筆記試験対策〜選択科目(課題解決問題) 最終更新:2017.06.26
TopPage 試験概要 過去問題 出願対策 択一問題 専門問題 口頭試験 体験記

=CONTENTS=
1.出題内容
2.求められる答案
3.答案の作り方
4.主要な重要テーマの解説
5.一歩深めた設問が勝負を分ける
6.部門・科目別の出題傾向と対策

 選択科目の課題解決問題対策について、建設部門を中心に記しています。
 出題内容の予想もしていますが、これは「絶対こうなる」というものではなく、あくまで私の予想です。ただ、技術士会から公表された資料を素直に読むとこういうことだよね、という、それなりに根拠のあるものではあります。
 なお、受験対策は人それぞれです。それぞれの立場で、ポイントは変わってきます。また、若年層・熟年層でも変わってきます。 うのみにするのではなく、参考にできるところは参考にするというスタンスでお読みください。

答案用紙はA4サイズ・600字詰めです。
模擬練習用答案用紙を用意しましたので、お使いください。ダウンロード時は2ページですが、2枚目を超えると自動的に3枚目が現われます。
なお、この答案用紙はすごろくさんよりご提供いただいたものです。
問題3答案用紙

1.出題内容

 25年度から新設された問題です。答案は記述式で、600字詰め答案用紙3枚以内です。また試験時間は2時間で、同じ時間で答案用紙4枚を書く専門問題より余裕があります。
 課題解決問題の答案は、口頭試験において合否を分けるであろう「経歴及び応用能力」の評価に使われますから、筆記試験の中でも特に重要な問題です。
確認す
る能力
課題解決能力
概念 社会的なニーズや技術の進歩に伴い、最近注目されている変化や新たに直面する可能性のある課題に対する認識を持っており、多様な視点から検討を行い、論理的かつ合理的に解決策を策定できる能力
内容 選択科目に係わる社会的な変化・技術に関係する最新の状況や選択科目に共通する普遍的な問題を対象とし、これに対する課題等の抽出を行わせ、多様な視点からの分析によって実現可能な解決策の提示が行えるか等を問う内容とする。
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2.求められる答案

  • 基本的な考え方
     問題Vは課題解決能力を評価する問題です。課題解決能力とは、課題を抽出し、多面的に分析して実現可能な提案をすることができる能力です。では何を持ってその能力があることを判断しているのでしょうか。つまり採点しているのでしょうか。
     それは、現状分析→課題抽出→解決の方向性→具体策提案というプロセスです。つまり提案の良し悪しではなく、その提案に至る過程の良し悪しで判断していると思われます。
    問題文 課題等の抽出 実現可能な解決策の提示 
    社会的重要テーマ 現状 課題・ボトルネック 解決の方向性 具体策 リスク・課題等
    ・求められること
    ・望ましい姿
    ・好ましくない現状


    →問題文で示された
     「あるべき姿」との落差
    ・好ましくない現状を解消する
     ためになすべきこと

    →ボトルネック、「これを何とか
     すればいい」というもの
    ・「こうすればいい」と
     いう着想・方向性

    →課題を裏返したもの
    具体的な提案 具体策の実行にあたって
    考えられるリスク・課題

    →マイナス副作用など
     
    (例)老朽化インフラの
    効率的な維持管理更新
    損傷が顕在化してから
    補修等しており非効率的
    事後保全からの転換 予防保全と平準化 アセットマネジメント 予防保全に転換しても
    予算が不足→選択と集中

     ここで特に重要なこと(得点に差がつくこと)は、
    ●解決策として@方向性、A具体策という順に提案すること
    ●リスク・課題等まで調べておくこと(自分の頭の中だけで考えないこと)

    の2点です。

  • 解決策を方向性→具体策という構成にすること
    これにより、「理詰めで考えていった結果、この提案に到達しました」という形になります。この「理詰めで考えていった」が課題解決プロセス、課題解決の手法であり、以下の手順で進めます。
    1. まずあるべき姿と乖離している現状を洗い出し(検討すべき項目・検討すべき課題)
    2. そこから重要な課題を絞り込み(他のどれよりもこれを何とかすべきだという絞り込み。ボトルネックの抽出)
    3. それを裏返して解決の方向性を導き出し(たとえば事後保全なのを何とかすべきだということであれば、事後保全を裏返して予防保全に)
    4. その具体策を提案するというプロセスです。※筆記試験セミナーテキストp.52参照
    上記1〜4の順に検討していくことで課題を解決するという方法を知っていて使いこなせること、これが課題解決能力です。よって@〜Cのプロセスを答案上に明確に書く必要があるのですが、1と2は問題文指示に従っていけば抜け落ちるということはまずありません。
     しかし3と4については、問題文には「解決策を提案せよ」といったようなことしか書いてないため、しばしば4しか書かないことがあります。つまり解決の方向性なしにいきなり具体策が出てくる形です。これでは「理詰めで考えていった結果、この提案に到達しました」ではなく、「この提案を知っています」「この提案を思いつきました」にしかなりません。それがなぜいけないかというと、単に「知っていた」「思いついた」だと、次にまた何かの課題解決に取り組んだ時、具体策を知っていたり思いついたりすればいいですが、そうでなければもうアウトになります。しかし課題解決の方法を知っているのであれば、その方法を適用すれば解決できることが期待されます。そこには知識はいりません。
     「こういうことが望まれている。ではそれと乖離した状態になっている現状はどんなことがあるだろう」と考え、そんな現状を調べればいいのです。これで検討すべき現状・項目は洗い出せます。
     次に「じゃあその中で最も何とかしないといけないことはなんだろう」と考え、いろいろな方向から現場を分析すれば、元凶となっていること(事後保全であるとか、ハード防災インフラだけでは防ぎきれないとか、つまりボトルネック)が抽出されます。
     そしてその抽出された課題を裏返して考えて、「どんなふうにすれば解決するだろうか」と考えて方向性を出します。
     方向性が出たら、その方向性を具体化するような技術・施策を探せば(そういうものがなければ新規に発案すれば)、それが具体策になります。それは調べればいいことです。
     つまり、上記のような手順で考察していけばいいのだということを知っていて、それを実行することができる能力、これが課題解決能力です。これは手順ですからどんな課題に対しても適用できます。
     対して具体策を知っているかどうか、思いつくかどうかだけで勝負すると、知っているもの・思いつけるものにしか対処できません。これでは安心して高度な課題解決はまかせられません。つまり技術士にするわけにはいきません。
     以上が課題解決能力です。ですから答案は提案内容の善し悪しで得点するのではなく、提案に至るプロセスの善し悪しで得点します。判定しようとしているのは対策を知っているかではなく、対策の導き方を知っているかなのですから、対策だけ書いてもダメですよね。
     すなわち、社会的重要テーマについて、課題を抽出し、多様な視点から実現的な解決策を提示することが求められます。したがって、この3点が採点基準だと思ってかまわないと思います。

  • リスク・課題等まで調べておくこと
     問題Vがかつての建設一般と一線を画しているのが、設問(3)の内容、すなわち課題解決策をいったん提示させたあとで、その実現策や実行に伴うリスク・負の側面とその対応策といった、さらに突っ込んだ、一歩深めた内容を考察させる設問が出るようになったことです。
     これらは白書の内容を表面的になでただけでは答えられません。白書で紹介されているような施策はあくまで方向性に過ぎず、それを実際の現場で実施するに当たっては、様々なリスク・課題が生じることを予見し、その顕在化を最小限にとどめて施策をできるだけ高いレベルで実現することが必要になります。つまりマニュアル(白書)に書いてあることをそのまま鵜呑みにして覚え、それをそのまま書けるとしても、それは技術士にふさわしい技術力とは到底言えないのです。
     ではその一歩深めた設問には、オリジナルで考えて答えればいいのでしょうか。その場合も多くあると思いますが、やはり技術者なのですから自分の頭の中だけで考えた・想像したことだけでなく、様々な実例や意見を学び、それらを自分の中で消化してひとつの意見をまとめることが望まれます。
     そういった「一歩深めた考察」の参考になるのが、白書より一段と詳細な資料情報で、国交省HPや内閣府HP、さらには国総研HPなどで勉強することができます。
     白書丸写しのような答案なら誰でも書けます。そこからさらに一歩深めた答案が書けるかどうかが合否を分けると思ってがんばりましょう。

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3.答案の作り方

  • 骨子法の活用
     前述のように問題Vは、
      @社会的重要テーマについて
      A課題を複数抽出させ
      B施策等を踏まえた解決策を提案させる
    という基本構成の答案を600字詰め答案用紙3枚に記述させる問題なのですが、この内容・記述量は24年度以前の必須科目と同じでえす。しかし試験時間が30分短くなっているので、問題を見てから書くべき内容を考えて骨子を組み、答案文章を書くのは時間的に厳しくなっています。
     そこで、上記@〜Bの構成があらかじめわかっていること、社会的重要テーマはそれほど多くはないことから、主要な社会的重要テーマについて、課題と解決策をあらかじめ複数用意しておき、出題内容に合わせて組み合わせて答案骨子を作ることが有効です。
    以上、課題解決問題は、専門分野(選択科目)における社会的重要テーマに関して、課題(ボトルネック)を多様な切り口で抽出して、それに対して現実の施策等を踏まえた実現性のある提案をすることが求められるわけですが、こういった問題の答案は、テーマに関するしっかりした知識と課題解決策を提案する論理構成力が必要です。そして論理構成は、骨子法を使うと効率的にまとめられます。特に課題を複数あげる場合、骨子表などに整理しておかないと、課題と解決策がズレてしまうことがよくあります。
     社会的重要テーマについては、ほとんどの場合、その解決のための具体的な施策が提案されています。
     そしてその施策は、現状を踏まえ、ボトルネックを抽出し、これを解消するための方向性・あり方を導き、それを実現するための方策として策定されたものです。
     したがって、前出の課題解決骨子は、社会的重要テーマに応じた施策が提案される過程をなぞったものに近くなり、以下の骨子表で示すような内容になります。これは「自分でオリジナルに考えたもの」ではなく、「施策の策定に至る背景・過程を整理したもの」に近くなります。
    社会的重要テーマ 現状 課題・ボトルネック 解決の方向性 具体策 リスク・課題等
    ・求められること
    ・望ましい姿
    ・好ましくない現状


