このページでは技術士第一次試験の基礎科目・適性科目・専門科目について、試験対策の解説をしています。

答案用紙 フォーム

答案用紙はマークシートです。
実際の答案用紙と同様のPDFファイルです。模擬練習用答案用紙にお使いください。

失格規定に注意!

受験番号を正しく記入・マークしていないと失格となります。
このような試験そのものとは関係ないことでこれまでの努力が水の泡になっては悔やんでも悔やみきれません。失格になるだけでなく、採点もしてもらえませんから、次年度試験の参考にもなりません。
失格規定に係る事項については、問題用紙の表紙部分および答案用紙に書いてありますので、試験に取りかかる前に確認してください。見過ごしり、他の事に気を取られていて注意を聞いていなかったなどと言っても取り合ってもらえません。問題を解くだけでなく、受験に関する規定全てをクリアして初めて合格だということを肝に銘じてください。
また、受験番号欄を最初に記入してください。受験番号をマークシートでも記入しないといけないので時間がかかり、これを後回しにすると試験終了間際あるいは終了後に記入する時間がなくなったり、記入を忘れて提出してしまったりする可能性があります。
試験の本質的な目的とは無関係に思えることでも、それが試験ルールの1つとして事前に周知されたものである以上、守らねば失格にされても文句は言えません。くれぐれも注意してください。

Ⅰ 基礎科目

科目の概要と効果的な対策
(1) 科目の概要

 基礎科目は科学技術全般の基礎知識を問います。問題レベルは理工系4年制大学の専門教育課程程度で、設計・計画、情報・論理、解析、材料・化学・バイオ、環境・エネルギー・技術の5分野から6問ずつ出題され、各分野3問ずつ、計30問中から15問を選択解答します。

 選択問題数を特定の分野に偏らせる(たとえば設計・計画から4問、解析からは2問それぞれ解答)ことはできません。

 試験時間は1時間です。1時間で15問ですから、1問あたり4分で解かなくてはならず、解答問題の選択にも解答にもあまり時間がかけられません。

 基礎科目出題傾向のポイントは以下のように整理されます。

  • 大学で教えている内容が出題される
    基礎科目はもともと基礎知識ですので実務との縁はあまりないのですが、専門科目も実務で使う知識ではなく、大学で教えている知識を問うという点をしっかり認識してください。
  • 応用問題が多い
    平成17 年度から顕著になった傾向で、丸暗記で対応できるような問題ではなく、基礎レベルではあっても、知識を使いこなす能力を重視しているということだと思います。
  • 過去問題からの出題がある
    平成23 年度技術士分科会で50%程度過去問題を引用可と決めてから、積極的に過去問題を引用出題するようになりました。
(2) 効果的な対策
①力を入れる分野を絞ってしまう

 5分野のうち、誰でも得点しやすいのは設計・計画と環境・エネルギー・技術で、それに次いで情報・論理です。材料・化学・バイオや解析は、そういった方面が得意な人はいいですが、そういう人は少ないようです。
 まずは過去問題を解いてみれば得意分野がわかると思いますので、自分で得点源にできそうな分野を3つくらい選んで、これを集中的に勉強して、あまり得点できそうにない分野は思い切って最初から捨ててしまってもいいでしょう。

②過去問題をしっかりと

 技術士分科会議事録やこれまでの出題実績からみて、今年度も相当数の過去問題引用出題が続くと予想されます。
 各分野少なくとも1問以上、おそらく2問から3問の過去問題引用出題があるでしょうから、それに対して80%の確率で正解できれば、合格基準の50%を簡単にクリアできます。
 過去問題引用の内容としては、こまでの出題傾向を参考にすれば、以下のような引用が考えられます。

  1. 問題文も選択肢も全くあるいはほぼそのまま
  2. 問題文は全くあるいはほぼそのままで、選択肢もそのままだが順序が変わっている。
  3. 条件等が一部変えてある。たとえば数値であったり統計情報であったりといったものが変えてある。
  4. 類似問題。引用元の問題をベースにアレンジしてあるので、新しい問題としての考え直しに近くなる。

 上記1と2は過去問題と正解を丸暗記していても正解できるでしょうが、3はそうはいきません。4はさらに正味の実力が必要になります。
 従って、過去問題を正解と解説とセットでよく勉強しておく必要があると思います。つまり、過去問題を教材として、正解選択肢はなぜ正解なのか、誤った選択肢はなぜ誤っているのかをしっかり考え理解するようにします。少なくとも「何番の選択肢が誤り」ではなく、「こういうことを書いてある選択肢が、こういう理由で誤り」がベストです。
 手間と時間はかかりますが、何を勉強したらいいのかよくわからない基礎科目で闇雲に勉強するよりははるかに効率がいいと思いますし、たとえばシステム信頼性の問題でも出題形式は多種多様にあるわけですから、どんな出題のされ方があるのかがわからないというよりも、過去問題をおさらいしておけばいいというほうがずっと楽です。
 なお、何年度試験の過去問題を引用したかを整理してみると、3~5年前の問題が引用しやすいので、狙いどころといえます。

③サービス文章題を優先する

 過去問題の次に得点しやすいのは文章題です。
 基礎科目の問題は、主な問題タイプとして①文章題、②計算問題に分けられます。文章題と計算問題の区別は、正解選択肢がどうなっているかを見ればすぐにわかります。 

(文章題の問題)
次の中で誤っているものはどれか
 ①・・・・・・・・・・
 ②・・・・・・・・・・
 ⑤・・・・・・・・・・

…問題文はごく短い

…選択肢が文章になっている

(計算問題の問題)
 次の・・・・・・
  ・・・・・・・・・
  ・・・・・・・・・
  ・・・・・・・・・

 ①0.1 ②0.2 ③0.3 ・・・・ ⑤0.5

…問題文が長い



…選択肢が数値になってい
る

そして文章題はさらに①-1常識感覚で解ける問題と、①-2知識がないと解けない問題に分けられます。合格率が高い年は①文章題、特に①-1のサービス文章題が多くなる傾向があります。

問題の種類解説優先度
文章題サービス文章題感覚で解ける◎
知識文章題知らないと解けない△
計算題サービス計算題簡単な計算で解ける○
セオリー計算題知っていれば簡単に解ける○
一般計算題知らないと解けない×

 そこで、過去問題以外では、文章題を優先して探しましょう。そして文章題の中から①-1サービス文章題を探して、これを手早く解いていきましょう。

④セオリー計算問題で補う

 まずは過去問題、次にサービス文章題を優先するわけですが、その次に狙い目なのは、セオリー計算問題です。計算問題の中には、よく出題されるセオリー的な計算方法を知っていれば簡単に解ける問題が多くあるのです。知識を必要とする文章題は「知っているか知っていないか」だけの勝負ですから、考えても無駄です。しかしセオリー計算問題は、いくつかの簡単な計算方法を覚えていれば対応できます。 

⑤あとは当てずっぽうでいい

 前記の過去問題とサービス文章題、セオリー計算問題で合格ライン近くまではいくと思いますから、それでもなお各分野3問選択に至らなかったら、あとは当てずっぽうでもかまいません。それでも正解率20%です。
 もちろん実際には問題文をちゃんと読んで考えて、少しでもそれらしい選択肢を選ぶと思いますから、まるっきりの当てずっぽうばかりでもないと思いますが。
 なお、著しく不得意な分野がある場合、1分野なら捨ててしまっても構いません。「0点の分野があると不合格となる」というデマが流されていたこともありましたが、確実に0点の分野があっても合格した人は大勢おり、そういうことはありませんでした。0点の分野があっても不合格にはなりません。無責任なデマに踊らされることなく、効率的に点数を稼ぎましょう。

実際の試験では、次のような手順で解答していくといいでしょう。

  1. 過去問引用問題(として自分が識別できるもの)を探す。あれば、とにかくマークする。
  2. 計算問題は飛ばし、文章題のみについて、サービス問題と通常知識問題(知識を必要とする問題)に分類する。サービス問題とは、自分自身が「これはサービス問題だ」と思った問題(つまり感覚や常識的知識で正解できると思った問題。これにもマークする。
  3. 今度は計算問題に視点を移し、セオリー問題・解き方がわかる問題を探す。これにもマークする。
  4. マークの数を数え、上記1→2→3の優先度で各分野3問を確保できるかどうかを検討する。1で3問そろえば万々歳。1と2で3問そろえば文句なし。それでも3問そろわなければ3に手をつけるといった方針を決める。
  5. 過去問引用問題にとりかかる。過去問題とどう内容が変えてあるかに注意が必要である。中には過去問題をそのまま飲用しているように見えて、実は数字だけこっそり変えてあるような問題もある。
  6. サービス文章題を解く。こういう問題は深く考えないほうがいい。さっと読んでイメージで決めていく。
  7. セオリー問題を解く。
    セオリー問題は解き方さえ知っていれば時間はかからないはずである。
  8. 以上のようにしてもなお3問が確保できない分野は、残りを当てずっぽうで解いていく。何らかの知識を持ち合わせている選択肢をつぶしていったりして、5択から4択、3択、2択へとできるだけ絞り込み、正解率を上げるようにする。
解答に必要な知識
(1) 設計・計画
【分野の傾向】

 出題分野ごとの出題履歴をまとめると下表のようになります。

出題分野 \ 年度20
09

10

11

12

13

14

15

16

17

18

19

20

21

22

23

24

25
信頼工学システム
信頼性
 ○○○ ○○○○○○○
その他
信頼工学
○       ○○○○○
最適化コスト
最小化
○○       ○○○
利益
最大化
  ○○  ○○ ○○○○
待ち行列  ○ ○ ○○○
工学基礎、設計基礎○○○○○○○○○○○○○
ネットワーク工程 ○  ○ ○ ○
品質管理、統計管理   ○○ ○○○○○○○
ユニバーサルデザイン、人に優しい設計○  ○ ○  ○○○○
PL法、設計責任    ○ ○○ ○
【分野の基本対策】
  • 近年の傾向として、工学基礎・設計基礎の出題が増えてきており(2024年度は3問、2025年度は4問)、その一方でネットワーク工程やPL法・設計責任は出題されなくなっています。(ただ待ち行列も5年ブランクのあとで出題されたので油断はできません)
  • この傾向から考えると2026年度は、工学基礎・設計基礎と品質管理・統計管理、ユニバーサルデザイン等が6問中3問以上出る可能性が高く、過去問題が引用されるか、引用でなくても似たような選択肢内容が予想されますので、過去問題を理解しながら頭に入れましょう。
  • 信頼工学と最適化は計算方法さえ知っていれば簡単に解けるセオリー計算問題が主ですが、2023年度は信頼工学が2問出題された一方で最適化が出題されず、逆に2024年度と2025年度は最適化が出題された一方で信頼工学が出題されませんでしたので、2026年度は信頼工学、特にシステム信頼性が要注意です。また最適化はコスト最小化と利益最大化を準備しておくといいでしょう。
  • なお、過去問題流用は毎年2~3問あり、比較的近い2~5年前の問題を流用することが多いようです。
【分野の基礎知識】
設計理論

常識・知識問題に関連した知識をざっとまとめると、下記のようになります。

  1. 基本概念
    • 設計とは・・・・概念をモノの形にし、その作り方を具体的に指示すること、モノを作るために必要な情報を全て作り出すこと
    • 思考展開:要求機能→機能→機構→構造
    • まず作ろうとするモノを明確にする。目的がなければ設計ではない。
    • 設計には、創造的設計(前例なし、新たに設計:試作品・実験装置など)と定型的設計がある。
  2. 設計活動・基本工程
    • 広義の設計活動:企画→設計→製作→販売→使用→後対応
    • 基本工程(工業製品):基本設計→詳細設計→生産設計→製作
  3. 創造的設計
    • 創造設計原理:着想を得る段階→着想を発展させる段階
    • 着想を得る方法:水平法、対話法、ブレーンストーミング法、KJ法、TRIZ
    • TRIZ(トゥリーズ):発明問題解決理論
    • 着想を発展させる方法:思考演算法、仮想演習、思考探索
  4. 定型的設計
    • 設計マニュアルが重要(効率的な設計のノウハウ)
    • CAD:コンピュータ支援設計/CAM:コンピュータ支援加工
    • CADとCAMの統合:設計時から生産技術と融合させる設計手法:コンカレントエンジニアリング
    • CAE(コンピュータ支援エンジニアリング:数値計算で技術検討を支援)、CIM(コンピュータ統合型加工システム)もある
  5. 社会的責任
    • PL法:製造物責任法・・・・製品に内蔵される危険・副作用傷害に配慮する義務
    • 過失証明が欠陥証明になった・・・・消費者は、(1)欠陥がある(2)そのせいで損害の2点のみ証明すればOK
    •  工業製品のみ(農作物・電気・ソフトは別)
    •  外国でも適用される
    • ライフサイクルアセスメント:製品のライフサイクル全般にわたる、環境負荷の評価手法
    • ライフサイクル:(製品が企画され、設計・製作され、使用されて消耗するまでの「モノの一生」
    • ゼロエミッション:社会全体で廃棄物をゼロにしようとする構想 ある産業活動による廃棄物を他の産業活動の材料にする等する
    • バリアフリーとユニバーサルデザイン:対象者
    • バリアフリーは高齢者・身障者(弱者)が対象
    • ユニバーサルデザインは外国人なども含めたあらゆる人が対象
システム信頼性

毎年のように出題されていますので、ぜひ理解しておいてください。直列と並列の2つの計算式を覚えておけば大丈夫です。

たとえば、ある情報が回路A→回路B→回路Cを経て伝達されるとします。それぞれの回路が正常に動作すれば正常な情報伝達ができますが、たまに異常動作をして伝達できないこともあります。この正常動作する確率が信頼性です。

今、回路Aの信頼性が90%としましょう。つまり、100回の情報伝達をするとき、1回は伝達不良を起こしてしまうということになります。回路B、回路Cも信頼性が90%であったとすると、全体の信頼性はどうなるでしょう。
上図のような配列を直列といいますが、直列のときの信頼性は、それぞれの信頼性をかけあわせたものになります。すなわち、90%×90%×90%=0.9×0.9×0.9=0.729≒73%となります。

ここで、回路Bを2回線設けて、回路Bが駄目な場合は回路B’を通って伝達するようにしてみます。

このような配列を並列といいます。この部分の信頼性は、回路Bも回路B’も同時に不良動作を起こさない限り、情報は伝達できるのですから、それぞれの不良動作確率(1-信頼性)をかけあわせ、それを1から引いたものになります。つまり、1-(1-0.9)×(1-0.9)=0.99=99%となります。並列は、並べれば並べるほど信頼性はアップします。

全体の信頼性について見てみましょう。回路Bの部分の信頼性が並列化により99%になりましたから、90%×99%×90%=0.9×0.99×0.9=0.802≒80%となり、全体の信頼性もアップしています。
つまり、こういうことです。

●直列システムの稼働率=システムaの稼働率×システムbの稼働率
●並列システムの稼働率=1-(1-システムaの稼働率)×(1-システムbの稼働率)
●直列より並列のほうが信頼性が高い

このように、システムの信頼性をアップするための方法の1つとして、同一機能を有するユニットを複数設けるというものがあります。これを冗長化といい、直列型システムを並列型システムにすることで信頼性を向上させることを並列冗長化といいます。

2023(R5)年度問題

3個の同じ機能の構成要素中2個以上が正常に動作している場合に、系が正常に動作するように構成されているものを2/3多数決冗長系という。各構成要素の信頼度が0.7である場合に系の信頼度の含まれる範囲として、適切なものはどれか。ただし、各要素の故障は互いに独立とする。

① 0. 9以上1.0以下
② 0. 85以上0.9未満
③ 0. 8以上0.85未満
④ 0. 75以上0.8末満
⑤ 0. 7以上0.75末満

(解説)
「2個以上」ですから2個もしくは3個が○であればOKです。
○○○(3個とも正常動作)…0.7×0.7×0.7=0.343
○×○、○○×、×○(3個中2個正常動作)…0.7×0.7×0.3=0.147×3パターン=0.441
合計して0.784なので④が該当。正解は④です。
数は少ないので、このようにして計算してしまうと手っ取り早くなります。

2014(H28)年度問題

図に示される左端から右端に情報を伝達するシステムの設計を考える。図中の数値は、構成する各要素の信頼度を示す。また、要素が並列につながっている部分は、少なくともどちらか一方が正常であれば、その部分は正常に作動する。
システムBのシステム全体の信頼度を、システムAのシステム全体の信頼度と同じにするためには、システムBの各要素の信頼度Xをいくらにすれば良いか。次のうち最も近いものを選べ。なお、システムBを構成する各要素の信頼度は同じであるとする。

システムA

システムB

① 0.87   ② 0.90   ③ 0.93   ④ 0.96   ⑤ 0.99

(解説)
システムAの信頼性は、並列部が1-(1-0.9)×(1-0.9)=0.99で、これと0.92つの直列ですから、0.9×0.99×0.9=0.80となります。
システムBは信頼性Xが3つ直列なので、X・X・X=X3=0.80となります。つまり、X=0.801/3なのです。三乗根の出せる電卓があれば、0.801/3=0.93とすぐ出ますので、正解は選択肢(3)とわかります。
電卓がなければ、次のようにすれば暗算でも解けます。
システムA、Bを比較すると、並列が入っている分だけシステムAのほうが信頼性が高いものになっています。にもかかわらず全体の信頼性が同じということは、システムBは個々の信頼性がシステムAより高いということです。これで選択肢①と②は消えます。
システムAの信頼性は、0.9×0.99×0.9ですが、0.9×0.9=0.81なので、「0.81×0.99でだいたい0.8」と暗算できます。
よって、システムBの信頼性はX3=0.80で、X=0.801/3です。
【方法1:トアイアル計算する】
ここで残った選択肢③~⑤の真ん中あたりの0.95で試算します(0.96でもいいのですが、暗算しやすい0.95にします)。
A×0.95ということは、A-A×0.05ということです。0.95×0.95=0.95-0.95×0.05≒0.95-0.048くらいなので、0.9くらい。
0.9-0.9×0.05=0.9-0.045=0.855くらい。これではシステムAの0.8より高すぎます。
よって答えは0.90より大きく、0.95より小さい選択肢で、これは③しかありません。
【方法2:電卓を使う】
ここでは、持込可能なメモリ・関数機能のない電卓(100円ショップの電卓と同じような電卓)を使って解いてみます。
電卓は、数値を入力したあとに√(ルート記号)を押せば、平方根、すなわち1/2乗の答えが出ます。ここでもう一度ルートを押すと、ルートのルート、すわなち1/2乗×1/2乗=1/4乗が出ます。ちなみにもう一度ルートを押すと、1/16乗が出ます。0.801/3ということは、0.801/2と0.801/4の間になります。そして0.80を入力したあとルートを1回押せば0.801/2が、さらにもう1回押せば0.801/4が得られます。やってみると、0.801/2=0.894、0.801/4=0.946で、はこれらの間にあることがわかります。この条件にある選択肢は②と③しかありません。0.801/2=0.894と0.801/4=0.946を平均すると0.92で、③に近いので③が答えです。
システムAの信頼性は、直列・並列の式さえ知っていればできますから、これも簡単です。あとは、システムBの信頼性がX3であると分かればいいのですが、これも直列の式さえ知っていればできるはずです。
問題は、X=0.801/3とわかってから、三乗根をどうやって算出するかではないかと思います。この問題はトライアル計算でも十分対応できますが、できれば電卓を使えたほうが効率的です。

2005(H17)年度問題

下図は、システム信頼性解析の一つであるFTA(Fault Tree Analysis)図である。図で、記号(a)は、その下流(下側)の事象が同時に生じた場合に、上流(上側)の事象が発現することを、記号(b)は、下流の事象のいずれかが起きた場合に上流の事象が発現することを意味する。事象Aが発現する確率に最も近い値を選べ。最下段の枠内の数値は、最も下で起きる事象の発現確率を表す。なお、記号の下流側の事象の発生はそれぞれ独立事象とする。

① 0.200  ② 0.044  ③ 0.048  ④ 0.203  ⑤ 0.204

(解説)
(1段目)左下:0.1 OR 0.1→1-(1-0.1)×(1-0.1)=1-0.9×0.9=1-0.81=0.19
     その右:0.2 AND 0.2→0.2×0.2=0.04
(2段目)上記より0.19 OR 0.04→1-(1-0.19)×(1-0.04)=1-0.81×0.96=0.2224
(3段目)上記より0.222 AND 0.2→0.222×0.2=0.0444
よって正解は②。
フォールトツリーという実務技術が出てきましたが、何をやっているのかさえわかれば、簡単な問題です。
ANDとORの解説が書いてありますが、システム信頼性のANDは直列を、ORは並列を表すことがわかっていれば問題ありません。●AND■は●×■、ORは1-(1-●)×(1-■)です。

信頼性88%のシステムがある。このシステムと並列に組み合わせて信頼性99%以上のシステムを作るには、次のどのシステムを組み合わせればよいか。
 ① 信頼性90%
 ② 信頼性91%
 ③ 信頼性92%
 ④ 信頼性93%
 ⑤ 信頼性94%

答えはこちら

並列システムの信頼性は、1-(1-システムAの信頼性)×(1-システムBの信頼性)。
たとえば信頼性90%のシステムを2つ並列に組み合わせると、その信頼性は、1-(1-0.90)×(1-0.90)=1-0.1×0.1=1-0.01=0.99=99%となる。
問題では、88%のシステムと何かを並列にして99%なので、1-(1-0.88)×(1-X)=0.99。よってX=1-(1-0.99)÷(1-0.88)=0.917。
よって、正解は92%で③。1-(1-0.88)×(1-0.92)=0.9904>0.99。

待ち行列

サービス窓口における「順番待ち」を数式化したものです。
重要な要素に、到着分布(列に到着する客の数と時間の関係)やサービス分布(サービスの数と時間の関係)がありますが、出題される場合は、単純化するため、到着分布はポアソン分布に従い、サービスに要する時間は指数分布に従うものとするはずです。すなわち、まとまって到着したり、数を溜めてからいっせいにサービスしたりするのではなく、到着もサービスも、だらだらと一定の調子で行われるということです。
こういった条件で成立する、もっとも単純な待ち行列数学モデルは、次のようなものです。
 単位時間当たりの到着数:λ
 単位時間当たりサービス処理数:μ
 ρ=λ/μ
とした場合、
●システム内にn人の客がいる確率
  Pn=ρn(1-ρ)
●客が待たずにサービスを受けられる確率
  Pempty=1-ρ
●客が待たなければならない確率
  Pfull=ρ
●システム中にいる平均客数
  L=ρ/(1-ρ)=λ/(μ-λ)
●待っている客数の平均値
  Lq=ρ2/(1-ρ)
●客がシステム中に滞在する平均時間
  W=1/(μ-λ)
●客がシステムに到着してからサービスを受けられるまでの平均待ち時間
  Wq=λ/{μ(μ-λ)}
といったような数式が成り立ちます。
なお、実際の試験では、数式があらかじめ示されると思われますので、上式を覚える必要はないと思います。与えられた式で素直に代入し計算すればいいと考えましょう。

2025(R07)年度問題

ある遊園地に1台の入場券売り場があり,ここで入場券を購入するために到着する訪問者の数は, 1時間当たり平均36人のポアソン分布に従う。また,この売り場での1人当たりの処理に要する時間は平均50秒の指数分布に従う。このとき,訪問者が入場券売り場の列に並んでから処理が終了するまでの系内に滞在する時間の平均値として,最も近い値はどれか。
 トラフィック密度(利用率) = 到着率÷サービス率
 平均系内列長=トラフィック密度 ÷ (1-トラフィック密度)
 平均系内滞在時間=平均系内列長 ÷ 到着率

 ① 0秒    ② 25秒    ③ 50秒    ④ 75秒    ⑤ 100秒

(解説)
問題文より「到着率」は36(人/h)である。また、「サービス率」について、題意より1人50秒であるから、1時間(60×60秒)当たりの処理人数は60×60/50秒=72(人/h)となる。
トラフィック密度(利用率)=36 ÷ 72 = 1/2
よって、平均系内列長=1/2 ÷(1-1/2)=1
求める平均系内滞在時間は、
平均系内列長÷到着率=1÷(36(人/h))= 60×60(秒)/36人=100(秒)/人
となり、正解は⑤

2002(H14)年度問題

あるコンビニエンスストアには、12:00~13:00の間に90人の客が来店する。この店にはレジ1台が設置されており、会計処理に要する時間は客1人当たり平均0.5分である。このとき、客がレジに並んでから会計が終了するまでの平均の時間は何分か、次のうちから答えよ。ここでは、単位時間当たりに客が訪れる数の分布はポアソン分布に従い、会計処理に要する時間は指数分布に従うものとする。なお、本問題に関係した公式を次に示す。

平均応対時間(待ち時間+処理時間)=1/(1-ρ)・1/μ

ここで、μ:単位時間当たりの平均処理人数、ρ:処理率(=λ/μ)、λ:単位時間当たりの平均到着者数である。

① 0.5(分)  ② 1.0(分)  ③ 2.0(分)  ④ 3.0(分)  ⑤ 5.0(分)

(解説)
平均対応時間W=1/(1-ρ)・1/μとしていますが、ρ=λ/μを代入すれば教科書通りのW=1/(μ-λ)となります。
求められる答えの時間単位が「分」なので、単位時間を1分とします。
単位時間当たり平均到着数λ=90人/時=1.5人/分
単位時間当たり平均処理人数μ=1人/0.5分=2人/分
よって、対応時間W=1/(μ-λ)=1/(2-1.5)=1/0.5=2分
問題文に示された式をそのまま使う場合、処理率ρ=λ/μ=1.5/2=0.75
平均応対時間=1/(1-ρ)・1/μ=1/(1-0.75)×1/2=1/0.25×1/2=4×1/2=2分
となり正解は③

受付窓口が1つしかない博物館に、1時間当り300人の割合で来館者がある。受付に平均10秒かかるとして、受付窓口の列に並んでから受付が終了するまでの平均所要時間は何分か。なお、単位時間当たりの来館者の分布はポアソン分布に従い、受付時間は指数分布に従うものとする。ここで、次の式が成り立つ。
 平均所用時間(待ち時間+受付時間)=1/(μ-λ)
 ただし、μ:単位時間当たり受付人数、λ:単位時間当たり来館者数
① 0.5分
② 1.0分
③ 1.5分
④ 2.0分
⑤ 2.5分

答えはこちら

解答選択肢の単位が分なので、単位時間を1分とする。
受付処理時間が10秒なので、1分あたり処理人数は、60秒/10秒=6人 よって、μ=6
来館者が1時間あたり300人なので、1分あたり来館者数は、300人/60分=5人 よって、λ=5
所要時間=1/(μ-λ)=1/(6-5)=1/1=1。
平均所用時間は1分。よって正解は②。

コスト最小化

何らかの損害を防ぐために、相応のコストがかかります。ここにおいて、コストと見込み損害額(主に発生時の損害額×発生確率)を足したトータルコストを最小にするようなXを求めよ、というものです。
基本式は以下のとおりです。

トータルコストC=コスト+見込み損害額
コスト=係数×変数X
見込み損害額=損害額×発生確率

出題年度変数X係数損害額発生確率計算式
2001安全率
(強度/荷重)
製造コスト
2X/5億円
10億円1/(X+1)C=2X/5+10/(X+1)
2002輸送時間輸送コスト
5X万円
125万円1/(X+1)C=5X+125/(X+1)
2003検査回数検査コスト
20X万円
1000万円1/X2C=20X+1000/X2

いずれも、1項目はaXの形、2項目はXが分母にきています。
これらは、C=コスト+見込み損害額という式さえ立てられれば、トライアル計算してもさほど時間はかかりません。
なお、以下の式を覚えていると微分することもできます。
 y=f(x)/g(x)のとき、dx/dy={f(x)g’(x)-f’(x)g(x)}/g(x)2
ここで、dx/dy=0のときのxは最大・最小を表すので、y=f(x)/g(x)の形にして微分すれば、トライアルすることなくXを求めることができます。
2001年度の問題を解いてみます。

(問題文)
ある人工物における安全率(強度/荷重)をXとする(ただし、X>1)。この人工物の破損による損害や不具合が発生する確率は1/(X+1)であり、損害や不具合が発生した時に被る経済的損害額は10億円である。一方、材料や資材の調達を含む製造コストは2X/5億円である。この場合、トータルコストを最適化するには安全率をいくらに設定したらよいか。

①1.5  ② 2.0  ③ 3.5  ④ 4.0  ⑤ 5.0
  1. トータルコスト計算式を整形する。
    C=2X/5+10/(X+1)={2X(X+1)+510}/5(X+1)
    =(2X2+2X+50)/5(X+1)
    ※このように、必ずaX2+bX+cの形に整形します。
  2. y=f(x)/g(x)に当てはめる。
    f(x)=2X2+2X+50、g(x)=5(X+1)とおく。
  3. 微分する。
    f(x)=2X2+2X+50より、f’(x)=4X+2
    g(x)=5(X+1)より、g’(x)=5 なので、
    dx/dy={f(x)g’(x)-f’(x)g(x)}/g(x)2
     ={(2X2+2X+50)・5-(4X+2)・5(X+1)}/25(X+1)2=0
  4. 整形して因数分解し、Xを求める。
    dx/dy=0なので、分母がどれだけであろうと分子が0。
    さらに分子を5で除すれば、(2X2+2X+10)-(4X+2)(X+1)=0
    =2X2-4X2+2X-4X-2X+50-2=-2X2-4X+48=0
    左辺を-2で除して、X2+2X-24=0
    これを因数分解すると、(X+6)(X-4)=0より、X=4,-6が求められる。
    X>0だから、X=4。正解は④。

