2026.05.22 最終更新
21 総合技術監理部門
2026(令和8)年度作問
I-2
我が国を取り巻く国際情勢は、近年、急速に不安定化している。ロシアによるウクライナ侵攻以降のエネルギー・原材料価格の高騰、地政学リスクを背景とした物流網の混乱、記録的な円安の進行など、これまでの常識や経験則が通用しない事象が相次いでいる。これらの「予測困難な事業リスク」は、単なる一時的なコスト増に留まらず、原材料の調達不能による生産停止や、既存ビジネスモデルの収益性悪化を招き、企業の事業継続に深刻な影響を及ぼしている。
一方で、このような激変する環境を「産業構造の転換点」と捉え、サプライチェーンの再構築や高付加価値化、デジタル技術による徹底した効率化など、対応を強みに変えることで新たな市場を確保し、競争力を高める視点も極めて重要である。総合技術監理の技術士には、これらのリスクを俯瞰的に分析し、全体最適の観点から強靭な事業基盤を構築することが求められている。
そこで、あなたがこれまでに経験した、若しくはよく知っている事業や組織を1つ取り上げ、その目的や創出している成果物等を踏まえ、予測困難な事業リスクの中での事業継続と市場確保について、総合技術監理の視点から以下の(1)~(3)の問いに答えよ。
解答に当たり、事業や組織について、関連するステークホルダーや他組織との連携を含めてもよい。また、ここでいう総合技術監理の視点とは、「業務全体を俯瞰し、経済性管理、安全管理、人的資源管理、情報管理、社会環境管理に関する総合的な分析、評価に基づいて、最適な企画、計画、実施、対応等を行う。」立場からの視点をいう。なお、書かれた論文を評価する際、考察における視点の広さ、記述の明確さと論理的なつながり、そして論文全体のまとまりを特に重視する。
(1) 本論文においてあなたが取り上げる事業や組織の内容と、そこにおけるこれまでの予測困難な事業リスクへの対応状況について、以下の問いに答えよ。(問い(1)については答案用紙1枚以内にまとめよ。)
① 事業や組織の内容として、名称、目的、及び創出している成果物(製品・構造物・サービス・技術・政策等)を記せ。
② この事業や組織において、国際情勢の不安定化や円安等に伴い、現在既に顕在化している課題(物資供給の停滞、コスト増、需要の変化等)と、それに対して既に実施している施策を1つ取り上げ、以下の項目をすべて含む形で記せ。
・具体的な課題と施策の内容
・その施策が事業継続や市場確保に繋がっている理由・根拠
③ ②で取り上げた施策の問題点・今後に向けた課題を記せ。
(2) この事業や組織において、今後も続くと思われる外部環境の不安定化に対し、近い将来(おおむね5年以内)に導入が可能で、対応を強みに変える効果が高いと考えられる施策を2つ取り上げ、それぞれについて以下の問いに答えよ。(問い(2)については、答案用紙を替えたうえで、1枚ごとに1つの施策についてまとめよ。)
① 具体的な施策の内容と、それがどのようにリスクを回避し、あるいは市場での優位性に繋がるのかを、理由と共に記せ。
② ①で記述した施策を実現するうえで、総合技術監理の視点からどのような課題があるかを記せ。ただし、2つの施策それぞれについて、総合技術監理の5つの管理分野のうち2つ以上の視点を含むこととし、異なる管理分野間のトレードオフに留意すること。また、解答欄にはどの分野の視点であるかを明記すること。
(3) 我が国において、将来にわたり予測困難な事象が継続することを前提とした場合、2030年代に向けて我が国の産業や社会が強靭性を維持・向上させるために重要と考える施策を2つ取り上げ、それぞれについて以下の問いに答えよ。なお、問い(3)では、個別の事業や組織の枠を超え、我が国として取るべき施策について解答すること。(問い(3)については、答案用紙を替えたうえで、1枚ごとに1つの施策についてまとめよ。)
① 取り上げる施策を記せ。
② ①で記述した施策に関し、その有効性と実現性について、技術革新や国際情勢の変化等の背景を含めて記せ。
③ ①で記述した施策を進めていくうえでの最も重大な障害とその克服策を、総合技術監理の視点を含む複数の視点から記せ。
2025(令和7)年度作問
I-2
総合技術監理部門の技術士が管理すべき内容として、個別のプロジェクトの最適化のための管理と、中長期的な組織の事業活動の継続のための管理がある。両者が互いに正の相互作用を及ぼし、生産性がスパイラルアップしていくことが望ましいが、時には個別のプロジェクトのために中長期的な事業継続のリスクを高めるようなことをせざるを得なくなったり、逆に中長期的な事業活動継続のために個別のプロジェクトの最適化を諦めざるを得なくなったりすることもある。ただこのような場合にでも常に得失を把握し、マイナス面を可能な範囲で補う措置を講じることが求められる。