    →問題文で示された
     「あるべき姿」との落差
    ・好ましくない現状を解消する
     ためになすべきこと

    →ボトルネック、「これを何とか
     すればいい」というもの
    ・「こうすればいい」と
     いう着想・方向性

    →課題を裏返したもの
    具体的な提案 具体策の実行にあたって
    考えられるリスク・課題

    →マイナス副作用など
     

     骨子法を使って答案を作る手順を、前掲の平成25年度建設部門道路科目の課題解決問題V-1を使って示します。

    問題文:建設部門道路科目問題V-1
    道路構造物の老朽化に伴い様々な不具合が発生しており、今後さらに、その状況の深刻化が懸念される。これに関し、道路に係わる技術者としての立場から、以下の問いに答えよ。
    (1) 老朽化に伴う道路構造物の機能や健全性の低下が社会に与える損失・影響について述べよ。
    (2) 道路構造物を適切に維持管理する上での課題及びその解決策について、複数の観点から述べよ。
    (3) (2)で述べた解決策の実施に当たり、実効性をより高める上での留意事項を述べよ。
    25年度建設部門道路科目の選択科目T-1の答案骨子(事前に準備していた内容からピックアップ)
    問題文 現状 課題・ボトルネック 解決の方向性 具体策 リスク・課題等
    ・道路構造物機
     能・健全性低
     下が社会に与
     える損失・影
     響
    ・維持管理上の
     課題と解決策
    ・複数の観点
    ・解決策実施の
     実効性を高め
     る留意事項
    @2032年に65%
     が建設後50年
     経過→老朽・劣
     化で事故・災害
     発生懸念
    A少子高齢化社会
     福祉費増加、所
     得税法人税減少
     維持管理必要道
     路構造物膨大
    @事後保全型で高コス
     ト構造
     長期的視点なくプラ
     イオリティ不明確

    A財政難
     整備が追いつかない
    →行政のみによる財源
     確保・計画策定・維持
     管理が限界
    @予防保全型管理に
     転換



    APFI導入、新しい契
     約・発注形式
     従来の行政のみの
     財源確保、計画策
     定、維持管理を時代
     変化に合せ見直す
    @アセット適用→長寿命化・更新期コ
     ントロール
     LCC縮減のため点検診断、劣化予
     測、保全履歴等をDB化

    A PFI事業化
    →長期保証型性能規定型等の契約・
     発注方式を積極採用→民間資金技
     術有効活用
     長期的視点で計画・設計、施工、維
     持管理一貫発注・契約へ転換
    ※平成25年試験時点では
     こういった設問を予想し
     ていなかったので骨子の
     準備はしていなかった
    1. 問題文:問題文に書かれている内容を箇条書きに整理します。答案には書かなくてもかまいません。わざわざ書くのは、頭の中の整理と、問題文の指示からずれた答案を作ってしまうことの防止のためです。
    2. 現状・原因:問題テーマに関する現状やそういったことがテーマになる原因等を整理していきます。最初から課題を決めておいて、その根拠となるような現状をあげてくといいでしょう。
    3. 課題:ボトルネックをあげます。元凶→結果という構成、つまり「これが元凶になって、こういう困ったことになる」といった構成で書きます。書きぶりとしては、「○○(元凶になるもの)により、こういうことができない・困難である」といったものになります。
    4. 解決の方向性:問題点抽出を受けて、「元凶解消」か「結果改善・代替」のいずれかの方向性を導きます。元凶解消は、「事後保全で高コスト等不具合が生じる」→元凶である事後保全を何とかしよう→「事後保全でダメなのだから予防保全」というようなものです。結果改善・代替は、「少子高齢化で行政だけでは予算確保限界」→元凶の少子高齢化をどうにかすることは難しいし、技術的解決の方向性ではない→結果である「行政だけでは予算確保限界」をどうにかしよう→「行政だけでは限界なのであれば民間からも予算確保」→民活導入というようなものです。
    5. 具体策:方向性を受けて具体策を書きます。前述したように、完全に自分自身で考えたオリジナル提案よりも、実際に提唱されたり実施されつつある具体策を列挙したほうが、試験答案としては手堅いものになります。言い換えると、現実の施策や技術的対応策について、どんな考え方や狙いに基づいているのか(方向性)、その方向性はどのようなボトルネック解消あるいは結果を緩和するためのものなのか(課題)というように理解していると、課題解決ストーリーは簡単に書けます。
     以上のようにして作成した骨子から答案を作成すると下に示す答案のようになります。(実際のA評価答案例)
     「1.はじめに」は問題文をほぼ丸写しで引用しています。自分自身で一から考えて書いたり、あらかじめ用意してきた「はじめに」を書いたりすると、時に題意とズレてしまう(と採点者が感じる)ことがありますが、問題文を引用している限りにおいては題意からズレることはありません。何より文章を考える時間が不要で楽です。なお、「はじめに」はなくてもかまいません。
     「2.社会に与える損失や影響」は設問(1)への解答ですが、これはあらかじめ用意してあった骨子の「現状・原因」の内容を使っています。現状と社会に与える損失等では必ずしも一致してはいないのですが、明確にズレているわけでもないので、強引に押し通しています。
     「3.維持管理する上での課題」と「4.課題に対する解決策」は設問(2)の解答ですが、あらかじめ用意してあった骨子から作成しています。なお、骨子は3つ以上用意してありました。しかし予想外の設問(3)が加わったので、2つに絞って書いたとのことです。また内容をその場で考える場合でも骨子のように課題と解決策の組み合わせが一目でわかるようにしましょう。課題を考えて答案用紙に書き、解決策をまた考えて…という方法だと、課題と解決策がズレてしまうことがままあります。
    ここまでは、あらかじめ用意してあった内容を書いていたり、問題文を引用していたりしているので、時間はさしてかかりません。試験現場で考えることは、「何を書こうかな」ではなく「どれを書こうかな」であり、時間の節約になるとともに、「その場で考えたこと」より「あらかじめ練り上げてあったこと」のほうがいい答案になるに決まっていますから、他の受験生に比較して格段に有利になります。
     「5.実効性を高めるための留意事項」は設問(3)の解答dすが、予想外の設問だったので、こればかりはその場で考えています。ただこういったことについてもAPEC-semiマンツーマン講座の中でやりとりしていたので、「何を書こうかな」と「どれを書こうかな」の中間程度であったようです。
    この答案はA評価を取りましたが、「ギリギリA評価」ではなく、悪くとも70点以上はある「余裕でA評価」だと思います。

     この事例のように、社会的重要テーマについてあらかじめ3つ程度の骨子(現状原因→課題→解決策)を用意しておくことで、短時間に練り上げられた答案を書くことができるようになります。
     なお、下の例のようなボリュームの答案を作るためには、前頁程度の骨子ボリュームで十分です。この必要骨子ボリュームを把握するため、また試験現場で効率的に答案文章を書くためには、過去問題や練習問題に対して、答案骨子を作り、それをもとに答案を作るというトレーニングを積むことが有効です。これは一人だけでやっていてもなかなか動機づけが難しいので、答案を添削してもらうという目標を持ち、またアドバイスを受けることでロジック構成・文章表現能力を鍛えるといいでしょう。
    平成25年度 建設部門道路科目 問題V A評価答案例(Nomuさん)
    1.はじめに
     我が国の道路構造物は、老朽化に伴って様々な不具合が発生しており、今後さらに深刻化することが懸念されている。
     このような状況を踏まえ、道路構造物の機能や健全度の低下が社会に与える影響や維持管理上の課題と解決策について、道路に係わる技術者としての立場から以下に述べる。
    2.社会に与える損失や影響
     我が国の道路構造物は、経済成長等とともに着実に整備されてきたが、特に高度経済成長期に建設された橋梁は、20年後の2032年には全体の65%が建設後50年を経過することから、老朽・劣化による大きな事故や災害の発生が懸念されている。
     このような事故や災害が発生すると、地域の孤立が発生し、緊急医療機関等へのアクセスを確保できない。
     また、老朽・劣化により構造物の耐力が低下していることから損傷を受けやすくなっており、もし大規模地震等が発生して損傷に至れば、災害時の救命・救援物資の輸送などの応急活動や復旧・復興活動が困難となることが考えられる。
    3.維持管理する上での課題
    (1) 維持管理手法の課題
     現在の維持管理手法は、老朽・劣化が進行してから対応する事後保全型であり、対策が大がかりで高コスト構造となっている。
    また、長期的視点がなく、整備プライオリティも不明確であるため、更新期のコントロールが困難となっている状況にある。
     したがって、老朽・劣化が進行する中、適正かつ継続的な維持管理手法になっていないことが課題である。
    (2) 行政による運用の限界
     我が国は、少子高齢化による社会福祉費の増加、人口減少と労働力の不足による所得税と経済不況による法人税の減少で、未曽有の財政難に陥っている。
     さらに維持管理を必要とする道路構造物の量は膨大で、その整備も追いつかない状況にある。
     したがって、行政のみによる財源の確保、計画策定、維持管理に限界がきていることが課題である。
    4.課題に対する解決策
    (1) 維持管理手法の確立