ただまあ、トライアル計算のほうが早いかなとも思います。といっても⑤つ全部やっていると時間がかかるので、両端と真ん中をまず計算します。
①:被害10/2.5=4、コスト3/5=0.6、合計4.6
③:被害10/4.5=2.2強、コスト7/5=1.4、合計3.6強
⑤:被害10/6=1.7弱、コスト10/5=2、合計3.7弱
このように暗算でざっと計算しますが、これで③と⑤の間に答えがあることがわかります。
④:被害10/5=2、コスト8/5=1.6、合計3.6
③より④のほうがわずかに小さいので正解は④。

2022(R04)年度問題

ある工業製品の安全率をxとする(x>1)。この製品の期待損失額は、製品に損傷が生じる確率とその際の経済的な損失額の積として求められ、損傷が生じる確率は1/ (l+x)、経済的な損失額は9億円である。一方、この製品を造るための材料費やその調達を含む製造コストがx億円であるとした場合に、製造にかかる総コスト(期待損失額と製造コストの合計)を最小にする安全率xの値はどれか。

① 2.0  ② 2.5  ③ 3.0  ④ 3.5  ⑤ 4.0

(解説)
トータルコストCは、コスト+見込み損害額なので、C=x+9/(1+x)2になります(見込み損害額=損害額÷損害発生確率)。
ここから先は、当てはめ計算と微分計算のどちらかの方法があります。
(当てはめ計算の場合)
 当てはめ計算をする場合は上式にX=3、X=4、X=5・・・・を当てはめてCを算出します。
  x=2.0のとき…C=2.0+9/(1+2.0)2=2.0+9÷9.00=3.00
  x=2.5のとき…C=2.5+9/1+2.5)2=2.5+9÷12.25=3.23
  x=3.0のとき…C=3.0+9/1+3.0)2=3.0+9÷16.00=3.56
  x=3.5のとき…C=3.5+9/1+3.5)2=3.5+9÷20.25=3.94
  x=4.0のとき…C=4.0+9/1+4.0)2=4.0+9÷25.00=4.36
 よってx=2.0のときが最小。よって正解は①。
(微分計算)
C=x+9/(1+x)2
dy/dx=x0=1、9(1+x)-2より(9×-2)(1+x)-2-1=-18(1+x)-3、よって1-18(1+x)-3
 18/(1+x)3=1 ∴ (1+x)3/18=1/1 ∴(1+x)3=18≒2.62 ∴x=1.62
以上により、x=1.62の時が最小。近い選択肢は①。
許可されている電卓では三乗根が計算できないので、当てはめ計算が現実的ですね。

2003(H15)年度問題

製造や建設の過程において検査をX回行うと、不具合の発生する確率は1/X2と推定される。一方、総検査費用は20X万円と推定される。ここで、不具合が発生した場合の損失が1,000万円とすると、検査回数を何回に設定するのが最適かを下記より選べ。

① 2回  ② 3回  ③ 4回  ④ 5回  ⑤ 6回

(解説)
微分で計算します。
(1) トータルコスト計算式を整形する。
 C=20X+1000/X2=(20X3+1000)/X2
(2) y=f(x)/g(x)に当てはめる。
 f(x)=20X3+1000、g(x)=X2とおく。
(3) 微分する。
 f(x)=20X3+1000より、f’(x)=60X2
 g(x)=X2より、g’(x)=2Xですから、
 dx/dy={f(x)g’(x)-f’(x)g(x)}/g(x)2={(20X3+1000)*2X-60X2*X2}/X4=0
(4) 整形して因数分解し、Xを求める。
 dx/dy=0なので、分母がどれだけであろうと分子が0。よって、
 (20X3+1000)*2X-60X2*X2=0
 =40X4+2000X-60X4=-20X4+2000X=0
 左辺を-20Xで除して、X3-100=0
 よって、X3=100。
 三乗根が計算できる電卓があれば1001/3=4.64としてすぐ計算できる。
 なくても、43=64、53=125は暗算でできるので、4<X<5。
 検査回数なので、Xは計算値を下回らない最小の整数。よってX=5。正解は④。

ある製品の強度をX(MN/m2)とする。この強度を有する製品を製作するのに要するコストは、500X万円である。一方、この製品が破損した場合に被る経済的な損害額は、4500万円で、破損の確率は1/(1+X)と見込まれている。トータルコストを最適化するには、強度をどれだけに設定するのがよいか。

① 1MN/m2  ② 2MN/m2  ③ 3MN/m2  ④ 4MN/m2  ⑤ 5MN/m2

答えはこちら

トータルコストなので、コストV=500X+4500/(1+X)。
数字が大きいので計算を楽にするため、コストの単位を百万円にすると、
V(百万円)=5X+45/(1+X)。

解1:微分を使う

  1. トータルコスト計算式を整形する。
    C=5X+45/(1+X)={5X(X+1)+45}/(X+1)=(5X2+5X+45)/(X+1)
  2. y=f(x)/g(x)に当てはめる。
    f(x)=5X2+5X+45、g(x)=X+1とおく。
  3. 微分する。
    f(x)=5X2+5X+45より、f’(x)=10X+5
    g(x)=X+1より、g’(x)=1なので、
    dx/dy={f(x)g’(x)-f’(x)g(x)}/g(x)2
       ={(5X2+5X+45)・1-(10X+5)・(X+1)}/(X+1)2=0
  4. 整形して因数分解し、Xを求める。
    dx/dy=0なので、分母がどれだけであろうと分子が0。よって、
    (5X2+5X+45)・1-(10X+5)・(X+1)=0
    =5X2-10X2+5X-10X-5X+45-5=-5X2-10X+40=0
    左辺を-5で除して、X2+2X-8=0
    これを因数分解すると、(X+4)(X-2)=0より、X=2,-4が求められる。
    X>0だから、X=2。よって正解は②。 

解2:トライアル計算する

計算式がパッと出てこなければ簡単な計算なのでトライアルしたほうが早い。
(5X2+5X+45)/(X+1)に当てはめ計算すると、
 X=1のとき、C=27.50
 X=2のとき、C=25.00
 X=3のとき、C=26.25
 X=4のとき、C=29.00
 X=5のとき、C=32.50
X=2のときが最小なので正解は②。

利益最大化

たとえば工業立地について考えてみます。用地や工業用水に供給可能な限界がある中で、誘致可能な工業の種類がいくつかあるとします。このような場合において、最大の生産額をあげるためには、どの工業をどれだけ誘致すればいいでしょうか。
このことを考察するための条件式として、
 Σ(各工業が必要とする供給物の量×各工業の誘致量)≦供給物の限界(条件)
 各工業の誘致量≧0
があります。また、目的式は、
 生産額=Σ(各工業の生産額×各工業の誘致量)
となります。このように、制約条件式、目的式とも一次式で表すことのできる場合、この方法を線形計画法といいます。
扱う要素(工業、供給物)の種類が2つであれば、図解法によって最適解を導くことができます。
次のような例を考えてみます。工業A用地の制限は240ha、用水の制限は100t/日であり、それに対して工業Aは用地40ha、用水25t/日を、工業Bは用地50ha、用水15t/日を必要とします。また生産額は、工業Aが30百万円、工業Bが25百万円です。

供給物\工業種類工業A工業B制約条件
用地(ha)4050240
用水(t/日)2515100
生産額(泊万円)3025-


工業A、工業Bの誘致量(立地単位数)をそれぞれX、Yとすれば、条件式は、
 (条件A)40X+50Y≦240
 (条件B)25X+15Y=100
 (条件C)X≧0、Y≧0
また目的式は、総生産額をPとすれば、
 P=30X+25Y
となります。
わかりやすく、条件式と目的式をY=aX+bの形にしてみましょう。
 (条件A) 40X+50Y≦240 → Y≦-40/50X+240/50=-0.8X+4.8
 (条件B) 25X+15Y≦100 → Y≦-25/15X+100/15=-1.67X+6.67
 (目的式) 30X+25Y=P  → P=-30/25X+P/25=-1.2X+P/25

条件式をグラフにすると、右図のようになります。条件Aと条件Bによって制限された領域が、用地・用水の制限上限を満足する領域です。
目的式は破線で示した傾きを持つ直線で、様々な値を取りますが、原点から離れるほど(図中黒矢印の方向に行くほど)生産額Pが大きくなっていきます。しかし条件満足領域から外れてはいけません。
よって、条件を満足しつつ最大の生産額となるのは、条件Aと条件Bのグラフ交点を通るときであることが、図から読み取れます。
これは、目的式の傾きが条件Aと条件Bの中間にあるためで、もし目的式の傾きが条件Bより急であれば、条件BグラフとX軸の交点(すなわち、Y=0より、工業Bの誘致数は0で工業Aのみ誘致)が、また逆に目的式の傾きが条件Aより緩やかであれば、条件AとY軸の交点(X=0より、工業Bのみ誘致)が、それぞれ最大生産額を見込める条件となります。
さて、図のような場合、条件Aと条件Bの交点は、連立方程式を解けば求められます。
 (条件A)Y≦-0.8X+4.8
 (条件B)Y≦-1.67X+6.67
よって、条件A-条件Bとして0≦0.87X-1.87、よってX≧1.87/0.87=2.15となり、Y≦-0.8X+4.8=-0.8*2.15+4.8=3.08となります。
よって生産額は、P=30X+25Y=30*2.15+25*3.08=142百万円となります。
以上、図解法について解説しましたが、図を描かなくても、条件式・目的式をY=aX+bの形で式化すれば、条件A・Bの交点あるいは条件式とXY軸の交点でX、Yを求めることができます。
なお、要素が3つ以上になると図解法では無理で、シンプレックス法などを用いねばならなくなりますが、これは複雑なので出題される可能性は低いと思われます。

2024(R06)年度問題

ある工場で原料A、 Bを用いて、製品1、 2を生産し販売している。製品1、 2は共通の製造ラインで生産されており、 2つを同時に生産することはできない。下表に示すように製品1を1kg生産するために原料A、 Bはそれぞれ1kg、 3 kg必要で、製品2を1kg生産するためには原料A、 Bをそれぞれ2kg、 1 kg必要とする。また、製品1、 2を1kgずつ生産するために、生産ラインを1時間ずつ稼働させる必要がある。
原料A、 Bの使用量、及び、生産ラインの稼働時間については、 1日当たりの上限があり、それぞれ12kg、 15kg、 7時間である。製品1、 2の販売から得られる利益が、それぞれ300万円/kg、 200万円/kgのとき、全体の利益が最大となるように製品1、 2の生産量を決定したい。1日当たりの最大の利益として、最も適切なものはどれか。

製品1製品2仕様上限
原料A[kg]1212
原料B [kg]3115
ライン稼働時間[時間]117
利益[万円/kg]300200-

① 1,200万円
② 1,500万円
③ 1,600万円
④ 1,800万円
⑤ 1,920万円

(解説)
製品 1をx、製品 2 を yすると、原料・ラインの使用上限から、以下の3連立方程式をたてます。
x+2y≦12 …式①
3 x+y≦15 …式②
x+y≦7 …式③
式①と式②から、式①を3倍して
3x+6y≦36 …式①’
 式①’-式②で5y≦21 ∴ y≦4.2
これを式②に当てはめて 3x+4.2≦15 ∴ x≦3.6
しかし式③(x+y≦7)に引っかかるので、y≦4、x≦3とすれば、300×3+200×4=1,700万円となります。ただしこれは選択肢にはありません。
次に式①と式③から、式①-式③でy≦5が導けます。
これを式③に当てはめて x+5≦7 ∴ x≦2
x≦2、y≦5なので、300×2+200×5=1,600万円となります。
次に式②と式③から、式②-式③とすれば、2x≦8 ∴ x≦4
これを式②に当てはめて12+y≦15 ∴ y≦3
x≦4、y≦3なので、300×4+200×3=1,800万円となります。
よって最大のものは1,800万円で④が正解。

ネットワーク工程

1.横線式工程表(ガントチャート)
普通に皆さんが使っておられる(と思う)工程表で、一言で言えばスケジュールを管理するためのグラフです。表形式で、一般的に列は日付、行は各作業です。それぞれの作業がいつからいつまでかかるかをバーで示してあります。これをガントチャートといいます。
工程によってはある工程で出来上がった中間物を別の工程でさらに作業を行なう場合があります(たとえば測量図面を使って設計するなど)が、この相互関係は先に行なう作業の作業完了日から次に行なう作業の作業開始日へと矢印で示されることもあります。
ガントチャートは、タスクガントチャートとリソースガントチャートと言われるものに分類できます。両者とも横軸は時間軸で日付を取ります。
(タクスガントチャート)
タスク(作業)が日程にしたがってどのように消化されていくかを示したもので、よく使われるのはこちらのほうです。
(リソースガントチャート)
リソース(設備や人間など)が、どのような作業をするかを表したものです。たとえば、各行に作業員の名前を書いて、いつどのような作業を担当するのか、そしてそれをいつまでに仕上げなければならないかがわかるようにします。

2.ネットワーク工程表(アローダイアグラム)
アローダイアグラムの例を下図に示します。

各作業は矢印で表され、これをアクティビティといいます。各アクティビティの着手時点・完了時点を○で表し、これをイベントといいます。また各作業名の横の( )内数値は、各作業に必要な日数です。
今、①で一斉に作業をスタートします。
最初に現場立ち入りか何かの申請があって、ここで5日を要します。そのあと測量作業と地質調査作業が平行して進められます。測量は10日で終わり、その整理も2日、合計12日で終りますが、地質調査は現場20日・整理5日で合計25日かかります。
これを受けて設計作業にとりかかります。それまでに設計条件整理などがありますが、これは3日で終るので、ずっと前に終って手待ちの状態になっています。設計作業には30日かかります。
さて、この業務を終らせるには最低何日かかるでしょう?
答えは60日です。①→②→④→⑤→⑥という、下図のルートCが一番時間がかかるので、この所要時間が全体の期間を決定します。

このルートCは、逆に言えば各作業の余裕が全くありません。申請・地質調査・整理・設計のどれかの作業が予定より遅れれば、それは全体工期の遅れに直結します。このような、全体工程の中での余裕(トータルフロート)がゼロである経路を、クリティカルパスといいます。
ここで測量作業に着目すると、測量+整理で12日、地質調査工程は25日ですから、13日の余裕があります。ですから、他に忙しい業務があれば、測量を2,3日休んでも影響はないことがわかります。また、設計条件の整理は27日の余裕があります。ですから、他の作業の合間にぼちぼちやればいいことになります。
再び地質調査に着目すると、増員・現場作業一部外注その他の方法でこの工程を切り詰められれば、全体工期も縮められることがわかります。ですから、地質調査工程の短縮に力を傾注するべきであり、測量作業の短縮化をがんばっても意味がないということになります。
以上のような手法がPERTと呼ばれるもので、プロジェクト期間を最短にするための代表的な工程管理手法です。

リスク管理

リスク = 被害×発生確率 = 何かあったときの影響の大きさ × 何かある確率で、以下のように理解するといいでしょう。

発
生
確
率
↑

C

A

D

B

→ 被害規模

リスクマトリクス

リスクリスクマトリクス図の領域領域内容
高A・顕在化した場合の被害大・発生確率も大。
・リスクの低減を要するが、困難な場合は、リスク回避も検討。
中B・発生確率は低いが被害が大きい。
・発生確率がある値以下なら、リスク移転・リスク保有も検討。
C・発生確率は高いが被害が小さい。日常経験することが多い。
・被害規模がある値以下なら、リスク保有も検討。
低D・組織としてそのリスクを許容してもいい。
  • リスクは、何が何でも低減・削減しなければならないものではない。
    • 影響は小さいが頻繁に起こる問題(報告書の誤字脱字など)は、よほど頻繁に起こるか影響が大きいかしなければ、企業の存在を脅かすほどにはならないので、そのままにしておく(リスク保有)ことも可能。
    • 逆に発生した時の影響は大きいが、その頻度は非常に小さいリスクもあり、極論すれば、巨大隕石の地球衝突などはリスクを保有する以外にない。また、家の火災などは「燃えない家」を作るコストや不便さを考えると、保険をかけておく(リスク移転)ほうが楽。
    • リスクが大きい(影響も頻度も大きい)場合は、たとえば「そんなリスクの大きい商売には手を出すな」というように「リスク回避」を行うこともある。
    • 移転も回避もできず(あるいは適当ではなく)、それを保有できない程度に大きいリスクは、たとえばミスを減らすための企業活動を行うなどのリスク低減を行う。
品質管理
  • 品質とは顧客要求条件の満足。
    • 品質計画:品質目標・品質要求事項を定める活動。
    • 品質改善:品質活動やプロセスの有効性を高める活動。
    • QC7つ道具:特性要因図・チェックシート・パレート図・ヒストグラム・散布図・監理図・グラフ
    • 新QC7つ道具:関連図法・KJ法・系統図法・マトリクス図法・マトリクスデータ解析法・PDPC法・アローダイヤグラム
    • ISO9001:製品の品質保証・顧客満足の向上を目指すための要求事項を規定した国際規格。
システム高信頼化
  • フォールトアボイダンス(Fault Avoidance)
    故障を少なくする。頑強性。たとえば構成部品の品質向上や厳格な設計・テストにより、システム自体に極力故障やバグを発生させない以下のようなアプローチが該当します。
    • 厳格な静的解析とコードレビューの徹底
      組込みソフトウェアやミッションクリティカルなシステム開発において、開発段階でMISRA-Cなどの厳格なコーディング規約を適用し、静的解析ツールと複数人の技術者によるレビューによって、メモリリークや未定義動作などのバグを徹底的に排除する。
    • 高信頼性・高耐久性部品(宇宙・車載グレード)の採用
      宇宙人工衛星や航空機、自動車のECUなどの電子基板において、民生品よりも動作温度範囲が広く、耐放射線性能や耐振性能が高い車載・宇宙グレードの高品質な電子部品を選定し、ハードウェアの物理的故障を未然に防ぐ。
    • 熱設計シミュレーションに基づく冷却性能の最適化
      サーバーやパワーエレクトロニクス機器の設計において、CFD(数値流体力学)解析を用いて筐体内の熱分布を事前にシミュレーションし、ヒートシンクの配置や空冷ファンの風量を最適化することで、熱による部品の劣化や熱暴走のリスクを最小限に抑える。
  • フォールトトレランス(Fault Tolerance)
    故障しても正常機能を保つ。冗長性。たとえば構成部品に故障が発生することを前提とし、故障が生じてもシステム全体としては機能を停止させずに維持し続ける以下のようなアプローチが該当します。
    • サーバーやストレージの冗長化(RAIDおよびクラスタリング)
      データセンターの運用において、HDD/SSDをRAID 5やRAID 6で構成してディスク障害時のデータ消失を防ぐとともに、サーバーをアクティブ・アクティブ、あるいはアクティブ・スタンバイ構成にして、一台がダウンしてもサービスを継続できるようにする。
    • マルチプロバイダによるネットワーク回線の異経路冗長化
      基幹ネットワークの構築において、メイン回線とは異なる通信キャリアの回線をバックアップとして引き込み、さらに物理的な配線経路(管路)も分けることで、万が一の断線や通信キャリアの障害時にも自動で経路を切り替えて通信を維持する。
    • 航空機やプラントにおける多重系制御(トリプルモジュラー冗長:TMR)
      航空機のフライ・バイ・ワイヤや原子力プラントの安全保護系において、同じ演算を行う制御コンピューターを3機(3系統)並列で動作させ、出力結果を多数決(2out-of-3)で決定することで、1系統が誤作動・故障しても正しい制御を継続する。
  • フェールソフト(Fail-Safe)
    故障しても最低限の機能を保つ。システムに故障や異常が発生した際、あらかじめ設定された安全な状態(停止状態など)に移行させる以下のようなアプローチが該当します。
    • 鉄道信号システムにおける赤信号(停止)への自動移行
      鉄道の閉塞信号機や制御回路において、断線や電源喪失などの故障が発生した場合、信号を「進行(緑)」ではなく最も安全な状態である「停止(赤)」に固定するか、列車に自動的にブレーキがかかる回路設計(常時通電による励磁状態の解除など)にする。
    • 高圧受配電設備における遮断器(ブレーカー)のトリップ機構
      工場の受配電回路において、過電流や短絡(ショート)などの異常を検知した際、保護継電器が瞬時に遮断器を作動させて回路を物理的に切り離し、電気火災や変圧器の破損、感電事故といった二次災害を防止する。
    • 産業用ロボットの非常停止回路(セーフティリレーモジュール)
      工場内の自動化ラインにおいて、エリアセンサーが人の侵入を検知した際、、または非常停止ボタンが押された際に、安全認証を受けたセーフティリレーがモーターへの動力を物理的に遮断し、ロボットを即座に安全に停止させる。
  • フールプルーフ(Foolproof)
    人間のミスの影響を抑える。利用者が誤った操作や想定外の扱い(誤操作・勘違い)をしても、事故や故障につながらないようにする以下のようなアプローチが該当します。
    • 誤挿入を物理的に防ぐコネクタ形状の非対称化
      USB Type-AやHDMI、自動車のワイヤーハーネス用コネクタなどにおいて、逆向きや異なる端子への誤接続を防ぐため、物理的に特定の向きや特定の相手としか噛み合わない非対称な形状(Dシェイプやガイドキー)にする。
    • 工作機械や成形機における両手操作式起動スイッチ
      プレス機や切断機などの危険な工作機械において、作業者が片手を稼働部に入れたままスイッチを押して負傷するのを防ぐため、離れた位置にある2つの起動ボタンを両手で同時に押さなければ機械が動作しない制御ロジックにする。
    • 自動車のインバリアント制御(Pレンジ以外でのエンジン始動不可、ブレーキ踏み込み必須)
      AT(オートマチック)車において、シフトレバーが「P(パーキング)」または「N(ニュートラル)」に入っていないとスターターモーターが回らないようにし、さらにブレーキペダルを踏んでいないとPレンジからシフト変更ができないようにすることで、意図しない急発進を防止する。
(2) 情報・論理
【分野の傾向】

本分野は、大きく情報と論理に区分されます。情報の問題は、以前はもっぱらインターネット関連知識(特に情報セキュリティ)に関する問題が出ていましたが、近年はビット・2進数に関する問題が頻出しています。論理の問題は、集合論理や構文図などが出題されています。

【分野の基本対策】
  • 情報通信工学に関する基本知識(特にセキュリティ)とソフトウェア(プログラミング)に関する基礎知識、特にビット・バイト・n進法に関する問題が頻出しています。n進法やアルゴリズム、論理式などは考え慣れていないと手が出ませんので、わからないと思ったら潔く捨てたほうがいいでしょう。
  • 比較的わかりやすいのがベン図と実行時間、ネットワーク工程です。前年度に出ていなければ注意したほうがいいでしょう。
  • 文章題として情報通信工学(情報セキュリティやICT用語)、計算問題として構文図を準備するといいですが、それだけでは十分とはいえないので、もう少し手を広げてがんばって勉強しておくといいでしょう。
  • 過去問題流用は2~3問ありますが、5年以上前の古い問題もよく流用されています。
【分野の基礎知識】
ネット知識

LANやWAN、インターネットとイントラネット、基礎用語(プロトコルやIPアドレス、HTML、URL、プロバイダ、サーバ、ファイアウォール・・・・)といったもの、および電子メールに関する事項を勉強するといいでしょう。

セキュリティ

セキュリティ関連用語をどれだけ知っているかが重要です。
キーワード例としては、ファイアウォール、認証、暗号化、公開鍵・秘密鍵、なりすまし、改ざん、ハッキング・ハッカー、ウィルス、ワクチン、迷惑メール、ランサムウェア、スパムメール、メール爆弾、ソーシャルハッキングなどがあります。

ビット計算

1つの回路に電流を流すか流さないかによって、「オンかオフか」(1か0か)という2つの情報を送る(処理する)ことができます。
これがデジタルデータの基本単位で、「ビット」といいます。1ビット回路の処理量は、1か0かの2つだけです。
回路を2つにすれば、(0,0)、(0,1)、(1,0)、(1,1)、すなわち
 (1) 回路Aが0で回路Bが0
 (2) 回路Aが1で回路Bが0
 (3) 回路Aが0で回路Bが1
 (4) 回路Aが1で回路Bが1
の4つの組み合わせができますから、処理量は4になります。回路が2つなので2ビットになります。
さらに回路を3つにしてみましょう。
 回路A 0 0 0 0 1 1 1 1
 回路B 0 1 0 1 0 1 0 1
 回路C 0 0 1 1 0 0 1 1
の8つの組み合わせができますから、処理量は8になります。回路が3つなので3ビットになります。
つまり、nビットの処理量Nは、N=2n、2のべき乗となるのです。
逆にいうと、Nのデータ数が扱える回路のビット数nは、n=log2N、2を底とした対数値になります。
ちなみに、現在のパソコンは32ビットCPUなので、一度に扱えるデータ量は232=4,294,967,296(約43億)となります。さらにゲーム機で使われている64ビットCPUは、264(約1,846京 )のデータ処理能力があります。さらに余談になりますが、昔の「ファミリーコンピュータ」や、人類初の月面着陸を果たしたアポロ宇宙船のCPUは8ビットで、データ処理量は28=256でした。
このように、ビット数が多くなると処理量(組み合わせ数)は、膨大になるので、2nでなく、nを「情報量」として定義しています。すなわち、nビットの扱える情報量はnであるということです。正確にいうと、nビットの扱える情報量は、nビットの処理量N(=2n)の2を底とした対数値です。

もしnビットの回路が2つあった場合、処理量は2n×2n=22nとなります。情報量はlog222nですから2nになります。同様に回路が3つあった場合、処理量は2n×2n×2n=23n、情報量はlog223n=3nとなります。つまり、処理量の掛け算は情報量の足し算になります。これは高校数学で、べきと対数の単元で習いますね。

2001(H13)年度問題

文字による情報を電子メール等の文字符号で送る場合と、FAX等の文字画像で送る場合の情報量について比較する。ここで、情報量とは、どれだけのものを区別できるかを示す量であり、その単位の1ビットの情報とは、0と1又は白と黒など、2つのうちどちらかであるかを示せることを意味している。2ピットの情報は、1ビットの情報を2つ組み合わせることにより、4つのものを区別することができる。FAXでは32×32=1024の白黒の点配列で漢字を含む日本語の1文字を表すものとすると、この点配列の持つ情報量は1024ビットとなり、この点配列で表せる異なる画像の数は2**1024(注:**はべき乗を表す)となる。この情報を文字画像情報と呼ぼう。
 実際に伝えたい文字の数は65536以下であるものとしよう。これらの文字のどれかということを示す情報は、16ビットあれば十分である。これを文字符号情報と呼ぼう。
 1文字伝えるのに、点配列で表された文字画像情報の情報量は、文字符号情報の情報量の何倍になるか。

① 1倍  ② 16倍  ③ 32倍  ④ 64倍  ⑤ 1024倍

問題文の中でビット定義なども説明しているため長々としたものになっていますが、要は
 1024ビットの情報量は、16ビットの情報量の何倍か
と聞いているのです。
前述のように、nビットの扱える情報量はnですから、1024ビットの情報量は1024、16ビットの情報量は16で、1024÷16=64、正解は④となります。

2002(H14)年度問題

ジョーカーを除くトランプカード52枚のうちから1枚を抜き取った。
・このカードがハートであることを知った時の情報量は
     log24=2bit
 である。
・このカードがキングであることを知った時の情報量は
     log213=3.7bit
 である。
このカードがハートのキングであることを知った時の情報量は次のどれか。

① 1.2  ② 1.85  ③ 3.1  ④ 5.7  ⑤ 7.4

今度は情報量の足し算です。
AND条件(AかつB)は、通常は掛け算になります。ハートである確率は1/4、キングである確率は1/13ですから、「ハートかつキング」である確率は1/4×1/13=1/52になります。
ここでは確率の分母を処理量として、2を底とした対数値である情報量(ビット)にしていますから、「ハートかつキング」の情報量は、処理量の掛け算結果の2を底とした対数値になります。
つまりlog2(4*13)=log252=5.7、正解は(4)になります。
・・・・と、こういったややこしいことをしなくても、処理量の掛け算は情報量の足し算と理解していれば、あっさりと2+3.7=5.7と解けます。間違えて掛け算してしまうと、選択肢(5)になるというワナも用意されています。ビットは掛け算しないと覚えておきましょう。

2004(H16)年度問題

レジスタに正の整数値aを入れ、左に5ビットシフトしてから、aを引く。この結果、レジスタの数値はaの何倍の値となるか、次の中から選べ。
ただし、レジスタ内で数値は2進数として扱われ、上記の操作中であふれは生じないものとする。

① 4  ② 5  ③ 15  ④ 31  ⑤ 33

「レジスタ」を知らないと途方にくれてしまうかもしれませんが、データ格納場所、下駄箱のようなものだとでも思ってください。ただし横には並びますが、縦には1段だけです。箱の位置は「桁」を表します。つまり、1番右の箱は第1桁(1の位)、右から2番目は第2桁(10の位)です。たとえば「1」という数値を1番右の箱に入れたら1、右から2番目の箱なら10、3番目なら100になります。
ただし、入れる数値はビットの基本単位、デジタルデータですから2進数です。
問題は、aを入れるのですが、入れたあとで左に5ビットシフトします。用語が理解できないと何のことかわかりませんが、つまり、5つ左の箱に入れなおしています。ということは、5桁大きくなっています。これが10進数ならa→a×105ということになりますが、2進数ですから、5桁大きくなったということは、a→a×25です。25は32ですから、a→32aになったということです。
問題文では5ビットシフトの後でaを引いていますから、32a-a=31aとなり、もとのaの32倍、正解は④となります。

ディスク装置にアクセスするための4ビットのレジスタがある。
1ビット目には、読み取り許可権が設定されており、ここに信号として1が入力されるとディスク上のファイル読み取りができるようになる。同様に、2ビット目にはファイル作成(新規書き込み)許可権が、3ビット目にはファイル更新(更新書き込み)権が、また4ビット目にはファイル消去権が、それぞれ設定されている。
このレジスタに、10進数の数値13を入力した場合、ファイルの読取・作成・更新・消去のどれが可能な状態になるか。