以上の状況を踏まえて、あなたの所属する組織、あるいは所属しなくても必要な知見を有する組織について、個別プロジェクトの管理だけでなく、組織の生産性向上計画を立案・管理する立場で、総合技術監理の視点から(1)~(3)の問いに答えよ。ここでいう総合技術監理を構成する管理分野とは、「経済性管理」、「安全管理」、「人的資源管理」、「情報管理」、「社会環境管理」の5つをいう。また、解答に当たっては、具体的な設定を自分で行い、その設定事項も記載せよ。(問いごとに答案用紙を替えて、それぞれ指定された枚数以内にまとめること。)
(1) 本論文において、あなたの組織の生産活動の内容について述べ、以下の点について記述せよ。
①中長期的な事業活動の内容およびその中での個別プロジェクトの内容
②ここで取り上げる個別プロジェクトの成果および遂行するために必要なリソースの内容
③中長期的な事業活動の継続のために必要と考えられるリソースの内容
(以上のことは答案用紙1枚にまとめよ。)
(2) (1)で挙げたプロジェクトにおいて、受入れざるを得ない下記(A)(B)いずれかの事項について、以下の内容について述べよ。なお、(A)(B)いずれを選んだかを冒頭に明記せよ。
(A)個別プロジェクトのために受入れざるを得ない中長期的な事業継続のリスク
A-1:中長期的な事業継続のリスクを解説せよ。
A-2:なぜそのリスクを受入れざるを得ないのかを述べよ。
A-3:そのリスクの顕在化を防ぐための方策について述べよ。
(B)中長期的な事業活動継続のために諦めざるを得ない個別のプロジェクトの最適化
B-1:どのような個別のプロジェクトの最適化を諦めざるを得ないのかを述べよ。
B-2:なぜその最適化を諦めざるを得ないのかを述べよ。
B-3:その最適化を諦めたことに伴う負の影響を最小化するための方策について述べよ。
(以上のことは答案用紙2枚にまとめよ。)
(3) (2)であげたことは、個別プロジェクトにおける最適化と中長期的な事業活用の継続における最適化のトレードオフととらえることができる。こういったトレードオフの発生をできるだけ解消最小化するために、中長期的に取り組むことが有効と思われる改善計画について、以下の点について記述せよ。
①改善しようとする事項を総合技術監理を構成する管理分野に分類せよ。
②改善目標を具体的にあげよ。
③改善目標に到達するための改善プログラムについて概略的に述べよ。
④目標到達可否を判断する検証方法について述べよ。
⑤改善プログラムの実施において必要なリソースを人・モノ・カネの視点であげ、これらのリソース投入が本来の生産活動に支障をきたさないための方策について概略的に述べよ。
(以上の解答は、解答用紙2枚にまとめよ。)
2024(令和6)年度作問
I-2
わが国は2011年の東日本大震災を経て、地域コミュニティや環境保全の重要性などに関して国民意識の変化があったと言われている。
そして2020年に到来した100年に1回と言われる新型コロナ感染症のパンデミックの中、行動様式やワークライフバランスなどにおいて新たな国民意識の変化が生まれたとも言われている。例えば東京都からの転出が前年比で増加したが、このような現象は全国の都道府県で唯一で、テレワークの定着が大きく影響しているとされる。このような変化を後押ししたのが近年著しいデジタル技術の発展であることは疑いの余地はない。
こういった変化の時代の中で、官民関わらず組織の事業活動を継続していくためには、従来の生産方式や労務管理あるいは CSR 等に関する考え方が漫然と続いていくと考えていてはいけない状況にあると言えるが、これらの変化をいち早く取り入れ、業務プロセスや組織形態を変革することで、公共機関であれば公益のいっそうの確保、民間企業であれば事業拡大等に繋がる絶好の機会であるともいえる。
以上のことを踏まえて、あなたが所属する組織の事業活動を継続する上で、現時点においてあるいは将来において、公益確保や事業拡大等につながる機会、あるいは乗り越えなければならない事業継続リスクを想定し、それについてどのように対応していくべきか、総合技術監理の視点から以下の(1)~(3)の問いに答えよ。なお、ここでいう総合技術監理の視点とは「業務全体を俯瞰し、経済性管理、安全管理、人的資源管理、情報管理、社会環境管理の5つの管理について、個別最適化だけでなく全体最適化の視点で、また有期の個別プロジェクトの視点だけではなく期限のない長期的な事業継続の視点で解決策を提案する」ことを言う。
(1) 本論文においてあなたが取り上げる事業・プロジェクト等の内容について、以下の項目について記せ。
(問い(1)については、問い(2)とともに答案用紙3枚以内にまとめよ。)
① 事業・プロジェクト等の名称及び概要を記せ。
② この事業・プロジェク卜等が創出している成果物(製品、構造物、サービス、技術、政策等)を記せ。
③ この事業・プロジェクト等の実施体制と社会的役割を記せ。特に社会的役割については公益性に留意して述べよ。