     適切かつ継続的な維持管理・更新を行っていくには、現在の事後保全型から予防保全型の管理に転換する必要があると考える。
     具体的には、アセットマネジメントを適用して、道路構造物の長寿命化を図り、更新期をコントロールする。
     また、長期的視点でライフサイクルコストを縮減するために、点検・診断、劣化予測、保全履歴等をデータベース化していくことも重要である。
    (2) PFI導入、新しい契約・発注形式による整備
     従来の行政のみでの財源確保、計画策定、維持管理といった一辺倒の運営を時代の変化に合せて見直す必要があると考える。
     具体的には、PFI事業化を検討し、長期保証型や性能規定型等の新しい契約・発注方式を積極的に採用して、民間の資金や技術を有効に活用する。
     今後は財源の確保はもとより、長期的視点で計画・設計、施工、維持管理まで一貫した発注・契約へと転換する必要がある。
    5.実効性を高めるための留意事項
     ここでは、維持管理手法において挙げたアセットマネジメントにおける留意事項ついて述べる。
     アセットマネジメントの実効性を高めるには、点検・診断技術の向上が必要不可欠である。
     例えば、従来の技術者による近接目視や打音検査に加えて、目視困難な部位の調査に非破壊検査を用いることが有効であると考える。
     従来のハツリ検査に代えて、橋梁では超音波による亀裂や赤外線による浮きの確認、トンネルではCCDカメラ画像による調査やレーザーによるひび割れの確認などを行う。
     このように新しい技術を積極的に採用し、実効性と技術の向上を図りつつ、道路構造物を保全していくことも有効である。

  • 社会的重要テーマ
     問題の題材となる社会的重要テーマですが、それほど多くはありません。主なものを以下にあげます。特に重要なのは@〜Bです。
    @災害(災害への粘り強くしなやかな対応)
    A老朽化インフラの維持管理(インフラ長寿命化)
    B生産性向上(i-Construction、担い手確保&経営改善、教育・技術継承)
    C地域づくり(コンパクト+ネットワークなど)
    D都市再生
    E環境保全
    F官民連携、市民協働
    G観光立国



     これらについて、課題と解決策を様々な施策を参考にまとめておき、出題された問題に合わせて「引き出しを開ける」ように解答骨子を作って答案を作成することで、短時間に良質の答案を作ることができるようになります。
    なお、これらのテーマはそれぞれが独立しているわけではなく、互いに密接に関連しています。たとえば防災インフラの老朽化を考えれば@とAをともに考えることになりますし、Bはつまり担い手確保のことですから多くの問題で取上げることができるテーマです。CとDは重なる部分が多いですし、いずれも老朽化インフラ対応や防災減災を取上げる余地が多分にあります。
    つまり、@〜Gは、それぞれが問題Vの問題と1対1で対応しているものではなく、@〜Gを組み合わせて最適な答案を作るようにするための「パーツ」であるという理解をしてください。
    また@〜Gで全ての答案ができるわけではありません。専門技術的視点の強い問題では@〜G以外の事項についても述べなければならないでしょう。ただ多くの問題では@〜Gを組み合わせれば答案の大部分はできます。

     なお内容は科目ごとに異なってきます。たとえば災害については、土質基礎科目であれば土砂災害(中でも特に深層崩壊や地すべり)や液状化などが重要になってきますが、河川砂防科目であれば水害や津波が重要になるでしょう。一方道路科目は防災インフラを作ったり維持管理したりする科目ではありませんから、地震等に強い道路構造物や重大災害時の交通ネットワーク確保(たとえば無電柱化)なども重要テーマになるでしょう。また都市計画では災害に強いまちづくりが中心課題になるでしょうし、建設環境では防災と環境保全の両立がテーマになったりします。このように、科目によって何が重要かが異なってきますし、場合によっては出題の可能性が低いものもあるでしょう。このあたりは柔軟に考えてください。
    これら重要テーマについて全体像をつかむにはやはり国土交通白書は必携でしょう。個別テーマについてはさらに詳細な資料がありますが、まずは白書で全体像をつかむことで個別テーマ資料の理解度が深まります。
    また、国土のグランドデザイン2050も国土交通白書以上に包括的です。特にこちらは課題からの考察がありますので、施策(解決策のうち具体策)だけでなく課題・ボトルネックや解決の方向性について理解を深めることができます。
    さらに、国土交通省重点政策2016や国土交通省生産性革命プロジェクトは最もホットなとりまとめ文献ですので、必ずご熟読ください。

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4.主要なテーマの解説

 以下にインフラ整備に関する主要な重要課題について整理しておきます。現状、課題点、解決策とも様々なものがありますから、問題文をよく理解して、題意に応じた現状記載・課題抽出・解決策提示を行うようにしてください。

  1. 防災・減災関連
     大きなポイントは、ハード・ソフト施策を組み合わせた対応です。
     東日本大震災における津波だけでなく、平成27年鬼怒川決壊でも線状降雨帯による異常な豪雨と異常出水により越水→裏法洗掘→破堤という現象が見られました。今後は想定外の豪雨に伴う想定外外力を見通せば、ハードだけに頼る防災はもう限界で、ハード&ソフト、防災&減災で対応する必要があります。従来のハード整備ではスペック的に対応しきれない外力に対して、「粘り強く壊れる」構造にしておくことで時間を稼ぎ、その間にソフト対策で減災という方向性です。また防災・減災インフラの多重化により被害低減と減災対策の効果向上を狙います。
     なお、ソフト対策については、一口に「減災」といっても情報提供(ハザードマップなどによる災害リスクや避難に関する住民へのかねてからの情報提供と、ICTによる災害発生情報のいち早い伝達)、意識啓発(避難に関するもの、災害にあわないための土地利用や行動などに関するもの、地域互助に関するものなど)、災害弱者対応など多岐にわたります。

    現状・原因 課題
    (ボトルネック)
    解決の方向性
    ・温暖化に伴う気候変動
    ・災害の激甚化
    ・防災意識の向上
    ・防災意識低下
    ・少子高齢化
    ・被災高リスク地の開発等
    ・公共投資減少
       
    ●ハード整備の限界


    ●地域防災力の低下


    ●大規模自然災害に対する社会構造脆弱性
    ●ハード&ソフトで対応
    ・ハードソフトベストミックス
    ・ハードは「粘り強い構造」
    ・ソフトは減災(自助・公助・共助)意識啓発・情報提供:ハザード
    マップや危険地域指定等「リスクの見える化」、X-RAINなど
    自主防災組織等により災害弱者を地域で守る共助
    ●災害に強い社会構造に
    ・防災力のある都市構造
    ・リダンダンシー

    特に近年はソフト(減災)のほうにウェイトがうつっています。
    (自助)
     意識啓発→リスクの見える化:わかりやすいハザードマップ・危険地域指定等
     情報提供はPUSH型で。X-RAIN等活用。ビジター(特にインバウンド)への情報提供が問題
    (公助)
     各省庁が連携したタイムライン
    (共助)
     災害時要援護者を地域で助ける…自主防災組織等
    防災減災対策本部の資料等には目を通しておくといいでしょう。

  2. 老朽化インフラの維持管理
     インフラ老朽化対策については、国土交通省インフラ長寿命化計画・同行動計画を中心に理解を深めるとともに、ストック効果の視点も持つようにしてください。
     またインフラ長寿命化計画(行動計画)の内容もチェックしておくといいでしょう。

    現状・原因 課題
    (ボトルネック)
    解決の方向性
    ・高度経済成長期建設インフラの多くが
     老朽化し、今後20年以内に50年以上
     経過、一斉に更新期迎える
    ・少子高齢化社会保障費増等により公共
     事業予算ピーク時の1/2
    ・建設業就業者減少、若い人材少い今後
     はマネジメント技術必要、技術習得必要
    ・膨大な老朽化インフラの点検が手が回ら
     ない
    ・建設産業が衰退し技術者が減少している

       
    ・事後保全で高コスト構造、長期
     的・体系的視点なくプライオリ
     ティ不明確
    ・予防保全・長期的・体系的管理
     手法→アセットマネジメント
    ・少子高齢化、社会保障費増大→
     行政のみで予算確保限界
    ・官民の分担枠組みを見直す(PFI等)
    ・現場に応じ適切対応できる人材
     不足、業務量減少で技術継承困難
    ・OJT依存から脱却したOJT+OFFJT
     の教育、団塊世代暗黙知をDB化など
    ・点検に手間とコストがかかる ・ICT活用、非破壊点検技術の開発
    ・日常管理や点検等に従事する技
     術者が不足
    ・市民協働による日常管理や点検
     (アダプトシステム含む)

  3. 生産性向上
    いわゆる担い手不足の話です。少子高齢化・人口減少が背景にあるのですが、2つのテーマに分かれます。

    ●技術者・技能者不足
    つまり「量の不足」です。少子高齢化・人口減少で生産人口が減少しているという、大元の「分母」が減っているうえに、建設分野の3Kイメージや低収入等が重なって従事者が減少しているところへ、震災復興をはじめとする災害対応や東京オリンピック等で需要が増えたため需給バランスが崩れ、全産業の中でも特に人出が不足して生産性が落ちています。
     これについては2つの解決の方向性があります。
     1つは人材確保で、処遇が悪いことが大きな元凶ですから、処遇改善が方向性になるのですが、それが容易にできれば誰も苦労はしません。ここで企業経営につながっていくのです。長引く建設不況の中、建設業者の多くが経営体力を喪失しています。そのため処遇改善ができないのはもちろん、重機類を手放し、それに伴いオペレーターも手放しているため、人・モノ(機械)の面でリソースが弱体化しており、災害復興や維持管理といった重大な業務を担う体力がなくなりつつあります。
     そこで出てくるのが地域維持型発注方式です。これはあくまで一例ですからこれだけを書いてはいけませんが、地域をまとめて(そのかわり受注する側も数社でまとまって)維持管理をまかせることで、継続的な受注が担保できるため、企業は資金繰りも楽になりますし、重機所持やオペレーター雇用育成のインセンティブとなります。そしてなにより処遇改善につながっていきます。なお、国土のグランドデザイン2050では以下のような方向性が打ち出されています。
    ・建設産業における処遇改善のため、適切な賃金水準の確保、社会保険加入の徹底に加え、週休二日制の普及やダンピング対策の強化を推進する
    ・若手技術者の登用を促すモデル工事の実施等、優秀な若手技術者等が早期に活躍できる環境整備を進める
    ・中長期的な事業の見通しの確保等により、仕事量の減少への不安が払拭され、雇う側、働く側双方が将来を見通せる環境整備を行う
    ・将来、建設産業の中核を担うべき若手技術者等のスキルアップのため、個社を超えた教育訓練システムを構築する
    ・官民挙げた行動計画を策定し、女性の更なる活躍を推進する
    ・発注者・元請・下請等、関係者のパートナーシップの下での建設生産システムの省力化・効率化・高度化のため、適正な価格・工期の設定、施工時期の平準化等の現場の省力化・効率化や行き過ぎた重層下請構造の改善による建設生産のムリ・ムダ・ムラの排除、現場の施工力の再生を推進する