読取作成更新消去
①可不可可不可
②可可不可不可
③可不可可可
④不可不可可可
⑤不可可不可可
答えはこちら

10進数の13を2進数に変換し、各桁の数値が各ビットに割り当てられた許可の可・不可に対応する。
10進数の2進数変換は、次のようにするとわかりやすい。
10進数の8を2進数に変換してみる。
 8÷2=4 余り 0
 4÷2=2 余り 0
 2÷2=1 余り 0
 1÷2=0 余り 1
というように、2で割っていって、商が0になった時点で終了する。そして、各計算ステップでの余りを右から順に並べる。これが10進数を2進数変換した結果であり、10進数の8は2進数で1000である。
次に問題の10進数の13を2進数に変換してみる。
 13÷2=6 余り 1
  6÷2=3 余り 0
  3÷2=1 余り 1
  1÷2=0 余り 1
となり、余りを右から並べると1101になる。つまり10進数の13は2進数の1101である。右から読取、作成、更新、消去に割り当てられているから、その可否は下表のとおりとなる。よって、作成以外は可能であり、正解選択肢は③となる。

消去更新作成読取
1101
○○×○
2進数

2進数とは
N進数とは、ゼロから数値を増やしていって、Nになったら桁を1つ上げて、元の桁はゼロにリセットするというものです。
私達が普通使っているのは10進数ですね。0、1、2、3・・・・と増やしていって、10になったら、2桁目(10の位)の数値を1つ増やして、1桁目はゼロに戻します。つまり、「10」になります。
では2進数はどうなるでしょう。0、1、ときて、2になったら、2桁目を1つ増やして、1桁目はゼロにします。つまり、
 0、1、2
ではなく、
 0、1、10
となります。
さらに増やしていくと、10の次は1桁目がゼロから1つ増えて1になり、11となります。その次は、1桁目が2になるので、再び2桁目を1つ増やして1桁目はゼロに戻します。
ところがこのようにすると、2桁目が1から1つ増えて2になってしまいます。そこで今度は3桁目を1つ増やして2桁目はゼロに戻します。つまり、
  11+1=12
 →1桁目の2を0にして2桁目を1つ増やす→20
 →2桁目の2を0にして3桁目を1つ増やす→100
となります。このようにして、2進数の数値と10進数の数値を比べてみましょう。

10進数0123456789101112
2進数01101110010111011110001001101010111100

2進数では、10進数の2、4、8、16で桁が上がっていますね。これらはそれぞれ21、22、23、24に相当しますね。10進数でも桁が上がるのは10、100、1000、10000で、それぞれが101、102、103、104に相当しますから、この点は同じです。つまり、N進数ではN1、N2、N3、N4・・・・で桁が上がるのです。

2進数~10進数変換
10進数の数値を2進数に変換するには、次のようにすればできます。
例として、10進数の13を2進数に変換してみます。

(1)
(2)
(3)
(4)

13÷2= 6 あまり 1  ↑
6÷2= 3 あまり 0  ↑
3÷2= 1 あまり 1  ↑
1÷2= 0 あまり 1  ↑

あまりを下から上に逆順に読んで並べる

このように、商がゼロになるまで2(N進数のN)で割って、あまりを(4)→(1)の順に(計算して出てきたとは逆順に)並べます。こうすると「1101」が得られます。これが10進数の13を2進数に変換した答えです。
今度は2進数を10進数に変換します。 これは、Σ(2桁数N-1×N桁目の数値)とすればOKです。
2進数の1101を10進数に変換してみましょう。
  4桁目→2(4-1)=23=8で、ここが1なので8×1=8
  3桁目→2(3-1)=22=4で、ここが1なので4×1=4
  2桁目→2(2-1)=21=2で、ここが0なので2×0=0
  1桁目→2(1-1)=20=1で、ここが1なので1×1=1
  合計して、8+4+0+1=13

2進数は何に使うか
コンピュータは電子機器ですから、回路に電流が流れているか流れていないかの2つに1つです。流れている状態(ON)を1、流れていない状態(OFF)を0とすれば、この組合せで情報が伝達できます。
4つの回路のON/OFFの組み合わせで情報を送ると、
  0000、0001、0010、0011、0100、0101、0110、0111、
  1000、1001、1010、1011、1100、1101、1110、1111
の16通りの情報が流せます。前表のように、これは10進数で10~15にあたります。コンピュータでは、この16通りの情報を16進数で扱います。

16進数10進数2進数
000
111
2210
3311
44100
55101
66110
77111
881000
991001
A101010
B111011
C121100
D131101
E141110
F151111
構文図

構文図は、文法を図化したもので、厳密な、あいまいさのない文法が必要な世界、つまりプログラミングの世界でよく使われます。
最も単純な構文図を下図に示します

文章(文字列)を左から流すと、1文字ずつ流れていきます。枝分かれして、数字の0~9のどれかと合致すると、その先に行きます。文字列が終わっていれば(文章を構成する文字が全部通過したら)終了、そうでなければ戻って、次の文字を枝分かれに流します。
もし文字列の中に条件に合致しない文字、(右の例だと数字以外の文字)が入っている場合、通過できずにエラーとなります。逆に言うと、この構文図に合致する文字列は、数字のみから構成される文字列、つまり「数字」だということになります。次に、図-1のような構文図を考えてみます。ここで、○で囲まれた記号を終端記号といいます。また□で囲まれた記号を非終端記号と呼び、これらは別の構文図で定義されています。ここでは、「数字」は右上の構文図により定義されているものとします。
図-1では、数字のあとに「だ」という文字が無条件にくっついていないと通過できません。ですから、たとえば「123」という文字列は通過できません。
図-2のようにすると、文字なしでも通過できるようになりますから、「123」でもOKになります。しかし「123よ」は通過できません(文字がないわけでもなく、「だ」でもないため)。
そこで、図-3のようにして「あ」~「ん」と濁音・半濁音を「50音」として定義します。その上で、図-4のようにすれば、「123だ」「123よ」「123だよ」「123かもしれない」などが通過できるようになります。構文図の説明が見られるサイトはいくつかありますので、そちらをよく読んで理解してください。

図-1

図-2

図-3

図-4

2002(H14)年度問題

構文図を用いて文字列の集合を定義することができる。例えば、図1の構文図は整数の加減算式を定義している。この定義に従えば、1+2-3や1-2が整数の加減算式であることがわかるが、+1や-1は加減算式ではない。

図1.整数の加減算式を定義する構文図

図2.a,bの文字列を定義する構文図

次の文字列のうち、図2の構文図では定義されていないものを選べ。

① a  ② b  ③ ab  ④ ba  ⑤ aaa

図1およびその説明は、構文図の説明なので問題には無関係です。
図2を見ると、最初の「関所」は、「a」以外ならそのまま通過し、「a」ならフリーパスか、あるいはループで戻るというものです。「a」が続く限りループできますから「aaaa」もOKですね。
2番目の「関所」は「a」か「b」以外は通してくれませんから、どちらか以外の文字列を含んでいると通過できません。
選択肢①や②は第1関門をフリーパスし、第2関門でそれぞれ[a」と「b」を通って終了というものです。
また③は第1関門の1回目で「a」のループを通り、第1関門の2回目はフリーパス、第2関門の「b」を通っています。
⑤は第1関門の「a」ループを2回通った後、第2関門の「a」を通ったものです。
ところで第2関門の後はループがありませんから、この「a」や「b」が文末文字ということになります。「a」は第1関門のループでも出てきますから、「a」の後に文字列が続くことはありえますが、「b」の後に文字列が続くことはありえません。
よって、④がありえないということになります。

2004(H16)年度問題

あるプログラミング言語で使われる名前(変数名や関数名)は、次の構文図で規定されているものとする。この時、名前でないものを選べ。ただし、英字はa,b,・・・,z、A,B,・・・,Zのどれか、数字は0,1,・・・,9のどれかである。


① A  ② name  ③ B740  ④ C6H6  ⑤ 11PM

「英字」「数字」とも非終端記号ですから、別途定義されており、その内容は問題文に「ただし」の後に記載されています。
第1関門が「英字」であり、それ以外の道はありませんから、1文字目が英字でない文字列は通過できません。つまり、⑤が正解になります。

集合演算論理
  • A and B(=A*B)、A or B(=A+B)などで表されるものを組み合わせる問題が出ます。
  • 統計確率の基本に立ち返り、単純化して考えられるかどうかの勝負です。
  • 下のようなベン図などを使うと効率よく解けると思います。

論理演算

論理演算とは、真か偽かの2通りの結果だけを使った、集合における演算で、プログラミング言語などではビット演算とも言います。
与えられた命題が正しい場合を真(true)、正しくない場合を偽(false)といいます。
ここで「命題」とは、論理学用語で、意味に不明瞭なところがない文章のことです。
たとえば「私の身長は170cm以上である」という文書は、あいまいな点がないので命題です。一方、「私は忙しい」というのは、「忙しい」のところにあいまいさ・不明瞭さがある(「忙しい」と「忙しくない」の間の明瞭な境界がない)ので、命題とはいいません。
さて、「私の身長は170cm以上である」という命題に対し、身長175cmの人を当てはめると、命題は正しくなります。よって、真です。
身長165cmの人を当てはめると、命題は正しくなくなります。よって、偽です。
このように、同じ命題でも、当てはめる要素によって真偽は異なることがあります。

論理演算には、以下のものがあります。
ORとNOR、ANDとNANDは、それぞれの否定なのでわかりやすいと思います。ちょっとややこしいのはXORです。XOR=OR-ANDと理解してください。
試験で必要になることが考えられる知識は、上の3つ程度と思われます。

演算種類演算結果が真となる条件イメージ(ベン図)
論理和

OR
AとBのいずれかが真である(両方真でもOK)
論理積

AND
AとBのいずれもが真である
排他的
論理和

XOR
AとBのいずれか一方のみが真である
論理和
の否定

NOR
ORの真偽反転(ORで偽であるものが真となる)
論理積分
の否定

NAND
ANDの真偽反転(ANDで偽であるものが真となる)
論理否定

NOT
真偽反転(真であれば偽に、偽であれば真になる)

たとえば、命題Aが身長170cm以上、命題Bが体重60kg以上としてみます。これに対して、様々な身長・体重の場合に、論理演算の結果がどうなるかみてみます。なお、下表の中で○は真、×は偽です。

命題A命題B身長cm体重kgORANDXORNORNAND
身長170cm以上体重60kg以上175→真70→真○○×××
175→真55→偽○×○×○
165→偽65→真○×○×○
165→偽55→偽×××○○
アルゴリズム

繰り返し計算のあるアルゴリズムは、プログラム構造わかりにくいという人が多いと思います。こういう人は、多少なりともなじみのある形(たとえばフロー図)に整理すると理解しやすくなります。
過去問題を使って、フロー図による整理をやってみましょう。

2004(H16)年度問題

ファイルから整数データ(最後のデータは0又は負数とする)を読み込んで計算を行なう、以下のプログラムについて、間違った記述を次の中から選べ。

・xの値を0とする
・aに整数データを読み込む
・aが正であれば以下のことを繰り返す
  { ・ x<aならばxにaの値を代入する
    ・ aに整数データを読み込む
  }
・xの値を出力して終了する

① 読み込まれた正整数の中から最大値を選んでその値を出力する。
② 0又は負の整数が読み込まれると、計算結果を出力してプログラムは終了する。
③ 最大値を選ぶ対象の整数は何個あってもよい。
④ 最初に読み込まれる整数が負の場合、出力は行なわれない。
⑤ 0又は負数の後に正整数があっても、読み込まれない。

プログラム部分をフローにします。

  • ●「~する」というような、無条件に処理していく部分は、長方形の枠の中に実施内容を書いて、順に並べて矢印で実施手順を示す。
  • 実施内容は、「Xの値を0とする」と、そのまま書いてもかまいませんが、「X=0」というように式にできるものは式にしたほうが楽です。
  • 「~ならば」といった、条件分岐は、ひし形の枠の中に判断基準を書き、YES/NO判断で左右に分かれるようにする。ここでも「aが正」→「a>0」というように式にします。
  • 繰り返し部分は、どこからどこまでが繰り返し処理内容かを読み取り(プログラムでは、インデントで字下げして、前後を「{」「}」などで囲って表示されることがよくある)、最後はどこへ戻るのかを把握する。
  • 処理終了部分には「END」と明示する。なお、開始部分が見難い場合は、処理開始箇所に「START」と明示するとわかりやすくなる。

これを見ながら、選択肢を検討していってみましょう。

① 読み込まれた正整数の中から最大値を選んでその値を出力する。
よくわかりませんね。実はこのアルゴリズムは最大値検索を目的としたルーチンなのですが、別にそんなことわからなくてもかまいません。明らかな間違いが見つかればそれでいいのですから、とりあえず正誤判断はせず、放っておきます。
② 0又は負の整数が読み込まれると、計算結果を出力してプログラムは終了する。
最初の条件分岐(ひし形部分)でa>0?に対してNOですから、「Xを出力」して「END」に行きます。よって記述内容は正しいとわかります。
③ 最大値を選ぶ対象の整数は何個あってもよい。
よくわからないので放っておきます。
④ 最初に読み込まれる整数が負の場合、出力は行なわれない。
フローより明らかなように、「aに整数代入」の後はa>0?の分岐に行きます。ここでa<0であれば「Xを出力」に行きます。よって、「出力は行われない」ことはありません。
ここで明らかな間違いが見つかったので、正解は④とし、検討を終了してもかまいません。
⑤ 0又は負数の後に正整数があっても、読み込まれない。
最初の分岐でa>0でなければ「Xを出力」して「END」に行き、プログラムは終了しますから、読み込み(aに整数代入)はもう行われません。よって記述内容は正しいとわかります。

2001(H13)年度問題

次に示すアルゴリズムを実行した結果、表示される値はいくらか。

アルゴリズムE
 ・整数変数xの値を70とする;整数変数yの値を50とする;
 ・xをyで割り算し、余りを整数変数rに代入する;
 ・r=0の条件が成立しない時は、以下の手順を繰り返す:(下の注を参照のこと)
   {・yをxに代入する;
    ・rをyに代入する;
    ・xをyで割り算し、余りを整数変数rに代入する;}
 ・yの値を表示する;
注)まず、r=0の条件が成立するか調べ、成立しなければ{ }内の命令文を実行し、その後r=0の条件が成立するかどうかを調べる。成立しなければ{ }内の命令文を実行する。これを繰り返し、条件が成立したら繰り返しを終了して、次の表示命令文を実行する。

① 0  ②5  ③ 10  ④ 20  ⑤ 50

最初の2行は単純処理ですから、長方形枠を手順通りに並べます。処理内容は、「整数変数xの値を70とする」と、そのまま書いてもかまいませんが、「x=70」というように簡潔にしたほうがわかりやすくなります。2行目も「x÷y=z ...r」というように式にします。
3行目は条件分岐です。「r=0」が条件で、YES(成立する)時は繰り返し部分(「{」と「}」で囲まれた部分)を飛ばして、その先にいきます。つまり「yの値を表示する」に行きます。「r=0」がNO(成立しない)場合は、繰り返しになります。
繰り返し内容は、単純処理が3つです。それぞれを式化し、長方形枠に書きます。
「yをxに代入する」→「x=y」
「rをyに代入する」→「y=r」
「xをyで割り算し、余りを整数変数rに代入する」
                  →「x÷y=z 余りr」
その後、繰り返しの頭部分、すなわち条件分岐のところに戻ります。これをみると、r=0かどうかの判断をして、r≠0であれば、繰り返し内の処理(3ステップ)を行い、またr=0かどうかの判断をして、r≠0であれば・・・・というような繰り返し処理であることが理解できます。

なお、H13問題は値(最後に表示されるyの値)を聞いています。処理内容の正誤を聞くH16問題とは、問う内容が異なります。
値を聞いてくる問題で、かつ、フロー化しなくてもプログラム手順通りの実行ができる(トライアル計算できる)場合は、トライアルしてしまったほうが速くなります。

大小に関係なくランダムに並んだ100個の数値データがある。この中から最小値を抽出するプログラムを作ろうとするとき、下記の[ ]に入る処理内容として適当なものはどれか。

(プログラム)
・変数xに数値データから値を読み込む
・変数aにxの値を読み込む
・数値データが残っていれば次の繰り返し処理を行う
 {
  [ ]場合は、aにxの値を代入する  
  xに数値データから値を読み込む
 }
・aの値を出力して終了する

 (1) aがxより小さい
 (2) aがxより大きい
 (3) aとxが等しい
 (4) 数値データの終わりまで来た
 (5) 数値データが残っている

答えはこちら

処理内容をフローにしてみる。

最初の2行は単純処理。数値データをVとすれば、1行目は「x=V」、2行目はa=x。
3行目は条件分岐。「数値データが残っていれば」なので、ひし形枠に「数値データ残」とでも書く。
YESなら繰り返し、NOなら繰り返しを飛ばして次の処理、つまり、「aを出力」→「END」へ。
繰り返し内容を見ると、[ ]内は条件分岐の判断基準とわかる。
ここでYESなら「aにxの値を代入」→「a=x」の処理。その後、YESでもNOでも「x=V」処理をして繰り返し。
フローを見ると、繰り返し内は、条件[ ]が成立した場合にのみ「a=x」処理を実行し、データのある限り繰り返し処理を行うというルーチンであることがわかる。
ここで、このプログラムの目的は最小値の抽出であることから、最後に出力されるaが最小値であることがわかる。また、xは、「数値データから値を読み込む」ことから、繰り返し処理の度に、数値データ群から読み込まれる値であることがわかる。つまり、繰り返し内の「a=x」処理は、「最小値の入れ物」である変数aに、数値データ群から読み込んだ値であるxを代入する処理であることがわかる。
さて、aには、繰り返し開始前に(2行目で)、数値データ群の最初のデータ(1行目でxに読み込んだ値)を代入してある。したがって、1回目の繰り返し処理内で、「a=x」をやってもやらなくても、aの値は変わらない。しかしこの後、xに数値データから値を読み込むので、xには数値データ群の2番目のデータが入る。つまり、2回目の繰り返し処理時点では、aに入っているのは数値データ群の最初の値、xには同じく2番目の値が入っている。よって、もし「a=x」を行うとすると、aが「最小値の入れ物」であることから、xがその時点での最小値である、すなわち「それまでの最小値」であるaより小さい値であるということが、「a=x」処理を行う条件であることがわかる。
以上より、「xがaより小さい」ということは「aがxより大きい」とうことであるから、正解は②である。

(3) 解析
【分野の基本方針】
  • 導関数、ベクトル、数値解析、力学計算に関する出題があります。こういった問題が得意な方以外は捨ててしまって、それでも3問は答えないといけませんから、極端な話あてずっぽうでマークするくらいに割り切ったほうがいいでしょう。
  • ただし、数値解析に関する文章題や固有振動数に関する問題はなんとか答えの検討がつけられたり、2択程度にまで絞り込めたりすることがありますから、こういった問題を探して、割り振り可能な時間の範囲内で考えてみるといいでしょう。
  • なお、過去問題は2~3問あるようですが、10年以上前の問題が流用されていたりします。

数値解析

数値解析のおおまかな特性を知っておくと、正誤の検討がつけやすくなります。
厳密解と近似解の違い、差分法・有限要素法・境界要素法の概要について理解しておくといいでしょう。

手法差分法有限要素法境界要素法
要素分割正方形・長方形三角形線
簡単面倒簡単
境界変形難易易
理論易難難
主な適用例河川流、氾濫流、土石流土石流、湖沼、地盤、地下水構造物・部材・部品の応力・変形海の波

イメージである程度まで解ける問題

イメージで正解の検討が付けられる力学問題(特に「どれが最も弱いか」というような、計算値ではなく該当するモデルを選ぶような問題)は狙い目です。

過去問題例:分力(令和4年度問題1-3-4)
過去問題例:分力(令和4年度問題1-3-4)
両端にヒンジを有する2つの棒部材ACとBCがあり、点Cにおいて鉛直下向きの荷重Pを受けている。棒部材ACとBCに生じる軸方向力をそれぞれN1とN2とするとき、その比N1/N2として、適切なものはどれか。なお、棒部材の伸びは微小とみなしてよい。



① 1/2  ② 1/√3  ③ 1  ④ √3  ⑤ 2
正解は②
N1、N2はPの分力ですから、これを求めればすぐに解けます。
ACにかかる分力N1は、P・tan30°=P/2
BCにかかる分力N2は、P・tan60°=P√3/2
よってN1/N2=P/2/P√3/2=1/√3。

過去問題例:固有振動数(令和6年度問題1-3-5)
下図に示すように、 2つのばねと1つの質点からなるばね質点系a, b, cがある。図中のばねのばね定数はすべて同じkであり、また、図中の質点の質量はすべて同じm である。最小の固有振動数を有するばね質点系として、最も適切なものはどれか。


① a   ② b   ③ c   ④ aとb   ⑤ bとc
正解は②
固有振動数が小さいということは、ゆっくり振動するということです。図を見れば感覚的にbが一番ゆっくり振動することがわかるのではないでしょうか。

過去問題例:固有振動数(令和4年度問題1-3-6)
下図に示すように、 2つのばねと1つの質点からなるばね質点系a, b, cがある。図中のばねのばね定数はすべて同じkであり、また、図中の質点の質量はすべて同じm である。最小の固有振動数を有するばね質点系として、最も適切なものはどれか。



図 張られた糸に物体が取り付けられた2つの系

① fa:fb=1:1
② fa:fb=1:√2
③ fa:fb=1:2
④ fa:fb=√2:1
⑤ fa:fb=2:1
正解は⑤
aとbでは、明らかにbの振動周期が長いから、fa>fbなので、④⑤のどちらかが正解となります。これだけで1/2の確率で正解できるようになり、さらにbは長さが倍で質量も倍なので、⑤であろうことは感覚的にもわかると思います。
ちなみに、復元力が2Tsinθですが、拡大図からはsinθ=x/Lなので、2Tsinθ=2Tx/L。単振動微分方程式による運動方程式m・d2y/dt2より、m・d2y/dt2=-2Tx/L(単振動運動方程式なのでマイナス)。
よってm・d2y/dt2+2Tx/L=0=d2y/dt2+2Tx/mL。よって角振動数ωは√(2T/mL)。bではmとLが2倍なのでmLで4倍だから。2T/mLが1/4。これを√して1/2というように計算できます。
【分野の基礎知識】

●微分・偏微分について
(dy/dxについて)
 「微分」とは、分かりやすい言葉でいえば「瞬間変化率」を求めることです。
例えば、1時間に40km走行すれば、平均速度は40km/時間ですね。しかし、速度規制は瞬間速度で規制され、一瞬でも60km/時間を越えてはなりません。
 「平均速度」を「平均変化率」と呼べば、「瞬間速度」を「瞬間変化率」と呼べます。これが微分の概念です。グラフ上では接線の勾配が「瞬間変化率」であり、微分の概念です。
 y=f(x)のとき、dy/dxをy=f(x)の「導関数」といい、dy/dx=lim(h→0)〔f(x+h)-f(x)〕/hとなります。導関数を求めることを「微分する」といいます。

(∂y/∂Xについて)
 関数z=f(x,y) のように変数が2個以上あるとき、yを一定に保った場合に、∂y/∂Xはz=f(x,y)のxについての「編導関数」といいます。編導関数を求めることを「偏微分」するといいます。

(導関数の差分近似式について)
 導関数は、式ではdy/dx=lim(h→0)〔f(x+h))-f(x)〕/hとなり、lim(h→0)により瞬間変化率が算出されます。
 点xⅰでの差分はu(i+1)-u(i)であり、単位(格子)幅hの差分近似式は〔f(x+h)-f(x)〕/hとなります。導関数の式からlim(h→0)を外した形となり、「h当たりの平均変化率」と覚えればよいでしょう。例えば自動車の速度表示は導関数により求めた瞬間速度ではなく「h秒当たりの平均速度」でしょうか。格子幅hを少なくすることにより精度は上がり、より瞬間速度に近似します。

●力学・バネ・熱伝導・重力その他の計算問題

 比例か反比例か、2乗に比例か、3乗に比例かを判断できれば解ける問題も出題されています。

(バネ)
のびのエネルギー(バネ係数kのバネののびをXとすると、のびのエネルギーはW=(1/2)KX2)、全ポテンシャルエネルギー(=内部ポテンシャルエネルギー+外力のポテンシャルエネルギー)がよく出題される。

(力学)
ヤング率、応力、ひずみについて理解しておくこと、特に比例・反比例の関係に慣れておくことが重要です。

(熱伝導)
熱伝導は一次式ということが分かっておれば解ける問題が出題されています。

(4) 材料・化学・バイオ
【分野の傾向】

本分野は、材料・化学、バイオの2分野から成ります。ただ材料と化学はおおむね分けられるようです。
材料・化学については、「科学の雑学」的知識があれば、感覚的に正解がわかる程度のレベル・質の問題が多いようです。

【分野の基本対策】
  • 化学
    最初の2問は化学です。頻出問題は熱化学で、熱化学方程式の理解度を確認する問題が出ています。また過去問題の流用頻度も高いようです。また化学反応式、酸アルカリなどもよく出題されています。
  • 材料
    次の2問は材料です。材料には、金属と非金属がありますが、金属の諸性質に関する問題はほぼ毎年出ています。ただ、過去問題の流用はあまりありませんので、金属の諸性質について雑学的に知識を仕入れておく必要があります。
    金属以外ではセラミックスや、様々な材料の熱伝導率等の性質を問う問題が出ていますが、これらも過去問題の流用率は低く、予測が困難です。
  • バイオ
    最後の2問はバイオというか生物工学関連です。
    今の一次試験が始まった当初はDNAやクローンの問題ばかりだったのですが、平成18年ごろから広く生物工学全般からの出題になっています。生体膜、酵母菌の呼吸等、アミノ酸などの問題が予想されますので、余裕があれば過去問題を使って勉強しておくといいと思います。

化学や生物工学が得意な人、材料に関する雑学が豊富な人は得点しやすいと思いますが、それ以外の人は比較的とっつきやすいと思われる材料あたりを中心に、多少あてずっぽうでも仕方ないので3問埋めるようにしましょう。

【分野の基礎知識】
材料
  • 金属
    自由電子の存在と、それゆえにもたらされる、電気伝導性・光沢・不透明・展性
  • セラミックス
    代表例:アルミナ/高耐熱性・高強度・高硬度・絶縁性・光学的透明性・耐食性・生体適合性/じん性が低い
  • 高分子
    • 基本知識
      • プラスチック・ゴム・繊維などの有機材料
      • 単量体(モノマー)が繰り返し結合(共有結合)した巨大分子の総称が高分子(ポリマー) 
      • 粘弾性が大→壊れにくい/原子充填密度小→軽い
      • 多くは熱可塑性で、一部は熱硬化性 熱可塑性:常温で固体・加熱すると溶解液となる→整形が容易、さらに細分できる
        (1) 耐熱性の度合いによる3分類:汎用樹脂・汎用エンジニア樹脂・スーパーエンジニアリング樹脂
        (2) 高分子鎖の配行による2分類:結晶樹脂・非結晶樹脂
        熱硬化性:製品生成時に過熱冷却すると耐熱性を持ち再び熱溶解しない:FRPに利用
    • プラスチックの生成
      • プラスチック原料の大部分は石油/石油中のナフサ(化学原料にする成分)を分別したり反応させたりして作る/反応のさせかたにより多種のプラスチックができる/種類の異なるプラスチック同士は混ざりにくい
    • グリーンプラスチック
      • 生分解性プラスチックともいう/トウモロコシやサツマイモなどの成分から作る環境負荷の少ないプラスチック/普通のプラスチックと同様の機能/使用後は自然界の土や水中に生息する微生物の働きにより分解/最終的には水や二酸化炭素に分解
      • グリーンケミストリー:化学合成段階で環境負荷低減をめざすこと
    • 吸水性高分子
      • 紙おむつなどに利用され、非常に多くの水を吸い、圧力をかけても逆流しない。「さらさら」というCMを思い出そう
化学
  • 原子の構造(陽子・中性子・電子)/周期律表の特性(活性など)/原子量・分子量とアボガドロ数(1モルの質量が分子量で、1モル中の分子個数がアボガドロ数=6×1023)/化学結合
バイオ
  • DNA・RNA はこの表を覚えたらとりあえずOK!
  • DNAの一部が遺伝情報/DNAが集まって染色体形成
    • DNA再生:2本鎖が別れる → 1本づつを鋳型にしてもう1本が形成 → 2組になる
    • DNA鎖形成は両方向に/生殖細胞のみ染色体半分/数はRNA>DNA

  • 細胞小器官
    • ミトコンドリア:酸素からエネルギー作る、元は単独生命体
    • リボソーム:タンパク質合成

  • クローン
    倫理上問題があるのは体細胞クローン
(5) 環境・エネルギー・技術
【分野の傾向】

環境、エネルギー、技術史といった範囲から出題されます。
初期はエネルギーに関する計算問題が主でしたが、17年度以降はほぼ出題されなくなりました。これに伴い中心が環境とマネジメントに移っていました。
さらに25年度からはマネジメントが設計・計画分野に移り、環境・エネルギーが主になっています。

【分野の基本対策】

1・2問が環境分野、3・4問目がエネルギー、5・6問目が技術史や倫理・知財などについて出題されます。
環境分野は、地球温暖化関連と法令などがよく出されています。過去問題の選択肢流用や類似分野からの出題が多いので、過去問題の内容を理解し、できれば関連項目まで勉強しておくといいでしょう。
エネルギー分野は石炭石油天然ガス原子力、再生可能エネルギー、新エネルギーなどについてもかじっておくといいでしょう。
「技術分野」はとらえどころのないネーミングですが、倫理関連と人物業績、科学史が問題されます。倫理関連では適性科目と重複しがちですが、人物業績も含めて似たような問題が頻出していますので、過去問題を幅広く目を通しておくといいでしょう。

