなく、技術指導や行政へのアドバイスなどを請われることもあるということを前提に、通常の技術者以上に強い倫理観が求められます。
      なお、守秘義務は契約終了後や会社をやめた後も継続します。
      この義務のみ懲役・罰金の罰則がありますが、秘密を扱う他の資格(公務員や医師、弁護士など)は全て同様の守秘義務の規程があり、罰則の程度も似通っています。すなわち、守秘というものについての我が国社会に共通したルールであるといえます。
    • 名称表示の場合の義務
      自分の専門分野まできちんと示す」ということです。
      「技術士になったら名刺には何と書きますか」という質問が来る場合もあります。この場合は、「技術士(○○部門)と書きます」と答えます。部門より細かい所も表示してかまいません(たとえば「技術士(建設部門・土質及び基礎)」など)が、部門を抜かしてはいけません(たとえば「技術士(建設環境)」など)。
      注意していただきたいのは、名称表示の義務、すなわち技術士であることを名乗らねばならないということではないということです。技術者倫理でいう有能性原則、すなわち自分が有能である範囲においてのみサービスを行うということです。
    • 公益確保の責務
      会社や個人の利益よりも、公共の利益(社会全体にとって何が良いか)を優先して行動の動機付けとしなさい、ということです。
      公益とは何ですか」と聞かれた事例が過去に少なからずあったようです。即答できるように、
      技術士法では「公共の安全、環境の保全その他の公益」と定義付けられています。この通り言うのが無難でしょうが、自分の言葉でもいいです。ただ、環境の保全も含まれるまれるということを忘れないでください。
    • 資質向上の責務
      前問例で示したようなことを実行することです。
      理念としては、「自分の専門分野において、技術士として社会に貢献することができるよう、常に社会のグローバルな動きに注意を払い、社会のニーズの変化、社会発展のためになすべきことの方向性を認識すること。そして最新の技術(技術の高度化というだけでなく、コストダウンや環境配慮なども含む)動向にも常に注意を払い、自分の技術体系の陳腐化・風化を防ぐこと」です。
      技術士合格はゴールではない。スタートである。という姿勢が資質向上の姿勢です。
  • 義務に違反した場合の罰則が問われることもあります。
    罰則には以下の3つがあります。
    1. 登録取り消し
      文科大臣は規定違反と思料されるときは職権をもって調査し(法第37条)、違反が明確になれば、登録の取り消しまたは2年以内の名称使用停止を命ずることができます。(法第36条)
      これは3義務2責務すべてに当てはまります。
    2. 守秘義務違反
      守秘義務(法第45条)に違反して告訴された場合、1年以下の懲役または50万円以下の罰金という罰則があります。
    3. 名称の詐称
      これは技術士・技術士補が対象ではありませんが、技術士・技術士補でない者、あるいは技術士・技術士補の名称使用を停止されている者が技術士・技術士補あるいはそれに似た名称を名乗ることは、法第57条で禁止されており、これに違反した場合は30万円以下の罰金に処せられます。(法第62条)
  • 「信用失墜行為とはどんなことですか?」という設問も過去にされています。
    とにかく法に触れるようなことはしないこと、これが基本です。仕事の上では、入札談合、データ捏造などがそうです。
    技術士という資格が持つ社会的信用、「技術士です」というだけで「ああ、それなら信用できますね」と言われる社会を守るため、技術者として厳しく己を律することが求められています。
    また法に触れなくても、品行方正であることが求められています。「あんな人間が技術士か」と思われるような行動はしないことも大切です。
  • 公益確保と守秘義務をからめて、「あなたが携わった事業で、大変大きな欠陥を見つけた。これを放置すれば致命的な問題が生じると判断された。あなたはどうしますか?」というような「意地悪質問」がでるかもしれません。
    原則は公益優先です。公衆優先原則といいます。 「技術士ビジョン21」では、「公益確保の責務が最も重要」と明記されていますし、NSPEやASCEの倫理要綱でも「公衆優先原則」として知られています。
    ただ、守秘義務も何の配慮もなく捨ててしまっていいというものではありません。
    ポイントは、公益確保を最優先するが守秘義務との両立をできるだけ追求する姿勢、公益確保優先でふんぎる場合でも、指導官庁などへの報告とし、間違ってもマスコミ公表などに走らないことです。
    この場合の回答としては、「事業者に問題を説明し、できる限り説得する。どうしてもダメなら、職を賭してしかるべき機関に報告します」といったものが考えられます。
    こういった内部告発については、こちらのコラムをご覧ください。これに従えば、
     (1) 事実関係を調査検証し
     (2) 問題に確証が持てた場合は
     (3) 関係者に改善や再発防止などの処置を説得する
     (4) 説得に応じてもらえない場合は
     (5) しかるべき機関に公益通報を行う