    ●省人化・省力化
     もう1つは省人化省力化で、これの具体的方策がi-Constructionです。3つのトップランナー施策(ICT土工、コンクリート工の規格の標準化等の全体最適の導入、施工時期の平準化)をしっかり頭に入れてください。

    ●人材育成・技術継承
     これまではOJTで人材育成をしてきましたが、設計も施工も人手不足+業務内容複雑化により熟練技術者と若手技術者が分業せざるをえなくなってきているとともに、複雑化した個々の作業をそう簡単にはクリアできずジョブローテーションがうまく回らなくなってきています。つまりOJT依存ではもう限界で、OJT&OFF-JTによる教育が必要になってきているのです。
     教育にはOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)とOFF-JT(オフ・ザ・ジョブ・トレーニング)があります。
     OJTは仕事をしながら鍛えていくというもので、たとえば先輩の仕事を手伝いながら徐々に覚えていき、やがて先輩と同程度に仕事ができるようになるといった、日本の会社等で普通に行われているスキルアップです。
     身につくのはノウハウ・スキルといった、個人に内在する実践力で、たとえば熟練した技術者が現地調査で目の付け所が違う(多くの情報を持ち帰る)とか図面をぱっと見ただけで感覚的に妥当性が判断できるといった能力です。これは言葉や文字で説明しろといってできるものではありません。こういうものを暗黙知といいます。また、その人にしかわからない、他の人と共有できない個人知でもあります。
     いっぽうOFF-JTは仕事ではなく、「勉強」です。講習会とか、仕事の手を止めて理論的な部分を説明してもらうとか、そういったもので、身につくのは知識です。言葉や文にできます。こういうものを形式知といいます。また、その人以外のみんなで共有できる組織知でもあります。
     基礎理論を学びますから応用はききますが、実践的ではありません。実際の仕事に生かすには実践トレーニングによりスキル化する必要があります。
     すなわち、OJTとOFF-JTはどちらか一方だけを行うのではなく、OJTからOFF-JTへ(何かを経験したなら理論付けすることで体系的知識とする。そうすることで応用力が身につく)、OJTからOFF-JTへ(勉強したら頭でっかちで終わらず実践でどんどん使う。そうすることでノウハウ・スキルとなって仕事に活用できるようになる)といったことが必要です。
     さらには熟練世代が順次退職していきますが、この人たちの技術を継承していかねばなりません。これはナレッジマネジメントですね。ベテランのスキルは暗黙知であることが多いのですが、これをノウハウ集のような形式知に変換してストックし、これを使って体系的に教育するというものです。決してノウハウのデータベース化だけをナレッジマネジメントというのではないですから注意してください。

  4. 地域づくり・都市再生
    国土のグランドデザイン2050では、目指すべき国土の姿として、実物空間とICTにより生まれる知識・情報空間を融合した空間をまず考えており、これにより物理的距離を克服した地域産業活性化・地域就労なども可能とすることを考えています。
    また実物空間は、リニア中央新幹線により三大都市圏を結んだ「スーパーメガリージョン」と地方圏をネットワークで結んだ形を考えています。


    また、地方圏における地域作りの基本は多極ネットワーク型コンパクトシティになります。

    現状・原因 課題
    (ボトルネック)
    解決の方向性
    (地方都市)
    ・スプロール化/中心市街地空洞化
    モータリゼーション進展
    公共交通衰退
    ・少子高齢化、人口減少
    人口構造変化、財政逼迫
    ・経済衰退
    投資減少、働き手の不足
    ・既存インフラ老朽化
    高度成長経済期のインフラが集中的に老朽化
    ・分散型都市の弊害
    交通弱者の快適な生活が困難
    利便性の低下
    温暖化ガス排出増大
    エネルギー利用が非効率的
    ・集約型都市
    施設集約、既存ストック活用
    公共交通活用
    バリアフリー
     エリアエネルギーマネジメント、オンサイト、スマートグリッド
    ・労働力不足、都市部への流出 ・女性・団塊世代の社会参加、Iターン活用
    ・既存インフラ事後保全による非効率性
    ・予防保全→アセットマネジメント
    (集落:農山村漁村)
    ・過疎化の進行
    ・産業の顕著な衰退
    ・利便性の顕著な低下
    ・地域コミュニティ維持困難
    ・基幹産業の喪失
    ・デマンドバス、新しい公共
    ・Iターン、NPO連携
    ・グリーンツーリズム
    ・付加価値製品
    ・集約

    都市再生については、都市再生特別措置法について把握しておいてください。以下の資料が参考になるでしょう。
     ●都市再生特別措置法の一部を改正する法律
     ●都市再生特別措置法等の一部を改正する法律案について(H26.2.12)


  5. 環境保全
     「低炭素都市づくりガイドライン」で示されている交通・都市構造、エネルギー、みどりの3分野の大枠は現時点でも変化ありませんが、震災や原発事故等を経て、各分野における重点事項等に若干の変化が見られます。
    低炭素都市づくりガイドライインの概要(H23.3)より
    現状・原因 課題
    (ボトルネック)
    解決の方向性
    ・都市部で温暖化ガス発生多い ・スプロール化により自動車依存
    ・交通ボトルネック多く燃費悪化→温暖化ガス増加
    ・集約型都市構造で自動車依存脱却
    ・交通ボトルネック解消して燃費向上

    ・都市部でエネルギー無駄多い

    ・熱効率の悪い建物
    ・分散により熱効率悪化
    ・熱効率の良い建物
    ・集約型都市でエリアエネルギーマネジメントシステム
    ・化石エネルギー依存
    ・再生可能エネルギー導入進まない
    ・再生可能エネルギーは小規模で不安定 ・オンサイト
    ・スマートグリッド
    ・補助や規制緩和、制度等

    ・ヒートアイランド

    ・気温上昇→冷房多用→電力消費増大→温暖化ガス ・都市緑化→冷房控えめ→電力消費鈍化→温暖化ガス抑制
    ・森林荒廃 ・木材利用の少なさ ・木材の土木利用
    ・木質バイオマス活用

  6. 官民連携、市民協働
     公共サービス等を行政のみが担当することはもう限界なので、民間の力を公共サービスに提供してもらおうということです。
     「民間」には、企業と市民(NPO等)があります。前者はインフラ整備や維持管理等について、公共から民間に委託する従来の方式だけでなく、民間資金をあてにするPFIやコンセッション方式でプロジェクトを進めようとするものです。PFIやコンセッションの仕組みをよく理解してください。
     後者のNPO等の力を借りるものは「新しい公共」や「市民協働」などと呼ばれます。NPO法人等の非営利団体が公共サービスの一部を担う(たとえば公民館等の指定管理、託児や高齢者ケア等の市民サービス、文化芸術やまちづくり等をNPO等に委託するなど)もので、地域コミュニティ維持効果のあるコミュニティビジネス、エリアマネジメント等もあります。

    現状・原因 課題
    (ボトルネック)
    解決の方向性
    ・財政難
    税収減、社会保障費増大

    ・行政だけでは投資の限界 ・民間活力導入
     PFI/PPP
    ・価値観の多様化
    きめ細かい公共サービスの必要性
    ・行政だけではサービス提供の限界
    ・新しい公共
     NPO等が公共サービスや地域コミュニティの一部を担う

  7. 観光立国
     東アジアの経済発展に伴い、外国人観光客は予想を超えて激増しており、政府は2020年における目標を当初の2,000万人から倍の4,000万人へと大幅に上乗せしました。そして外国人観光客(中でも多数を占める中国人観光客)の行動も、買い物と物見遊山から体験型への移行が進んでおり、主要観光地から地方圏へと急速に広まっています。
     同時に大都市圏を中心にホテル不足や大型バス等の交通手段不足が深刻化しつつあり、また地方圏での受け入れ体制、旅行・滞在の快適性確保も問題になりつつあります。
     日本の津々浦々で豊富にある観光資源としては、景観+歴史文化である「歴史風致」があります。これを地域資源として掘り起こし、観光資源化しようと考えられました。こういった方針に基づき景観緑三法、景観計画、歴史まちづくり法、日本遺産などの諸施策が打ち出されて、地域は景観や歴史文化を「保全する」だけでなく「活用する」ことが求められるようになってきています。
     ポイントは、点在する観光スポットを巡る物見遊山的観光から、面的にストーリーづけられ、周遊しやすいサポート(看板やガイドなど)が整えられた観光エリアにおける着地型観光への転換です。これらの整備を後押しするものとして景観緑三法や歴史まちづくり法、日本遺産などがあります。