Ⅱ 適性科目

問題の傾向

 適性科目は、技術者倫理と技術士に係る法制度といった、「社会の中での技術士の立ち位置と振る舞い」に関する適性を確認する科目です。法制度は技術士法に関する知識が中心ですが、技術士法からの出題は限られており、大部分は技術者倫理に関して出題されます。
 試験時間は1時間、15問全問解答で、8問以上正解が合格ラインです。
 以前は「8問以上正解できないことはほとんどない」と言ってきたのですが、近年は難易度が上がっています。ただそれでも、合格ラインを割り込む人は多くとも2~3割のようですから、適性科目で不合格になることはあまりないと言っていいでしょう。
 これまで出題されるテーマの7割以上は一定していたのですが、ここ数年は少し出題傾向が変化する傾向が読み取れます。
 技術士法、安全やリスク、製造物責任、知的財産権といったところは変化ないのですが、地球温暖化やSDGs、ISO26000、マネジメント、Society5.0、経済安保など、科学技術や社会経済情勢の変化、持続性といった視点が強くなってきています。
 また近年は感覚的に解ける問題ばかりではなくなってきており、倫理に加えてマネジメントや法・規格に関する知識を問う問題が増えてきています。
 つまり「どう思いますか」ではなく「知っていますか」という問題が多くなってきているということです。

対策全般

「正解を語る臨時掲示板」などでもよく見られる発言に
  「そんな考え方はおかしい」
  「こう考えるべきだろう」
というようなものがあります。中には、
  「それが正解なのかもしれないが、一般人の感覚ではこちらが正解だ」
  「試験としてはそれが正解なのかもしれないが、俺は認めない」
という「捨てゼリフ」も見られます。
 適性科目で中心的に取り扱っている「技術者倫理」とは、そのようなもの、すなわち個人によって解釈が異なってくるものなのでしょうか。
 技術者倫理は「倫理」であり、「規範」です。規範は「法」と同じで、「モラル」から発生した規範が倫理、「常識」から発生した規範が法であるとされています。

   自 律他 律
規範
↑
意識
倫理
↑
モラル
法
↑
意識

 人の行動を律するものは、種類として「自律」と「他律」に、レベルとして「意識」と「規範」に分けられます。
 自律とは字のごとく自ら律する、自発的な行動規制です。対して他律とは外からの規制で、受身になります。
 意識とは各自それぞれが考えるレベル、それが社会で統一した「決まりごと」になったものが規範です。
 そして適性科目で主に扱う「倫理」とは、自律の中の規範レベルのものです。規範ですから、モラルや常識のように、解釈に個人差があることはあまり許容されません。法のように唯一絶対の条文があるわけではありませんが、文献その他によって、こうあるべきだと技術界で認められている内容は確固としてあります。
 すなわち、「解釈は個人にまかせる」ということにはなっていなくて、「これが技術者倫理ですから守ってくださいよ」という決まりごとがあるのです。そして適性科目は、この決まりごとをどれだけ知っているかの試験と考えてもいいかもしれません。
つまり、
  「こういう場合どうするのが倫理的に正しいか、あなたの意見を述べてください」
といっているのではなく、
  「こういう場合どうするのが倫理的に正しいと決まっているか、あなたは知っていますか」
といっているのです。正確には少し違いますが、まあそういうイメージです。
 皆さんにはそれぞれの理念・信念がおありだと思います。しかしこの試験は
  「あなたの信念・理念は何ですか」
と聞いているのではありません。また
  「これが正解だからあなたの信念・理念を曲げろ」
と言っているのでもありません。
  「技術者倫理ではどうすることになっていますか」
と聞いているに過ぎません。このことを飲み込まないと、試験対策は成り立たないということをまずご認識ください。

 適性科目は、近年若干難易度が上がりました。これは、技術者倫理等に関する知識を問う問題が増えたためです。次のような用語をあなたは知っていますか?
 インフォームドコンセント、功利主義、警笛鳴らし、黄金律、線引き問題、決議論
 こういった知識を問う問題が増えた結果、適性科目がボーダーラインの8点に届かない人が増えています。
 とはいえ、本当に用語知識を問う問題というのは少なく、またそういう問題もけっこう常識感覚で解けたりします。おそらく適性科目がボーダーラインに届かない人は多くても2割程度でしょう。
 「適性科目をなめてはいけない」という話をよく聞きますし、実際適性科目で不合格となった方もおられるとは思いますが、それでもなお、上記のようなことから、難易度上昇も踏まえた上で、「適性科目は基本的に勉強不要」と考えます。ただし、過去問題を解いてみて7割以上解けたらという条件付です。また、「念のためポイントだけ勉強しておいたほうがいい」とも申し上げておきたいと思います。

3義務2責務は、その内容や罰則等を知識として知る必要があります。
 また、技術者倫理に関する知識(特に用語)は押さえておくべきだと思います。
 また、守秘義務と公益確保のトレードオフ(致命的欠陥を知ってしまった。告発することは是か非かというようなケース)のようなものは人によって意見がわかれるところでしょう。これは利益の相反(トレードオフ)であり、どうやって対処すべきかを考えるための一定の道筋があります。
 この3点を押さえれば、あとは常識感覚でいけると思われます。

解答に必要な知識・見識
信用失墜行為の禁止

技術士法第44条

技術士または技術士補は、技術士もしくは技術士補の信用を傷つけ、または技術士および技術士補全体の不名誉となるような行為をしてはならない。

技術士・技術士補の社会的信用を失墜させるような行為をしてはなりません。
具体的には、捏造・公私混同などの不正行為はもとより、公の場での品格を疑われるような行動や、名義貸しなどの行為もこれに該当するでしょう。
なお、文科大臣は規定違反と思料されるときは職権をもって調査することができます(法第37条)。その上で違反が明確になれば、登録の取り消しまたは2年以内の名称使用停止を命ずることができます(法第36条)。

守秘義務

技術士法第45条

技術士または技術士補は、正当の理由がなく、その業務に関して知り得た秘密を漏らし、または盗用してはならない。技術士または技術士補でなくなった後に置いても、同様とする。

業務上知り得た秘密を漏らしてはなりません。
信用失墜行為と同様、文科大臣の調査権限と登録取り消し・名称使用禁止規定があるとともに、この規定に違反して告訴された場合、1年以下の懲役または50万円以下の罰金という罰則もあります。3義務2責務で唯一の罰則規定です。
後述する公益確保とのトレードオフ(二律相反)でどちらをとるか、という問題が必ず出題されています。
(例)業務の中で明らかな欠陥(あるいは不正)を発見したが、クライアント・雇用者はそれを握りつぶそうとした。さあ、どうする?
・・・・適切な対処(情報公開含む)をするよう最大限の努力で説得するが、どうしてもだめなら公益を優先して関係当局に通報・告発するのが正しい行動です。
ここで大切なのは、まず説得の努力をすること、告発するのは関係当局であって、マスコミや一般大衆ではないことです。短期は損気、物事には順番、社会ルールを守るということです。告発は一見正義のヒーローですが、独善的になってはいけません。不用意な公表は、不要な混乱も招きかねません。そうなれば公益を損ねます。
また、公共の安全に関わり、緊急性を要する場合は「緊急避難」という考えも適用されます。緊急避難とはたとえば高速道路でラッシュに巻き込まれ、身動きがとれなくなった状態で、どうしても我慢できない子供のオシッコを道路脇でさせるようなものです。この場合、軽犯罪法も道路交通法も適用されません。事例としては、欠陥があって設計荷重が確保できていない構造物に人が集まって崩壊の危険性があると認識したとき、「欠陥がある」と公表して避難させるような場合です。しかし、これも下手なやり方をするとパニックを引き起こし、不要な被害を生じさせるもとになります。軽率な行動は禁物です。

名称表示の場合の義務

技術士法第46条

技術士は、その業務に関して技術士の名称を表示するときは、その登録を受けた技術部門を明示してするものとし、登録を受けていない技術部門を表示してはならない。

要は、何部門の技術士であるのか、部門を明確に表示せよ、ということです。なお、選択科目の表示については自由です。
ですから、名刺の資格表示の適否は次のようになります。


技術士補については、技術士の業務を補助するにあたって、技術士補の名称表示に関して同様の規定が準用されます。したがって、名刺に「技術士補」と書くときにも上表と同様に部門を明示しなくてはなりません(法47条2項)。
他の2義務と同様、文科大臣の調査権限と登録取り消し・名称使用禁止規定があります。
なお、技術士・技術士補でない者、あるいは技術士・技術士補の名称使用を停止されている者が技術士・技術士補あるいはそれに似た名称を名乗ることは、法第57条で禁止されており、これに違反した場合は30万円以下の罰金に処せられます(法第62条)。

公益確保の責務

技術士法第45条の2

技術士または技術士補は、その業務を行うに当たっては、公共の安全、環境の保全その他の公益を害することのないよう努めなければならない。

「公益」とは何か、という言葉の定義が難しい責務です。
基本的には、会社やクライアントの利益よりも、公共の利益を優先しなさいということで、この公共の利益」には、安全や環境保全なども含みます。
しかしこれは非常にデリケートな問題になります。というのは、実際の世の中はさまざまな利益がぶつかり合うトレードオフ(あちらたてればこちらたたず)の場面がしばしばあり、どちらが公益なのか判断がつきかねる場合もあるからです。
守秘義務のところで前述したようなトレードオフでの「究極の選択」問題が出ています。
公益は守秘義務よりも優先ということは原則です。(公衆優先原則といいます)
この責務も文科大臣の調査権限と登録取り消し・名称使用禁止規定の対象になっています。しかし、何を持って公益確保をしなかったかというのは非常に難しい判断になるので、よほど極端な例(非常に重大な欠陥を知りながら社益優先で黙殺し、結果として重大な災害等を引き起こした場合など。しかしこの場合は刑事責任を問われる可能性も大)でなければ、この責務不履行を理由に技術士資格剥奪ということはないでしょう。

資質向上の責務

技術士法第47条の2

技術士は、常に、その業務に関して有する知識および技能の水準を向上させ、その他その資質の向上を図るよう努めなければならない。

常に勉強しなさいということで、CPDとセットになった改定条項です。
この責務も文科大臣の調査権限と登録取り消し・名称使用禁止規定の対象になっています。しかし、これも何をもって資質向上を怠ったかというのは難しい判断です。勤務を一切伴わない名義貸しをして自分はスナック経営をしているとか、極端な事例の告発があればわかりませんが、それとて申し開きはできそうです。

 企業・団体等で倫理に関して規定等が定められている場合、その理念を正しく理解し、具体的な行動に正しく反映できる必要がありますが、そのためには、利益や社内規定等の他のルールとの優先順位を明確に理解しておくことが重要です。そうでないと、個人レベルでは判断できないトレードオフに陥ってしまいます。

 その用語等を知っていないと、一般的な常識感覚だけでは解答しにくいと思われる事項について解説します。「覚えておいたほうがいい用語」は多くはありません。
 なお、以下の記載事項は、技術者倫理という体系的知識の解説であり、「私はこう思う」ということを言っているのではありません。また人として、人生としての「正解」でもありません。知識としての技術者倫理です。

倫理と法・モラル

 下図のように整理されます。レベルとして意識レベルと規範(規則・基準・規準など含む)レベルがあります。
 意識レベルにあるのがモラルと常識(=共通意識)で、これが源泉となって規範が発生します。規範レベルには倫理と法があります。すなわち、モラルから倫理が、常識から法が発生します。なお、モラルと倫理をあわせて広義のモラルともします。

   自 律他 律
規範
↑
意識
倫理
↑
モラル
法
↑
意識

 倫理と法の違いは何かというと、倫理は自律的、法は他律的です。つまり倫理はそれを守るかどうかは個人に委ねられ、法は社会(国家権力)が強制します(ほとんどの場合制裁措置を伴います)。
 法と倫理は補完関係にあります。法は権利の制限につながるので、その適用が厳格になるのですが、それゆえに「抜け道」ができます。法だけでは、モラルに照らしておかしいと思う(心情的に許せないと感じる)ことでも、法の網を抜ければ万事OKということになってしまいます。
 誰も見ていないところで物を盗むという行為をさせないでおこうと思うとき、
  (1) 監視カメラ設置などにより、そういう行為を見逃さず制裁を加える
  (2) そういうことはやってはいけないという倫理観を醸成する
という、相反する内容の対策(抑止)が考えられます。多く場合、この両方により規範を成立させています。なお、上記例でわかるように、法は摘発・後追い、倫理は未然防止という側面も持っています。
以上、「意識レベルにおけるモラルを源泉として発生した自律的な規範」が倫理です。
参考:「技術者の倫理入門」 高城重厚・杉本泰治、丸善

公衆、インフォームドコンセントとパターナリズム

 パターナリズムとは、相手にとって良いことを、あたかも親であるかのように他者が判断することです。またインフォームドコンセントは、十分な情報を与えた上で当事者が自分で判断することです。
 わかりやすい(と私が思う)例で説明します。
 ガン患者がいるとします。医者のとる行動に2つが考えられます。

(1) 告知はせず、患者のために良いと思う措置を取る。
  患者には「安心して私に任せてください」という接し方をする。
(2) 告知は無論、いろいろな治療法とそれぞれの長所短所を説明する。
  その上で、患者自らの主体的判断を求め、それに応じた措置を講じる。


 前者がパターナリズム、後者がインフォームドコンセントです。かつては前者が支持されていましたが、今は後者が支持されています。もちろん適性試験の解答は後者を望みます。
パターナリズムが否定される理由がよくわかる例をあげてみましょう。

●ある国では、不衛生で平均寿命も短く乳児死亡率も高い伝統的な生活様式を送る人たちがいる。援助あるいは企業進出に伴い、現地に衛生的な近代的居住環境を用意した。しかし現地の人は転居したがらない。そこで国家権力の手でほぼ強制的に移住させた。
●偶像崇拝の原始的宗教を廃棄し、キリスト教を布教した。


 要は「親切の押し売り」、「価値観の押し付け」ですね。アメリカが力ずくで進める「アラブ社会の解放」はかなり明らかなパターナリズムです。
 ところで、この「押し付け」がなければ、高い死亡率や原始宗教に伴う生贄その他、政治的抑圧などの様々な「不幸」が予測されるでしょう。「だからそれを取り除いてあげる」という発想は、親が子のために高次の判断で行うことに似ています。しかし現在の技術者倫理では、たとえそうであっても、当事者に判断を委ねるべきであるとしています。もちろんそれは、そういった予想される問題点・リスクを伝えた上でのことですが。このような考え方は、民族自決権にもつながるものです。
 インフォームドコンセントの典型的事例としてよく取り上げられるのは、スペースシャトル・チャレンジャー号爆発事故です。

技術士倫理エピソード「経営者の帽子・技術者の帽子」~スペースシャトル・チャレンジャー号事件~

 技術者倫理に関する代表的なエピソードをご紹介しましょう。1986年のチャレンジャー号爆発事故に関する2人の技術者、ロバート・ルンドとロジャー・ボイジョリーの行動です。

 チャレンジャー号爆発事故は、ブースターロケットのシール部品であるOリングというゴム製品が、低温(打上時の気温は-3度)で弾性を失い、高熱ガスが漏洩して貯蔵タンク内の燃料に引火爆発したものでした。
 実はOリングがちゃんとシールできないことは、不確実ながらも予測されていました。主任技師のボイジョリーは、温度と弾性の間の相関関係を知っており、低温になるとシールの信頼性が保証できないことを知っていました。ただ、正確に何度でそれが起こるかを予測できないでいました。
 ボイジョリーの所属するモートン・チオコール社の経営陣は、この問題をにわかには受け入れられないでいました。そして、NASAとの新規契約を強く望んでいた経営陣の一人メイソン副社長は、正確なデータを出せない技術陣の責任者であるロバート・ルンドに、「技術者の帽子をぬいで、経営者の帽子をかぶりたまえ」と言ったのです。

 結果、技術陣の勧告は無視されました。ボイジョリーは最後まで経営陣を説得しようと試みましたが無視され、チャレンジャー号は予定通り打ち上げられ、73秒後にOリングのシール不良が原因で爆発しました。
 ルンドは経営者の側についたとしてずっと非難されることになります・ボイジョリーは惨事を防ぐことはできませんでしたが、彼なりの専門職責任を実行したと認められました。

 このチャレンジャー号事故の事例は、「科学技術者の倫理」など多くの文献で紹介され、技術者倫理に関する代表的事例として知られているとともに、いくつかのテーマを見出すことができます。

 チオコール経営陣の行動は糾弾されるべきものでしょうか?技術陣の勧告したOリングの問題は、正確なものではありませんでした。すなわち、打上時の低温でOリングがシール不良となる可能性、さらにそれがもとで重大事故が発生する可能性は、予見できたものの定量的ではなく、あくまで「リスク」でした。それゆえ、チオコール経営陣は、そのリスクと会社利益(NASAとの新規契約)のトレードオフの中で、リスクを保有する決定を下したといえるでしょう。安定した契約確保と利益確保は、社員とその家族の生活を守るという企業倫理の1つでもあるのです。
※ただし、ここには功利主義の重大な問題が潜んでいます。功利主義とは最大多数の最大幸福という評価尺度で倫理的判断を下すものですが、その「最大多数」は社会全体でなければなりません。自社の社員や家族ましてや経営陣などに限定してはいけないのです。その点で、この時の経営陣の判断は倫理的に正しいと言い切れるかどうか疑問が残ります。
 非難されたのは、経営者の側についたルンドでした。彼は、企業倫理と技術者倫理の間にたち、企業倫理をとってしまったことが非難されたのです。
 このあたりの感覚は、いかにもアメリカ人的です。前年の日航機墜落事故でも、ボーイング社が自社の修理ミスが原因と「自首」しましたが、このことへの「償い」は、「罪人としてのつるし上げ」ではなく、修理マニュアルの徹底見直しでした。
 日本人は、ミスや怠慢を犯したこと自体よりも、その結果(犠牲者の数など)に注目し、直接原因者を厳しく処罰することに執心しがちです。たとえその人を処罰して少しでも溜飲を下げたとしても、また同様のミスは繰り返されます。
 技術士に求められている倫理観は、是正・再発防止を優先する「アメリカ式」であることをよく認識しましょう。

 ボイジョリーは本当に「やるだけやった」のでしょうか。彼はこの事実を公表すべきではなかったのでしょうか。すなわち、「警笛鳴らし」(実名での内部告発)という形で彼の立場でやれることがあったのではないでしょうか。
 ディジョージは、内部告発の道徳的正当化の5つの条件をあげています。これは、いわば内部告発チェックリストといえるでしょう。
(1) 一般大衆に深刻かつ相当被害害が及ぶか?
(2) 上司へは報告したか?
(3) 内部的に可能な手段を試みつくしたか?
(4) 自分が正しいことの、合理的で公平な第三者に確信させるだけの証拠はあるか?
(5) 成功する可能性は個人が負うリスクと危険に見合うものか?
 ディジョージによれば、(1)~(3)が満たされれば内部告発は道徳的に許されます(内部告発してもよい)。さらに、(4)と(5)も満たされれば内部告発は道徳的に義務となります(内部告発すべきである)。
 これに照らせば、(1)~(3)は実行したと考えてもよさそうです。(4)がちょっとネックですね。ボイジョリーはリスクの定量化ができないでいました。実際、それを理由にメイソン副社長の判断は誤っているとはいえないとする意見もあるのです。さらに、(5)についても確信はもてなかったでしょう。事故後の議会証言でOリングについての彼の意見を会社が尊重しなかったことを明かしたという理由で懲戒処分にされています。
こう考えると、ボイジョリーにはホイッスル・ブローイングを行うことが許されるだけのことをしていたが、それをしなかったからといって非難されるような倫理的状況ではなかったと判断できるでしょう。

 チャレンジャー号事件が最もよく引き合いに出されるテーマです。様々なリスクを伴う宇宙船打ち上げにおいて、乗組員は打ち上げに同意するか否かを判断する権利を有しています。
 チャレンジャー号の場合、彼らに伝えられたリスク情報の中に、Oリングに関するリスク情報は含まれていませんでした。すなわち、彼らはわかっている限りのリスクを知らされていたわけではなく、「よく知らされた上での同意」をすることができない立場にいたわけです。技術者倫理において、このような立場を「公衆」といいます。
 そしてこれはインフォームドコンセントの考え方に基づくものです。専門家ではない人たちは、専門家を信じて全てを委ねるのではなく、専門家から十分な情報提供を受けて、自ら最後の決断をすべきであるというのがインフォームドコンセントの考え方であり、それゆえに「よく知らされた上での同意」と訳されています。このことから、インフォームドコンセントが成立するためには、リスクを与える側が十分な説明をする責任(説明責任)を負う必要があることがわかります。

 このようなことを踏まえ、建設部門における事例について考えてみましょう(実際の試験では建設部門に関わる事例が取り上げられる可能性は低いでしょうが)。
 土石流や火山・地震など、自然災害の危険性について、住民に知らせるべきでしょうか。
 いたずらに不安な思いをさせず、住民の知らないところでその危険を取り去ってあげよう…これはパターナリズムです。
 インフォームドコンセントは、情報を正しく伝え(正しく伝えるということはきちんと理解してもらうということ)、その上で住民の判断を待つことになります。このことから、インフォームドコンセントが成立するためには、アカウンタビリティ・情報公開が必要不可欠であることがわかります。
 また、インフォームドコンセントのためには、これを与える側(患者や住民)にも身勝手・わがままを抑え、冷静な行動や公共心、すなわち善意と理性が要求されます。このあたりはPIや市民主体のまちづくりなどにつながります。すなわち、自分の損得ばかり考え、感情や気分で判断・行動するような人は、PIや市民主体のまちづくりに参加する資格はないことになります。
 なお、インフォームドコンセントを「よく知らされた上での同意」と表現することも多くあります。

 以下、テキスト類から「公衆」の定義について書いてある部分を抜き出してみます。
●「技術者の倫理入門」 高城重厚・杉本泰治、丸善
 人々が「公衆」の一部とされるのは、その人々が技術行のサービスによって、その結果について自由なまたはよく知らされたうえでの同意を与える立場にはなくて、影響される場合である。つまり、「公衆」は、ある程度の無知、無力、および受動性という特性をもつものとされる。

●「第2版 科学技術者の倫理~その考え方と事例」 日本技術士会訳編、丸善
 より妥当な公衆の定義は、人々を公衆の一部とするものは、技術行の製品及びサービスの影響に対して、自由なインフォームド・コンセントを与える立場になく、それらの影響されやすいという主張と共に始まっている。「公衆」は、ある程度の無知、無力、そして受動性という特性を持つものとされる。この解釈によれば、「公衆」とは、情報、技術的知識、あるいは熟慮する時間を十分に持っていないために、技術者が彼の依頼者又は使用者のために行使する権限によって、多少なりとも傷付けられやすくなっている人々のことである。

 これらから明らかなように、情報が不足している、あるいは理解できないなどの理由で、主体的判断ができず、ゆえにインフォームドコンセントを与えることができない(平成15年度試験では「同意を与えることのできない」と表現されました)状態に置かれた人・人々を「公衆」といいます。

専門職業人

専門職業人(プロフェッショナル)は一般に以下の5つの特性で非専門職業人と区別されます。

(1) 高度な専門的応用知識を有している。
(2) 専門職の知識・技量は社会の幸福に不可欠である
(3) 専門職サービスについて独占権またはそれに近いものを持っている。
(4) 高度な個人的判断と創意工夫を有するがゆえに自らの決定権(自治)を有する。
(5) 上記による地位乱用を防ぐため、倫理基準による自己規制が求められる。


 (1)~(4)のように、専門職業人は高度な知識・技量を有するがゆえに、社会から信頼され、独占権・決定権といった力を持つことを社会から許されます。
 その信頼を裏切ることのないよう、専門職業人は自らを厳しく律する必要があるのです。
参考:「科学技術者の倫理~その考え方と事例」 日本技術士会訳編、丸善

利益の相反

様々な理由(外的影響力や誘惑、別の利益など)により、顧客・依頼人が自分に期待している利益を小さくしてしまうことです。ちょっとわかりにくいので例示します。
  管理技術者が、下請け業者に友人・肉親などを指定する。もっと安くてよい仕事をする業者がいる。

 ここにおいて、クライアントはもっと安価にできるはずの事業に不要なカネを支出する必要が出てきます。これが利益の相反です。
 たとえばNSPE(全米プロフェッショナル・エンジニア協会)は次のように定めています。

技術者は、自らの専門職業の義務が、相反する利益によって影響されないようにしなければならない。
a.技術者は、材料または設備の供給者から、その製品を指定することに対する経済的またはその他の報償を、無料の技術業の設計を含めて、受け取ってはならない。
b.技術者は、それに対し自らに責任がある仕事との関係で、自らの依頼人または使用者と取引する請負契約者またはその他の当事者から、直接または間接に、手数料または割戻し量を受け取ってはならない。


 利益の相反には、事実上(実際にそれが起こっている)、潜在的(今後起こり得る)、外見上(起こっていないが起こっているように見える)の3種類があります。外見上というのは、たとえば最適な下請け業者を選んだが、それがたまたま肉親である場合、「最適だから」ではなく「肉親だから」選んだと思われるといった状況です。
 特に外見上の利益の相反を避けるため、利益の相反(あるいは疑われそうなもの)は開示すべきであるとされています。
 肉親の会社に下請けに出す場合、それが最適な判断であるという資料とともに、肉親の会社である事実も開示し、クライアントのインフォームドコンセントを保証するということです。

参考:「第2版 科学技術者の倫理~その考え方と事例」 日本技術士会訳編、丸善 p.158~159

 利益の相反の解決法ですが、基本的にはまず、どちらが優先するかを判断します。
 これで優先度が明らかな場合はそちらを取りますが、そもそもこういう場合は利益相反とは言わないことのほうが多いと思われます。

(例)友人との会食に遅れそうなので急いでいたら子供が川で溺れている。助けに行くべきか?