(2) (1)で述べた事業について、公益確保や事業拡大等の機会を活かす上で、あるいは事業継続のために乗り越えなければならない課題について、以下に示す今後予想される変化A~Dの中から重要度の高いもの2つを選んで、それぞれについて下記の①~③に関して述べよ。
(今後予想される外部の変化)
A:法制度あるいは社会的通念の変化
B:政治あるいは経済情勢の変化
C:自然条件の変化
D:国民意識や価値観、嗜好性などの変化
(顕在化が懸念される事項)
①それらが顕在化した場合に組織の事業活動に及ぼす影響の大きさ
②それらが顕在化する確率・可能性の高さ
③それらが顕在化した段階で、事業活動への影響をできるだけプラスにするために取れる方策
(3) (2)であげた変化に伴う影響ができるだけ事業活動にとってプラスになるように現段階から取り組んでおくべき内容について、予想される変化ごとに、下記の①~③にそって述べよ。
(問い(3)については答案用紙2枚以内にまとめよ。)
①現段階から取り組んでおくべき内容
②そのために必要となる条件
③その条件をできるだけ満たすために、全体最適化の視点で取るべき対応
2023(令和5)年度作問
I-2
COVID-19(新型コロナウイルス感染症)は社会経済に多大な影響を与えたが、組織の生産活動にも多大な影響を与えている。大部分の組織において、感染拡大を防止するために出勤停止や交代勤務、テレワークなどの勤務体制の変更やパネルやシート等を用いたパーテーション設置を行った。これらによって生産性は少なからず低下したが、これは安全管理(感染防止)と経済性管理(業務進捗等)のトレードオフといえる。また勤務体制変更に伴って、組織管理者が進捗状況を把握しにくい、若手等を教育指導しつつ業務を進めることがしにくいといった問題が顕在化した組織も多かったが、これらも安全管理と情報管理や人的資源管理のトレードオフといえる。こういった様々なトレードオフがデメリットとして捉えられ、コロナ禍がある程度終息すると、テレワークをやめるなど従前の勤務体制に戻した組織が多いようである。
その一方でコロナ禍終息後もテレワークを継続している組織も少なくない。デメリットが最初から小さかったという場合もあるし、業務改善等でデメリットを最小化し、メリットを最大化したという場合もある。働き方改革やコロナ禍を通したワークライフバランスの考え方の変化などを踏まえると、それは組織の競争力向上につながることも考えられる。
このように、パンデミックに限らず、災害や国際紛争、経済恐慌など様々な異常事象(極めてまれにしか発生しないが影響が極めて大きい事象。カタストロフ的事象)が発生した場合、一時的に生産性等を犠牲にして安全優先で対応する場合もあるし、それが長期化すれば業務体制や組織体制を変更して「新たな働き方」を模索して行かざるを得ない場合もあると思われる。そしてそれは中長期的には組織の競争力の向上あるいは低下につながっていくことも考えられる。
ここでは、あなたがこれまでに経験した、あるいはよく知っている事業又はプロジェク卜(以下「事業・プロジェクト等」という。)を1つ取り上げ、その実施体制や社会的役割等を踏まえ、極めて稀に発生しうるカタストロフ的事象に関して総合技術監理の視点から以下の(1)~(3)の問いに答えよ。ここでいう総合技術監理の視点とは「業務全体を俯瞰し、経済性管理、安全管理、人的資源管理、情報管理、社会環境管理に関する総合的な分析、評価に基づいて、最適な企画、計画、実施、対応等を行う。」立場からの視点をいう。なお、書かれた論文を評価する際、考察における視点の広さ、記述の明確さと論理的なつながり、そして論文全体のまとまりを特に重視する。
(1) 本論文においてあなたが取り上げる事業・プロジェクト等の内容に関して、以下の項目について記せ。(問い(1)については、問い(2)とともに答案用紙3枚以内にまとめよ。)
① 事業・プロジェクト等の名称及び概要を記せ。
② この事業・プロジェク卜等が創出している成果物(製品、構造物、サービス、技術、政策等)を記せ。
③ この事業・プロジェクト等の実施体制と社会的役割を記せ。
(2) 新型コロナ感染症拡大に際してとった、あるいはとっている対応について、以下の項目について記せ。(問い(2)については、問い(1)とともに答案用紙3枚以内にまとめよ。)
① 実際にとった、あるいはとるべきであった対応の内容
② それによって事業・プロジェクトが受けた影響
③ その影響を最小化するために取った、および/あるいは取るべきであった対応
(3) (2)の経験を踏まえて、今後発生する可能性のあるカタストロフ的事象について、以下の項目について記せ。(問い(3)については、答案用紙2枚以内にまとめよ。)
① 想定するカタストロフの内容(ただしパンデミックは除く)
② (2)において記したコロナ禍における実際の経験を踏まえた、カタストロフ的事象に遭遇した場合に備えて取っておくべきと考える対応
③ 上記②のために現時点において開始しておくべきと考える対応