    現状・原因 課題
    (ボトルネック)
    解決の方向性
    ・地域経済の衰退
     不況と税収減、社会保障費増大など
    ・地域間格差の増大
     民間主導の投資は地方にまわって来ない
    ・東アジアの経済発展
     観光ニーズの増大(これはプラスの現状)
    ・観光資源が不十分
     自然景観の劣化喪失(景観価値の軽視、
     生態系劣化)
     文化財の喪失、未活用
     総合把握の遅れ
     市民生活との乖離
     保全のみで活用しない
    ・歴史風致の保全と活用
     緑三法、景観計画活用景観資源掘り起こしと保全活用
     文化財総合把握と観光資源活用(歴史まちづくり法)
     市民参加による観光客受入れ
    ・東アジア観光客への対応不足
     アクセスや周遊に関する利便性不足、
     ホテル不足

    ・東アジア観光客利便性確保
     ユニバーサルデザイン
     ピクトグラム等による総合整備
     民泊
    ・観光交通インフラ整備不十分
     大型クルーズ受入港の不足
     空港整備の遅れ
     観光地へのアクセス道路、観光地内交通
     ネットワーク整備が不足
    ・観光交通インフラの整備
     大型クルーズ受け入れ港の整備
    空港整備(羽田空港、地方空港とのネットワーク)
     観光地へのアクセス道路整備
     観光地を結ぶ交通ネットワーク
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5.一歩深めた設問が勝負を分ける

 問題Vがかつての建設一般と一線を画しているのが、設問(3)の内容、すなわち課題解決策をいったん提示させたあとで、その実現策や実行に伴うリスク・負の側面とその対応策といった、さらに突っ込んだ、一歩深めた内容を考察させる設問が出るようになったことです。
 これらは白書の内容を表面的になでただけでは答えられません。白書で紹介されているような施策はあくまで方向性に過ぎず、それを実際の現場で実施するに当たっては、様々なリスク・課題が生じることを予見し、その顕在化を最小限にとどめて施策をできるだけ高いレベルで実現することが必要になります。つまりマニュアル(白書)に書いてあることをそのまま鵜呑みにして覚え、それをそのまま書けるとしても、それは技術士にふさわしい技術力とは到底言えないのです。
 ではその一歩深めた設問には、オリジナルで考えて答えればいいのでしょうか。その場合も多くあると思いますが、やはり技術者なのですから自分の頭の中だけで考えた・想像したことだけでなく、様々な実例や意見を学び、それらを自分の中で消化してひとつの意見をまとめることが望まれます。
 そういった「一歩深めた考察」の参考になるのが、白書より一段と詳細な資料情報で、国交省HPや内閣府HP、さらには国総研HPなどで勉強することができます。
 白書丸写しのような答案なら誰でも書けます。そこからさらに一歩深めた答案が書けるかどうかが合否を分けると思ってがんばりましょう。

主な施策の二次リスク例
施策・あり方等 二次リスク・残留リスク・留意点等
粘り強い構造 対象インフラが膨大で時間とコストがかかる
自助・公助・共助 地域防災力の低下
観光客等来訪者の安全確保
アセットマネジメント データベース未整備の自治体等が多い
担い手職員が不足している
OFF-JT&OJTによる教育 体系的教育訓練ができるシステム・人材が不足している企業等が多い
コンパクトシティ 郊外市街地調整区域等の急激な過疎化
PFI 担い手企業が特に地方圏では不足している

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6.部門・科目別の出題傾向と対策

  1. 建設部門
    1. 土質及び基礎
      • 出題傾向
        • H25V-1は地盤構造物の地震対策で、地震に対する地盤構造物の特性をあげさせ、地震対策上の課題を問います。そのうえで解決策は地盤工学・社会制度の両面から提案することを求めています。地盤構造物は柔構造であることは押さえておきたいところです。またそれゆえに復旧が比較的容易なのも見逃せない特徴です。また解決策は耐震化だけでなく、影響が大きくないものは早期復旧で対応するとか、さらには防災より減災に軸足を置くといた対応も考えられるでしょう。
        • H25V-2は建設部門共通の維持管理に関する問題です。土質基礎科目では鋼・コンクリート構造物と比較したときの特徴や維持管理の留意点をあげさせ、財政的制約の中での維持管理のあり方を問う問題になっています。地盤構造物の特徴は、自然材料なので劣化予測がむずかしい点がまずあげられるでしょう。また地盤構造物は鋼コン構造物よりずっと多いことも特徴ですね。維持管理のあり方は、基本的にアセットマネジメント、選択と集中で、また点検技術の発達も必要になってきます。PFIもあるでしょう
        • H26V-1は品質確保で、ちょっと意外な問題でした。地盤構造物は自然物なので均質ではなく、どこか一点の測定で全体を代表させることが難しいという特徴があります。このため多点観測が必要ですし、統計的処理が欠かせません。
        • H26V-2は技術継承で、タイムリーな話題です。品質確保と同じような理由で、経験工学的要素が強く、このためノウハウ・スキルといった暗黙知に頼る面が多く、これが属人化(ノウハウ・スキルを持った人に依存し、この人がリタイヤすると品質が著しく低下してしまう)につながっています。これへの対処はナレッジマネジメントが最も有効でしょう。
          また技術体系が通用しなくなるという点は、経験のない災害等には経験工学はなかなか適用できないということですから、たとえば事例集のようなもので、数少ない貴重な事例を全国の技術者間でシェアするといった取り組みも必要でしょう。
        • H27V-1は維持管理ですが、H25V-2と同じく、鋼コンと比較したときの地盤構造物の特徴という視点から切り込むことを求めています。不均質・不連続などがキーになるでしょう。また、「社会資本ストックを効果的・効率的に維持管理・更新していくために,近い将来において実現すべき技術開発の方向性」という視点が指定されています。たとえばのり面のモルタル背面空洞を赤外線カメラで撮影するなどの省力化・省人化などが考えられます。
        • H27V-2は災害ですが、これは昨年度「異常気象に伴う災害の頻発化・大規模化や、稀有な災害による想定外外力への対応といったことを中心に、科目ならではの特性を盛り込んだ出題が予想されます。たとえば深層崩壊や液状化、火山性の土石流などですね。」と予想していたとおりの出題です。土質基礎らしく素因・誘因という地すべり的視点で整理させています。自然現象変化による被害甚大化は深層崩壊があった事例・線状降雨帯による豪雨などをあげればいいでしょうし、社会環境変化は宅地化などですからたとえば広島土砂災害などがあるかなと思います。
        • H28V-1 は品質というテーマですが、地質リスクを念頭に置いた出題ではないかと思います。対応策はかなり専門技術的になるでしょう。合格事例をみると、補完調査(ボーリング+サウンディング・物理探査や力学試験+物理試験など)や地形観察を伴うボーリング箇所選定、信頼性設計法などが書かれています。
        • H28V-2 はICT ですが、「技術者が不要とされる可能性もある」と問題文にあることから、属人性の高い土質基礎分野へのICT 導入への懐疑的姿勢も垣間見えます。課題としてはコスト(特に初期投資)や技術力空洞化・ブラックボックスエンジニアの発生などが主にあげられるでしょう。H28テキストで「若手育成なども含めて、属人化から体系的教育(OJT とOFF-JT の両立)、自動化・機械化等による技術の平準化と省力化などについても考えをまとめておくといいでしょう。」と述べていたのですが、この準備をしていた方はA 評価を取れているようです。
      • 対策
        • 災害や技術力・生産性向上に関する問題は隔年で出題されているようですので、29 年度はやはり災害に注意すべきでしょう。熊本地震では土砂災害が目立ったわけですが、土質基礎ならではの切り口として、柔構造であることや不均質性が高いことがあること、水の影響を強く受けること、危険度判定にあたって経験工学的判断を要する側面が強いことなどがあげられます。これらについて理解を深めておきましょう。
        • 同様に維持管理に関する出題も考えられます。これは切土法面・盛土法面などにおいて斜面崩壊と一蓮托生の問題になります。さらに不均質性が高く経験工学的判断を要することから標準化しにくい(ベテランの個人能力に頼る側面が大きい)ためICT 化も簡単ではないなど、災害や生産性向上にまたがる出題も大いに考えられます。
        • 生産性向上については、i-Con を意識したICT が切り口だったわけですが、属人性の高さからみて、人材育成にフォーカスした出題も考えられます。上述したOJT&OFF-JT、ナレッジマネジメントなどについては理解を深めておきましょう。
        • 以上、災害・維持管理・生産性向上にまたがってトータルな理解度を増しておく必要があるのではないかと思います。
        • なお、福岡駅前陥没事故を踏まえて、地質リスクについてさらに踏み込んだ出題も考えられます。これについてはトンネルの項を参考にしてください。