 実際に問題になるのは(そして試験で出題されるのは)優先度が決められない場合です。このような場合、最も適切な解決法と言われるものに創造的第3の解決法があります。
 どちらの利益のみを優先することもできないとき、両利益の要求事項のいくつかを取り込んだ中間的な第3の選択肢を取るというものです。
 実例としては、マーチン・ルーサー・キングやガンジーが取った「非暴力抵抗」があります。倫理・モラルに反する法には従わないが、その法に不服従であったことの責任は取る(法を尊重する)というものでした。社会体制に反対するとき、自分の信念と市民として社会規範に従うべきであるという2つの利益が相反します。自分の信念のみを優先し、社会規範には従わないということになると、これは暴力・テロに至ります。自分の信念に従い、しかし社会規範にもできる範囲で従った結果が非暴力抵抗であったということです。
 環境に配慮して事業を進めた結果利益を圧迫して株主に非難される企業は、利益確保責務と環境保全責務が相反しています。この創造的第3の解決法の1つは環境会計・トリプルボトムラインでしょう。企業決算を利益だけを尺度にせず、利益と社会貢献、環境保全への寄与の3本立てで企業決算とするものです。※もしあなたが「決算というとカネ以外の尺度は考えられない」と思うなら、それは頭の硬直化の危険シグナルですよ…^^;)
 こんなムズカシイ事例でなくとも、たとえば「生活に困っている人に援助したいが自分には生活していくのにギリギリの金しかない。といって不正な手段で金を得ることはできない」と悩んでいる人に「それなら募金活動をしなさいよ」とアドバイスする、これが創造的第3の解決法です。

功利主義

 倫理学には、「功利主義」という考え方があります。これは、倫理学の三理論といわれる徳倫理学、義務倫理学、帰結主義的倫理学(功利主義)の1つです。
 徳倫理学は行為者に着目します。ウソをつくということはだめな人間になることだからウソをついてはいけません」という考えです。
 義務倫理学は、行為に着目します。「ウソは他人を欺く悪しき行為です。それにみんながウソを言ったら困るでしょう。みんなが同じことをしたら困るような好意をしてはいけません」という考えです。
 帰結主義的倫理学(功利主義)は結果に着目します。「ウソをつくと信用を失うという悪しき結果をもたらします。それにみんながウソを言ったらお互い信用できなくなり、社会によい結果をもたらしません」という考え方です。
 さて、功利主義では、倫理的に正しい行動は、最大多数の最大幸福を実現する行為であるとされます。

 功利主義的な取組みには以下の3つがあります。

(1) 費用便益分析
 プラス・マイナスの功利を金銭的評価に変換することで功利主義の基準をできるだけ定量的に推し量ろうとするものです。
(2) 行為功利主義
 この行為は、他に取りえるどの方法よりも多くの幸福を生むことができるか?と考えることです。
(3) 規則功利主義
 たとえば交通規則のように、功利を大きくすることを規則化して従わせるという考えです。


 功利主義は、規則功利主義がそうであるように、個々人の自由な裁量をあまり当てにしません。自己判断をし、その結果を自己責任として受け入れるということをあまり推し進めると、個人にとって過酷な状況になりかねません。これを緩和するという効果はあります。
 一方で、多数決の論理になってしまい、少数意見の切捨てに陥りやすいという面も持っています。
 なお費用便益分析は、誰の幸福を追求するかということを十分考えて計算を行わねばなりません。フォード・ピント事件(エピソードはこちら)のように、企業の立場だけを考慮して行われる費用便益分析は、功利主義ではなく、ビジネス上の効用計算にすぎません。

技術士倫理エピソード「簡単な保険数理さ」~フォード・ピント事件~

 技術者倫理に関する代表的なエピソードをご紹介しましょう。1960年代のフォード・ピント事件と、それをモデルにした映画です。

 1960年代後半、フォード社は、軽量廉価のサブコンパクト車「ピント」を設計した。
 フォード社は、日本製小型車との競争のため、通常3年半かかるところを2年半で生産に持ちこんだ。この短期間の枠では技術内容よりもスタイルが優先され、その結果、ガソリンタンクの最適位置は後部車軸とバンパーの間と決められた。この構造では、差動歯車ハウジングのボルトの頭が露出しているため、後ろからの衝撃でタンクがそれに向かって前方に動けばガソリンタンクを刺し通すかもしれなかった。
 ピントはその時点で適用される全ての連邦安全基準に合格していたが、数年後に発行する新基準に合格しないことを技術者たちは知っていた。実際、新たに定められた時速20マイル(32km/h)試験では、12回の後部衝突のうち11回が不合格で、衝突によりガソリンタンクが破裂し、車体は炎上した。
 フォード社は、タンクにゴム製シートを装着したり、タンクを後部車軸の後ろから上部に移動して衝撃テストを行った結果、両方とも試験に合格した。しかしこれら改善には、1台あたり11$が必要であった。
 フォード社の自動車安全担当取締役は、「衝突事故がもたらす燃料の漏洩と火災による死亡事故」という文書を作成した。ここでは次のように計算された。
  (改善費用)販売台数1250万台×単位費用11$=約178億円
  (社会的利益)死傷者の出る火災180件×(死亡による損失20万$/件+負傷による損失67千$/件)+車両炎上2100台×車両損失700$=約64億円
       ※死亡者の損失は、将来生産額から保健・法廷費用・葬式代・犠牲者の苦痛と災害補償までを含み国家高速道路交通安全管理局の調査により計算された。
 この結果をもとに、フォード社は設計改善費用がその社会的利益を上回ると判断し、そのまま販売を続けた。
 1972年、追突されたピントが発火・炎上、運転手が死亡し同乗者が大火傷を負った。この事故をめぐる製造者責任訴訟で、フォード社はガソリンタンク炎上の危険性を知りながら、経済的収支計算結果に基づき販売を続けたという事実が、退職技術者らによって暴露された。このため陪審は、現実の損害賠償350万$に1億2500万$の懲罰的損害賠償を命じた。しかしこれはあまりに高額であったため、後に裁判所は350万$に減額した。

 アルゴ・モータースという会社が85年型メリディアンという車を販売した。この車は、事故を起こすと炎上することが多く、欠陥車ではないかとの疑いがあったが、原因究明はできていなかった。
 リサーチ担当者のパベルは、上司から「テストは忘れてよい」と言われていたが、単独でいろいろ実験した結果、構造上の問題で、ウィンカーを出して左折時に衝突すると、連鎖反応により燃料タンク内のガソリンに引火して爆発することを発見した。
 一方、アルゴ・モータースが依頼した「計算屋」と呼ばれるリスク・マネジメントの専門家は、次のような計算をした。
 (リコール費用)欠陥車台数17.5万台×修理費300$=5千万$
 (事故損失)事故確率1/3000台、事故件数150件×訴訟で相手方が勝った時の費用20万$=3千万$

つまり、リコール費用がその社会的利益を上回ると判断された。計算屋が「簡単な保険数理さ」というこの計算結果によって、パベルが提出した書類は闇に葬られ、その後彼は退社した。メリディアンはそのまま販売され、アルゴ・モータースはリコールしなかった。
 その後、実際に事故は150件ほど起こり(皮肉なことに計算屋の見込みが正しかったことが証明された)、アルゴ・モータースは多額の懲罰的賠償金を支払うことになる。
※主演のジーン・ハックマンが巨大企業の悪に立ち向かうが、企業側弁護士は娘だったという、「自動車事故の訴訟をめぐって、敵味方にわかれた父娘弁護士の争いを描く」設定の映画です。

 この事件が技術者倫理の事例としてよく取り上げられるのは、フォード社の行った費用便益分析です。これは許されることなのでしょうか。
 フォード社の計算は、リスクアセスメントとして行われたものであり、計算の中身自体は妥当でありましょう。まさに「簡単な保険数理」です。これは費用便益計算であり、ごく一般的に行われています。保険をかける場合は、保険業者が費用≧便益とならない範囲で保険料を決めます。
 費用便益分析は、倫理学の功利主義(帰結主義的倫理学)の判断手法の1つですが、このエピソードでフォード社や「計算屋」が行った計算は、功利主義の費用便益分析(効用計算とも言われます)なのでしょうか。もしそうであれば、フォード社の行動は倫理的に正しいことになります。
 功利主義では、倫理的に正しい行動は、最大多数の最大幸福を実現する行為であるとされます。ところが、フォード社の計算(映画での計算屋の計算はさらにあこぎなものになっています)は、「企業にとっての最大幸福」を追求しています。功利主義による適切な費用便益分析をするなら、死者と負傷者に加え、すべての製品購入者の被る不便を考慮し、さらには販売代理店の被る被害なども考慮し、これらの要求すべてを社会的利益として計上すべきです。
 倫理学の功利主義を誤って適用した事例として、日本の談合が上げられるかと思います。談合グループは、「共存共栄」を社会的必要性の根拠にしていました。よって、その共存共栄を乱す者は「他人の迷惑を顧みない」よくない行動、つまり非倫理的であるとされていました。談合をすることで共存共栄が図れ、みんなが幸せになる、これのどこがいけない?というわけです。しかし、功利主義でいう「みんな」は世の中の「みんな」です。談合グループや同業者、地域業者などの限定された枠の中での最大幸福ではなく、世の中全体での最大幸福のために談合は是か非かという視点で判断する必要があります。
 つまり、功利主義的な考え方をするのであれば、
 フォード社はユーザー全員や販売店、さらには事故に巻き込まれるリスクを負う一般人など、その車にかかわる全ての人の最大幸福を考えたか?
 談合業者は、自分たちだけでなく、国民みんなにとっての最大幸福を考えたか?
 経営者は、会社関係者(株主を含む)だけでなく、国民みんなにとっての最大幸福を考えて経営判断をしているか?
 技術者は、自分や自分の関係者、発注者だけでなく、国民みんなにとっての最大幸福を考えて技術判断をしているか?

という尺度で評価されることになります。それを定量化するために費用便益分析が行われるべきなのです。

 功利主義と並ぶ倫理の理論が、カントの思想である人間尊重倫理です。その中に、人権という重要な考え方があります。
 おそらくほとんどの国において、国民は法律により基本的人権を保障されています。その中には生きる権利が含まれます。あるいは健康に生活する権利が含まれます。
 そしてそれは、いくら出せば他人のその権利に干渉できるというものではありません。すなわち、他の社会財に換算することはできても、それと交換するようなことはできません。人権は、当人にとっては権利、他人にとってはその当人に対して負う不干渉の義務です。
 権利を有する者は、たとえば保険によって自分の命に値段をつけることはできますが、他人はそうする権利はありません。つまり、フォード社が命の値段をつける行為は、計算・試算すること自体は構わないでしょうが、その結果、車の修理費用や会社の損益など、他の社会財と比較して優先度を決めるようなものではありません。つまり、フォード社はユーザーの生命に対する権利に干渉したといえるでしょう。

 「命に値段をつける」というと、保険が思い出されます。
 フォード社と違うのは、保険は自分の命の値段を、保険業者の提供する情報をもとに、自分自身で決めているということです。すなわち、自分自身の生命の持つリスクに対して、定量的なリスク移転を行うこということに関して、十分に知らされた上の同意を与えているのです。つまり、インフォームドコンセントが成立しており、これに関しては公衆ではなくなっているのです。
 この点で、フォード社の行為とは全く異なります。

 映画におけるパベルはメリディアンの持つ欠陥について、警笛鳴らしあるいは内部告発はできなかったのでしょうか。フォード社の、ピントの欠陥を知っていた技術者はどうでしょうか。
 ディジョージは、内部告発の道徳的正当化の5つの条件をあげています。これは、いわば内部告発チェックリストといえるでしょう。
(1) 一般大衆に深刻かつ相当被害害が及ぶか?
(2) 上司へは報告したか?
(3) 内部的に可能な手段を試みつくしたか?
(4) 自分が正しいことの、合理的で公平な第三者に確信させるだけの証拠はあるか?
(5) 成功する可能性は個人が負うリスクと危険に見合うものか?
 ディジョージによれば、(1)~(3)が満たされれば内部告発は道徳的に許されます(内部告発してもよい)。さらに、(4)と(5)も満たされれば内部告発は道徳的に義務となります(内部告発すべきである)。
 (1)は確実に満たされているでしょう。(2)も自動車安全担当取締役が知っているのですからクリアされたと思っていいでしょう。(3)はどうもやっていないようです。(4)については、フォード社は欠陥の存在自体は認識し、そのリスクの顕在化する確率や被害規模もそれなりに求めた上で費用便益分析によりピントの欠陥を隠蔽するという経営判断を下しているので、告発する内容は「ピントには欠陥がある」ことの暴露でしょう。欠陥の存在については、性能試験担当技術リーダーなど、そのような立場にある技術者がいた可能性は高いと思われます。(5)については、このようなフォード社の経営判断を考えるとかなり厳しいものがあったと思います。
総合すれば、(3)の試みを行うべきであり、その結果受け入れられなければ、警笛慣らしをしても倫理的にはとがめられないし、(4)をクリアした上で、勇気を出して(5)も乗り越えて警笛慣らしをすべきであろう(そういう形でできることはある)と考えることができます。
 なお、「訴訟」よりもホイッスル・ブローイングについて考えるきっかけになりそうなのは、「チャイナ・シンドローム」でしょう。原子炉の異常振動と、検査の手抜きという2つの状況証拠から、原子炉がメルトダウンするリスクがあることを察知した技術者が、コントロールルームを武力占拠してマスコミ公表を行おうとし、最後は殺されてしまいます。異常振動は発生しましたが、メルトダウンは起こりませんでした。異常振動の原因や機構に関して定量的な情報がなかったため、メルトダウンは定量化できないリスクだったのですが、定量化するため手抜き検査部分をきちんと検査することは会社から許可されなかったのです。それどころか会社から命を狙われ、また運転開始が秒読みだったことから、究極の判断として不法行為に及んだのでしょうが、それが自分の射殺につながってしまいました。この映画はフィクションですので(スリーマイル島原発事故をもとにしてはいますが)、事例といわけにはいきませんが、考えるきっかけにはなると思います。

内部告発、公益通報者保護法

 ディジョージは、内部告発の道徳的正当化の5つの条件をあげています。これは、いわば内部告発チェックリストといえるでしょう。
(1) 一般大衆に深刻かつ相当被害害が及ぶか?
(2) 上司へは報告したか?
(3) 内部的に可能な手段を試みつくしたか?
(4) 自分が正しいことの、合理的で公平な第三者に確信させるだけの証拠はあるか?
(5) 成功する可能性は個人が負うリスクと危険に見合うものか?

 ディジョージによれば、(1)~(3)が満たされれば内部告発は道徳的に許されます(内部告発してもよい)。さらに、(4)と(5)も満たされれば内部告発は道徳的に義務となります(内部告発すべきである)。
 他にも内部告発の是非を判断する基準はあります。たとえばボウイ&デュスカの基準は以下のようなものです。
(1)適切な道徳的動機から行われていること。
(2) 告発の前に、自分の意見を内部のすべてのチャンネルを利用して伝えていること。
(3) 内部告発が理性的な人達を説得し得る証拠に基づいていることを告発者が確信していること。
(4) 道徳違反の深刻さ、切迫さ、特定性などについて注意深い分析をしてから行動していること。
(5) 内部告発が、道徳違反を回避し、暴露することの責任とつりあっていること。
(6) 成功する可能性があること。
 成功する可能性を重視しているのは、成功の見込みのない内部告発はするなということではなく、正当化されることが少ないということです。このように、内部告発の基準はおおむね似たような内容です。
 ところで、内部告発と似た用語に「警笛鳴らし」(whistle-blowing)があります。これは、組織が重大な不正を犯していると被用者が考える場合に、その被用者が公表することです。まるっきり内部告発と同じでは?といと思えますね。警笛鳴らしは一般に名乗るか、名乗るまでもなく身元がわかります。対して内部告発は、匿名という方法があります。
 すなわち、組織の被用者が組織の不正を公表する行為は内部告発で、名を名乗ってそれをするのを特に警笛鳴らしというと覚えておけばいいでしょう。
 警笛鳴らしは名乗るがゆえに本人が不利な扱いを受ける可能性が高く、それゆえに保護が必要になります。このための法律が公益通報者保護法です。

人間の尊重

 功利主義と並ぶ倫理の理論が、カントの思想である人間尊重倫理です。人間尊重には3つの取り組みがあります。

黄金律
 「自分がされて嫌なことは他人にもするな」という判断基準である。
 我々(行為者)がその行為によって影響を受ける人(受領者)と立場を交換することを喜んでやるかどうかで判断する。喜んでやれば、それは倫理的行動である。
 ほとんどの宗教で、これはうたわれている。

自滅基準
 たとえば、お金を借りて返さないということをみんながやれば、信用してお金を貸すことはできなくなり、結果的に自分も借りられなくなる。
 また、ケンカを制止しようとしてケンカしている当人を殴るということをみんながやれば、それはケンカになってしまうので、当初の目的が達成できなくなる。
 駐車場が目的の建物から離れたマス目しか空いていないときに建物の近くのマス目以外のところに停めるということみんながやれば、駐車場が大混乱になって、結果的に自分も停められなくなる。
 つまり、自分がやることと同じことをみんながやれば、自分自身の自滅にならないかという判断基準である。

人権
 たとえば生きる権利を持つということは、他者は殺さない義務を持つということである。つまり、我々は有する全ての権利に対して、他者はそれに対応する不干渉の義務を負っている。その多くは法により厳格に守られる。生命、身体・精神の健康、自由、所有、宗教、差別、プライバシーなどである。

 基本的には以下の3ケースに代表されるように、異なる利益が対立関係になる利益の相反(トレードオフ)の問題が主です。
 ただし、この手の問題は少なくなってきています。仮想事例は、技術者倫理に関する知識の応用問題といえるものですが、適性科目が「技術者倫理の基礎知識」を確認する試験になってきているため、仮想事例が少なくなっているのかもしれません。もちろん「出題されない」という保証はどこにもないので、特に記憶しなければならない用語等もありませんからひとおおりポイントだけおさえておくことをお勧めします。

  1. 公私混同
    肉親・友人などが利害に絡む場合の判断を問います。公共の利益と個人の利益が相反します。
    便宜供与などわかりやすいものもありますが、一番困るのが、「黙っていた」という例です。
    肉親のメーカーの製品が実際に優れていたので採用した。肉親が経営しているということは選定基準とは無関係なので黙っていた。
    といった事例です。「製品の採用」を人事に置き換えても同じです。
    「優れた製品がたまたま肉親経営のメーカーだっただけで、なんら便宜許与は図っていないから別にいいだろう」という理屈ですね。これが肉親だからということで性能が低い製品を無理やり採用したのであれば業務上横領にあたるかもしれませんが、実際に優れていたのであれば法的には問題ないでしょう。しかし倫理的には違います。
    このような時の態度としては、黙っているのは×です。基本的に利益の相反を生じた時には情報開示をすることがポイントです。李下に冠を正さず。肉親だからと便宜供与はしないのは当然ですが、客観的判断をしたのなら、無用な誤解を招かぬよう正々堂々と情報開示すべきです。
  2. 雇用者・クライアントへの従属・便宜
    社長やクライアントが、データの改ざん・捏造や登録部門外の技術士のようなふりをしてくれというルール破りを頼んできた、というケースです。公共の利益と会社の利益(あるいは社員としての自分の利益)が相反します。
    無論、断らなくてはなりません。雇用関係や発注受注関係の維持より公益を優先させる姿勢を問われます。
  3. 守秘義務と公益確保の相反・内部告発
    欠陥や不正行為を改めるよう雇用者・クライアントに勧めたが聞き入れられず、とうとう告発した(あるいは黙認した)という行為に関して是非を問う問題です。これは守秘義務と公益確保という技術士としての義務・責務間の相反です。
    必ずといっていいほど出題されていますし、二次口頭試験でもよく聞かれます。微妙なケースでは意見が分かれることも少なくありません。
    (1)あくまで公益優先、(2)できる限り説得する、(3)告発は担当当局に、というのが正解原則です。(1)は当然として、(2)を怠って短絡的に行動してはいけません。(3)は直ちにマスコミに公表することが公益を損なう場合もあること、そういう不正を担当する当局が存在しているのだから、そこへまず報告する社会ルールであることによります。
    また、「正義のヒーロー」を気取って独善的になってはいけません。
    さらに、欠陥や不正が明らかでない(確証がもてない)場合は、それを確認するための調査を行う努力が必要です。

なぜ技術士が技術者倫理をうるさく言われるのかということも理解しておく必要があるでしょう。技術士は技術業務のリーダーとなるため、影響力があります(あくまで業務を通してですが)。よって、その人が見識・倫理観に欠けた人物であった場合、その悪影響が無視できない危険性があるためです。このことは、マッドサイエンティストのようなもの、あるいは原爆製造の歴史などを考えれば理解できるでしょう。科学と同様、技術も倫理観を伴わねば人類に災厄をもたらすことになります。乱暴な言い方をすれば、下っ端技術者は言われたとおりに働いていれば何を考えていてもいいが、技術士はそうはいかないので、高い倫理観が必要ということです。

 技術者倫理は「事例に学ぶ学問」ともいえ、事例を特に大切にします。人の生命財産にかかわる事故や反社会的行動があった時に、日本人はその原因を責任者である個人や企業の資質に全て押し込んで、これを吊るし上げて糾弾し溜飲を下げ、後は忘れてしまいますが、それでは社会は改善しません。喉もと過ぎればなんとやらで、しばらくすると同様の事故や反社会的行動が再びおきます。そうではなくて、その原因の中に何らかの普遍性、つまり人なら誰でも持っている弱点や誤解、あるいは社会構造など、この問題を事例として、よりよい規範が作れないかと考えるべきです。
 たとえば小学校でいじめがあり、いじめられた子といじめた子が特定されたとします。いじめた子を吊るし上げてその子の資質に全ての原因を求め、その子を反省させてすべておしまいにするでしょうか。それではただの「懲罰」ですね。
 そうではなく、その原因を探るでしょう。ちょっとした言葉のすれ違いかもしれません。それなら他人を気遣う言葉使いについて子どもたちに教え考えさせるでしょう。何かの誤解があったのかもしれません。それなら誤解が起こらないような工夫とか、とにかく何でも話せる雰囲気作りなどについて話し合ったりできるでしょう。こうしてはじめて「教育」になります。
 一次試験は技術者高等教育を履修したJABEE認定プログラム修了者と同等の学力があるか、つまり「教育」の成果である学力を確認する試験ですから、事例は「こんなけしからんヤツがいたんだ」ではなく、「これこれこのような行動が、こんな結果を生んでしまった。だからこうすべきだ」という捉え方をしなければなりません。

 このようなこともあって、事例はいつもトピック的なものばかりとは限りません。たとえば技術者倫理に関する事例の代表例であるスペースシャトルチャレンジャー号の爆発事故は何度も出題されています。フォード・ピント事件もそうです。国内事例でも、JCO臨界事故(作業マニュアルから大きく逸脱した方法で放射性物質を取り扱って臨界状態にしてしまい被曝死者が出た)はスタンダード事例になっていますし、カネミ油症事件やソリブジン事件などもそうです。
 そういった事例は、ぜひ目を通して、どのような倫理的問題があったのかを整理しておくことをお勧めします。決して「誰が悪者か」というマスコミ的視点はなく、「何に問題があったのか」という視点を持ちながら読んでください。できれば技術者倫理に関わるいろんな知識を持ってから読まれるとなおいいでしょう。

 なお、事例はその内容自体を覚えておく必要はありません。問題に取り上げられる場合は、必ずその事例の内容について説明した後で問題が出されています。
 また、「この事件ならこれ」みたいに当該事例が示唆する倫理事項を決め付けておくと失敗します。1つの事例には複数の教訓が含まれていますから、何を問うためにこの事例を持ち出したのかをしっかり見極める必要があります。

 なお、技術士会では実事例をそのまま使わず、それを元に創作事例を作成したものを倫理学習用に公開していますので、参考になるでしょう。こちら

実際の判決文が引用されます。判決文は、企業や技術者・役人(公人)に社会が求めていること、やってはいけないこと、やってしまった場合の影響に関する社会判断を述べています。よって、それらを正しく認識しているかどうかを確認する問題になります。

企業・個人は、自らの社会的責任を認識し、それを裏切らないように自制すること、さらには具体的な是非判断と影響予測ができることが求められています。
一個人としての責任・責務と、社会人(公人)としての責任・責務は次元が違うことを認識していれば、何ら迷うことなく解けると思われます。
なお、判決文は文章としても洗練され正確を期していますから、穴埋め問題では、文法が正しいか・違和感がないかで正解を絞り込めます。そういう意味では文章力も問われているといえます。
ただ、裁判事例は近年出題されなくなっています。

環境は技術者倫理の重要な一分野ですが、最近は出題がなくなってきています。一般に環境問題は、次のような特徴があります。

●予測が簡単ではない
大気・水質拡散予測など高い技術力や、生態系の正確な把握が必要だったりします。
●長期的な予測になる
近視眼的でなく、先を見通した予測になり、一般人には理解しにくくなります。
●価値観・判断基準に個人差がある
生態系などの自然環境保全については、ぶれのない基準というものがありません。
すなわち、環境の価値に関する個人差が大きいといえます。

こういう中で、環境に影響を与える開発サイドの人間の中でも影響力の大きい立場である技術士(専門職技術者)として、環境保全に関する倫理観は重要であるという基本認識の上にたった出題がなされます。
基本的には、環境保全と開発のトレードオフ関係の判断が問われます。単純・短絡的に「環境優先」とか「開発優先」というのではなく、環境要素をよく調べ、何が(どこが)どの程度大切なのかを把握したうえで、開発との共存を図るという姿勢が大切です。
このような考え方をまとめたのが、かつてのアジェンダ21、現在のSDGsの「持続可能な開発」(あるいは「持続可能な発展」)という言葉です。幸福な生活のために進歩・発展しなければならないが、環境に配慮しなかったら結局それは続かない(破綻する)という基本認識です。
以上のような基本認識を理解していれば、あまり迷うことなく解答できると思います。

  1. 産官学連携
     産官学連携のように組織横断的な動きの中では、組織のルールが及ばなくなることもあるので、個人の倫理観に負うところが大きくなります。
     倫理観といっても特別なものではなく、公私の区別、公益確保など他の場合と同じ内容です。
  2. 市民参加
     今後注目されるのはNPOなどの市民参加の動きです。現在は、NPOなどのムーブメントは行政サイドとしてもニーズが大きいので、基金・補助金における監査体制が甘い傾向があります。不正に補助金を受給していた団体もありましたが、今後はNPO・NGOにも高い倫理観が求められるようになるでしょう。
     現在は、メンバー間の意見対立など内部事情で崩れるNPOが多いようですが、今後は社会の要請に応えられるかどうかでNPO・NGOの淘汰が始まると予想されます。そしてその社会的要請には、公共性(独善的にならない、社会との連携を大切にし身勝手なことをしないなど)も含まれます。
  3. 男女共同参画
     男女共同参画社会への動きが活発化していますが、ジェンダー(性差)の問題はデリケートであり、セクハラは「逆差別」的現象も一部で生んでいます。
     基本認識は、以下のとおりです。
    ●ジェンダーを理由に差別してはいけない
     「女性は腕力がないからこの仕事はできない」ではなく、「この人は腕力がないからこの仕事は無理」というように、性でひとくくりにするのではなく、個別に判断します。
    ●社会参加も同等に
     「女性だから」差別してはいけませんが、同様に「女性だから地区の役員とかPTA役員などは勘弁してもらう」というのも通りません。
    ●女性の社会参加を促進する土壌作り
     家事分担、出産育児へのケアや男性参加といったことはもちろん、たとえばPTA役員になって集会で家を空けるなどへの理解、性差にかかわらず能力を認め尊重しあう雰囲気・価値観の醸成が求められます。
     そういった土壌なしには、女性の社会参加・精神的自立は促進されませんし、ひいては性差別もなくなりません。
     そしてそのような土壌作りには、老若男女がそれぞれ自分の立場でできることを考え、実行する必要があります。すなわち、公共心・倫理観が求められます。
     またこのことは、少子高齢化問題にも関わります。厚労相「女性は産む機械」発言のように、単純に女性ががんばって産めばいいという問題ではなく、結婚・出産を敬遠する社会構造になっているという問題に目を向ける必要があるでしょう。
  4. 技術者の信頼性の確保
     継続教育や査読など、技術者のレベル維持(資質の維持向上)に関する狙いや態度についての設問が増えつつあります。
     継続教育はなぜ必要なのか、わからないという人はいないでしょう(登録維持のためのルーチンワークに形骸化していると非難する人はいるでしょうが、実施上の問題点を理由にそれが本質的に誤った手法・理念であるという主張は誤りであることは明らかです)。
     技術者は継続教育その他により、自身の有能性を保たねばなりません。そして、自身が有能でない仕事をすべきではありません(有能性原則)。H15問題に、長期療養の間に最新技術に取り残された技術者が、その最新技術を必要とする業務を請け負うべきかという仮想事例問題がありましたが、これはまさに有能性原則のことを問う問題です。
     そして「継続教育や有能性原則を問う問題は、今後も出題される可能性は高いと思われます」と言っていた矢先のH18には、JABEEの内容に関する知識問題が出題されました。文科省にとってみれば、この問題に対する答えがJABEE、IPD、CPDですから、それを知っているかどうか問うのは当然といえば当然といえます。

Ⅲ 専門科目

科目の概要と効果的な対策

 専門科目は受験部門の基礎知識を問います。問題レベルは理工系4 年制大学の専門教育課程程度で、35 問が出題され、その中から25 問を選択解答します。
 試験は午前中2 科目目で、試験時間は2 時間です。2 時間で25 問ですから、1 問あたり5 分弱かけられますので、基礎科目に比べれば解答問題の選択にも解答にも少し余裕があります。

  1. 大学で教えていないことは出題されない
     「JABEE 認定プログラム履修者と同等の学力確認」という一次試験の性格上、専門科目問題は、大学の専門課程テキストに書いてある内容からの出題が基本になります。例外もありますが、「大学で教えていないことは出ない」のが基本です。
     従って、技術基準等の知識や実務上の留意点などではなく基礎理論や考え方などを中心として、基準要綱等マニュアルではなく、大学の専門課程全教科書から引用したような問題になります。
  2. 大学で教えている内容に合わせて問題配分される
     たとえば建設部門は、二次試験では土質基礎~建設環境の11 科目に分かれていますが、大学教科書の記載内容にあわせたウェイトで、偏りのある出題がなされています。
     具体的には、土質基礎(特に土質工学)で4 問、鋼構造コンクリート(特に構造力学・橋)で8 問、都市計画(特に都市計画)で4 問、河川砂防(特に水理、河川)で9 問の合計25 問、つまり全体の7 割以上を占めており、その他の科目分野が1~2 問ずつという出題ウェイトになっています。ただし、たとえば道路1 問といいながらも都市交通問題も道路分野に重なりますし、海岸と港湾も重なる内容のことがあります。また施工計画はその内容によってはトンネルや鋼コン、土質基礎に重なったりしています。このように、必ずしも選択科目分野ごとにピシッと分かれているわけではありません。
選択
科目
2020
(R02)
2021
(R03)
2022
(R04)
2023
(R05)
2024
(R06)
2025
(R07)
出
題
数
内容出
題
数
内容出
題
数
内容出
題
数
内容出
題
数
内容出
題
数
内容
土質
基礎
4土質2
土圧1
地下水1
4土質44土質3
土圧1
4土質3
土圧1
4土質44土質3
地下水1
鋼
コン
8構造力学2
溶接1
鋼橋1
道路橋1
コン3
8構造力学3
鋼材2
コン3
8構造力学2
鋼材1
道路橋2
コン3
8構造力学2
鋼橋2
道路橋1
コン3
8構造力学2
鋼材2
道路橋1
コン3
8構造力学2
鋼材2
鋼橋1
コン3
都市
計画
4都計2
都市交通1
国土計画1
4都計2
都市交通1
国土計画1
4都計2
都市交通1
地方計画1
4都計3
都市交通1
4都計3
都市交通1
4都計3
国土計画1
河川
砂防
9水理4
河川2
砂防1
海岸2
9水理4
河川2
砂防1
海岸2
9水理3
河川3
砂防1
海岸2
9水理4
河川2
砂防1
海岸2
9水理4
河川2
砂防1
海岸2
9水理4
河川2
砂防1
海岸2
港湾
空港
1空港1 1港湾11港湾11港湾11空港11港湾1
電力
土木
2水力発電1
発電全体1
2水力発電1
再エネ1
2水力発電1
火力発電1
2水力発電1
再エネ1
2火力発電1
再エネ1
2水力発電1
発電全体1
道路1道路設計11舗装11道路設計11舗装11舗装11舗装1
鉄道1軌道11軌道11軌道11軌道11軌道11軌道1
トン
ネル
1シールド11山岳11山岳11山岳11シールド11山岳1
施工
計画
2施工計画1
施工管理1
2施工計画1
施工管理1
2施工計画1
施工管理1
2地盤改良1
工事積算1
2開削工法1
工程管理1
2施工方法1
施工管理1
建設
環境
2アセス1
建設環境1
2建設環境22建設環境22建設環境22アセス1
建設環境1
2環境法令1
建設環境1