    ということになるでしょう。
  • 守秘義務に関して、技術士法では「正当な理由なくして漏らしてはいけない」とあります。
    では正当な理由とは何かというと、公益通報の対象となるような行為であると考えればいいと思います。では何が公益通報対象行為といえるでしょうか。これについては、公益通報者保護法(こちら)で定義づけられています。こちらのコラムをごらんください。
    以上より、「公益通報者保護法の対象となるような行為」が「正当な理由」と答えるのが一番確実なのではないかと思います。
    姉歯建築事務所の計算書偽造事件が昨年度から今年度にかけて大きく取り上げられましたが、よくある質問が、
     「捏造(などの不正)を指示されたらどうしますか」
    といったものです。たとえば次のような問答になったらどうしますか?これはある受験生さんと私の模擬問答です。
     @「もし会社で不正(データ改ざん)を頼まれたらどうしますか」
     
    A「断ります。話し合いで説得します」
     
    B「でも会社の経営者まで出てきて、社員と家族のためにどうしてもと言われたら?」
     
    C「話し合いの努力をしますが、どうしてもダメだったら・・・・」
     D「ダメだったら?」
     E「会社を辞めます」

     F「じゃあ、あなたが辞めたあと、別の人が引き継いで、改ざんデータで危険なものが作られたと知ったらどうしますか?いや、どうすべきだと思いますか?」
    CまではOKです。Eは、
     (1) 会社を辞める
     (2) 内部告発する(公益通報)

    という2つの選択肢があります。
    (1)を選ぶと、Fのような突っ込みも予想されます。その場合は、不正の十分な客観的証拠を持っており、なおかつ、一定の勝算があれば、内部(そのときはすでに外部?)告発すべきだ、いや告発しないのは道徳的義務に反するという考えがあります。(下のコラム参照)
    口頭試験ではあまり過激と取られるような言い方は避けるべきなので、Fに対しては、
     G「不正を証明する十分な資料を持っており、かつ、公益を著しく損ねる行為だと確認した場合には、公益通報をすることも考えます」
    と答えるのが妥当かと思います。
    一方、質問Dに対して、
     E’「しかるべき機関に公益通報を行います」
    というのも1つの答えです。
    ただし、守秘義務は刑事罰もある極めて重い義務ですから、それより優先する公益通報は、そう容易にするものではありません。公益通報が認められる条件をしっかり把握する必要があります。これについても、下のコラムをよくお読みください。
【変化球的な質問】
たまに変化球的な質問がきますから、あらかじめ答えられるようにしておきましょう。
  • 信用失墜行為の禁止は、なぜ必要だと思いますか。
  • 秘密保持の義務は、なぜ必要だと思いますか。
  • 名称表示の場合の義務は、なぜ必要だと思いますか。
  • 公益確保の責務は、なぜ必要だと思いますか。
  • 資質向上の責務は、なぜ必要だと思いますか。
    こういった「規則」は、それが作られた背景や理念があります。ただ「決まりごとだから守る」では鵜呑みになってしまいます。
  • 守秘義務にだけ罰則があるのは、なぜだと思いますか。
    刑法や地方公務員法など、守秘義務は一般に刑罰を伴います。それだけ重視されているということだと思います。
  • 信用失墜行為について、建築構造計算偽造問題以外の例をあげて、ご意見を述べてください。
    私自身、このような質問をされたことがあります。当時は雪印食品の問題がトピックで、おそらく多くの受験生がこれをあげたのだと思います。私は午後遅い時間だったので、こういう質問になったのではないかと思います。
    実例は複数用意しておきましょう。
  • 弁護士は業務独占資格ですが、技術士は何ですか。
    「名称独占資格」が正解ですが、これまでこのような質問がされた例はほとんどないようです。しかし、西村国会議員の関与する非弁活動事件をトピックとして注目している試験官がいれば、出題の可能性はあります。
  • 3義務2責務の中で一番大切なものはどれだと思いますか。
    意地の悪い質問です。たとえば次のような答えはどうでしょうか。
    「全部同じように大切だと思いますが、相反関係になってしまった場合に優先されるべきものは公益確保だと思います。」
    この根拠は公衆優先原則です。また公益通報者保護法でも、一定条件を満たせば公益通報をしてよいことになっています。いいかえれば、一定の条件を満たせば、公益確保を守秘義務より優先させてもいいということが法的に定められているのです。
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