    2. 鋼構造コンクリート
      • 鋼構造
        • 出題傾向(鋼構造)
          • H25V-1は、持続可能な国土・地域づくりで、鋼構造に特に限定しないテーマですが、鋼構造の技術士として技術的課題をあげることを求めています。テーマが「持続可能」ですから長寿命化技術や環境配慮などが求められているのだと思います。
          • H25V-2は建設部門共通の維持管理に関する問題です。鋼構造では、鋼構造物の効率的な維持管理について課題、技術的提案、さらにその効果とリスクを求められています。
          • H26V-1は国土強靱化が早くも取り上げられました。鋼構造物としては、想定外外力に対するじん性化や粘り強い構造を考える必要があるでしょう。津波に対する防潮堤のような役割ではなく、避難において鋼橋等が急速な破壊変状をきたさないこと、迅速な補修等で使用できる状態に復帰することなどが重要になってきます。
          • H26V-2は労働力不足がもろに出ました。2つの課題にスキル不足や技術継承をあげれば、昨年度テキストに記した教育体系やナレッジマネジメントなどによる解決策を書けたでしょう。
          • H27V-1は人口減少ですが、それを建設業界における労働者不足にもってきています。H26V-2に続けての出題ですが、頭数不足を課題とすれば省力化・省人化(たとえばPCa化)へ、OJT困難とすれば教育体系やナレッジマネジメントへ話を進められるでしょう。
          • H27V-2は出たばかりの国土のグランドデザイン2050からの出題です。3つの理念のうち多様性は地域の多様性を維持した地域作り、連携は交通体系等産業活性化に関するものです。すなわち技術的課題は地域作り・産業活性化・防災減災に関する課題となります。鋼構造分野での課題をあげるわけですから、人口減少社会の中でのメンテナンスも考えれば、長寿命化を考えたメンテフリーあるいはミニマムな構造物や想定外外力に対してじん性を備えた構造物の設計・維持管理更新をとりあげればいいのではないかと思います。
          • H28V-1 はもろに維持管理でした。けっこうシンプルというか答えやすそうな問題で、こちらを選んだ人が多かったようです。管理システムとしてのアセットマネジメントや予算措置としてのPFI、担い手不足の中でのICT 活用など多くの切り口があるでしょう。
          • H28V-2 はインフラ海外展開で、問題文の中に課題がおおむね書いてあるので答案は書きやすいのですが、ちょっと予想外の問題だったのでこちらを選んだ人は少なかったようです。PM やリスクマネジメントなどのマネジメントシステムや他国の規格への対応、材料調達や施工・検査等における制限への対応などが考えられるかと思いますし、現地スタッフの教育といった切り口もあるでしょう。
        • 出題傾向(コンクリート)
          • H25V-3は、業界就業者数の低下や若手不足などによる生産性低下が取り上げられています。テーマ自体は建設部門共通ですが、ここではコンクリート構造物の生産性アップのための検討項目、コンクリート技術士としてあげる技術的課題とその解決策、効果とリスクについて記述します。材料・現場複数の視点が考えられますね。
          • H25V-4は建設部門共通の維持管理に関する問題です。コンクリートではこのテーマはまさにど真ん中の課題であり、アセットマネジメント、PFI、技術者育成や技術継承など多くのことが書けるでしょう。
          • H26V-3は、特定地域・比較的短期間における急激な市場規模・市場構造の変化が取り上げられました。生コンの極端な不足などが顕在化する中で、たとえば海砂の利用などの技術革新も求められていますし、技術者不足も深刻化しています。こういった様々な面からアプローチできるでしょう。
          • H26V-4は、非常にスタンダードな維持管理の問題で、予算や労働力が不足ということが書かれているので、アセットマネジメントはもちろんですが、PFIや自動化・さらには技術継承などについて多様な視点から書けるでしょう。いわゆる大本命問題ですが、H25に続いても出題なので面食らった人も多かったと思います。
          • H27V-3は復興事業の遅れで、基本はリソース(人・モノ・カネのうち人とモノ)不足で、これはH26V-3の切り口を変えて再出題したともいえる問題です。基本となるのは労働力不足ですね。
          • H27V-4は3年連続の維持管理問題ですが、切り口が業務サイクルになっています。点検診断→対策→点検診断…という繰り返しの中での効率化で、データベース化はもちろんですが、点検診断の自動化やそのための設備設置等も入れていいでしょう。
          • H28V-1 は、またもや維持管理か?と思ったら初期欠陥防止でした。これは思わずひび割れ防止などの純技術を書きたくなるところですが、そうではなく、たとえば技術力維持向上(教育や技術継承)、PCa 化などの省人化省力化、発注時期平準化などの視点が求められます。
          • H28V-2 は、これも災害の出題か?と思ったらなんと温暖化緩和策でした。CO2 排出削減という予想外の出題で、これは避けた人が多かったでしょう。エコ重機使用などではなく、インフラ構築の選択と集中や長寿命化などにより施工件数自体を減らすとか、PCa 化により現場作業を最小化するなど、ちょっと発想の転換が必要だったかもしれません。
        • 対策
          • 鋼構造、コンクリートとも、社会的重要テーマについての出題が予想されます。
          • 鋼構造は災害(強靱化)と維持管理、労働力不足(生産性)が繰り返し出題されています。この3テーマは重要度が高いので、今後も別の切り口で出題されることが十分予想できますから、幅広く掘り下げておく必要があるでしょう。維持管理はH28 に出たばかりですからひとまず外し、やはりi-Con を中心に生産性向上や人材育成などを最優先に考えておくべきでしょう。
          • コンクリートはH28 が変化球的出題ばかりだったのですが、結局2 問とも生産性向上の視点があれば解けることがわかります。どうも出題者が生産性革命などの視点を強く持っている可能性があるので、鋼構造同様i-Con を中心に、災害や維持管理を包括的に理解しておき、引き出しを開けやすくしておくことがいいのではないかと思います。
          • またストレートに災害対策の問題についても準備しておくといいでしょう。これは鋼構造も同じなのですが、異常気象に伴う災害の頻発化・大規模化や、稀有な災害による想定外外力への対応といったことを中心に、科目ならではの特性を盛り込んだ出題が予想されます。やはり想定外外力にどう対応していくかということかなと思います。東日本大震災で鋼構造・コンクリート構造物がどのような被災をしたのかをよく調べておいてください。これらの構造物は破壊した場合の復旧が簡単ではないことがポイントです。
          • またH27V-2 のように、国土のグランドデザインなど分野横断的にまとめた文献等を参考に、複数分野にまたがった出題をすることも考えられます。前述の生産性革命などはやはり目を通しておくべきでしょう。
          • 重要なことは、どのような分野で出題されても、科目ならではのアレンジが考えられますし、答案もそのような視点で作ったほうがよい(あまり一般論だけで述べない)ことが重要です。


    3. 都市計画地方計画
      • 出題傾向
        • 都市計画科目の問題Vは仮想事例的出題が多いのが特徴です。
        • H25V-1は津波に強い都市です。災害の中にでも津波に限定しての出題です。
        • H25V-2は低炭素都市づくりに関する問題です。人口20万人程度の地方都市を考え、ディティールを設定して方策を問います。方策は集約化・公共交通利用・建築物低炭素化・緑化の4つから2つ選ぶことになっていて、かなり考察力を要する問題になっています。
        • H26V-1は都市の再構築です。これはもろに都市再生法を背景とした出題ですね。予想されていた出題ではありますが、しっかり理解を深めていなければ設問(3)などは答えられないでしょう。
        • H26V-2は復興まちづくりですが、「東日本大震災の津波により被災した市街地と同じ制度が適用されること」など、その方面の知識の差が出てしまい、ちょっと公平性を欠く出題ともいえます。
        • H27V-1は都市事業の見直しで、おそらく都市計画道路の見直しを書いた方が多かったのではないかと思います。これらは手順等が決まっていますから、それを知っているかどうかで差が出ますね。
        • H27V-2は都市再生特措法で、これも進め方を知っているかどうかの勝負というところがあります。
        • H28V-1 は2 年連続立地適正化計画ですが、H27 が居住誘導だったのがH28 は公共交通がテーマでた。H27 同様、教科書的に答えられると思います。
        • H28V-2 は空き家対策で、設問1 は防犯を含む安全安心、環境衛生、景観などをあげればいいでしょうし、設問2 は空き家利活用を中心に発生抑制をあげればいいでしょう。設問3 は維持管理を中心に書けばいいかなと思います。これも教科書的に答えられます。
      • 対策
        • 2 年連続立地適正化はちょっと意外でしたが、仮想事例的出題・教科書的に答えられるという点は継続しています。仮想事例ということも考えると、スーパーメガリージョンやゴールデンルートといった国作りの大枠は出題されにくく、空き家問題などけっこう絞り込んだ出題が多いのが特徴ですので、たとえば道路・駐車場の空間利用、都市機能誘導、小さな拠点、歴史風致のまちづくり(インバウンド対応も含む)などけっこう絞った出題の可能性が高いかなと思います。
        • 災害については、津波に強いまちづくりはすでに出題されましたが、異常気象に伴う災害の頻発化・大規模化や、稀有な災害による想定外外力への対応といったことを中心に、科目ならではの特性を盛り込んだ出題が予想されます。都市計画では木造家屋密集地の地震・火災災害、液状化、都市水害などが、また地方では中山間過疎地の土砂災害などがあり、いろんな切り口が考えられます。また少子高齢化に伴う災害弱者への対応などを盛り込んだ災害に強いまちづくりについての切り口もあるでしょう。


    4. 河川砂防
      • 出題傾向
        • H25V-1は異常気象に伴う水害・土砂災害で、流域を上流・中流・下流・海岸に分けて整理させています。この問題の基本的な出典は「水災害分野における地球温暖化に伴う気候変化への適応策のあり方について」(社会資本整備審議会、平成20年6月)で、ここでたとえば降雨強度の増大などを「外力の変化」と位置付け、上流・中流・下流・海岸に分けて整理しています。基本的にはハード&ソフトなのですが、ハードは量的な限界の話になります。上記答申は東日本大震災以前のものですから当然なのですが、想定する災害規模などにおいてちょっと古さを感じさせます。
          一方、問題文には「東日本大震災や近年の大水害の教訓」などの言葉があり、ソフト施策つまり減災の重要性とともに、ハードの質的な限界の話も入ってきます。つまり、ハード&ソフトで防災と減災で国民の命を守るということが解決の方向性です。ここをきちんと書いたうえで、大規模災害における減災対策の重要性を中心に、下流・海岸では津波に対する「粘り強い構造」なども入ってきていいでしょう。
        • H25V-2は事業評価に関する問題です。事業効果の算定方法などかなり突っ込んだ質問があります。
        • H26V-1は維持管理で、スタンダードな出題になっていますから、多くの受験生がこちらを選んだようです。ただその分だけ差がつきにくく、設問(3)で差がついてしまったようです。
        • H26V-2は総合的な土砂管理で、以前から河川砂防科目の鉄板的出題テーマだったものです。逆にこのテーマが問題Vに出るとは思っていなかった人も多いでしょう。
        • H27V-1は災害で、水災害に関する防災減災対策本部の答申を下敷きにしていると思われます。線状降雨帯から異常降雨、越水破堤といったプロセスを書いてもいいでしょうし、高潮を書いてもいいでしょう。
        • H27V-2は維持管理ですが、業務プロセスのPDCAというテーマでした。点検診断→対策→点検診断…という繰り返しの中での効率化で、データベース化はもちろんですが、点検診断の自動化やそのための設備設置等も入れていいでしょう。
        • H28V-1 はICT で、選択した人は少なかったようです。ネットを利用した災害警報等も含みますし、地すべり観測の自動化などでもいいと思います。
        • H28V-2 は多くの人がこちらを選んだようです。事例は鬼怒川、伊豆大島、広島土砂災害など、課題は想定外外力へのハードの限界や逃げ遅れ・警報等の遅れ等が多く指摘されています。
      • 対策
        • 災害・維持管理については繰り返し出題されていますが、重要テーマだけに繰り返し出題されることが予想されます。生産性革命のダム再生のようなストック効果の最大化のようなテーマにも注意しましょう。
        • 生産性については労働者不足・人材育成ではなくICT 活用の切り口でした。生産性向上や人材育成もまだまだ十分テーマになり得ます。
        • これらの他には社会構造変化(少子高齢化や過疎化など)、環境配慮、市民参加などが考えられます。