専門科目対策は、次のようにすると有効だと思います。

  1. 得意・不得意分野を分類する
     35問中25問選択ということは10問捨てられます。すなわち、捨ててもよい分野もできることになります(基礎科目のような「各分野から最低1問解答」といった条件はつかない)。
     自分の得意分野・不得意分野をはっきり把握して、不得意分野はスキップして解答していき、選択できる問題数が不足する時にはじめて取り組むといったような対策を講じてはどうでしょうか。
     とにかく一度過去問題(ただし平成20年度ごろ以降)を解いてみて、
     ・得意    (自信をもって答えられるのが7割以上)
     ・やや得意  (自信をもって答えられるのが5割以上)
     ・やや不得意 (自信を持って答えられるのが5割以下)
     ・不得意   (自信を持って答えられるのが3割以下)
    というように分類し、3分野程度を上限に不得意分野を捨て、やや得意分野を得意分野に、やや不得意分野をやや得意分野に昇格させることに力点をおいて勉強してはどうかと思います。
  2. 過去問題でトレーニング
     基礎科目ほど過去問題が頻繁に流用されるわけではありませんが、出題分野が似通っていること、選択肢として提示される文章から必要な知識がだいたい把握できることなどから、過去問題をしっかり調べて、これを活用するといいでしょう。
     多くの問題が「誤っているものはどれか」という「間違い探し」ですが、これはつまり選択肢5つのうち4つの内容は正しいということです。とすれば、誤り選択肢を削除するなり正解を調べて正しい内容に修正するなりすれば、「全選択肢正解問題集」のようなものができますので、この内容を頭に入れれば、実際出題された問題に絞った最も効率的な勉強ができます。
     そのまま過去問題流用で出題される可能性もありますし、選択肢単位で流用される可能性はもう少し高くなります。そしてその出題テーマでまた出題される可能性はさらに高くなります。
  3. 大学のテキストで勉強する
     過去に出題された事項のみをスポット的に勉強するのではなく、できれば出題される可能性のある分野全般の知識を身につけるようにしたいものです。
     その場合は、できるだけ大学テキストを入手しましょう。ほとんどの場合は市販本なので書店やネットで購入できます。大学独自のテキストなどは大学の売店で購入できます。
     仕事に使うような指針基準書の類でもいいのですが、まずもって出題されないもの(大学で教えないこと)と必ず出題されるようなこと(大学テキストで基本的事項として教えていること)が混在し、効率の悪い勉強をすることになるかもしれません。

 以上1~3のうち「得意・不得意分野に分けて補強的に勉強する」ことはけっこう誰でもやっているのですが、「大学のテキストで勉強する」ことを実行している人は少ないでしょう。過去問題をやってみて非常に成績が悪い(4割も正解できない)とか、2年以上連続して不合格で、専門科目の成績が伸びないのが元凶だとかいう人は、この大学テキスト勉強をぜひ試みてください。
 35問から25問選べることも含めて単純に考えると、受験部門に相当する大学専門課程の教科ごとの期末試験で60点程度取れる状態であれば、専門科目で50%正解するのは難しいことではありません。

過去問題の傾向と対策
機械部門
  • 問題構成と配分
    • 出題分野は「材料力学」「機械力学・制御工学」「熱工学」「流体工学」の機械4力学および制御工学に明確に分かれており、毎年以下の通り極めて整然とした問題番号順で配置されています。
      • Ⅲ-1 〜 Ⅲ-10:材料力学(10問)
      • Ⅲ-11 〜 Ⅲ-22:機械力学・計測制御(制御理論4問程度、質点・剛体力学および振動工学8問程度の計12問)
      • Ⅲ-23 〜 Ⅲ-29:熱工学(熱力学・熱サイクル・伝熱工学の計7問)
      • Ⅲ-30 〜 Ⅲ-35:流体工学(流体力学・管路・境界層の計6問)
  • 出題形式の特徴
    • 計算・数式誘導問題が全体の約65〜70%を占めます。大学教養〜学部専門導入レベルの標準的・基礎的な力学モデルを対象としており、文字式で関係式を解く問題や、数値を代入して解く問題が中心です。
    • 残り30〜35%は基礎概念、用語の定義、単位の組み合わせ、または状態図・サイクルの名称照合などの知識問題です。
  • 過去問の反復出題性
    • 2011~2025年度の問題群を比較すると、同一のモデル図や設定、数値違いの問題、あるいは数年周期でほぼそのまま再出題されるテーマが非常に多くなっています。
  • 材料力学(問1〜問10前後)
    基礎的な応力・ひずみの計算から、はりの曲げ、柱の座屈、多軸応力まで毎年バランス良く出題されています。
    • 棒の引張・圧縮・自重・熱応力
      自重による丸棒や段付き棒の最大応力・伸び、複合棒(円柱と円筒の同軸接合、積層板)の温度変化に伴う伸びや熱応力、隙間のある棒の熱応力拘束問題が頻出しています。
    • トラス構造と不静定構造
      対称トラス構造の部材力(節点法やエネルギー法)、両端固定棒に作用する軸力と内力分布が定期的に問われています。
    • 軸のねじり
      丸軸の断面二次極モーメント Ip​=πd4/32 や極断面係数 Zp​=πd3/16 を用いたねじれ角・せん断応力・伝達動力の計算です。中空軸と中実軸の比較も頻出しています。
    • はりの曲げとたわみ
      単純支持はり・片持ちはりの曲げモーメント図(BMD)、せん断力図(SFD)、断面係数による最大曲げ応力の算出、および公式(集中荷重・等分布荷重・モーメント荷重によるたわみ)の適用が出題されています。
    • 柱の座屈
      オイラーの座屈荷重式 Pcr​=nπ2EI/L2 における支持条件別の有効座屈長さの比較、および座屈応力と降伏応力から限界長さを求める問題が見られます。
    • 応力状態・強度理論
      モールの応力円による主応力・主せん断応力の導出、薄肉円筒・球殻容器の円周方向応力・軸方向応力、ミーゼスの降伏条件、破壊力学(応力集中係数、応力拡大係数)といった問題が出されています。
  • 機械力学・計測制御(問11〜問22前後)
    以下のような問題が出ています。
    • 自動制御
      • ブロック線図の等価変換と一巡・閉ループ伝達関数の導出
      • 系の安定判別:特性方程式の根(極)の配置(実部が負で安定)、ラウス・フルビッツの安定判別法
      • 過渡応答・周波数応答:ラプラス変換表を用いた部分分数分解と逆変換、ステップ応答指標(立ち上がり時間、行き過ぎ時間、整定時間)、ボード線図・ベクトル軌跡・ナイキスト線図の特徴
      • 制御系の基本構造:目標値、制御器、操作量、外乱、制御対象、制御量、フィードバックループの用語定義
    • 機構・剛体の力学
      • 定滑車・動滑車とおもりの連成運動方程式、加速度の計算
      • 慣性モーメントの計算(円板、中空円筒、細い棒、平行軸・垂直軸の定理)
      • 振り子の運動方程式、力学的エネルギー保存則、角運動量保存則、ラグランジュの運動方程式(ラグランジアン L=T−U の立式)
    • 振動工学
      • 1自由度系の固有振動数(ばねの直列・並列合成、滑車を含む系)
      • 粘性減衰振動:減衰比 ζ、臨界減衰係数 cc​=2√(mk)、減衰固有角振動数 ωd​=ωn√(​1−ζ2)、不足減衰・過減衰・臨界減衰の定義
      • 強制振動と共振:変位伝達率・力の伝達率、防振支持条件
      • 多自由度系・連続体の振動:2自由度振動系の固有角振動数方程式、はりの横振動における境界条件(固定端・単純支持端・自由端の変位、たわみ角、モーメント、せん断力条件)
  • 熱工学(問23〜問29前後)
    状態変化の理論から熱力学サイクル、各種伝熱形態まで幅広く問われます。
    • 熱力学基礎
      熱力学第一法則・第二法則、理想気体の状態方程式、比熱比 κ=cp​/cv​、マイヤーの関係式 cp​−cv​=R、等温・等圧・等容・断熱・ポリトロープ変化、エントロピー変化量 ds の計算、マクスウェルの関係式
    • 蒸気および熱サイクル
      • カルノーサイクルの熱効率 η=1−TL​/TH​、冷凍サイクルの成績係数(COP)
      • 内燃機関サイクル(オットーサイクル、ディーゼルサイクル、ブレイトンサイクル)の p-V 線図、T-s 線図および熱効率式
      • 蒸気タービン・ランキンサイクル:湿り蒸気の乾き度、比エンタルピーによる仕事・効率計算
    • 伝熱工学
      • 熱伝導:フーリエの法則、多層壁・円管の熱伝導抵抗、断熱材の厚み計算
      • 対流熱伝達:ニュートンの冷却の法則、無次元数(ヌセルト数 Nu、レイノルズ数 Re、プラントル数 Pr、レイリー数 Ra)の意味と関係式、平板上の層流熱伝達特性
      • 熱交換器:総括伝熱係数(熱通過率 K)の合成式、対数平均温度差(LMTD)
      • ふく射伝熱:ステファン・ボルツマンの法則 E=σT4、黒体・灰色面、放射率
  • 流体工学(問30〜問35前後)
    流体静力学、ベルヌーイの定理、運動量理論、管路損失、境界層理論が均等に出題されます。
    • 流体静力学
      静水圧のつり合い、U字管・傾斜管マノメータによる圧力差測定、アルキメデスの原理(浮力)
    • 流れの基礎方程式
      • 連続の式(一次元管路、二次元非圧縮流 a+d=0)
      • ベルヌーイの定理:オリフィスからの流出速度(トリチェリの定理)、ベンチュリ管・縮小管の圧力差、よどみ点圧力(動圧 1/2​ρv2)
    • 運動量の法則
      • 噴流が平板や曲面に衝突する際に及ぼす力
      • 曲がり管に作用する流体力(反作用ベクトル)
      • 換気扇・ファンの有効動力と効率計算
    • 粘性流動と管路抵抗
      • ニュートンの粘性法則(平板間のせん断応力・所要動力)
      • 円管内の層流(ハーゲン・ポアズイユ流れ、放物線速度分布、圧力損失と流量)
      • ダルシー・ワイズバッハの式と管摩擦係数(層流時 λ=64/Re)
      • 急拡大管の圧力損失(ボルダ・カルノーの損失式)
    • 外部流れ・境界層
      • 平板上の境界層厚さ、排除厚さ、運動量厚さ(1/7乗則速度分布)
      • 円柱・球周りの流れ、抗力係数、カルマン渦とストローハル数 St=fd/U
      • レイノルズの相似則(風洞実験・水槽実験の流速換算)

出題傾向から、2026年度の試験に向けては以下の対策を重点的に行うことが有効と思われます。

  • 選択問題制度を活かした「得意分野の絞り込み」と戦略
    35問中25問を選択解答し、50%(13問正解)以上で合格となります。
    ここで、材料力学(10問)と機械力学・制御(12問)だけで22問あるので、熱工学(7問)または流体工学(6問)のどちらかを合わせれば容易に25問の選択枠を埋めることができます。
    ただし、特定分野に難問や出題不備が含まれる年度もあるため、4分野のうち最低3分野を重点的に仕上げ、残り1分野からも基礎的な知識・平易な計算問題を3〜4問拾えるように準備しておくことが得策ではないかと思われます。
  • 過去問反復によるパターン習得の徹底(類似問題の完全攻略)
    類題比率が極めて高いので、2011年度から2025年度までの過去問演習を繰り返し、問題を見た瞬間に解法アプローチが想起できる水準まで定着させることをお勧めします。
    特に、「オイラーの座屈荷重の境界条件比較」、「薄肉円筒・球殻の応力」、「1自由度ばね系の固有角振動数」、「臨界減衰定数」、「ブロック線図の伝達関数」、「カルノーサイクル・熱効率」、「噴流の衝突力」などは、過去問とほぼ同型で出題されます。
  •  必須公式・定理の整理と導出プロセスの確認
    単なる丸暗記ではなく、以下の基本関係式を瞬時に立式・適用できるように整理しておきましょう。
    • 材料力学
      フックの法則、軸力と伸び δ=PL/(AE)、ねじれ角 ϕ=TL/(GIp​)、はりの曲げ応力 σ=M/Z、代表的なたわみ公式(片持ちはり先端集中荷重 Pl^3/(3EI)、等分布荷重 ql^4/(8EI)、単純支持はり中央集中荷重 Pl3/(48EI))、オイラー座屈荷重 Pcr​=π2EI/Le2
    • ​機械力学・制御
      閉ループ伝達関数 G=Go​/(1+GoH)​、不減衰固有角振動数 ωn​=√k/m​、臨界減衰係数 cc​=2√mk​、平行軸の定理 I=IG​+md2、円板の慣性モーメント(中心軸まわり 1/2​mr2、直径まわり 1/4mr2)
    • 熱工学
      状態方程式 pv=RT、断熱変化関係式 pvκ=const.、Tvκ−1=const.、オットーサイクル効率 η=1−1/εκ−1、フーリエの法則 q=−k(dT/dx)、ステファン・ボルツマンの式 E=σT4
    • 流体工学
      連続の式 A1​v1​=A2​v2​、ベルヌーイの式 p+1/2​ρv2+ρgz=const.、運動量の法則 F=ρQ(v1​−v2​)、動圧 1/2​ρv2
  • 時間配分と計算ミスの防止
     試験時間は120分で25問を解くため、1問あたり平均4.8分です。さらに受験番号や氏名などを記入する時間(受験番号については一つ一つをマークしなければなりません)、35問中25問を選ぶ時間も含めれば1問当たり平均 4分までと思っておいた方がいいでしょう。
     まず重要なのは見極めの徹底です。一見して解法が浮かぶ知識問題や定型計算問題を先行して解き、方針が定まらない問題や計算手順の多い問題は後回しにして、確実に解ける25問を優先的に確保するようにしましょう。
     単位換算のケアも重要です。速度(km/h から m/s への換算)、圧力(MPa, kPa, Pa)、寸法(mm, cm, m)、温度(セルシウス度と絶対温度 K)の換算ミスによる失点を徹底して防ぐ必要があります。
電気電子部門
  • 問題構成と配分
     出題範囲は、電磁気学、電気回路、電力工学・電気機器、パワーエレクトロニクス・制御工学、電子回路・論理回路、情報理論、信号処理・通信工学、半導体・電気設備と、強電から弱電、情報通信まで非常に広範にわたります。
  • 出題形式の特徴
     出題形式の約6〜7割は、具体的な数値を求める計算問題や、適切な関係式・伝達関数を導出する問題です。
     残りの3〜4割は、物理法則の定義、各種機器や通信プロトコルの特徴、単位の組み合わせなどを問う知識・空欄補充問題で構成されています。
     全体として、大学教養から学部専門導入レベルの標準的な力学・回路モデルを対象としており、過去問と類似した図表や設定が毎年繰り返し出題される傾向が極めて強いといえます。

出題範囲は、大まかに以下のテーマ群に分類され、出題順序もほぼ固定されています。

  • 電磁気学・電気回路(問1〜問12前後)
    • マクスウェルの方程式、ビオ・サバールの法則、ガウスの法則を用いた電界・磁界の導出
    • 平行平板コンデンサの静電エネルギーや静電応力(マクスウェルの応力)
    • キルヒホッフの法則、テブナンの定理を用いた直流回路網の計算や、RL・RC回路の過渡現象(時定数の算出や微分方程式の解)
    • RLC交流回路の共振条件、インピーダンス計算、交流ブリッジ回路の平衡条件
  • 電力工学・電気機器(問13〜問17前後)
    • 直流機、同期機、誘導電動機の等価回路計算やトルク・速度特性
    • 変圧器の効率計算やパーセントインピーダンス(%Z)を用いた受電点の短絡容量計算
    • 各種発電(水力・火力・コンバインドサイクル)の効率や特徴自動制御
  • パワーエレクトロニクス・制御工学(問18〜問22前後)
    • DC-DCコンバータ(降圧・昇圧・昇降圧チョッパ)やサイリスタ整流回路の動作波形・電圧比
    • ブロック線図の等価変換による一巡・閉ループ伝達関数の導出
    • 特性方程式の極の配置による系の安定判別、ラウスの安定判別法、PID制御の特徴
  • 電子回路・論理回路・情報理論(問23〜問27前後)
    • 理想オペアンプを用いた反転・非反転増幅回路、積分器、ローパスフィルタの伝達関数導出
    • ブール代数やカルノー図を用いた論理式の簡略化、NANDゲート等による基本論理回路の構成
    • シャノンの情報源エントロピー計算、ハフマン符号化(平均符号長)、ハミング符号による誤り訂正
  • 信号処理・通信工学(問28〜問32前後)
    • フーリエ変換・z変換における時間推移定理などの基本性質
    • 標本化定理、PCM方式におけるナイキスト周波数や量子化の特徴
    • ディジタル変調方式(BPSK、QPSK、16QAM等)の伝送ビット数やシンボル誤り率の比較
    • インターネット関連技術(TCP/IP、IPv4、DNS、ARP等)の機能
  • 半導体・電気設備(問33〜問35前後)
    • pn接合の空乏層や拡散電位、nMOS/pMOSトランジスタの動作原理(多数キャリア、しきい値電圧)
    • 電気設備技術基準に基づく接地工事の目的、遮断器の定格

出題傾向から、2026年度の試験に向けては以下の対策を重点的に行うことが有効と思われます。

  • 選択解答制度を最大活用した分野の絞り込み
    35問中25問を選択解答し、50%(13問正解)以上で合格となるため、全分野を網羅的に学習する必要はありません。
    自身の専門背景(強電寄りか、弱電・情報通信寄りか)に応じて、得意な3〜4分野を重点的に仕上げ、不得意な分野は平易な知識問題のみを拾う戦略が極めて有効であると思われます。
  • 定型計算パターンの確実な習得
    「%Zを用いた短絡容量の計算」「オペアンプの出力電圧・伝達関数の導出」「テブナン・ミルマンの定理による回路計算」「論理式の簡略化」「エントロピーや平均符号長の算出」などは、数値や記号が変わるだけで毎年ほぼ同じ手順で解けます。これらの過去問を反復演習し、反射的に立式できるようにするといいでしょう。
  •  情報通信・半導体分野の用語・定義の暗記
    計算が苦手な場合でも、TCPとUDPの違い、ディジタル変調方式(PSK、QAM)の伝送効率、半導体のキャリア(電子・正孔)と不純物(ドナー・アクセプタ)の関係、電気設備の安全基準などの知識問題は、過去問の選択肢を読み込むだけで即答可能になるため、確実な得点源として確保できると思います。
建設部門

分野(技術士第二次試験の科目)ごとに出題傾向と対策をまとめます。

Disclaimer

この資料はもともと2007年に作成した資料を追加修正したものなので、更新できていないところがあると思います。改定が必要なもののご指摘をこちらまでご連絡いただけるとありがたいです。

(出題傾向)

 近年は土質工学(土の基本的性質(物理特性)、土のせん断、土の圧密 )が3問~4問で、ときどき土圧が1問出ています。
 土の基本的性質は、土の構造(土粒子・水・空気)を理解しているかどうかを問う問題が多く出ています。いろいろな特性値が何を表す値で、土粒子・水・空気のうち、何と何の比や差であるかといった、特性値の正しい理解が問われます。
 力学特性は、せん断については各種せん断試験の特徴扱う基本的な数値(一軸圧縮強度quや粘着力c、内部摩擦角φなど)に関する理解を問われます。たとえばquとcの関係、圧密および排水条件によって異なるせん断強度(UUとかCUとかいうやつ)、τ=c+σtanφにおけるσなどですね。
 圧密特性は圧密特性を表す各種特性値(圧密降伏応力、圧縮指数など)あるいは圧密試験の内容、正規圧密・過圧密およびそれらと圧密降伏応力の関係といったものに関する知識が問われます。
 これらのほかに、土圧・支持力・斜面安定に関する基礎的理解確認問題が出ています。
 水に関する出題は、水頭や浸透、透水特性などについて出ています。
 以上のように、具体的な土木構造物について質問するわけではなく、基礎理論を正しく理解しているかどうかの確認問題が主に出題されるようです。なお、土質重視で、基礎に関する設問はあまり出ません。

(対策)

 土質及び基礎に関しては、次の事項にポイントを置いて勉強するのがよいと思われます。

土の物理特性および圧密特性
 物理特性としては、一般特性にポイントをおきます。また、コンシステンシー特性についても注意しておきましょう。圧密特性は全般的に基礎知識を身に着けます。
 せん断強度(粘着力や内部摩擦角)についても基礎知識は必要になるでしょう。

基礎的事項を右のページにまとめておきましたので、参考にしてください。近年の出題内容なら、この内容をおさえておけば取れると思います。

地盤内応力、特に土圧
 土圧に関する考え方などの基礎知識(主働・受働、ランキン土圧など)を身に付けておきましょう。

基礎工法の分類と支持力の考え方
 具体的な工法などは出ないようですが、テルツァーギ支持力、杭の鉛直支持力に関する知識問題が過去に出ています。これらは、式を覚えているかどうかなどではなく、どのような考え方で計算式ができているかを問う問題です。つまり、計算式を暗記するのではなく、どのような考え方で計算するのかという概念を理解しておく必要があります。

地下水
 土中の地下水挙動(ダルシー流と「透水性」)、水圧の分類、水頭の考え方などの基礎知識を身につけておいてください。

(過去問題の傾向)

 近年は、次のような問題構成になっています。
  ・構造力学の基礎 2問
   梁や柱、矩形物などに力を加わったときのモーメントや荷重、変位など
  ・鋼材 2問
   鋼材の性質や鋼橋の応力分布など基本的性質
  ・道路橋 1問
   道路橋示方書に書かれている道路橋の設計に関する基本事項
  ・コンクリートの一般的性質 3問
大学で構造力学を学び、それがまだ頭に残っている人は前半3~4問、実務で鋼コンに携わっている人は後半3~4問を得点源にしましょう。

(対策)

 この分野は、土木構造物の代表選手である鋼構造物とコンクリート構造物の分野であるせいか、分化が著しく、教科書も構造力学、コンクリート材料学、橋梁工学、鉄筋コンクリート工学、耐震工学といったものに分かれ、それぞれから1~2問ずつ出題されているように思います。
 次のような項目について、大学教科書や基礎的な文献などで知識を整理してください。
 出題傾向を見る限り、特に構造力学と橋梁工学に力をいれるべきかと思いますが、絞り込むのは危険です。

【ジャンルと押さえておきたい項目】
構造力学はり・柱、内部応力、モーメント、破壊、曲げ、たわみ
鋼構造許容応力、ボルト、溶接、破壊(脆性破壊・延性破壊や降伏と破壊、じん性・ぜい性、疲労破壊、遅れ破壊、座屈)、防腐防食
コンクリートセメント、骨材、混和材料(特にフライアッシュ、高炉スラグ、AE剤、減衰剤・AE減衰剤、促進剤、遅延剤など)、フレッシュコンクリート(特にコンシステンシー、ワーカビリティー、フィニッシャビリティー)、試験(スレッシュ、硬化、非破壊)、アルカリ骨材反応
※水セメント比・レイタンス・クリープ係数・スランプ・エアー(エントレインド・エントラップト)などの基本用語はしっかり押さえる
鉄筋コンクリート許容応力度設計法(曲げ応力、せん断応力、偏り心)、終局強度設計法(破壊、曲げ部材)、限界状態設計法(終局原愛・使用限界・疲労限界)
橋梁工学床版、プレートガーダー、トラス、合成桁、箱桁、連続橋・ゲルバー橋・斜張橋、アーチ・ラーメン、支承
耐震工学設計震度、動的解析など

基本用語に関してはその意味・内容・適用や対策などについてまとめておきましょう。
1用語あたり10行程度に要約しておくといいと思います。

(過去問題の傾向)
 近年は都市計画(都市計画法、市街地再開発、土地区画整理事業など)から3問、都市交通について1問出題されています。

(対策)
 大学テキストでは、次のようなことが扱われています。

【ジャンルと押さえておきたい項目】
都市計画の立案・実施地域地区制、都市施設、市街地開発事業、促進地域・市街化開発事業予定区域、地区計画、都市計画区域、市街化区域、市街化調整区域など
土地利用計画特に用途区域、特別用途区域
都市交通量計画都市交通調査、交通需要予測、公共輸送計画、都市内道路計画、駐車場・交通結節点
緑地・公園・都市景観緑地計画、公園計画、都市景観
市街地開発計画、再開発計画土地区画整理、市街地再開発、住宅再開発
地区計画住宅地高度利用、再開発地区、沿道整備地区計画、誘導容積制度など
地域計画国土形成計画(全国計画および広域地方計画)、首都圏整備計画など
法制度都市計画法、建築基準法、土地区画整理法、市街地開発事業・市街地開発事業予定区域、都市計画に関する財政
コンパクトなまちづくり2014年の都市再生特別措置法の改正により創設された立地適正化計画、およびその中核となる居住誘導区域・都市機能誘導区域、市街地拠点と生活拠点地域公共交通計画の再編など
空間管理・未利用地活用都市再生特別措置法に基づく「立地誘導促進施設協定」や「低未利用土地権利設定等促進計画」、「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」など
防災まちづくり2020年の都市計画法改正等に伴う「災害ハザードエリア(レッドゾーン等)における開発抑制・原則開発禁止」や、頻発する水害に対応するための「流域治水関連法」による都市計画への影響など

 これまでの出題傾向から、都市計画関連(特に法令)と都市交通から各1問~2問ずつ出題されると思っておいたほうがいいでしょう。

都市計画関連
 都市計画法、土地区画整理法、都市再生特措法などがあります。

基礎的な内容を右のページにまとめたので、参考にしてください。
(ちょっと古いかもしれません)

 練習問題としては、宅建試験の問題が好適です。都市計画法と土地区画整理法の問題に目を通しておかれることをお勧めします。

都市交通
 都市交通計画は、交通量調査、交通需要予測、計画(公共輸送・都市内道路・歩行者系街路)と進めます。以下の事項を押さえてください。

【項目と押さえておいてほしい事項】
交通量調査通常の断面交通量調査(ある地点を通過する交通量を交通手段(車種など)別に測定する)以外の調査方法であるパーソントリップ調査とOD調査
交通需要予測4段階推定法・・・・発生集中→分布→分担→配分・・・・集計モデルから非集計モデルへのシフト
 (1) 発生・集中交通量の予測
 (2) OD表を作成する分布交通量の予測
 (3) OD交通量を各交通手段に分割する分担交通量の予測
 (4) 交通機関別の交通量を路線網に割り振る配分交通量の予測
都市内道路計画都市内道路の分類・機能
 (1) 自動車専用道路(都市拘束道路)
 (2) 幹線道路(主要幹線道路、幹線道路、補助幹線道路)
 (3) 区画道路
 (4) その他の道路(歩行者・自転車など自動車以外の用に供する道路)
歩行者系街路計画トランジットモール、ほこみち

(過去問題の傾向)

 近年は水理学(基礎知識的問題~タンクモデル法などの応用知識・実用知識)が4問、河川管理や河川整備が2問、砂防が1問、海岸が2問出題されています。
 単なる用語知識だけでなく、その設計計画における留意点など、一歩踏み込んだ問題が出る傾向があります。具体的には、
 フィルダムとは○○○である。
といった用語説明ではなく、
 フィルダムの設計にあたっては○○は△△することが一般的である。
というような感じですね。つまり、その設計物に関して、それがどういうものでそのような理論の上にたっており、どのような特徴を有しているかといった「大づかみ」ができているかどうかを確認するという、専門科目としては適切な問題内容になってきているようです。
 また、何か一つのものをとりあげて一問出題するという形ではなく、分野で一問という形で、その中で
  調節池では○○
  フィルダムでは△△
  重力式ダムでは××
  放水トンネルでは□□

といったように、選択肢ごとに構造物とその特徴や留意点の組合せを記述して間違いを意探すというパターンになっています。つまり、ヤマかけが通じにくい出題形式です。 
大学で学ぶなどして水理学が特異な人は前半3~4問、実務で河川砂防に携わっている人は後半3~4問を得点源にしましょう。

(対策)

 出題内容は、9問中4問が水理学、残りが専門科目として適切な内容・形式と思われますので、大学教科書などで水理学の基礎を学び直すとともに、河川砂防海岸全般を大づかみすることが対策になります。

基礎的な内容を右のページにまとめたので、参考にしてください。


ポイントを以下に簡単にまとめます。

河川法
 とにかく次のことは最低限覚えましょう。
  (1) 目的は、治水・利水・環境保全の3つ
  (2) 一級河川(大臣管理)、二級河川(知事管理)、準用河川(市町村長管理)がある。
  (3) H9に改正され、環境整備保全・住民意見反映・樹林帯整備保全の3点がプラスされた。

河川治水
 堤防の構造、計画高水位・余裕高など。できれば水理に関する用語をいくつか頭に入れます。
 また流域治水などの近年の防災施策についても押さえておくことが望ましいと思います。

ダム
 3種類のダムを特徴とともに覚えます。
  (1) アーチ式コンクリートダム・・・・地形地質条件が最も厳しいが、堤体断面は小さい。
  (2) 重力式コンクリートダム・・・・水圧に堤体自重で抵抗。
  (3) フィルダム・・・・岩石・土砂で堤体を築造。遮水構造により3種類に細分。基礎条件が緩い。

砂防
 とくに土石流の発生機構・種類・対策(砂防ダムと透過型ダム)を頭に入れます。

地すべり
 対策工法(抑制工・抑止工)を体系的に覚えます。
 その後できれば機構・地形、調査解析手法等の用語を覚えます。
 ただ、出題実績はあまりありません。穴馬的に考え、時間がなければこの分野の勉強はスキップしてもかまいません。

海岸
 離岸堤・・・・消波・漂砂阻止・静穏域確保などの目的で、海岸線より平行に離して作られる。
 その他、いくつかの事項を覚えておけばいいのではないかと思います。

