2025.4.22 最終更新

2024(令和6)年度作問 

I-2

 わが国は2011年の東日本大震災を経て、地域コミュニティや環境保全の重要性などに関して国民意識の変化があったと言われている。

そして2020年に到来した100年に1回と言われる新型コロナ感染症のパンデミックの中、行動様式やワークライフバランスなどにおいて新たな国民意識の変化が生まれたとも言われている。例えば東京都からの転出が前年比で増加したが、このような現象は全国の都道府県で唯一で、テレワークの定着が大きく影響しているとされる。このような変化を後押ししたのが近年著しいデジタル技術の発展であることは疑いの余地はない。

こういった変化の時代の中で、官民関わらず組織の事業活動を継続していくためには、従来の生産方式や労務管理あるいは CSR 等に関する考え方が漫然と続いていくと考えていてはいけない状況にあると言えるが、これらの変化をいち早く取り入れ、業務プロセスや組織形態を変革することで、公共機関であれば公益のいっそうの確保、民間企業であれば事業拡大等に繋がる絶好の機会であるともいえる。

以上のことを踏まえて、あなたが所属する組織の事業活動を継続する上で、現時点においてあるいは将来において、公益確保や事業拡大等につながる機会、あるいは乗り越えなければならない事業継続リスクを想定し、それについてどのように対応していくべきか、総合技術監理の視点から以下の(1)~(3)の問いに答えよ。なお、ここでいう総合技術監理の視点とは「業務全体を俯瞰し、経済性管理、安全管理、人的資源管理、情報管理、社会環境管理の5つの管理について、個別最適化だけでなく全体最適化の視点で、また有期の個別プロジェクトの視点だけではなく期限のない長期的な事業継続の視点で解決策を提案する」ことを言う。

(1) 本論文においてあなたが取り上げる事業・プロジェクト等の内容について、以下の項目について記せ。

(問い(1)については、問い(2)とともに答案用紙3枚以内にまとめよ。)

① 事業・プロジェクト等の名称及び概要を記せ。

② この事業・プロジェク卜等が創出している成果物(製品、構造物、サービス、技術、政策等)を記せ。

③ この事業・プロジェクト等の実施体制と社会的役割を記せ。特に社会的役割については公益性に留意して述べよ。

(2) (1)で述べた事業について、公益確保や事業拡大等の機会を活かす上で、あるいは事業継続のために乗り越えなければならない課題について、以下に示す今後予想される変化A~Dの中から重要度の高いもの2つを選んで、それぞれについて下記の①~③に関して述べよ。

(今後予想される外部の変化)

A:法制度あるいは社会的通念の変化

B:政治あるいは経済情勢の変化

C:自然条件の変化

D:国民意識や価値観、嗜好性などの変化

(顕在化が懸念される事項)

①それらが顕在化した場合に組織の事業活動に及ぼす影響の大きさ

②それらが顕在化する確率・可能性の高さ

③それらが顕在化した段階で、事業活動への影響をできるだけプラスにするために取れる方策

(3) (2)であげた変化に伴う影響ができるだけ事業活動にとってプラスになるように現段階から取り組んでおくべき内容について、予想される変化ごとに、下記の①~③にそって述べよ。

(問い(3)については答案用紙2枚以内にまとめよ。)

①現段階から取り組んでおくべき内容

②そのために必要となる条件

③その条件をできるだけ満たすために、全体最適化の視点で取るべき対応

2023(令和5)年度作問 

I-2

 COVID-19(新型コロナウイルス感染症)は社会経済に多大な影響を与えたが、組織の生産活動にも多大な影響を与えている。大部分の組織において、感染拡大を防止するために出勤停止や交代勤務、テレワークなどの勤務体制の変更やパネルやシート等を用いたパーテーション設置を行った。これらによって生産性は少なからず低下したが、これは安全管理(感染防止)と経済性管理(業務進捗等)のトレードオフといえる。また勤務体制変更に伴って、組織管理者が進捗状況を把握しにくい、若手等を教育指導しつつ業務を進めることがしにくいといった問題が顕在化した組織も多かったが、これらも安全管理と情報管理や人的資源管理のトレードオフといえる。こういった様々なトレードオフがデメリットとして捉えられ、コロナ禍がある程度終息すると、テレワークをやめるなど従前の勤務体制に戻した組織が多いようである。

その一方でコロナ禍終息後もテレワークを継続している組織も少なくない。デメリットが最初から小さかったという場合もあるし、業務改善等でデメリットを最小化し、メリットを最大化したという場合もある。働き方改革やコロナ禍を通したワークライフバランスの考え方の変化などを踏まえると、それは組織の競争力向上につながることも考えられる。

このように、パンデミックに限らず、災害や国際紛争、経済恐慌など様々な異常事象(極めてまれにしか発生しないが影響が極めて大きい事象。カタストロフ的事象)が発生した場合、一時的に生産性等を犠牲にして安全優先で対応する場合もあるし、それが長期化すれば業務体制や組織体制を変更して「新たな働き方」を模索して行かざるを得ない場合もあると思われる。そしてそれは中長期的には組織の競争力の向上あるいは低下につながっていくことも考えられる。

ここでは、あなたがこれまでに経験した、あるいはよく知っている事業又はプロジェク卜(以下「事業・プロジェクト等」という。)を1つ取り上げ、その実施体制や社会的役割等を踏まえ、極めて稀に発生しうるカタストロフ的事象に関して総合技術監理の視点から以下の(1)~(3)の問いに答えよ。ここでいう総合技術監理の視点とは「業務全体を俯瞰し、経済性管理、安全管理、人的資源管理、情報管理、社会環境管理に関する総合的な分析、評価に基づいて、最適な企画、計画、実施、対応等を行う。」立場からの視点をいう。なお、書かれた論文を評価する際、考察における視点の広さ、記述の明確さと論理的なつながり、そして論文全体のまとまりを特に重視する。

(1) 本論文においてあなたが取り上げる事業・プロジェクト等の内容に関して、以下の項目について記せ。(問い(1)については、問い(2)とともに答案用紙3枚以内にまとめよ。)

① 事業・プロジェクト等の名称及び概要を記せ。

② この事業・プロジェク卜等が創出している成果物(製品、構造物、サービス、技術、政策等)を記せ。

③ この事業・プロジェクト等の実施体制と社会的役割を記せ。

(2) 新型コロナ感染症拡大に際してとった、あるいはとっている対応について、以下の項目について記せ。(問い(2)については、問い(1)とともに答案用紙3枚以内にまとめよ。)

① 実際にとった、あるいはとるべきであった対応の内容

② それによって事業・プロジェクトが受けた影響

③ その影響を最小化するために取った、および/あるいは取るべきであった対応

(3) (2)の経験を踏まえて、今後発生する可能性のあるカタストロフ的事象について、以下の項目について記せ。(問い(3)については、答案用紙2枚以内にまとめよ。)

① 想定するカタストロフの内容(ただしパンデミックは除く)

② (2)において記したコロナ禍における実際の経験を踏まえた、カタストロフ的事象に遭遇した場合に備えて取っておくべきと考える対応

③ 上記②のために現時点において開始しておくべきと考える対応