    5. 港湾空港
      • 出題傾向
        • H25V-1は品質確保で、テーマは港湾空港に限定していませんが、港湾空港の技術士として答えることを求められています。もっともこれは設問(2)で港湾空港構造物を取り上げればいいでしょう。
        • H25V-2は災害に関する問題です。「災害に上限はない」という文言があり、津波、あるいは震度7クラスの地震動といったものを考えて強化対策、その実施にあたっての課題と技術的提案、効果などについて記述を求めています。
        • H26V-1は国際競争力確保のための機能強化で、つまり国際戦略港湾・ハブ空港ですね。これはまあ鉄板問題といえるでしょうから、多くの受験生が選んだのではないかと思います。
        • H26V-2は維持管理更新で、これも鉄板問題ですね。H26はもったいないくらい鉄板問題が出たわけですが、これも多くの受験生が似たような答案を書いてしまって、結局設問(3)の答案部分が明暗を分けたという例も多くあったのではないかと思います。
        • H27V-1はグローバル化で、戦略港湾・ハブ空港について書けばよく、人口減少等を踏まえた変化として財政難をあげてPFI(コンセッション方式)をあげればいいと思います。昨年度「国際競争力ではPFI・コンセッション等の民活を中心として出題も考えられるでしょう」と予想していたとおりで、専門分野課題ど真ん中の非常にスタンダードな問題です。
        • H27V-2は新幹線やMR-J等の付加価値輸送インフラを考えて書けばいいと思いますが、留意点は海外の文化や規格だけでなく、何と言ってもPM方式対応を書くできましょう。
        • H28V-1 は3 年連続グローバル化です。港湾であればコンテナ港湾やロジスティクスなどを取り上げて戦略港湾等につなげていけばいいでしょう。
        • H28V-2 は改修・更新計画で、維持管理にとどまらないストック効果の最大化がテーマでしょう。
      • 対策
        • 災害と維持管理、国際戦略港湾やハブ空港、海外進出といった主要テーマはひととおり出た感じですが、やはりグローバル化など重要なテーマは繰り返し出題されています。
        • 災害・維持管理については、切り口を変えた出題も考えられます。たとえば災害では港湾BCP などのレジリエンスに、維持管理では業務サイクルやストック効果などに注意してください。またグローバル化は生産性革命の「クルーズ新時代」にも注意してください。
        • あとは労働力不足・生産性向上ですね。災害対応や維持管理に絡めての労働力不足という出題になる可能性もあります。また技術継承に絞ってクローズアップされることも考えておいたほうがいいでしょう。


    6. 電力土木
      • 出題傾向
        • H25V-1は電力安定供給からの視点で、建設部門共通の維持管理に関する問題が出されています。特にコスト削減が強調されているのが特徴的です。
        • H25V-2はナレッジマネジメントに関する出題で、建設部門の中では異色です。技術継承と教育が中心になるのかなと思います。
        • H26V-1は海外進出ですが、これは準備していないとちょっと手が出ないかなと思います。
        • H26V-2は災害(想定外外力)で、こちらは大本命的問題ですね。こちらを選んだ受験生はおおかったのではないかと思います。
        • H27V-1は維持管理で、H25と同様の出題といえます。経年劣化事例をあげさせるもので、送電施設だけでなく水路トンネルなどもあげることができるでしょう。
        • H27V-3は環境配慮で、これは昨年度予想通りでした。ダムの水質や猛禽類影響、風力の風切り音やバードストライクなど、順当な切り口がいくつもあると思います。
        • H28V-1 は災害ですが、28 年度テキストで「28 年度は災害をテーマにした出題、それもまだ出題されていない異常気象に伴う災害の頻発化・大規模化に伴うもの(水力発電施設における災害や斜面崩壊による送電施設等への被害軽減)に注意が必要です」と述べていたとおりの問題でした。自然事象は地震動や水害、津波、土砂災害など多岐にわたります。そして対応策ですが、リスクとして考えて冗長性などの視点もほしいところです。
        • H28V-2 は維持管理ですが、まさかのASR 限定でした。専門技術ではなく中長期メンテナンスの視点で書かねばならないのでしょうが、設問1 などはどうしても専門技術になってしまいます。
      • 対策
        • 災害と維持管理という2 大テーマでの出題履歴から考えれば、29 年度は維持管理の順番になります。ストック活用の視点も重要です。生産性革命のダム再生には注意してください。
        • また他科目と同様、生産性向上(ICT 活用・i-Conや人材確保、人材育成、技術継承)の問題が考えられますので、電力土木ならではのICT 活用や若手技術者確保育成、技術継承の問題を考察しておいてください。
        • 環境絡みでは自然エネルギー関係(特に風力)が考えられます。ただあくまで土木ですから、たとえば風力発電施設の施工に関する問題があるでしょう。
        • 地熱発電や地層処分等の地質に関係が深い事項の出題なども注意が必要です。


    7. 道路
      • 出題傾向
        • H25V-1は大本命の維持管理に関する問題です。特に道路はアセットマネジメントが進みつつありますし、道路構造物の点検などにおける技術者不足の問題など多くの問題点があるでしょう。本テキストでも答案例に使っていますが、多くの受験生がこちらを選んだようです。
        • H25V-2は交通結節機能の充実です。鉄道など公共交通と自家用車の接続のためのP&RやP&BR、さらにはデマンド交通などについても言及できるでしょう。
        • H26V-1は物流で、圏央道などを意識した出題と思われます。設問(3)で差がついたものと思われます。
        • H26V-2は大規模災害で、これも本命ですね。「道路の役割」として、避難路だけでなく救援・復興の動脈としての道路の役割は、ミッシングリンクやリダンダンシーといった課題を上げやすくなっています。また設問(3)で差がつきやすくなっています。
        • H27V-1は維持管理ですが、実はこれは平成27年1月に公表された「高速道路を中心とした「道路を賢く使う取組」の基本方針」のことです。問題Uもそうなのですが、近年の道路科目はどうも「この施策を知っていますか」といった姿勢での出題が目立っています。
        • H27V-2は無電柱化で、これも無電柱化施策の内容に沿って書けばいいようです。
        • H28V-1 は維持管理で、メンテサイクルでした。例年と同様、「施策を知っていますか」という問題ですね。
        • H28V-2 は事業評価で、これはちょっと意外でした。ただ近年、行政視点からの出題が明確になっています。出題者の視点でしょうね。
      • 対策
        • 行政目線での出題が続いているのですが、どうも26 年度以降顕著なようです。すると3 年過ぎたので、今度は出題傾向が変わるかもしれません。
        • 順当には、災害(たとえば今度は木造家屋密集地における延焼防止帯としての役割等、首都直下型地震にフォーカスした問題も考えられます)や生産性向上(i-Con、人材確保・人材育成、技術継承)、環境配慮、市民参加などが考えられます。
        • また施策に沿っているということから、生産性革命のピンポイント渋滞解消、公共交通活性化などにも注意しておきましょう。
        • いずれにしても道路科目の場合は「施策を知っているか」という偏った出題傾向にあるので、国交省の道路施策のページなどを通して、国交省の道路施策をひととおりさらっておくのが最も効果的ではないかと思います。