なお、河川工学・河川水文学の大学テキストには、次のような内容について書かれています。

分野記載内容
河川水理等流・不等流、洪水流、土砂流送、感潮河川
河川計画治水利水計画、計画高水、河川改修、可道計画、内水処理、樋門・樋管・水門
河川工事堤防、護岸、水制、床固め
山間部計画砂防基本計画、山腹工事、渓流工事、ダム
河川維持管理洪水、水防
水資源開発利水計画、河川総合開発、堰による取水

大学マニュアルの入手が難しい場合、実務マニュアル~たとえば河川砂防技術基準計画編(基本計画編・施設配置等計画編)~などから、基礎的内容をピックアップして身につけるという手もあります。なお、砂防に関する用語にひととおり目を通しておくことをお勧めします。

(過去問題の傾向)

1問しか出ないので、専門外の人には労多くして実り少ない分野です。
 港湾の出題傾向は、港湾管理者の職務やプロジェクトなど、より上流側あるいは包括的な内容や、防波堤や突堤・離岸堤といった施設、港湾計画における静穏度の確保に関する知識というように、港湾の中のある分野グループという感じで偏った出題がなされています。
 空港の問題は滑走路に関する問題に偏っており、設計より計画に重点をおいた出題になっています。

(対策)

 細かい数値ではなく設計物の特徴や設計計画にあたっての留意点、解析の考え方などを問う包括的な問題が出題されるという形になっています。
 港湾は、事業計画や管理、防波堤等、静穏度関係、埠頭、耐震、航路などといった分野に注意が必要でしょう。また環境(アセス法)も押さえておきたいところです。
 テキストとしては大学テキストが望ましいのですが、実務マニュアルである港湾基準(港湾の施設の技術上の基準・同解説)も、おおむねカバーしているようですので、こちらでもいいでしょう。ただ、全部読みきれるボリュームではありません。この本では、「○○は△△することとする」といった各設計条件等の基本的考え方が、冒頭に囲みで示してありますので、これを拾い読みすれば、基本的なところは押さえられるでしょう。判断基準・限界・規定値などの数値を問う問題は時間があれば覚えるという感じでいいのではないかと思います。

基礎的な内容を右のページにまとめたので、参考にしてください。

資料の主要部は伏龍さんが作成・ご提供くださいました。伏龍さん、本当にありがとうございます。また空港については、もし選択解答するつもりであれば、滑走路の設計計画を押さえておきましょう。

港湾について、特に重点的に勉強してはどうかと思うのは下記5分野です。

水準面
 港湾施設の計画では、TPとともに、基準水準面、朔望平均満潮位が重要な基準面となります。
 また、護岸設計では波高・さらに余裕高も重要です。

係留施設
 岸壁・桟橋などです。
 コンテナ埠頭についてもよく理解しておきましょう。

防波堤
 種類(直立・傾斜・混成の3つ。それにプラス消波ブロック被覆堤)と特徴などを覚えましょう。
 また、波の計算についても基本的考えを頭に入れておきましょう。

耐震設計
 耐震バース、液状化計算手法など。
 液状化簡易判定は、道路・建築はFL法ですが、港湾は限界N値法です。

環境保全
 アセス法との関係が重要です。一定規模以上の公有水面埋立が第一種事業になりますが、アセス法では港湾計画も特例としてあげられています。
 このほか、近年の貿易を支えているコンテナ関連の知識も補強しておいていただきたいと思います。

(過去問題の傾向)

 電力としては水力・火力・原子力があるわけですが、建設部門に関連が深いのは水力で、このため出題内容も水力が主体となっています。
 その他としては火力、原子力、新エネルギーおよび電力流通設備・貯蔵施設などがあり、適当に分散しつつ出題されています。
 基本的には「水力発電に関する問題と、もう一つ何かの問題」と思っておけばいいでしょう。

(過去問題の傾向)

 電力としては水力・火力・原子力があるわけですが、建設部門に関連が深いのは水力で、このため出題内容も水力が主体となっています。
 その他としては火力、原子力、新エネルギーおよび電力流通設備・貯蔵施設などがあり、適当に分散しつつ出題されています。
 基本的には「水力発電に関する問題と、もう一つ何かの問題」と思っておけばいいでしょう。

(対策)
 水力発電を中心に、火力、原子力、新エネルギー、電力流通設備の基礎的知識をおさえておきましょう。

水力発電
 以下の3つをおさえましょう。
 (1) ダムに関する基礎知識
  河川砂防の項を参考。アーチ式コンクリ・重力式コンクリ・フィルダム)
 (2) 発電機構
  理論出力P=9.8×流量×有効落差など
 (3) 発電形式
  揚水式、流れ込み式(自流式ともいう)、調整池式、貯水池式)など

火力発電
 (1) 発電タイプ(汽力・内燃力・ガスタービン・コンバインドサイクル)
 (2) リサイクル(フライアッシュ)
 (3) 貯蔵(LNGタンク、特に防液堤など)
に関する問題が出しやすいので、押さえておきましょう。コンバインドサイクルやタンク・防液堤、フライアッシュなどに要注意です。

原子力発電
 発電自体の基礎知識としては、軽水炉型の発電形式(沸騰水型・加圧水型)、原子力発電のメカニズム(≒核分裂のこと)程度でしょう。後は、火力発電と共通になりますが、取水口・放水口のこと(特に温排水の希釈混合に関して水中放水方式と表層放水方式)を押さえておけば十分かと思います。

新エネルギー
 太陽光発電・風力発電・燃料電池・地熱発電・バイオマスなどがあります。これについては、基礎科目技術連関分野の勉強にもなります。
 また、コジェネレーションは押さえておきましょう。

電力流通設備
 過去問題からみて、以下の2点に絞っていいと思います。
鉄塔基礎:上部構造に作用する荷重(主に風荷重)より、基礎に発生する圧縮力・引揚力・水平力を算出し、これにより土圧・水圧等を考慮し、安全率を得るように設計する。
地中送電線:シールド工法で施工。

(過去問題の傾向)

 基本的に道路構造令の問題は必ずといっていいほど出ています。その他、高規格道路などインフラ整備に関する知識、道路交通調査や道路舗装といった特定分野からの知識問題が出題されています。さらに近年はローカルルール、交通事故、共同溝、雪寒法、VICS、道路の機能大別、更新時期、道路の貨物分担、地域高規格道路など、各種知識について問われています。
 また、道路構造令関連問題が数値に関する知識を求める傾向もあります。数値知識を求められるのは、幅員、速度が中心です。
なお、道路計画を専門とする人は、都市計画の中で出題される都市交通の問題も得点源になりますし、道路設計を専門とする人は鋼コンの中で出題される橋梁関係の問題(つまり道路橋示方書関連問題)や施工計画の問題も得点源になります。

(対策)

 これまでの出題内容から、道路の区分、道路構造令、道路舗装の3点セットに加え、維持補修、交通量調査推定、道路計画、環境配慮が要注意分野としてあげられます。
 道路構造令は幅員・速度・建築限界、交通量は交通容量などの用語と昼夜率・調査推定方法などが考えられます。特に交通量調査推定や道路計画は、都市計画と合わせて勉強することができるでしょう。

基礎的な内容を右のページにまとめたので、参考にしてください。

(過去問題の傾向)

 近年は鉄軌道の問題ばかりが出ています。

(対策)

 出題傾向からみて、鉄軌道に関する専門用語知識に限定してもいいのではないかと思われます。ただ、それで取れるのは1問だけかもしれず、あまり分のいい分野ではないかもしれませんので、思い切って捨てても体制に影響はないと思います。
 押さえておきたいキーワードを下表にまとめました。なお、鉄道用語集のサイトもありますので、目を通してみることをお勧めします。

【キーワードと解説】
建築限界・曲線においては建築限界を両側に拡大する。
・トンネルでは、電灯・伝染などを設置する余裕を建築限界の外に設ける。
緩和曲線・直線と曲線の間の移行をなめらかにするために入れる、曲率が連続的に変化する曲線。
・一般に3次放物線。新幹線はサイン半波長逓減曲線で、こちらのほうが乗り心地が良い。
・緩和曲線の長さは、列車最高速度・実カント・カント不足量から決定する。カント不足とは、遠心力を打ち消すカント(均衡カント)に対して不足しているカント量。
・緩和曲線中に縦曲線を入れることは避ける。また分岐器を設けてはならない
縦曲線・勾配変化箇所において鉛直面内に入れる曲線。分岐器を設けてはならない。
カント・曲線走行時遠心力に抵抗するための内外軌道の高低差(乗り心地確保・転倒防止)。道路でいう片勾配。
・緩和曲線があればその全長について、なければ円曲線端からカント値の400倍以上の直線部において逓減する。円曲線は円弧による曲線で、水平曲線に用いられる。
スラック・曲線部では軸が固定された車輪が曲線内で方向を変えられるよう、内側レールを広げる必要がある。この軌線の広げ分をスラックという。
ロングレール・定尺レール:25m、長尺レール:25~200m、ロングレール:200m以上。
・ロングレールは継ぎ目部における衝撃が大幅に緩和され、線路状態の改善、保守量低減、騒音・振動軽減に効果がある。定尺レールをロングレール化する場合、工場で200m程度に溶接、現場でつなぎ溶接して1~2kmにするのが一般的。
熱処理レール・内側に比べて磨耗しやすい曲線外側レールに使う。レール頭部表面に焼入れする。
枕木区間・PC枕木は木枕木に比べて耐用年数が長く、保守が軽減できる。道床抵抗も大きいのでロングレールに対応できる。
・木枕木は弾力性があり、レール連結・加工が簡単で安い。電気絶縁性もある。しかしPCより弱く焼損・腐朽も起こすので事故発生確率がPCより高い。
分岐器・緩和曲線・縦曲線・無道床橋梁には分岐器を設けてはならない。
曲線半径・本線における曲線の最小半径は、地形等でやむをえない場合は160mにできる。
脱線・脱線には、飛び上がり脱線、乗り上がり脱線、すべり上がり脱線があり、低速で曲線を走っている時に車輪がせり上がって脱線する乗り上がり脱線が最も多い。
・脱線防止の主な対策は脱線防止レール・脱線防止ガードである。
アタック角・曲線では、車輪がレールにある角度をもって走行する。この角度がアタック角で、車輪の先のフランジがレールに接触しながら走る。ここで引っかかりが起こると車輪がレールに乗り上がっていって、乗り上がり脱線に至る。
・この対策の1つに、外側レールのゲージコーナーに油を塗ってすべりを良くする方法がある。

(過去問題の傾向)

 近年、山岳トンネルもしくはシールドトンネル1問で、出題内容は、用語や工法の知識を問うものです。

  (シールド)土圧式シールド、泥水式シールド、覆工、セグメント、テールボイドなど
  (山岳)地山分類、ベンチカット工法、支保工、補助工法分類、施工中の観察・計測など

このように、非常にスタンダードな出題となっています。

(対策)

 シールド・山岳のどちらが出題されるかわからないので、この2つはおさえておきたいのですが、1問しか出題されませんから捨ててしまってもいいでしょう。できればトンネル全般、シールドのやや細かい工法や用語、掘削工法分類(開削・沈埋・推進)とそれぞれの内容・工法、都市トンネル・近接施工・大深度地下あたりを押さえておくことをお勧めします。
 また、トンネルの場合、専門外の人にはなじみの薄い専門用語が多いという特徴があります。最低限押さえておきたいキーワードを下表にまとめました。

【キーワードと解説】
トンネル掘削工法(1)全断面工法
小断面のトンネルや安定地質の地山で採用。断面が大きいと、掘削・支保工施工に大型機械が使用できて効率的だが、地山変化に順応性悪く、途中で段取変更困難。
(2)ベンチカット工法
上半断面・下半断面に分割して掘削するのが一般的。ベンチ長さによりロングベンチ(全断面ほどではないが地山が安定しているときに適用)・ショートベンチ(広範囲の地山条件に適用)に細分。地山条件の変化に強い。
(3)導坑先進工法
側壁導坑先進工法、底設導坑先進工法、TBM先進工法などがある。
TBMトンネルボーリングマシン。全断面工法で使用する掘削機械で、回転カッタで岩石を連続的に切削あるいは破砕して掘進するもので、安全性が高く、掘進が速い、掘削に伴う岩盤のゆるみが少ない、支保工の低減が可能、作業人員が少なくてすむ等の利点がある。ユーロトンネルで施工されたほか、日本では導水路、上下水道トンネルへの適用が90%以上を占めている。
NATM工法ロックボルトと吹付けコンクリートで地山変形を制御する支保方式。トンネル周辺地山の支保機能を利用して安定を図るので、早期に支保を行い地山劣化を防ぐ。
施工順序:切羽掘削→ずり搬出→一次吹付→支保工・金網取付→二次吹付→ロックボルト打設。
参考サイトはこちら
ロックボルトロックボルトの効果として、4つの効果がある。
(1)縫付け効果
緩んだ地山を強固な地山に固定する。
(2)はり形成効果
層理面など剥離しやすい面を貫通し一体化させることではりが形成される。
(3)内圧効果
引っ張り強度に相当する内圧はトンネル壁面にかかり、耐荷強度が増す。
(4)アーチ形成効果
耐荷強度の増したトンネル周辺地山が全体としてアーチを形成する。
シールド工法土砂地盤に適用。シールドと呼ばれる掘進機を地中に推進させて、その中で安全に掘削・覆工を行う。一次覆工として組み立てる部材をセグメントという。
圧気シールド地下水位より低い所をシールド工法で掘削し、湧水があるとき、圧縮空気で気圧を上げて、湧水のための土砂崩壊を防ぐ工法。
開削工法レール土留め工の後、地上から掘削する工法。
(1)法切オープンカット工法 周囲に法面を残しながら掘削
(2)土留め工法 土留め壁・切梁・腹起しなどの支保工を設けた中を掘削
(3)アイランド工法 中央部分掘削・築造→これを利用して土留め支保、側部掘削・築造
(4)トレンチカット工法 周辺を山留めしてトレンチ状に掘削→構造物外周を作成→これを土留めに内部掘削
沈埋工法陸上で製作した沈埋函を掘削した水底に沈設する工法で、水中トンネルに用いられる。
推進工法下水管・パイプラインなどを一方の発進用の穴(立て坑)からジャッキで押し込んで埋設する工法。小口径が一般的。地質が押し込みに適していれば、道路・鉄道・河川の下でも掘削の必要がなく、また途中で曲げたりすることもできる。押し込む時の反力を得るための壁を支圧壁 (しあつへき)といい、鋼材・コンクリートを通して背後地盤に力を分散させる。
大深度地下法大深度地下の公共的使用に関する特別措置法」。H13.4施行。三大都市圏の公共性の高い事業に適用。大深度地下(地下40m以深or支持層上面から10m以深の深いほうの深度の地下)を使用する場合には、原則として事前補償なしで使用権設定。インフラ整備円滑化・事業期間短縮・コスト縮減などで期待される。
トンネル調査4つの調査がある。
(1)立地条件調査、(2)支障物件調査(地上・地下構造物、埋設物、建造物跡・架設工事跡、埋蔵文化財、その他将来計画等)、(3)地盤調査、(4)環境保全調査

(過去問題の傾向)

 施工計画全般に関する広い範囲からの出題が2問出されています。主な出題テーマは施工工法、工程管理、安全管理などです。

(対策)

 出題傾向としては細かい数値を問うものより全体的な理解を問う問題になっています。その分とっつきやすいので、選択解答する受験生は多いのではないかと思います。
 予想される問題としては、次のようなものがあります。
  (1)工法(施工管理上の特性など:特に杭工法とシールド工法)
  (2)仮設(土留め、支保)
  (3)廃棄物処理(廃棄物低減技術、廃棄物処理、リサイクルなど)
  (4)事前調査(埋設物、建物、騒音振動など)
  (5)工程管理(特にPERTなどのネットワーク工程表とガントチャートなどの横線式工程表)
  (6)経費管理(歩掛り、直間工費、管理費など)
  (7)新設計思想・入札制度(VE、PFI、CM/PM、DBなど)

基礎的な内容を右のページにまとめたので、参考にしてください。

特に副産物処理(リサイクル含む)、環境配慮(法規制)、仮設工法の種類と特徴、工程管理が要注意です。

(過去問題の傾向)

 出題数はずっと2問で、建設環境に関する広い範囲からの用語問題が中心で、たまにアセス関連の問題が出ます。一方で、基礎理論とか動植物生態系などに関する出題はあまり見当たりません。

(対策)

 アセス法は特にスコーピング・スクリーニングや第1種・第2種事業区分、縦覧の時期や期間などの手続きといった事項を中心にしっかり押さえておきたいところです。
 また、関係法令や行政の取り組みといったものに対する知見も問われるようですので、できれば押さえておきましょう。
 その他、地球環境問題(温暖化、酸性雨、オゾン層破壊、バーゼル条約など)、土壌汚染対策法、ダイオキシン、アスベスト、環境ホルモンといったものはひととおり勉強しておかれたほうがいいと思います。
 基礎科目(環境・エネルギー・技術)と重複しますので、そちらのほうで勉強しておいていただければ、たとえ出題されても大丈夫だと思います。

基礎的な内容を右のページにまとめたので、参考にしてください。

上下水道部門

 全体として上水道分野と下水道分野からほぼ半数ずつ、均等に出題される傾向があります。

 専門用語の組み合わせを問う空欄補充問題や、計算問題も毎年数問必ず含まれます。

 全体を通じて、各分野における基礎的な定義、設計基準、計画策定の手順、施設の維持管理に関する知識が幅広く問われています。さらに、過去の出題テーマが類似した形式で繰り返し出題されることが多く、定型的な知識の定着が求められる試験です。

  • 上水道
    • 関連法規・計画
      水道法の定義(水道事業、専用水道など)や、計画給水量・負荷率などの需要予測手法、基本計画の策定手順が頻出しています。
    • 取水・貯水・導送配水施設
      取水堰や取水塔の特徴、ダムの種類(コンクリートダム、フィルダム)と特徴、配水管の最小動水圧・最大静水圧の基準、各種管種(ダクタイル鋳鉄管、ポリエチレン管等)の特徴と防食対策がよく問われています。
    • 浄水処理
      凝集・フロック形成、沈殿池における表面負荷率の概念、急速ろ過と緩速ろ過のろ過速度等の違い、膜ろ過の特徴などが頻繁に出題されています。
    • 水質・消毒
      消毒剤(次亜塩素酸ナトリウム、オゾンなど)の特徴、消毒副生成物(トリハロメタンや臭素酸など)の生成機構、水質基準項目、クリプトスポリジウム等の耐塩素性病原生物への対策(紫外線処理や濁度管理)に関する問題が多くなっています。
    • 維持管理
      漏水調査法、管網計算、アセットマネジメントや施設の更新・長寿命化計画に関する問題が見られます。
  • 下水道
    • 関連法規・計画
      下水道法の目的や排除方式(合流式と分流式の違い)、計画目標年次や計画汚水量・雨水量の算定方法(流出係数、合理式など)が頻出しています。
    • 管路・ポンプ施設
      管きょの流速や勾配、伏越し、各種管種の特徴、雨水流出抑制対策(オンサイト貯留や雨水浸透施設)、ポンプの種類と設置目的についての問題が多い傾向があります。
    • 水処理(活性汚泥法)
      標準活性汚泥法、オキシデーションディッチ法、嫌気無酸素好気法(A2O法)など各種生物処理法の特徴と設計指標(HRT、SRT、MLSS、BOD-SS負荷など)が必ず出題されます。また、沈殿池の水面積負荷等に関する計算問題や知識問題も多く出題されます。
    • 汚泥処理・有効利用
      汚泥の濃縮、消化、脱水、焼却プロセスごとの目的や機器の特徴、およびコンポスト化、建設資材、エネルギー利用(消化ガス)などの資源化に関する出題が目立ちます。
    • 水質管理・環境対策
      水質試験項目(BOD、COD、SS、大腸菌群など)の定義、事業場排水への対応、硫化水素等による腐食対策や臭気対策が問われています。

出題傾向から、2026年度の試験に向けては以下の対策を重点的に行うことが有効と思われます。

  • 頻出計算問題の反復演習
    毎年必ず出題される計算問題は得点源としましょう。
    上水道における管網の流量公式やろ過砂の均等係数、下水道における合理式を用いた最大計画雨水流出量、BOD-SS負荷・BOD容積負荷、返送比、汚泥容量指標(SVI)、沈殿池の水面積負荷・滞留時間などの基本公式を確実に暗記し、数値を当てはめて解けるようにしておくといいでしょう。
  • 過去問の類似問題への対応
    過去問と同じ選択肢や、内容を一部反転させた問題(例:沈殿効率と表面負荷率の関係、合流式と分流式の水面積負荷の大小など)が多く出題されるため、過去問の正誤の理由を正確に理解しておきましょう。
  • 法改正や新技術、社会課題への関心
    水道法改正による「基盤強化」や広域的な連携、アセットマネジメント(ストックマネジメント)による長寿命化・更新計画、耐震設計や非常時対応といった近年の重要課題に対する取り組みを把握しておくといいでしょう。
  • 水質基準と処理プロセスの正確な対応付け
    各水質基準項目(消毒副生成物、クリプトスポリジウムなど)に対する適切な浄水処理プロセス(オゾン処理、活性炭処理、紫外線処理など)や、下水処理における目的物質(窒素・りん)と対応する高度処理法(A2O法、AO法など)の組み合わせを整理して覚えておくことをお勧めします。
衛生工学部門

 出題内容は大きく「建築環境・建築設備」「水質管理・水環境」「廃棄物管理・資源循環」の3つの分野からほぼ均等に構成されています。

 問題の大半は、専門用語の定義や技術・法制度の仕組みを問う「最も不適切なものはどれか」「最も適切なものはどれか」を選択する文章正誤問題ですが、各分野において定番となっている計算問題(換気量・CO2濃度、照度、BOD負荷量、廃棄物の理論酸素量など)が毎年必ず数問出題されています。

 過去問と全く同じ問題、あるいは選択肢の文章や数値をわずかに変えただけの類似問題が繰り返し出題される傾向が極めて強いのが特徴です。

  • 建築環境・建築設備
    • 室内環境・温熱:温熱環境指標(PMV、WBGTなど)、結露防止対策、シックハウス症候群やレジオネラ属菌などの室内空気汚染・衛生管理に関する知識が頻出しています。また、必要換気量や室内CO2濃度を求める計算問題がよく出題されます。
    • 光・音環境:照度・光度・光束の定義、採光・照明設計の条件、吸音・遮音(コインシデンス効果、透過損失)、残響時間や騒音レベルの合成計算が問われます。
    • 建築設備:空調方式、空気線図の読み取り、送風機・ポンプの特性、給排水・通気設備(トラップの封水深、通気管の管径設定など)、消火設備や排煙設備の特徴が出題されています。
  • 水質管理・水環境
    • 水質基準と測定法:水質汚濁防止法に基づく排水基準や環境基準(BOD/CODの適用水域の違いなど)、水質測定法(DO、COD、BOD、TOC等の分析手法のJIS規格)が頻出しています。
    • 上下水道・排水処理技術:活性汚泥法の各種方式、硝化・脱窒反応、リン除去技術(凝集沈殿法など)、浄化槽のフロー、膜分離技術、塩素・オゾン等の消毒手法の特徴が問われます。また、BOD容積負荷や放流後のBOD濃度、汚泥発生量を求める計算問題も定番です。
  • 廃棄物管理・資源循環
    • 関連法規・統計データ:廃棄物処理法に基づく一般廃棄物・産業廃棄物・特別管理廃棄物の区分、循環型社会形成推進基本法、各種リサイクル法(家電、容器包装、建設、自動車等)、マニフェスト制度が問われるます。また、ごみや産業廃棄物の排出量・最終処分量等の統計数値も出題されます。
    • 処理・処分技術:焼却炉(ストーカ炉、流動床炉)の特性や排ガス処理(ダイオキシン類、NOx対策)、破砕・選別技術、バイオマス資源化(メタン発酵、コンポスト化)が出題されます。最終処分場の種類(安定型、管理型、遮断型)と受け入れ可能品目、浸出水処理設備の仕組みに関する問題は毎年出題されています。

出題傾向から、2026年度の試験に向けては以下の対策を重点的に行うことが有効と思われます。

  • 頻出計算問題のパターン化と確実な得点
    換気回数や室内汚染濃度(CO2等)の算出、照度の光束法計算、BODの汚濁負荷量・合流後濃度の算出、ごみの理論酸素量・熱しゃく減量・浸出水発生量の計算などは、数値が入れ替わるだけの定型的な計算問題が各分野に存在します。公式を暗記し、過去問で確実に立式・計算できるようにしておくことが重要だと思います。
  • 法規と環境基準、統計データのアップデート
    水質環境基準の変更(例:大腸菌群数から大腸菌数への変更など)や、廃棄物排出量・リサイクル率の最新データ、循環型社会形成推進基本計画の目標数値などは、最新の環境白書や法令に基づいて出題されるため、直近の動向を把握しておくといいでしょう。
  • 過去問を中心とした選択解答の戦略的活用
    出題の多くが過去問の焼き直しであるため、過去5〜7年分の問題を分野別に分類して徹底的に反復演習することが最も効率的な対策となります。35問中25問を選択できるため、極端に複雑な計算問題や専門外で馴染みの薄い分野(例えば細かな化学分析のJIS規格など)は深追いせず、確実に得点できる問題を素早く見極める戦略が有効と思われます。
農業部門

 農業政策、農学・栽培、食品科学、畜産学、農業農村工学(農業土木)といった幅広い専門分野からバランスよく出題されています。

 大半が「最も不適切なものはどれか」「最も適切なものはどれか」を選ぶ正誤判定問題であり、一部に用語や数値の組合せを問う空欄補充問題が含まれます。

  • 農業事情・政策
    我が国の農業総産出額、食料自給率の推移、主要国の農産物貿易の現状、および食料・農業・農村基本計画などの政策方針が頻出しています。
  • 農学・栽培・植物防疫
    主要作物の分類と特性、種子の発芽や成長の生理、土壌と肥料の特性、天敵や性フェロモンを利用した総合的病害虫管理(IPM)、冷害などの気象災害対策が問われます。
  • 食品科学・栄養
    アミノ酸やビタミン等の食品成分、発酵や褐変などの食品加工の原理、食中毒菌やウイルスの特徴、HACCPによる衛生管理、食品のリスク分析の構成要素に関する出題が定着しています。
  • 畜産・草地学
    牛・豚・鶏などの品種と消化・繁殖生理、飼料(粗飼料と濃厚飼料、サイレージ調製等)の特徴、鳥インフルエンザや口蹄疫などの家畜伝染病の発生状況、家畜排せつ物の処理手法が出題されます。
  • 農業農村工学
    灌漑排水計画(減水深の算出等)、暗渠排水や圃場整備の手法、ため池・頭首工・管水路の設計、コンクリート構造物の劣化機構(塩害、アルカリシリカ反応等)、施設のストックマネジメントに関する知識が幅広く問われます。

出題傾向から、2026年度の試験に向けては以下の対策を重点的に行うことが有効と思われます。

  • 統計データと政策動向の最新化
    食料自給率、農業産出額、農産物輸出入の状況などについては、農林水産省が公表する最新の「食料・農業・農村白書」や統計データを確認し、最新の動向を正確に把握しておくといいでしょう。
  • 広範な基礎知識の網羅的学習
    農業部門は出題範囲が多岐にわたるため、自身の専門外の分野であっても基礎的な用語やメカニズム(光合成の経路、反すう動物の消化生理、水理学の基礎など)を広く押さえておきましょう。
  • 頻出テーマの反復演習
    HACCPの7原則、家畜伝染病の特徴と近年の発生状況、コンクリートの劣化現象、病害虫の防除手法など、過去に繰り返し問われているテーマは過去問演習を通じて確実な得点源としましょう。
森林部門

 出題形式の大部分は、与えられた5つの選択肢の中から「最も不適切なものはどれか」を選ぶ文章の正誤判定問題であり、「最も適切なもの」を選ぶ問題や語句の組合せ問題、計算問題(労働生産性、土量変化率、丸太材積の算出など)がわずかに含まれます。

 出題範囲は、森林・林業政策、森林生態と土壌、育林(造林・保育)、森林経営・測量、林道・伐出・林業機械、治山・砂防、木材科学・木質材料と、森林・林業分野の川上から川下までを網羅しています。

 過去問と全く同じ問題や、誤りの選択肢のパターン(用語の入れ替えなど)が繰り返し出題される傾向が極めて強いといえます。

各領域における頻出テーマは以下の通りです。

  • 林政・白書・法制度
    • 「森林・林業基本計画」の策定サイクル(おおむね5年ごと)や、「全国森林計画」「地域森林計画」「市町村森林整備計画」の対象と策定者の関係が毎回のように問われます。
    • 「森林・林業白書」に基づく、日本の森林率(約3分の2)、人工林の主要樹種構成比(スギ、ヒノキ、カラマツ)、木材自給率の動向、林業従事者数の推移、労働災害の発生率(死傷年千人率の高さ)が頻出しています。
  • 森林生態・土壌・保護
    • 日本の森林帯(亜寒帯林、冷温帯林、暖温帯林、亜熱帯林)と代表樹種の組合せ、植物の遷移(一次遷移・二次遷移)、極相、種子散布の様式が出題されています。
    • 森林土壌(褐色森林土、黒色土、ポドゾルなど)の特徴や、野生鳥獣害(ニホンジカ、ツキノワグマ、ノネズミ等)、病虫害(マツノザイセンチュウ、ナラ枯れ等)の被害実態が問われます。
  • 森林経営・育林・測量
    • 下刈り、除伐、間伐(定性間伐、定量間伐、列状間伐)、枝打ち等の保育作業の目的と適切な実施時期が頻出しています。
    • 林木の成長量(連年成長量、定期平均成長量、総平均成長量)の定義や、法正林の成立条件、収穫規整法がよく問われます。
    • 測量(トラバース測量、水準測量、GPS、航空レーザ測量)の特徴と用途が出題されています。
  • 林道・伐出作業・林業機械
    • 林道の幾何構造(曲線設定、縦断勾配、横断勾配、視距の定義)や土工(土量変化率LとC、CBR試験)、排水施設の設計基準が問われます。
    • 高性能林業機械(プロセッサ、ハーベスタ、フォワーダ、スイングヤーダ等)の機能の違い、架線集材の索張り方式、チェーンソーの安全対策(キックバック、振動障害対策)が頻出しています。
  • 治山・砂防・水文
    • 土石流、地すべり、表層崩壊、雪崩の発生メカニズムと特徴の正誤判定が定番です。
    • 治山ダムの安定条件(転倒、滑動、基礎地盤の支持力、内部応力に対する安定)や山腹工(のり切工、土留工、筋工など)の目的が出題されています。
  • 木材科学・木質材料
    • 針葉樹と広葉樹の細胞構成(道管、仮道管)、早材と晩材、心材と辺材、あて材(圧縮あて材・引張あて材)の特徴が問われます。
    • 物理的性質(含水率、繊維飽和点、平衡含水率、異方性収縮)、乾燥に伴う欠陥(初期割れ、内部割れ、落ち込み)、保存(褐色腐朽菌と白色腐朽菌、シロアリ)に関する知識が求められます。
    • 木質材料(集成材、CLT、LVL、合板、パーティクルボード)の製法・特徴や、木材成分(セルロース、ヘミセルロース、リグニン)の化学的性質、木質バイオマス発電の動向が出題されます。

出題傾向から、2026年度の試験に向けては以下の対策を重点的に行うことが有効と思われます。

  • 用語の定義と「対となる概念」の整理
    誤りの選択肢は、類似する用語や対となる概念を入れ替えて作られることが多くなっています。
    例えば、「定性間伐」と「定量間伐」、「プロセッサ」と「ハーベスタ」、「褐色腐朽菌」と「白色腐朽菌」、「表層崩壊」と「深層崩壊」、「早材」と「晩材」などの違いを表にまとめて明確に区別できるようにしておくといいでしょう。
  • 最新の白書・統計データ・法改正の把握
    試験実施前年度の「森林・林業白書」の概要には必ず目を通しましょう。
    人工林の齢級構成の推移、木材自給率の最新値、林業従事者数の動向、シカ等による森林被害面積、高性能林業機械の保有台数など、定量的なトレンドを押さえておくことが重要です。
    また、森林経営管理法やプラスチック資源循環促進など、近年の法制度トピックにも注意を払いましょう。
  • 選択解答制を最大限に活かした得意分野の強化
    35問中25問を選択するため、出題範囲が広い森林部門では、自分の専門分野(林学系、林道・治山系、木材系など)を確実な得点源とし、苦手な分野を捨てる戦略が有効と思われます。
    ただし、計算問題(例えば、土量変化率や労働生産性など)はパターン化されており、解き方を一度覚えれば確実な得点源となるため、過去問での反復演習をお勧めします。
情報工学部門

 情報工学部門の出題範囲は、コンピュータ科学の基礎理論から、ハードウェア、オペレーティングシステム(OS)、ソフトウェア工学、データベース、ネットワーク、セキュリティ、情報理論まで多岐にわたります。

 問題の形式は、用語の定義や技術の特徴を問う「不適切なもの」「適切なもの」を選択する知識問題と、プログラムのトレース、アルゴリズムの計算量、キャッシュメモリの実効アクセス時間、IPアドレスのサブネット計算などの計算・論理的思考を要する問題が混在しています。

 また、過去問と同一または類似の設定・選択肢を用いた問題が繰り返し出題される傾向が非常に強くなっています。

  • コンピュータ科学基礎・アルゴリズム
    オートマトンと正規表現、バッカス・ナウア記法(BNF)による構文木、木構造(深さ優先探索・幅優先探索)、ソートアルゴリズムと計算量(オーダ記法)、ハッシュ表、ラムダ計算などが頻出しています。
  • コンピュータアーキテクチャ・ハードウェア
    パイプライン処理の実行時間計算、キャッシュメモリのアクセス時間計算や書込み方式(ライトスルー、ライトバック)、IEEE754単精度浮動小数点数の16進数表現や演算、論理回路(NANDゲートによる回路表現、カルノー図による簡略化)が毎年問われています。
  • オペレーティングシステム(OS)
    プロセスとスレッドの概念、ページング方式とページ置換アルゴリズム(LRU, FIFOなど)、排他制御、コンピュータの仮想化技術(ライブマイグレーションなど)が出題されています。
  • ソフトウェア工学・プロジェクト管理
    UML(クラス図、シーケンス図、アクティビティ図、ユースケース図)、オブジェクト指向(カプセル化、ポリモーフィズム、継承)、ソフトウェアテスト(ホワイトボックステスト、分岐網羅、境界値分析など)が頻出である。また、EVM(アーンドバリューマネジメント)のグラフ読み取りや計算、PMBOK、CMMI、ファンクションポイント法などのプロジェクト管理手法も必ず出題されています。
  • データベース
    E-Rモデル、第3正規形などの正規化理論、SQL文(SELECT, EXISTSなど)の実行結果の行数を問う問題、トランザクションのACID特性(原子性など)が問われます。
  • ネットワーク
    TCP/IP各層の役割、IPv4/IPv6の特徴、サブネットマスク計算、ルーティングプロトコル(RIP, OSPF)、ディジタル変調方式(BPSK, QPSK, QAMなど)、無線LANのアクセス制御手法(CSMA/CA)が頻出しています。
  • セキュリティ
    公開鍵暗号方式とデジタル署名の仕組み、ファイアウォールやDMZの構成、マルウェアやサイバー攻撃手法(SQLインジェクション、XSS、ARPスプーフィングなど)、生体認証の評価指標(FAR, FRR)が出題されています。
  • 情報理論・信号処理
    シャノンのエントロピー計算、ハフマン符号化の平均符号長、ハミング符号による誤り訂正、離散フーリエ変換、z変換、標本化定理に基づくデータ量計算が定番です。

出題傾向から、2026年度の試験に向けては以下の対策を重点的に行うことが有効と思われます。

  • 頻出計算問題の確実な得点化
    パイプラインの実行時間計算、IEEE754浮動小数点数の変換、EVM(SPI, CPI, EAC等)の計算、サブネットマスクとIPアドレス空間の計算、ハフマン符号化の平均符号長計算などは、出題パターンが固定化されています。これらの計算手順を過去問を通じて確実に習得し、得点源とするのがいいでしょう。
  • プログラム読解と論理演算の反復演習
    C言語やJavaを用いた再帰関数のトレースやオブジェクト指向の挙動を追う問題、論理回路(NANDゲートへの変換やカルノー図)の問題は、アルゴリズムの動きを紙上で正確にトレースする練習を積むことが重要です。
  • 規格・フレームワークの用語整理
    PMBOK、CMMI、JIS品質モデル(SQuaRE)、ITILなどのプロジェクトマネジメントおよびソフトウェア品質に関するフレームワークは、各レベルや特性の定義が細かく問われるため、キーワードと定義を正確に対応付けて暗記することをお勧めします。
  • 最新技術動向のキャッチアップ
    ディープラーニング(拡散モデルなど)、クラウドコンピューティング、アジャイル開発(スクラム、継続的デリバリ)など、近年急速に普及している技術要素も出題され始めているため、基本情報技術者試験や応用情報技術者試験レベルの最新シラバスに目を通し、基礎的な概念を把握しておくことをお勧めします。
応用理学部門

 応用理学部門の問題の多くは「最も不適切なものはどれか」「最も適切なものはどれか」を問う文章の正誤判定問題であり、これに空欄補充問題や基本的な計算問題が加わる構成となっています。

 出題範囲は、物理学(力学、電磁気学、熱・統計力学、波動、量子力学など)、化学(物理化学、無機化学、有機化学、分析化学など)、地球物理学(気象、海洋、水循環、物理探査など)、地質学(鉱物・岩石、地質構造、鉱床、年代測定など)の4つの分野から幅広くかつバランスよく構成されています。

  • 物理学分野
    • 力学:斜面上の物体の摩擦と運動方程式、単振り子やばね振り子の周期計算、放物運動や第一宇宙速度、反発係数を用いた衝突の計算が頻出しています。
    • 電磁気学:クーロンの法則やガウスの法則に基づく電場・電位の計算、ビオ・サバールの法則による磁場の計算、平行平板コンデンサーの静電容量や蓄えられるエネルギー、直流・交流回路の合成抵抗やインピーダンスの計算が問われます。
    • 熱力学:カルノーサイクルの熱効率、理想気体の状態方程式と等温・定圧・断熱変化に伴う仕事と熱量の関係、熱伝導の諸法則が出題されています。
    • 波・光学・近代物理学:正弦波の波長と進行速度の式、ドップラー効果、光の干渉(ヤングの実験やニュートンリング)、ド・ブロイ波長や放射性核種の半減期計算が含まれます。
  • 化学分野
    • 物理化学:反応速度と活性化エネルギー、アレニウスの式、化学平衡、熱化学方程式(ヘスの法則)による燃焼熱の計算、状態図(三重点や臨界点)に関する知識が問われます。
    • 無機化学:ハロゲンや希ガスの特性、各元素の電子配置(軌道と量子数)、結晶構造(面心・体心立方格子や塩化ナトリウム型構造)の配位数や充填率の計算が頻出しています。
    • 有機化学:ベンゼン環の配向性と置換反応、構造異性体・立体異性体、高分子化合物(熱可塑性・熱硬化性樹脂など)や界面活性剤の性質が出題されています。
    • 分析化学:各種クロマトグラフィー、核磁気共鳴法(NMR)、X線光電子分光法(XPS)などの機器分析手法の原理と適用対象が問われます。
  • 地球物理学分野
    • 大気と海洋:地球の熱収支(アルベドや温室効果)、大気大循環、コリオリの力と地衡風、海水の循環や塩分濃度、水循環(滞留時間や蒸発散量)が問われます。
    • 物理探査:弾性波探査(反射法・屈折法)、電気・電磁探査(比抵抗法、MT法など)、重力探査、地中レーダ探査の原理や適用条件、およびデータ処理(スタッキングやフィルタリング)に関する専門的な知識が頻出しています。
  • 地質学分野
    • 鉱物・岩石:火成岩(花崗岩、玄武岩、安山岩など)の構成鉱物や産状、堆積岩と堆積構造、変成岩の組織(片理や縞状構造)、および偏光顕微鏡による鉱物の同定(多色性、消光角、へき開)がよく出題されます。
    • 地質構造と地殻活動:断層(正断層・逆断層・横ずれ断層)とそれに伴う断層岩、褶曲、プレートテクトニクス(海嶺、海溝、付加体)、火山活動の様式(ハワイ式、ストロンボリ式など)が問われます。
    • 地球史・年代測定:放射性同位体を用いた年代測定法(14C法、U-Pb法など)の適用対象年代や鉱物が問われます。

出題傾向から、2026年度の試験に向けては以下の対策を重点的に行うことが有効と思われます。

  • 選択解答の戦略的活用
    出題は物理、化学、地球物理、地質の4分野からほぼ均等に出題されますが、35問中25問を選択すればよいため、全分野を完璧にする必要はありません。自身の専門に近い2〜3分野を確実な得点源とし、残りの分野は過去に繰り返し出題されている基礎的・定型的な問題に絞って学習するのが効率的だと思います。
  • 頻出計算パターンの習熟
    物理学における運動方程式や波動の公式、回路のインピーダンス計算、熱力学のカルノーサイクル効率、化学における熱化学方程式(ヘスの法則)や中和・溶解度・濃度の計算は、数値を入れ替えただけの類似問題が出やすいので、基本的な公式を暗記し、確実に立式できるようにするといいでしょう。
  • 事象・手法と適用条件の正確な紐付け
    化学の機器分析手法(NMR、HPLC、XPSなど)や、地球物理学の物理探査手法(反射法、屈折法、比抵抗法、MT法など)については、「何を測定し、何がわかるのか」「どのような地質・条件下で適用されるか」を整理して覚えることをお勧めします。
  • 岩石・鉱物分類の体系的理解
    地質学分野では、火成岩の分類(苦鉄質〜珪長質、深成岩・火山岩)とそれぞれに含まれる造岩鉱物(石英、長石、輝石など)の対応関係を正確に把握しておくことで、多くの正誤問題に対応可能となると思われます。
環境部門

 環境部門の問題形式は、「最も不適切なものはどれか」「最も適切なものはどれか」を問う文章の正誤判定が大部分を占めますが、一部、専門用語や数値の組合せを問う空欄補充問題や、基礎的な計算問題(汚泥の脱水に伴う体積・質量変化、BOD汚濁負荷量、燃焼に必要な理論酸素量など)が出題されます。

 出題範囲は、環境関連法規、大気・水質・土壌の汚染メカニズムと測定・分析技術、地球環境問題(温暖化、オゾン層破壊など)、廃棄物処理とリサイクル、自然環境保全・生態系と非常に広範にわたります。

 また、法令の改正内容やIPCC等の国際的な報告書、環境省の最新の統計データに関するタイムリーな出題も見られます。

  • 環境関連法規・基準
    環境基本法をはじめ、大気汚染防止法、水質汚濁防止法、土壌汚染対策法、環境影響評価法などの対象事業規模や規制項目、環境基準と排出基準の違いが頻繁に問われます。特に基準達成率の傾向や、指定物質の追加・変更履歴(TOCへの変更など)が出題されやすくなっています。
  • 測定・分析・評価技術
     ICP質量分析、ガスクロマトグラフ、高速液体クロマトグラフなどの機器分析の原理、適用対象物質、およびイオン化干渉等の誤差要因とその低減法が問われます。また、騒音・振動・低周波音・悪臭の評価指標やJIS等に基づく測定方法(暗振動との差、測定機器の設置条件など)も頻出しています。
  • 地球環境問題・国際枠組み
    気候変動(IPCCの評価報告書の内容、温室効果ガス排出量の国別比較)やオゾン層保護(モントリオール議定書)、越境大気汚染(酸性雨、黄砂、PM2.5)の実態が問われます。ワシントン条約やラムサール条約、生物多様性条約などの採択年や目的を照合する問題も定番です。
  • 廃棄物・リサイクル
    廃棄物処理法に基づく一般廃棄物と産業廃棄物(特別管理産業廃棄物を含む)の区分、最終処分場(安定型、管理型、遮断型)の構造要件といった問題が出されています。また、各種リサイクル法(容器包装、家電、建設、食品等)の対象品目と手法、循環型社会形成推進基本計画における物質フロー指標(資源生産性、循環利用率など)が問われます。
  • 自然環境保全・生態系
    生物多様性の評価(アルファ多様性等)、保全生態学の用語(キーストーン種、アンブレラ種、ボトルネック効果、中規模攪乱仮説など)、遷移のメカニズムといった問題が出されています。自然公園法に基づく国立公園・国定公園の指定要件と規制、レッドリストやレッドデータブックの定義と掲載種、外来種や野生鳥獣の被害対策に関する知識が求められます。

出題傾向から、2026年度の試験に向けては以下の対策を重点的に行うことが有効と思われます。

  • 環境白書等の最新統計データと法改正のチェック
    温室効果ガス排出量の推移、大気・水質環境基準の達成状況、廃棄物排出量とリサイクル率など、環境省が公表する最新の統計データや「環境白書」の内容を押さえましょう。また、直近の法令や環境基準の改正は出題されやすいため、最新の動向を確認しておくといいでしょう。
    (水質の環境基準)
     2022年 六価クロム 0.05→0.02mg/L
     2022年 大腸菌群数→大腸菌数
     2020年 PFOS・PFOAを要監視項目に追加 (暫定指針値 50ng/L)
    (排水基準)
     2025年 大腸菌群数(日間平均3,000個/cm³)→ 大腸菌数(日間平均800CFU/mL)
     2024年 六価クロム 0.5 → 0.2mg/L(電気めっき業は暫定措置あり)
    (自然環境系)
     2025年 鳥獣保護管理法 :緊急銃猟の制度
     2025年 生物多様性増進活動推進法 :「自然共生サイト」制度
     2024年 日高山脈襟裳十勝国立公園 :35番目に指定
     2024年 クマ類(四国を除く):指定管理鳥獣に追加
    (環境影響評価)
     2025年 アセス図書公開 :縦覧期間の約1か月→インターネットでの継続公開義務化
  • 測定・分析技術の基礎原理の習得
    各種大気汚染物質や水質汚濁物質の公定分析法(JIS等)に用いられる機器(ICP-MS、GC、LC、吸光光度計など)の原理、適用範囲、妨害成分の除去方法(バックグラウンド補正、サロゲート物質等の精度管理)を体系的に整理して暗記しておきましょう。
  • 定型計算問題の確実な得点化
    汚泥の脱水前後の体積・質量の変化を求める問題や、BOD/COD等の汚濁負荷量や反応速度計算は、出題パターンが決まっています。確実に解けるよう過去問で計算プロセスを反復演習しておくことをお勧めします。
  • 生態学・自然環境用語の正確な理解
    「エコトーン」「パッチダイナミクス」「ミティゲーション」「レジームシフト」といった生態学や環境アセスメント特有の専門用語について、似た概念(キーストーン種とアンブレラ種の違いなど)を混同しないよう、具体例とあわせて正確に定義を覚えておきましょう。

択一問題解答のテクニック

a.解答手順

択一問題の特徴は、以下のようなものです。

  • 4コママンガ本と同じで、小さい問題がたくさんある。
    →順に解いていかなければならないという決まりはない。
  • 100点取る必要はない。合格ラインに達すればよい。
    →全分野にわたって答える必要はない。得意分野だけでもよい。
  • 問題自体を選択できる基礎科目のような場合、全問答える必要はない
    →答えられる問題だけ解けばよい。他の問題は目を通す必要すらない。
  • 1問あたりの点数は、○か×かしかない。中間点というものはない。
    →わからない問題は、きっぱり捨ててしまったほうがよい。
  • 正確な知識はいらないことが多い。
    →正確に記憶するのではなく、だいたいのイメージで覚える勉強をする。
  • 正解を選ぶのが目的。それ以外の答えは不要。
    →大小比較問題では個々の選択肢の数値は不要です。たとえばこんな例

したがって、試験では、

  • 自信のある問題から解いていく。
  • 合格ラインに達したと思ったら、さっさと次の分野の問題に行く。
  • あれこれ悩まない。スパッスパッとふんぎりよく解いていく

    といったことが効果的ではないかと思います。
    逆に、解くのに時間がかかってもとにかく1問目から順に解いていくとか、わからなくても解答するまで次の問題に進まないなどというのは、非常に効率が悪く、時間がなくなる原因になりますし、気持ちも焦って冷静沈着に考えられなくなり、実力が出し切れないことにつながります。
    一例として、私の択一解答手順を紹介します。あくまで私のやり方ですから、参考程度にお読みください。

(1) まず最初に、一度全体を見渡し、問題を分類する。

  • すぐにパッと解けそうな問題  ・・・・・◎
  • 少し考えたら解けそうな問題  ・・・・○
  • 考えたら解けるかもしれない問題・・・・△
  • わからない、解けそうにない問題・・・・×


(2) 予想得点を概算する。
 合格ラインは60%に置きます。
 したがって、各分野3問選択、全部で15問選択であるならば、各分野ごとの◎の数(各分野3個まで)が9個以上あれば、それでもう合格ラインに達しています。専門科目の不出来もカバーしようとするなら、10~12個程度あったほうがいいですが、そうでなければ、自信のある◎の問題だけ解いてしまえば、後は捨ててもかまわないということになります。
 これではあまりに大雑把ですから、少し細かく、

  • a) ◎の数×(0.8~1.0)
  • b) ○の数×(0.5~0.8)
  • c) △の数×(0.3~0.5)
  • d) ×の数×(0.0~0.2)

として、各分類ごとに予想得点を出してみます。()内の「~」で範囲を持たせた数字は正答率です。慎重にいきたい人は左側の小さいほうの値を、あまり気にならない人は右側の大きめの数字を取ります。

 そして、a → a+b → a+b+c → a+b+c+d というように加算していきます。これが60%に達した時点で後は捨ててもいいと判断します。たとえば、a+bで問題数の6割を超えた場合は、△の問題、×の問題は捨ててもかまわないということになります。逆にいえば、×に分類した問題は、◎+○+△ではどうしても合格ラインに届きそうもなくて、「一か八か」で解答する問題であるといえます。

こうして、「よし、◎だけ解いて適性問題へ行こう」とか、「△まで解かないとヤバイ。」というように、「この科目をどこまでやるか」を決めます。

なお、全部で60%正解すればいいので、たとえば4分野で各2点づつ確実に取れるなら、不得意分野を丸ごと捨ててしまってもかまいません。ただし、まぐれ当たりもありますから、必ず解答はしましょう。また、真偽のほどは明らかではありませんが、「0点の分野があったら不合格」という情報もあるので、できるだけ0点という分野は避けましょう。

(3) 自信のある問題から順に解いていく。

考えなくてもパッパッと解ける問題から、どんどん解いていきます。
解けたら、たとえば「◎」や「○」マークの上からチェックマークを付けるとか、「済」と大きく書くとかして、解答済みであることが一目でわかるようにしておきます。
また、解答に自信があるものは、たとえば「OK」と大きく書いておきます。この問題は、もう2度と見直しません。
逆にじっくり考えないとわからない問題は、「?」と大きく書いて後回しにします。

(4) 「OK」の問題を除いて、今度はじっくり解いていく。
 「OK」の問題数では合格ラインに達していないと判断される場合は、考えないと解けない問題に取りかかります。
 迷ったときは、択一セオリーも使って選ぶのがお勧めですが、とにかくふんぎりが大切です。自分の知識でも運でもカンでも、何かを信じて決めてしまいます。そして、こういう迷った問題は、一度解答したらもう見直さないようにすることが大切です。こういうのに限って、後でまた迷って、結局間違った答えを選んでしまうことが多いものです。
 まるでわからない問題は、択一セオリーで、それも通じない場合はカン、あるいは前後の解答選択肢の配列(ずっと4がないから4だろうとか、3・3・3と来ているから今度は3はないだろうとか)、さらにはサイコロ(・・・・は持ってきているわけがないので、電卓の乱数とか鉛筆を転がすとか)で決めます。もともとマグレ当たり狙いですから、何でもかまいません。時間を割くだけ無駄です。

b.解答のコツ

 択一問題の解答について、私なりのコツのようなものを述べます。

(1) 選択肢にざっと目を通す。
 選択肢1から順にじっくり読んで理解して・・・・というのは無駄です。
 まず、選択肢全部にざっと目を通します。

(2) 明らかな正解があれば、そこで考えるのは打ち切る。
 「明らかにこれが誤り(あるいは正しい)で、正解はこの選択肢」とわかった場合は、そこでその問題はおしまいにします。問題番号の下などに答え(正解である選択肢番号)を書き、大きく「OK」と書いて、次の問題に行きます。
 たとえば、5択の1番目の選択肢が正解であると確信できた場合は、選択肢2番目以降は読みません。「念のため・・・・」などと無駄な時間を使わないことです。
 無論、「絶対にこれが正解」と思える時だけですが。

(3) 明らかな正解が見つけられない場合、相反する選択肢がないか探す。
 同じ事項について、相反することを言っている選択肢が見つかった場合、そのどちらかが正解であることがほとんどです。

(4) 感性で決める。
 上記(2)も(3)もない場合(というより、(2)や(3)と同時進行になりますが)、「何かひっかかる」とでもいったような感性で決めます。
 こう書くと、非常にいいかげんな印象をうけるかもしれませんが、この「感性」は技術者にとって非常に大切なものだと私は思っています。成果品照査で通読チェックしていて、何かおかしい、数字がどうこういうのではなく、何かしっくりこないという感じがした場合、図面や計算書のチェックをすると、入力間違いなどの単純ミスが見つかることがよくあります。
 これは、長年の経験で培われるものであり、実務では、たとえば軟弱地盤上に盛土を構築する時に、「この強度(あるいはN値)の地盤にこの高さの盛土はヤバイ」と見通せる(もちろんちゃんと数値計算はするが、ダメなのを見越して調査や対策に言及できる)技術者と、「ソフトで計算して数字が出ないと私には何もわかりません」という技術者の違いとして現れます。
 それゆえに(蛇足になりますが)、私は今回の技術士制度改定のマイナス面として、経験軽視になりかねないという懸念を持っています。さらにそれが、RCCMが重視されるようになるのではないかという予測の根拠にもなっています。

(5) 最後はじっくり考えて知恵を絞る。
 最後はあきらめて、知恵を絞ります。しかし、このような問題はほとんどなく、「そんなことする前に択一問題を一度終わらせて次へ行こう」ということになります。これは単に私がものぐさであることだけが原因なのかもしれません。(^_^;)ゞ

c.択一セオリー

 択一問題には、独特の傾向があります。これはたとえば「『~しなくてもいい』というような書き方の選択肢はたいてい誤り」といったようなもので、運転免許試験などに顕著に現れています。これを「択一セオリー」と私は呼んでいます。

 一次試験・二次試験とも、択一問題はこの「択一セオリー」に逆らわない傾向がかなりはっきり出ています。特に一次試験で顕著ですが、二次試験も択一セオリーを逆手に取ったような問題は出ていません。

 択一セオリーには、どんなものがあるか、ざっと書き出してみます。

【誤りであることが多いもの】
●用語説明
 「○○は△△のことである」というように、用語説明をしてある場合、名称と説明の組合せを違えてあることが多い。この場合、名称は「PI」とか「DB」などの頭文字系が多い。多くの場合は各選択肢とも同様なのでこのセオリーは通用しないが、選択肢の中で1つだけ用語説明をしている場合は要注意。
●類似物併記
 「社会資本整備の機能による長期的効果をフロー効果、公共投資に伴う一時的な経済活動活性化効果をストック効果という」というように、「似たもの同士」をならべて説明しているような文章は、名称と説明の組合せを入れ替えてある場合が多い。
●無責任
 「~する必要はない」といったような、無責任な感じがするものは誤っていることが多い。
●言い訳
 「仕方がない」など、努力を放棄して「仕方がないじゃないか」というような言い訳じみたことが書いてあるものは誤っていることが多い。
●断定・限定
 「~しなければならない」、「~のみである」、「~以外にない」といったようなものは誤っていることが多い。
●仲間はずれ
 主旨、対象物、あるいは計算式など、1つだけ他と違う印象をうけるものは誤っていることが多い。
●職名
 技術士の登録権者などの職名が誤っていることが多い。一番多いのは「大臣」と「知事」を入れ替えてある。
●数値
 数値が違う値に変えてあるものが多い。1つだけ数値があがっていたら注意
。

【正しいことが多いもの】
●最も当たり障りのないもの
 ソフトで見た目のよい言葉がちりばめてある、役所風の文章は間違っていないことが多い。
●誠実なもの
 誠実・まじめな印象を受けるものは、正しいことが多い。

 択一セオリーに頼ってはいけませんが、答えを選ぶ根拠が全くないけれど何か書かないといけない時には、全くのあてずっぽうで選ぶよりは多少はましだろうと思います。

d.マークシートの注意事項

 マークシート式試験が未体験である方はほとんどおられないと思いますが、一応注意事項を記しておきます。

●解答は、問題用紙に一度書いてから、最後にまとめてマークシートに記入する。
 マークシートは非常に無機質です。パッと見てもどの選択肢を選んだのかよくわかりません。
 また、その都度記入すると、飛び飛びに問題を解いている場合は、ズレた番号のところにマークしてしまう危険性があります。
 単純な転記作業ですから、まとめてやったほうが効率的です。
 ただし、時間配分に十分注意して、余裕を持って転記できるようにしてください。時間がなくなって焦ると、マークは数字記入より時間がかかるだけにもう大変です。

●受験番号などの記入は最初に済ませる。
 問題に没入すると、こういったことは忘れがちになります。
 マークシートは、普通の解答用紙に比べて、未記入であることがわかりにくいという特徴があります。十分注意してください。
 特に16年度はこの記入に不備があると失格(採点すらしてもらえない)になってしまうことが予想されますので、最大限の注意を払う必要がありそうです。

●最後に、記入がズレていないか見直す。
 特に選択式なので、ズレた問題番号のところにマークしている可能性もあります。全部で15問しかありませんから、時間が許せば全問チェックしましょう。

●鉛筆はHB程度がよい。
 Hなどの薄い鉛筆はマークが薄くなります。逆にBや2Bでは紙や袖でほすれて汚くなります。
 記述問題の答案作成は、腕が疲れにくいBや2Bがいいですが、マークシートはHBが適しています。

●マークはきれいに、しかし時間がなくなったら、とにかくマークする。
 よく、枠からはみ出したり、余白が残ったりしてきれいに塗りつぶせていないと、機械が読み取りエラーを起こして不正解になってしまうと言われます。
 現実にはこのようなことはほとんどありません。マジックでいいかげんにマークしたものでも十分読み取ります。また少々はみ出しでも平気です。
 しかし、読み取りエラーの可能性はゼロとはいえません。ですから、時間があれば丁寧にマークしましょう。逆に時間がなくなった場合は、とにかく全部にマークすることを優先します。
 なお、それより危険性が高いのが、汚れをマークとして読み取られるという可能性です。
鉛筆の汚れは無論、こびりついていた消しゴムのカスが読み取られてしまうこともあり得ます。答案提出時には、よく掃除してから出しましょう。
 消しゴムで消せるボールペンというのもあります。しかし、これは消しゴムで消えるだけに手でこすっても簡単に落ちるため、マーク部分が薄くなるとともに周りを汚す危険があるので、お勧めしません。