    8. 鉄道
      • 出題傾向
        • H25V-1は建設部門共通の維持管理に関する問題です。鉄道構造物も老朽化が進んでおり、特にJR北海道の問題などもありましたので、点検も含めた幅広い議論が必要になります。
        • H25V-2は仮想プロジェクトです。都市計画との絡みもありますし、駅ビル事業における経営の問題もあり、純技術力だけでなく、総合マネジメント力が求められます。
        • H26V-1は災害で、大本命的テーマですのでこれを選んだ受験生は多かったと思います。
        • H26V-2は維持管理更新で、大本命とはいうものの2年続けての出題は、JR北海道をはじめとして、この問題が鉄道分野においていかに重要かつ喫緊の課題であるかを示していると思います。
        • H27V-1は災害(特に大規模災害)がテーマで、昨年度テキストで「大本命としていた災害は出題されたのですが、想定外災害にフォーカスしたテーマだったので、今度は異常気象に伴う災害の頻発化・大規模化にフォーカスすることも考えられます」と予想していたとおりの出題でした。
        • H27V-2は維持管理で、これもスタンダードな出題です。問題V-1・V-2いずれも順当な出題なので、逆に受験生間の差がつきにくく、ドングリの背比べになってしまって、表面的な勉強しかしていない人はなかなかA評価が取れなかったのではないかと思います。
        • H28V-1 は駅改良ですが、たとえば防災減災、少子高齢化、インバウンド増加などの社会変化の認識とそれに応じた改良といった視点が求められます。
        • H28V-2 は生産性に関する問題です。28 年度テキストで「特に保線についてはスキル不足や人員不足は大きな問題ですし、技術継承もそうですから、しっかりまとめておきましょう」と述べていたのですが、ほぼそういった問題でした。たとえば技術継承の不足による技術力や安全意識といった質の低下、労働集約型作業の人手不足による生産性低下など、様々な課題があげられますし、教育やICT 活用等省人化省力化等の方策が考えられるでしょう。
      • 対策
        • 災害・維持管理は重要テーマであり、1 年空いたので出題確率は高くなっています。災害に関してはリダンダンシーのような大きな視点での出題もあり得ます。維持管理はストック活用の視点もあり得るでしょう。
        • 生産性向上・労働力不足は2 年連続は出にくいでしょうが、維持管理に絡めて保線をテーマに出題される可能性は捨てきれません。鉄道の場合、軌道は元来が柔構造物ですから、保線を常にしっかりやっていることが大前提のインフラだということをしっかりとご理解ください。
        • 北陸新幹線開業に伴い、またインバウンド増加に伴い、まちづくりと絡めた鉄道網という出題もあり得ます。北陸新幹線沿線ではLRT を中心としたコンパクトシティの富山市、歴史風致のまちづくりを明確に打ち出し、またユニークな駅舎のファサードで注目されて観光客が増加を続ける金沢市など、高速鉄道網を起爆剤としたまちづくり事例がたくさんありますから、出題テーマにもなりやすいと思います。
        • また新幹線輸出などの海外進出もテーマになると思います。生産性革命の中でも取り上げられています。海外文化や規格への対応だけでなくPM 方式への対応も押さえておいてほしいと思います。


    9. トンネル
      • 出題傾向
        • H25V-1は建設部門共通の維持管理に関する問題です。アセットマネジメントの視点で書くことを指定されているのが特徴です。
        • H25V-2は工程管理ですが、「あなたが直面した課題を具体的に挙げる」ことを求めています。つまり体験論文的になっています。これは小論文事例を書いた人も多かったのではないかと思われます。
        • H26V-1は技術継承で、若手減少、労働力不足と絡めて論じることができると思います。特にナレッジマネジメントを書くといいのですが、設問(3)で「トンネルならでは」をいかに出せるかで差がついたものと思われます。
        • H26V-2は岡山県におけるシールドトンネル事故を踏まえての出題と思われます。これについては下手をするとトンネルに限定されない労働安全衛生管理の話になってしまう(施工計画科目みたいになってしまう)ので、ちょっと答え方が難しい問題です。
        • H27V-1は維持管理(長寿命化)で、順当な出題です。ただし高強度コンクリートのような専門技術を使うのではなく、予防保全のような方法での長寿命化について書く必要があります。
        • H27V-2は労働者不足で、これは予想通りでした。設問(2)のトンネル分野で人的リソースに求められるものをしっかり書けるかどうかが勝負ですね。自動化できるものは自動化を進める一方で、たとえば切羽での地山観察など高度なスキルを要するものは人材育成・技術継承が重要になります。
        • H28V-1 は災害でした。28 年度テキストで「これまで出ていない災害の出題が考えられます。異常気象に伴う災害の頻発化・大規模化や、稀有な災害による想定外外力への対応といったことを中心に、科目ならではの特性を盛り込んだ出題が予想されます」と述べていたのですが、ズバリでした。地下構造物としての被災ですから背面空洞が悪さをしての崩落などがあるでしょう。
        • H28V-2 は品質確保ですが、これはマンション杭基礎偽装事件なども絡んでいるかなとも思いますが、まさか倫理定内容は書けませんから、生産性(人材確保育成、技術継承など)について書くことになるのかなと思います。
      • 対策
        • まずは福岡駅前陥没事故を受けて何らかの出題がされる可能性を考えておくべきでしょう。H28に続いてになりますが、品質確保について地質リスク(不確実性の取り扱い)を絡めて出題される可能性があります。これについては土質基礎H28問題を参考にするといいでしょう。また緊急時対応をテーマにした出題も十分考えられます。ともかく、福岡駅前陥没事故に関する原因・機構などはまとめておきましょう。
        • その他の問題としては、災害は出題されたので、順当には維持管理が本命で、i-Con や人材確保育成を含む生産性向上についても出題が続く可能性はあります。
        • 海外進出もなくはないと思います。


    10. 施工計画
      • 出題傾向
        • H25V-1は建設部門共通の維持管理に関する問題です。施工計画の技術士の立場なので、老朽化施設の維持管理更新を手掛ける立場での課題と解決策を記述することが求められます。
        • H25V-2は安全衛生管理(重大災害)に関する問題です。重大災害誘発要因をあげ、対策を論じます。
        • H26V-1は生産性向上、すなわち労働力不足を背景にしたスキルアップ・技術継承・省力化自動化などの課題ですね。
        • H26V-2は品質確保ですが、CMを強く意識した出題と思われます。
        • H27V-1は非常に幅広い、建設産業のあり方に関する質問で、切り口がいくらでもあって答えやすい反面、広すぎて答えにくいという面もあります。また設問(3)は個人能力に踏み込んでいます。ロジックをきちんと作ってから答案を書かないと、ぼんやりした答案になりそうです。
        • H27V-2は維持管理に関する、H25V-1と同様の問題です。こちらのほうを選んだ受験生は多かったのではないでしょうか。
        • H28V-1 は労働力不足で、28 年度テキストで「労働力不足は多いので出題しやすい問題です。人材育成教育、技術継承、省人化省力化などについてしっかり勉強しておくといいでしょう」と述べていたとおりの出題でした。
        • H28V-2 は杭データ流用などを踏まえての出題ですがまあ当然の出題ですね。ただし倫理で答えるのではなく、人手不足や技術力不足、無理な工期などに原因を求めることが望まれます。
      • 対策
        • 労働力不足は出題されたのですが、生産性向上、さらにはi-Con に関する出題は施工計画科目だけに十分あり得ます。
        • また毎年「大本命」と言っている自然災害がずっとスルーなので、今年も大です。異常気象に伴う災害の頻発化・大規模化や、稀有な災害による想定外外力への対応といったことを中心に、科目ならではの特性を盛り込んだ出題が予想されます。施工計画の場合、早期の災害復旧などが考えられますし、マネジメントとして労働者の安全確保などもあるでしょう。そのためにも労働力確保・技術者や技能者のスキル確保は重要ですし、重機類保有などの経営体力維持のための地域維持型契約なども重要です。
        • 福岡駅前陥没事故を受けての緊急時対応、土木事故リスク対応などが出題される可能性もあります。特に現場技術者の迅速な判断が人身事故回避につながったという面があるので、そのあたりを中心に整理しておいてもいいのかなと思いますし、地質リスク(不確実性対応)を抱えた状態での施工のあり方について考察しておいてもいいでしょう。
        • 念のため、たとえば施工パッケージ方式などの積算負担軽減、地域維持型契約などの地方業者維持を考えた契約方式などについては基礎知識だと思ってしっかり押さえておいてください。


    11. 建設環境
      • 出題傾向
        • H25V-1は低炭素都市づくりで、かなりスタンダードな問題です。
        • H25V-2は閉鎖性海域の水質改善です。これも順当な問題ではありますが、問題Vとしてはちょっと違和感のある専門技術色の強い問題でした。
        • H26V-1は防災と環境保全の共存ですが、事前防災にフォーカスしている点が特徴です。すなわち、東日本大震災被災地復興における環境保全はクローズアップされていますが、事前防災に着目したという点でユニークかつ奥深い問題で、おいそれとは手を出せなかったかもしれないなと思います。
        • H26V-2は途中まで「どこが建設環境なの?」と思うような問題でした。まあ結局は自然環境や生活環境への配慮「も」必要という程度で書けてしまうのですが。
        • H27V-1はコンパクトシティ化に相乗りした地球環境等対応で、脱モータリゼーションの推進はもちろん、エリアエネルギーマネジメントや再生可能エネルギーの地産地消など、かなり書けるネタがあると思います。
        • H27V-2は循環型社会で、建設副産物の3Rというかなり絞り込んだテーマです。あらかじめ準備していないとなかなか書けないと思います。
        • H28V-1 は温暖化適応策ですが、自然災害は除くという条件があります。ヒートアイランド、外来種、生態系変化、農林漁業への影響、気候変動(集中豪雨等)や積雪減少に伴うシカ食害などに伴う森林荒廃や渇水などがあるでしょう。
        • H28V-2 は大規模津波災害からの復旧・復興における環境配慮がテーマです。基本的には東北被災地において実際にやられていることが参考になると思いますが、生物多様性への配慮、いわゆるエコシティ指向やグリーンインフラ整備、エコツーリズム等観光といったものがあると思います。
      • 対策
        • 建設環境科目はもともと災害・維持管理といったテーマでは問題を作りにくいので、環境に関する社会的重要テーマについての出題が予想されます。
        • 低炭素、再生可能エネルギー、戦略的アセス、生態系保全、グリーンツーリズム、歴史風致を活かしたまちづくりや観光などがテーマになってくるのではないかと思います。日本遺産の導入も注目すべきでしょうし、北陸新幹線開業前から観光客の伸びが著しかった金沢市における歴史風致のまちづくり事例などはおおいに参考になるでしょう。インバウンドの伸びはその重要性を増してくれます。
        • 生産性(ICT 活用、人材確保育成、技術継承)の出題も予想されます。特に建設環境は個人知に依存する面が多い分野なので、技術継承についてはナレッジマネジメントに結びつけて準備しておかれることをお勧めします。
        • ともあれ、環境の視点を養うために、国土交通白書だけでなく環境白書等もよく読んでおかれることをお勧めします。

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